姫縛り~主従逆転奉仕~(R18)
名前変換設定
恋戦記は現在一部のお話のみヒロインの名前変換可です薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
.
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
とある本丸の毎日の朝礼。
「――というわけで、今日から俺が審神者だ」
刀剣男士たち全員を大広間に集めると、昨日までこの本丸の近侍であったへし切長谷部は開口一番にそう告げた。
「何だよそれ! 聞いてねぇぞ、へし切!」
真っ先に食って掛かったのは、彼と浅からぬ因縁を抱える短刀の付喪神たる不動だ。しかし長谷部はそんな彼にぴしゃりと言い放つ。
「主と呼べ、不動行光」
「はあ!? 何言ってんだよ、お前!」
つい昨日まで同輩だった者に急にそんなことを言われても、納得できるはずがない。不動は当然のごとく食い下がるが、長谷部は相手にしない。
「うるさいぞ、いちいち騒ぐな」
そう吐き捨てると、不動から視線を外す。長谷部と不動。この二人のこじれやすさは相変わらずだ。
そんな彼らを見かねて、長谷部のそば近くに控えていた審神者……いや、昨日まで審神者だった少女は、眉を顰めて口を開いた。
「……二人とも、落ち着いてください」
「あ、主……」
「……不動さん、もう私は主ではないですよ」
涙に潤んだ瞳で自分を見上げてくる不動に、元審神者は柔らかな苦笑を返す。
そんな彼女に一瞬だけ視線を投げてから。改めて長谷部に挑むように問いかけてきたのは、傾国の名刀と謳われる打刀の刀剣男士、宗三左文字だった。
「……それで、今日の出陣はどうするつもりなんですか? 長谷部」
宗三もまた、不動と同じく長谷部を主とは呼ばなかった。しかし長谷部はそんな宗三を相手にせず、左手に持っていた小さなノートに視線をやる。長谷部はそのまま、朗々とした声でノートの内容を読み上げ始めた。
「それでは今日の内番と遠征と出陣の組み合わせを発表する。まずは――……」
内番や出陣などの組み合わせ、つまり誰がどの役割や作業を担当するのかは、きちんと事前に決定し本人たちにも知らせているのだが、この本丸では確認や周知徹底も兼ねて当日の朝礼でも改めて告知する。
つい昨日までは長谷部の隣に控える少女が、この本丸の主としてノートを読み上げていたのだが、今日からこの本丸の主たる審神者は少女から長谷部となった。ゆえに、この割り振りの発表も彼が行っていたのだが。
とはいえ、自分を出し抜いて新たな審神者となり、昨日まで自分が持っていたノートを手に、この本丸の新たな主として場を仕切る長谷部を、元審神者の少女は寂しげな面持ちで見上げる。
昨日までは近侍であり一番の部下もあり、そして自分の情人でもあった長谷部。つい昨日までは忠実な下僕そのものであった彼が、今や完全なる下剋上を果たし、自分を召使のように従え、その様は見事なまでの主従逆転といったありさまだった。
「――以上だ。それでは各自持ち場に向かうように。解散」
この本丸の新しい審神者として場を仕切る権限があるとはいえ、あまりにも一方的に朝礼を終わらせようとする長谷部に、これまで彼の口上を黙って聞いていた他の刀剣男士の面々からも、非難めいた声が上がる。
もう少し何か言うことがあるはずだろう、皆の想いを代弁し口を開いたのは、短刀の男士である薬研だった。
「おいちょっと待てよ、長谷部の旦那」
「何だ、薬研藤四郎」
「大将は…… これからどうなるんだよ」
