短編/SS集【BL】
夜に隠して
少し前からわかっていたこと。
「…もう、やめない? こういうの」
最近仲の良い女の子がいるって、知ってた。
この前すれ違ったら、可愛かった。
「………わかった」
自分から切り出したのは、先に言われるのが辛かったからとか、そんな乙女みたいな理由じゃなくて。ただ、ただ、想いの行き場が無くなったから。一方通行じゃ、とても恋愛なんて呼べない。
なのに。
「…ふ、………くっ…」
まるで抑えきれない吐き気のように、溢れだした想いは受け止めてくれる人も無く。真っ暗な中ぽつりと照らされた街灯の下でうずくまり、俺はただただ泣いていた。
どれくらい其処でそうしていたのだろう。不意に頭上から降ってきた言葉に上を見上げた。
「いつまでそーやってんだ」
「っ、……………木場…」
そこには、見慣れた顔があった。
俺は"いつものように"あいつに拾われると、これまたいつものようにコンビニで酒とつまみを少し買って、あいつの家へ転がり込む。
「何時間あそこにいたの」
「…わかんない」
「………。いいかげん成長しろよ」
「……………、ごめん」
中学からの腐れ縁。あの頃から同性にしか興味が持てなかった俺と、そんな俺を見捨てることなく"友人"をやってくれてるあいつ。
この会話だって、もうあの頃から何十回繰り返したかわからない。
「…はぁ。まぁ良いや。お前腹減らねー?」
「うーん、…ちょっと減った」
「あんだけ泣いてちょっとなの?流石だな」
流石の意味がよくわからなかったけど、「あんだけ泣いて」っていつから見てたんだろうって方が気になって、どーでも良かった。いくら腐れ縁でも、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「寄せ集めしかないけど良いか?」
「うん」
出てきたのは"寄せ集め"とは程遠いお洒落な料理だった。
「相変わらず上手いね」
「一応料理学校卒だしな」
「全然関係ない仕事してるね」
「うっせーな。何回目だよこの会話」
「………、ふふっ」
思わず笑ったら、頭小突かれた。
「ちょっとは落ち着いたか」
木場の作ったサーモンサラダ…っぽいもの口に詰め込んでたら、優しい声でそう言われた。
「…うん、ちょっとは」
「………。またフラれたんか?」
「…今回はフラれる前にサヨナラした。これ以上は、たぶん無理だろーなって、何かわかってしまったので」
…あ、でも良い感じの女の子いたんだったら、実質もう俺フラれてたんかも。
自分で考えておきながら、チクリとした。
「お前良いかげんその面食い病治せよ。見た目だけでフラフラフラフラ着いてくからそーなんだ」
痛い痛い。
「ごめんなさい」
「…ったく、お前がそんなんだから…」
木場はブツブツ言いながら不機嫌そうに頭ポリポリ掻いてた。
木場は優しい。優しいから女にもモテる。確か今も彼女いた…はず。……はず。
木場とは腐れ縁だし、付き合いもアホほど長いし、気心も一番知れてるし、こんな俺をそのまま受け止めてくれるけど。でも、木場のことは好きにならない。これが居心地良いから手放したくないのかもしれない。
「腹、落ち着いたら風呂入れよ。どーせ泊まってくんだろ?」
「…お世話になります」
「ほんと手のかかるやつだな」
「へへっ」
「少しは反省しろ」
はーい、って手ぇあげたらバスタオル投げつけられた。
それから暫くくだらない話して、風呂借りて、あいつのベッドに潜り込む。「さーみー」ってあいつもベッドに潜り込んでくる。
「何か寒いと思ったら、外!雪ちらついてたぞ」
「まぢで」
「お前、俺が拾わなかったら街灯の下で凍死決定だったな」
「街灯の下だから誰か死体見つけてくれるよ」
「死んでる時点で終わってんだろ」
「「…、はははっ」」
バカなこと言いながら、あいつが電気を消す。
「明日、日曜だし仕事休みだろ?」
「うん」
「んじゃ、ゆっくり寝よーぜ」
「…えー、どっか行きたい」
「えー、どこ行くんだよ」
「何処でも良い」
あいつの方に寝返って我が儘呟いたら、仕方ねーなって顔された。
「んじゃ、デートでもしますか?王子」
「何、王子って」
「面食い王子」
「うれしくねー」
此処はひどく居心地が良い。
居心地が良いから、俺はその気持ちも何もかも見えないフリをして、居座り続けてるのかもしれない。
これを失ってしまったら、もう俺には行くところが無いから。
『一番酷いのは俺なんだろうな』
ウトウトしながら、そんなことを考えてたら、暖かくて大きな掌が頭を撫でてくれた気がしたから、おれはまたそれに甘えて、深い闇に真実を隠した。
