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短編/SS集


俺と、お前と、





扉を開けると、聞き慣れた筆を擦る音がした。
普段ボーッとしてるあいつが、キャンバスに向かってる間だけは真剣な目付きになる。

「まーた、わかんねーもん描いてる」
「…? おお、先生の用事終わったのか?」
「ああ、単なる手伝いだった」
「そか」

あいつの絵は抽象的すぎて、絵心が皆無の俺には到底理解できない。

「こりゃまたムズカシーもん描いてんな」
「難しくねーよ。花だ」

……………。どこをどう見ればこれが花になるのか。きっと紙一重で天才なのだろう。そう思っておこう、平和だ。

「はい、駄賃わけてやる」
「やったー!」

手伝いで貰った菓子をやると、あいつは嬉しそうに頬張った。


「…なぁ、絵ぇ描くの楽しー?」
「つらい」
「………、じゃ、何で描いてんの」
「描かなきゃ生きていけない」

こいつの言うことは、わりとわからない。


「…俺にとって、描くことは息をすることだからな」
「息することなのに辛いのか?」
「え、お前つらくないの?」
「………」
「え、勇者」

え、意味わかんない。俺何でこいつの友達やってんだろ。

「…何で辛いのに毎日描いてるの」
「だから描かなきゃ生きていけないんだって。お前、何回言わせんの?」
「………お前は、本当爆発してるよなー。色々と」
「………? まぁ芸術は爆発らしいからな。あれだ、ビッグバンだ」

こいつは哲学者か何かか。まったく色々超越してるやがる。


「…キャンバスだけが、俺のありのままを受け止めてくれる」
「寛大だな」
「ホント、キャンバスさんすげーよ?」


暮れ泥む空を見てたら間抜けな腹の虫が鳴いた。…あいつの。

「それ片付いたら、メシ食いに行っか」
「ギョーザ食いたい。俺と、お前と、キャンバスさんで3人前な」
「…キャンバスさんは置いけて」


fin,

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