今もなお長谷部の隣で心細そうにしている彼女を気に掛けるそぶりを見せながら、薬研は長谷部に非難がましい視線を送る。
しかし、薬研の疑問はもっともだった。先ほど長谷部が読み上げた本日の業務の割り振りに、元審神者の少女は含まれていなかった。
長谷部はしばしの間黙り込むと、眉間にわずかに皺を寄せ、改めて口を開く。
「……彼女は俺が預かる。お前たちが気を揉む必要はない」
「預かる? それは聞き捨てならねぇな」
珍しくはっきりとしない長谷部の物言いに、薬研の声が低くなる。
長谷部とは形は違えど、彼もまた元審神者を大切に想う刀の一振り。かつての主人を守ろうと、薬研は長谷部を敵意すらこもった瞳で睨みつける。
「……まだ引き継ぎが終わってないからな。しばらく俺と行動をともにしてもらう」
そんな彼に気圧されたのか、長谷部の語気が若干緩み、その場の空気もまたわずかに穏やかさを取り戻した。
「――おい。引継ぎが終わったあとは、一体どうするつもりだ」
今度口を開いたのは、打刀の山姥切国広だった。この本丸の初期刀でもある彼もまた、長い縁の元審神者を心配しているようだった。
自分よりも長い時間を彼女と過ごしてきた初期刀の言葉に、長谷部は一瞬だけ不快感を露にするが。すぐに表情を戻すと、そつのない答えを返す。
「……安心しろ、引継ぎを終えてからもこの方はこの本丸に残る」
そう明言する長谷部に安堵したのか、山姥切は淡い微笑みを浮かべると、満足したのか瞳を伏せた。
他の刀剣たちもようやく人心地がついたのか、場の緊張が一気に緩み、あたりはにわかに騒々しくなる。
「なら良かったよ」
「そうだなぁ」
そう口にして笑いあうのは燭台切光忠に三日月宗近だ。三日月は長谷部のそばで所在なさげにしている元審神者に視線を送ると、穏やかに微笑みかけた。
「――他に質問がないなら朝礼は以上だ。各自持ち場につけ、解散」
場の空気が緩んだこの機に乗じて力強く言い切り、長谷部は今度こそ朝礼を終わらせた。
がやがやとそれぞれの持ち場に向かう男士たちを尻目に、長谷部は自分の隣の元審神者の少女の手を取る。
「……それでは、参りましょう」
恭しくそう口にすると、長谷部は彼女をまるで攫うようにして、現在は自身の居室でもある、審神者の執務室に連れて行ってしまった。
***
この部屋はこれまでずっと自分が過ごしてきた場所でもあるのに、新しい審神者に客人として招かれて入ると、知らない場所のようにも感じる。
「……意外と皆さん納得してくださるものですね」
二人きりの薄暗い室内。どことなく重い空気を纏う無言の長谷部を気遣い、元審神者は遠慮がちに彼に話しかける。
「それでは引継ぎ業務の続きをしますか? でももう、ほとんどすることもないですが……」
ずっと彼女の近侍として、あるいは情人として、公私にわたって元審神者を支え続けていた長谷部だから、審神者の業務の勝手くらい分かっていた。となれば元々優秀で呑み込みの早い彼に、改めて伝えるべきことも多くはなく。
「いえ、それはもう不要です」
「っ……」
けれど、たとえそうであったとしても。改めて本人からきっぱりと言われてしまうと、やはり傷ついてしまう。
元審神者は悲しそうに瞳を伏せるが、長谷部はそんな彼女に向き直ると、いたって真面目な表情でとんでもないことを口にした。
「そんなことよりも、俺はあなたを抱きたい」
「っ! 何言ってるんですか、長谷部……!」
「……出来れば、長谷部ではなく主とお呼び頂きたいのですがね」
驚きに戸惑う元審神者の少女に対し、長谷部は瞳を逸らして苦笑する。しかし、長谷部は改めてその藤色の瞳で彼女を見据えると。
「主命です。お嫌とは言わせませんよ」