fin,
少し前からわかっていたこと。
「…もう、やめない? こういうの」
最近仲の良い女の子がいるって、知ってた。
この前すれ違ったら、可愛かった。
「………わかった」
自分から切り出したのは、先に言われるのが辛かったからとか、そんな乙女みたいな理由じゃなくて。ただ、ただ、想いの行き場が無くなったから。一方通行じゃ、とても恋愛なんて呼べない。
なのに。
「…ふ、………くっ…」
まるで抑えきれない吐き気のように、溢れだした想いは受け止めてくれる人も無く。真っ暗な中ぽつりと照らされた街灯の下でうずくまり、俺はただただ泣いていた。
どれくらい其処でそうしていたのだろう。不意に頭上から降ってきた言葉に上を見上げた。
「いつまでそーやってんだ」
「っ、……………木場…」
そこには、見慣れた顔があった。
俺は"いつものように"あいつに拾われると、これまたいつものようにコンビニで酒とつまみを少し買って、あいつの家へ転がり込む。
「何時間あそこにいたの」
「…わかんない」
「………。いいかげん成長しろよ」
「……………、ごめん」
中学からの腐れ縁。あの頃から同性にしか興味が持てなかった俺と、そんな俺を見捨てることなく"友人"をやってくれてるあいつ。
この会話だって、もうあの頃から何十回繰り返したかわからない。
「…はぁ。まぁ良いや。お前腹減らねー?」
「うーん、…ちょっと減った」
「あんだけ泣いてちょっとなの?流石だな」
流石の意味がよくわからなかったけど、「あんだけ泣いて」っていつから見てたんだろうって方が気になって、どーでも良かった。いくら腐れ縁でも、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「寄せ集めしかないけど良いか?」
「うん」
出てきたのは"寄せ集め"とは程遠いお洒落な料理だった。
「相変わらず上手いね」
「一応料理学校卒だしな」
「全然関係ない仕事してるね」
「うっせーな。何回目だよこの会話」
「………、ふふっ」
思わず笑ったら、頭小突かれた。
「ちょっとは落ち着いたか」
木場の作ったサーモンサラダ…っぽいもの口に詰め込んでたら、優しい声でそう言われた。
「…うん、ちょっとは」
「………。またフラれたんか?」
「…今回はフラれる前にサヨナラした。これ以上は、たぶん無理だろーなって、何かわかってしまったので」
…あ、でも良い感じの女の子いたんだったら、実質もう俺フラれてたんかも。
自分で考えておきながら、チクリとした。
「お前良いかげんその面食い病治せよ。見た目だけでフラフラフラフラ着いてくからそーなんだ」
痛い痛い。
「ごめんなさい」
「…ったく、お前がそんなんだから…」
木場はブツブツ言いながら不機嫌そうに頭ポリポリ掻いてた。
木場は優しい。優しいから女にもモテる。確か今も彼女いた…はず。……はず。
木場とは腐れ縁だし、付き合いもアホほど長いし、気心も一番知れてるし、こんな俺をそのまま受け止めてくれるけど。でも、木場のことは好きにならない。これが居心地良いから手放したくないのかもしれない。
「腹、落ち着いたら風呂入れよ。どーせ泊まってくんだろ?」
「…お世話になります」
「ほんと手のかかるやつだな」
「へへっ」
「少しは反省しろ」
はーい、って手ぇあげたらバスタオル投げつけられた。
それから暫くくだらない話して、風呂借りて、あいつのベッドに潜り込む。「さーみー」ってあいつもベッドに潜り込んでくる。
「何か寒いと思ったら、外!雪ちらついてたぞ」
「まぢで」
「お前、俺が拾わなかったら街灯の下で凍死決定だったな」
「街灯の下だから誰か死体見つけてくれるよ」
「死んでる時点で終わってんだろ」
「「…、はははっ」」
バカなこと言いながら、あいつが電気を消す。
「明日、日曜だし仕事休みだろ?」
「うん」
「んじゃ、ゆっくり寝よーぜ」
「…えー、どっか行きたい」
「えー、どこ行くんだよ」
「何処でも良い」
あいつの方に寝返って我が儘呟いたら、仕方ねーなって顔された。
「んじゃ、デートでもしますか?王子」
「何、王子って」
「面食い王子」
「うれしくねー」
此処はひどく居心地が良い。
居心地が良いから、俺はその気持ちも何もかも見えないフリをして、居座り続けてるのかもしれない。
これを失ってしまったら、もう俺には行くところが無いから。
『一番酷いのは俺なんだろうな』
ウトウトしながら、そんなことを考えてたら、暖かくて大きな掌が頭を撫でてくれた気がしたから、おれはまたそれに甘えて、深い闇に真実を隠した。
fin,
