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短編/SS集

図書室の居候






「…あっちぃ」

制服の襟元をパタつかせ、手に馴染んだそのドアを開けると、過度に寒くもなく、程度な、心地良い冷風が頬を撫でた。

「はぁっ…」

無意識に安堵のため息が出る。次の瞬間ほのかに香る紙の匂い。この静かな空間を、俺はこよなく愛している。


借りた本を返却台に置き、次に借りたい本を探す。何気なく一番静かな場所へと足を向けると、懐かしい白い髪が揺れた。

「よぉ」
「……お前、まだ居たのか」

一年前と何ら変わり無い姿が、そこにはあった。

「久々の再会というに、代わり映えの無い台詞だな。他に気の利いた言葉はないのか」
「文句言うな」

本棚に目をやりながら、懐かしい声に耳を傾ける。

「この季節の旧校舎は地獄だからな」
「…想像しただけで恐ろしい」
「だろ?それに比べ此処は快適だ」
「だがしかし、場所を選り好みするとは贅沢だな」
「生活スペースくらい選ばせてくれ」
「そんなんだから馬鹿にされるんだ。『図書室の居候』って」
「年々、年を追う毎に、人間我が儘になるものだよ」

白い髪がエアコンの風にサラリと靡いた。
俺よりもはるかに幼く見えるその風貌の実、こいつは俺よりもはるかに長遠の時をこの地で過ごしてきている。

「いつまで此処でそうしてるんだ」
「そんなこと、とうの昔に考えることもやめた」

ふんっと、鼻で笑われた。

「一年後も、十年後も、此処でこうしているかもしれないし、明日には居ないかもしれない」
「…そうか、…そうだな」
「ところで今日は何を借りるんだ」
「随分暑くなってきたから、『学校の怪談』でも借りようかな」
「嫌味か」
「称賛だ」
「…言うようになったな」
「こっちは時の流れに従って成長してるんで」

やはり嫌味だな、そう吐き捨てるとアイツは、また白い髪を揺らして笑った。



『図書室の居候』、それはこの学校の七不思議の五番目…。





fin,


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