「ッ、何言って……」
「まずは湯あみをしましょうか。幸いこの部屋には内風呂がありますので」
「っ!」
強引で自分勝手で酷薄な本性を、長谷部はここぞとばかりに発揮する。けれど、元審神者へのこの冷酷さは同時に、長谷部の彼女への強い想いや執着の裏返しでもあった。
それを知っている元審神者は、長谷部を拒むことができない。このような仕打ちをされてもなお、長谷部を愛する元審神者は、不本意ながらも彼の命に従った。
主命は絶対なわけではない。どうしても嫌なのであれば、拒むこともできる。しかし、少女は長谷部に真名を盗られてしまっていた。ゆえに彼女は長谷部の無茶な命にも逆らえず、それが今回の主従逆転劇の原因となってしまったのだが、それにしても。
他の刀剣男士たちは出陣や内番に励んでいるというのに、こんな日も高いうちから、二人で湯を浴び交合をするだなんて……。
元審神者は罪悪感に苛まれるが、しかし同時に背徳の興奮で、その美しい肉体の最奥を熱く濡らしてしまっていた。
***
情事の前の清めの入浴は、やはり何度経験しても緊張してしまう。
薄手の湯帷子を纏った元審神者は、部屋の内風呂で長谷部の背を流してやっていた。
白く煙る湯気に、馴染みのある石鹸と檜の匂い。蒸し暑い浴室で長谷部の世話を焼くうちに、元審神者の心は若干の落ち着きを取り戻す。いつの間にか、平素よりさらに不安定な今の長谷部にも、穏やかに話しかけることが出来るようになっていた。
「……こうやってゆっくり過ごすのも久しぶりですね」
「……そうですね」
本丸は大所帯だから、なかなか水入らずというわけにはいかない。特別の機会を設けたり、あるいは皆が寝静まったころを見計らい、ひとときの逢瀬を重ねるばかりだった。
それが楽しかったこともあるけど、こんな日も高いうちから堂々と二人きりで過ごせる今も、互いに想い合う長谷部と少女にとっては幸福なもので。特にこれまで元審神者の臣下として、彼女への独占欲を押し殺していた長谷部にとっては、職権の乱用によって手に入れた今の状況は、まさに至福と言ってもよかった。
湯に浸かり気が緩んだのか、長谷部は柔らかな笑みを浮かべると、自分の背後に膝をつく元審神者に声を掛ける。
「――様、俺は幸せです。まさかあなたとこうやって夫婦のように過ごせて、風呂で背中まで流して頂けるなんて……」
「……長谷部」
「夢のようです」
元審神者の真名を愛おしげに口にしながら、長谷部は惚けたような笑みを見せる。その笑顔は、彼とただならぬ関係にあった元審神者すら目にしたことのない、おおよそ彼らしくないもので、元審神者は長谷部の深い喜びを感じ取り、思わず表情を緩めてしまう。
湯気で煙る浴室に、にわかに穏やかな空気が流れる。腰にタオルを巻きつけただけの長谷部は、改めて後ろを振り向くと、自分に傅く元審神者をその逞しい腕に半ば強引に抱きこんだ。
「俺は…… 俺はずっとこうやって、あなたを独占したかった……」
一言一句を噛みしめるように口にする長谷部に、元審神者は彼に掛ける言葉を失う。彼女にできることはただ、彼の名前を呼ぶことだけだ。
「長谷部……」
「……今までのあなたは、いかに俺と特別な関係にあったとしても、
大勢の配下を抱える主で、俺はそのうちの一人でしかなかった。確かに俺はあなたの一番刀でしたが、あなたは他の者にも目を配り 心を配っていた」
「っ、それは……!」
「わかっています。それはあなたがこなさねばならない責務です。
けれど、ずっと妬ましかった」
これまで堪え続けていたものが、溢れて止まらなくなってしまったのか、それとも彼の心の内で何かが切れてしまったのか、長谷部は妙に饒舌に腕の中の元審神者に言い募る。
長谷部は彼女の頬に手をやると、唇が触れそうなほどに近くまで、
その端正な面差しを近づける。腰にタオルを巻いただけの彼にそんなことをされて、元審神者は驚きと羞恥に頬を赤く染めてしまう。胸の鼓動もまるで早鐘を打つかのようだ。
けれど、そんなありさまだというのに、元審神者は長谷部から目を逸らせなかった。彼がそれを許さなかったからだ。長谷部は少女の頬に手を添えたまま、なおも切々と思いの丈を口にする。
「……他の刀剣たちになど目を向けず、俺のことだけを見て欲しいと、ずっと願っておりました。けれどもうあなたは俺や他の連中の主ではない」
主ではない、その言葉に元審神者は泣きそうな表情を浮かべるが、長谷部はそんな彼女に構わずに、熱に浮かされた様子で元審神者に言い募る。
「……この本丸の主は俺です。他の連中の面倒は全て俺が見ます。
あなたはもう俺以外の誰かに心を砕く必要はない。俺のことだけを気にかけてくれればいいんです」
「っ……!」
それはあまりにも長谷部らしい、真っ直ぐな告白だった。内風呂の湯船の熱さに当てられたのか、今日の長谷部は元審神者が違和感を覚えるほどに、次々と本音を吐露していた。そして、不意に長谷部の瞳の色が昏くなる。
「――俺は今から本当の意味で、あなたを自分だけのものにします。構いませんね?」
「っ、長谷部……」
彼女に成り代わり自らが主になったとしても、彼の本質は変わらない。自分が捨てられる不安、大切な人を失う恐怖にいつも苛まれている、内面に欠落と闇を抱えた哀れな青年だ。けれど、彼に真名を盗られている少女は、そんな長谷部を拒めない。
かねてより恋愛関係にあり、既に心を奪われていた。その上、真名まで盗られてしまったら、少女は愛しい彼とともに、どこまでも堕ちてゆく他はないのだ。
「……長谷部ではなく、主とお呼びください。愛しています。あなたは永遠に俺だけのものだ……」
長谷部の裸の胸に顔を埋め、聞き届けたその囁きは、元審神者たる少女にとっては、まるで破滅へのまじないのように思われた。
***
湯上りの二人は室内着代わりの単衣姿で、寝台の上にいた。
「――お召し物を脱いで頂けますか」
「……っ」
容赦のない主命に息を呑みつつも、元審神者は長谷部に命じられるまま着物の帯を解いてゆく。
すぐに行為を始めるつもりで、下着は身に着けていなかった。単衣の袖から腕を抜き、肩から落としてしまったら、一糸まとわぬ姿になってしまう。羞恥に躊躇う元審神者の指先は、帯を解き終えたところで止まってしまった。
彼に素肌を晒したことくらいもう何度もあるはずなのに、今回の情交が特別なもののせいか、なかなかその先に進めない。
「……ご自分で出来ないのであれば、お手伝い致しましょうか?」
しばらくの躊躇ののちに、しびれを切らした長谷部にそう急かされて、ようやく元審神者たる少女は、その身に纏う着物を肩から落とす。
真名を盗られた今となっては、元より長谷部の命に逆らうことなどできない。そうであれば、無理やり脱がされるよりも、自分で脱いだ方がましだった。薄暗い室内で、彼女の裸身がついに晒される。
まだ日の高い時間で、部屋の明かりを点けずとも室内の全ては見通せた。それは元審神者の裸体も例外ではない。豊かな胸の色づいた突端に、女らしくすっきりとくびれた腰部、脚の間の秘裂を隠す薄い下生えも全て、長谷部には見えているはずだ。
長谷部は少女の無防備な肉体の造形美を存分に堪能し、満足げな笑みを浮かべると、まるで彼女を挑発するかのように、卑しい欲望を口にする。
「……やはりお美しいですね。そのお姿をずっと眺めていたい」
「……っ!」
いかにそういう関係にあるとはいえ、男性に裸体を鑑賞されるのは恥ずかしく、元審神者の頬に鮮やかな朱が走る。
剥き出しの両胸も脚の付け根の下生えも、本当は両手で隠してしまいたいのに、今そんなことをすれば長谷部の不興を買いそうで、元審神者は両腕を体の横に下ろしたまま、長谷部の無遠慮な視線に、ただひたすら耐えていた。
恥ずかしくて仕方がない。けれど、愛しい長谷部の視線を感じるたびに、元審神者の裸身の最奥はどうしようもなく甘く疼いた。まだ触れられてもいないのに、その場所が熱を持ち、確かに潤ってゆくのがわかる。
少女の肉体は驚くほどに快楽に素直で従順だった。長谷部の視線の愛撫に応え、少女の乳房の突端は硬さを増し、ぷっくりとたちあがってゆく。
このような分かりやすい反応を長谷部が見逃すはずがない。自らの肉体のあまりの浅ましさに、いたたまれなくなった元審神者は長い睫毛を伏せるが、生理的な身体の反応を意志で制御できるはずもなく。長谷部の視線での愛撫によって自分自身の肉体が淫らに花開いてゆくのを、少女は止めることができずにいた。
限界まで固くしこった両胸の先端はもうむず痒いほどで、脚の間の秘裂も内腿を汚してしまうほどに愛液を溢れさせ、長谷部の侵襲を待ちわびていた。
今は脚を閉じているから秘唇の様子は知られていないけど、この様子では触れられたときに彼を喜ばせてしまうことは明らかだった。
ほんの数分ほど視姦されただけで、こんなにも見事な反応を示してしまう己の肉体を、元審神者は恨めしく思うが、そんな彼女とは裏腹に長谷部は上機嫌だった。
「……こんなにも麗しいあなたを俺だけのものにできるのが、嬉しくてたまりません」
恍惚に浸った表情で一糸まとわぬ姿の彼女を称える長谷部に、審神者はますます戸惑うが、長谷部は容赦なく彼女を追い詰める。
「……両手を出してください」
元審神者は長谷部に言われるがまま両手を差し出す。彼に真名を奪われた以上は彼の命令は絶対だ。しかし元より、少女は長谷部に逆らうつもりなどなかった。愛しい彼が望むことなら、何でも叶えてあげたかったからだ。
長谷部はどこからか金色の組紐を取り出すと、あまりにも自然に、彼女の両手首にそれを掛け、縛り上げた。若干の遊びを残しつつも、自力では外せないほどにしっかりと縄を掛けられ、元審神者は怯えを見せる。
元々は平和な現世で暮らしていた少女だ。手首を縛られるなど初めてのことで、相手が愛しい長谷部だとしても、やはり恐れを抱いてしまう。伏せた瞳を不安に泳がせ、元審神者は長い睫毛を瞬かせる。
「……怖がることはありませんよ。普段通りに、楽にしていてください」
「でも……」
長谷部は湯上りに着た単衣を着たままなのに、女の自分だけが裸で、しかも両手首を縛められているという異様な状況で、平静でいられるはずもない。
その上、これから自分たちが行おうとしているのはただの交合ではない。長谷部に身も心も捧げて、少女が人ならざる彼の眷属となる儀式としての交合だ。
「大丈夫ですよ。恐れることはありません。あなたは俺のただ一人の愛しいお方だ。何も心配せずに、俺に全てを委ねて下さい……」
うっとりと謳うようにつぶやく長谷部に、しかし元審神者は不安を消せず、それどころかさらなる恐怖を覚えてしまう。
しかし、長谷部の囁きは不思議な祝詞のようでもあり、あるいはまじないのようでもあり。元審神者は操られるかのように、こくりと頷いてしまう。
「はい……」
滑り出たのは了承の言葉だ。
古来より言霊信仰があるように、言葉には力がある。自らの真名を奪った付喪神とのやりとりには、拘束力が生まれてしまう。元審神者は自身の発した言霊により、自分自身をさらなる窮地に追い込んでしまう。
それを知る長谷部は口の端を上げて笑うと、再び別の紐を取り出し、彼女の裸の胴に掛けてゆく。
ところどころ柔らかな肉に紐が食い込むように加減しながら、長谷部は元審神者たる少女の裸体がより美しく淫らに見えるよう、彼女の全身に縄化粧を施した。
いわゆる菱縄縛りというものだ。元審神者の豊かな胸がさらに強調され突き出るように、少女の乳房の上下にはしっかりと縄が渡され、その喉元から下腹部にかけても、幾つもの多角形が網目のように美しく並んでいるが、全体としては手首以外の拘束はないに等しい、飾り縄だ。
拘束を目的としない、彼女の裸体をより淫猥に彩るための華やかな緊縛だったが、この縄掛けにはもうひとつ重要な意味があった。
元々何かを結ぶという行為は、万葉の昔から縁や絆の象徴だった。長谷部は人間の少女である元審神者を、自らが愛用する金の組紐で縛り上げ、交合により彼女の肉体に注ぎ込まれる自身の神気が、彼女の身体の外に逃げぬよう、強固な結界を作り出したのだ。
この状態で、長谷部の神気が彼女の四肢の隅々に満ちるまで交合を続ければ、長谷部は彼女を自らの眷属とすることができる。
長谷部は元審神者への縄掛けを終えると、余った紐を使い、武装姿の彼がいつも胸の前でしている、吉祥結びにも似た飾り結びを作った。
吉祥結びにも長谷部のあの飾り結びにも、永遠を象徴する結びが隠されており、長谷部の健気な願いを感じ取った元審神者は、その瞳を潤ませた。
「長谷部……」
「……お美しいですよ。もう終わりますから、あと少し我慢してくださいね」
寝台の上に座したまま、緊張に身体を強張らせている彼女をそう宥めて、長谷部は少女を仰向けに寝かせた。そして改めて一本の紐を取り出す。
それもまた金の組紐だった。けれどそれには、いくつもの大粒のトンボ玉が通されており、まるで首飾りのようにも見える。
その紐を手にし、長谷部は藤色の瞳を細めて淡く微笑むと。
「……ここも、縛めておきましょうか」
なんと長谷部は元審神者の脚の間に、首飾りのようなその紐を潜らせて、きつく結い上げてしまった。まるで下帯を締めるかのように、少女の陰部に紐を食い込ませてしまう。
「っ……!」
女性の秘所に縄を張ることによりその場所に刺激を与える、股縄と呼ばれている緊縛法だ。この縄掛けをされた途端に女性は従順になってしまうため、姫縛りや姫縄とも呼ばれている。
そして元審神者たる彼女も例外なく、頬を真っ赤に染めてすっかり大人しくなってしまった。先ほどまではことあるごとにごねていたのに、すっかり抵抗する気力を削がれてしまったのか、今は黙ったまま恥ずかしそうに、長い睫毛を伏せている。
長谷部はそんな彼女を改めて見下ろした。愛おしい女性が、美しい裸身に淫らな縄化粧を施されて、その秘部にまでいくつものガラス玉を通されたいやらしい紐を張られて、まるで供物のように自分の眼前に捧げ置かれている。
この人をこれから自分の気が済むまで好きにできるのかと思うと、それだけで長谷部の下腹部は興奮に怒張した。
「……これで完成ですよ。やはりあなたはお綺麗だ」
「っ、見ないでください……」
両脚を固く閉じて、羞恥に泣きそうになりながら、元審神者は長谷部に哀願するが、もちろん彼は取り合わない。
「……これまで見たどんな責め絵よりそそられます」
「っ……!」
「かわいらしくて、淫らで、――ひどいことをしたくなる」
まるで性感を煽るように、縄化粧を施された裸身を褒めてくる長谷部に、元審神者はいたたまれなくなり瞳を伏せる。
あまりにも恥ずかしく、せめてガラス玉を咥えてしまいそうになっている秘唇の様子だけでも隠そうと、元審神者たる少女は図らずも内股を擦り合わせるような仕草をしてしまう。
しかし、それにより元々きつく張られていた姫縄が、少女の秘所にさらに食い込み、縄に通されたいくつものトンボ玉が、彼女の恥ずべき割れ目の内側に入り込んでしまった。
「あっ……!」
反射的に、少女はガラス玉から逃れようと腰をくねらすが、それはむしろ逆効果だった。
彼女が腰を揺らすたびに、いくつものトンボ玉が彼女の秘唇の内側を転がり、ひんやりとした固いガラスの宝珠による刺激が、彼女の最も柔らかな部分に、次々と襲い掛かる。
「ああっ……!」
固いガラスの冷たく滑らかな感触は、興奮に熱く濡れた粘膜にはあまりにも心地よかった。
彼女は思わず甘やかなため息を漏らし、長谷部に見られているというのに、さらに大胆に内股を擦り合わせてしまう。
こりこりとした異物によるたまらない刺激に、長谷部の存在も忘れ、少女はさらなる快楽を求め、内股を擦り合わせながら、腰を左右に揺すり始めた。
「はぁ……っ、んっ……」
彼女がその身を揺らせば揺らすほど、淫らな縄と宝珠は彼女の秘所にさらなる快楽を与え、その場所のさらに深くに食い込む。
下の口に異物を含ませる快楽の虜となった元審神者は、自分自身をさらに追い立ててゆくべく、眼前に長谷部がいるというのに、たった一人で淫らな遊びに興じ始めた。
まだ、縄を掛けられただけで、その裸体を愛撫されたわけでもないのに、自ら発情しはじめた少女を見おろしながら、長谷部は喉を鳴らして苦笑する。
「……いやらしい方だ」
自分一人で性の興奮を追いかけて、いやらしく身悶えている姿を、
長谷部に見られているというのに、夢中で快楽を追っている元審神者は気がつかない。ただ、淫らな喘ぎを漏らしながら、自分自身を慰めることに没頭していた。
彼女が腰をくねらせ、内股を擦り合わせるたびに、いくつもの大粒のガラス玉が秘唇の内側を自在に転がり、金色の姫縄もまるで褒美を与えるように、彼女の秘裂を巧みに擦りあげ、元審神者をさらなる悦楽の深みに沈めてゆく。
女体の最も秘すべき場所を、異物を使って慰めるなんて初めてだった。固く冷たいガラス玉や紐による秘唇への刺激は、今まで経験したことのない快楽を、元審神者たる少女の肉体にもたらした。
女体の大切な部分を、このような道具を使って慰撫する大胆な性の営為は、元審神者にこれ以上ないほどの、背徳と被虐の興奮を与えていた。
自分自身の肉体の最も柔らかで敏感な場所を、自ら玩具にして遊ぶ愉しみに、元審神者は目覚めてゆく。ぴんと張った縄を食い込ませた彼女の秘裂からは、淫らな蜜が溢れに溢れ、彼女の内股や敷布をたっぷりと濡らし汚していた。
そんな彼女を見おろして、長谷部は嬉しそうにつぶやく。
「……お気に召して頂けたようですね」
「ッ……! 長谷部……!」
彼のつぶやきにようやく我に返った元審神者は、これまでの自分のあまりにも大胆で浅ましい振る舞いを思い出し、消え入りたいほどの羞恥を覚える。
ずっと秘唇に食い込む紐とガラス玉にばかりに気を取られて、長谷部が意識の外だった。元審神者は改めて長谷部を見上げる。
かつては一番の臣下で、今は自らの主人たる彼。自身の情人であることは、今までもこれからも変わりないけど、どうしてだろう、今の長谷部は元審神者が見たことのないような、なんとも形容しがたい薄い笑みを浮かべている。
何かを愛おしむような、蔑むような、温かく包み込むような、冷たく突き放すような。内面に闇と欠落とを抱える彼が、情交や戦闘のさなか垣間見せる、あの酷薄な笑みにも似た……。
昏い瞳で笑う長谷部は、まるで彼女の知らない男のようだ。これが荒ぶる祟り神としての彼の本性なのだろうか。
しかし、すぐに表情を戻した長谷部は小さく息を吐くと、単衣を着たまま、元審神者に覆いかぶさってきた。唐突に降り落ちてきた逞しい男の身体に、びくりと肩を竦ませる裸の少女の耳元で、長谷部は吐息交じりに囁いた。
「――さあ、始めましょうか」
***
「……はぁっ……んんっ……」
二人きりの褥を満たすのは、元審神者の甘い喘ぎだけだ。彼女は縛められた両手首を長谷部の左手に押さえつけられ、体の自由を奪われたうえで、その豊満な肉体の最も柔らかな部分を、長谷部に淫らに責められていた。
そう、先ほどからずっと、長谷部は元審神者の秘裂に掛けられた紐を引き、彼女の無防備なその場所を、好きに弄んでいたのだった。
「……ああっ ……長谷部っ」
下の口に縄や宝珠を咥えさせられ、その場所を巧みに嬲られるという、かつての臣下に辱められるような交合でありながらも、秘唇に異物を含ませる快楽に目覚めてしまっていた少女は、その倒錯した愛の営みに、たまらない心地よさを覚えていた。
これまでの彼との交合によって、被虐と隷属の快感を植えつけられていた元審神者の肉体は、無防備な秘唇を長谷部の手によって淫らに責め抜かれることに、深い悦びを見出していたのだ。
「長谷部…… ああんっ……」
快楽に瞳を潤ませながら恍惚の笑みを浮かべて、彼の名を呼ぶ元審神者に、長谷部は優しく諭すように言う。
「……主とお呼びください」
「っ……」
「さぁ」
「……っ、あるじさま……」
「そうです、そうお呼びください」
「ああっ…… あるじさまぁ……」
元審神者が長谷部を主と呼び、彼に縋ったその瞬間。長谷部はまるで少女に褒美を与えるように、彼女の秘裂に張られた紐を、ひときわ強く引っ張った。
その場所にぴんと張られた紐は、元審神者の柔らかな下の唇のより深くまで食い込んで、少女はあられもない声を上げ、縄化粧を施された白い裸身をびくびくと痙攣させる。
紐に通された大粒のトンボ玉も、まるで狙いすましたように、彼女のぷっくりと膨れた陰核を蹂躙し、元審神者をさらなる高みに押し上げる。
「あるじさまぁ…… ああんっ……」
硬いガラス玉で陰核を責められるなんて、少女にとっては初めてのことだった。しかし、長谷部の手綱さばきはあまりにも見事で、めくるめく快楽の虜となってしまった少女は、いとも容易くその理性を手放してしまう。
紐やガラス玉といった異物を使っての秘唇への愛撫に、少女はすっかり心を奪われ、完全に没入してしまっていた。
今や少女の心は、あまりにも淫らで大胆な空想に満たされていた。彼女の脳裏には、自分自身の秘裂の上を自在に転がるガラス玉や、その奥の小さな入り口に次々と挿入されてゆく大粒の宝玉、あるいは自ら意志をもって彼女の陰核をくりくりと責める、硬質で清らかな宝珠など、様々なものが浮かびあがり、その空想は彼女の秘唇の最奥をさらに熱く潤した。
たまらなくなってしまった元審神者は、ひときわ甘やかに喘ぐと、ゆるゆると首を左右に振りながら、さらなる快楽を求めて、より大胆に内股を擦り合わせ、長谷部の手綱さばきに合わせて、腰をくねらせはじめた。
そのあまりにも素直で破廉恥な姿は、彼女を視姦する長谷部をよりいっそう楽しませた。
……自分自身の秘裂や陰核を異物によって責め抜かれる、この背徳と被虐の悦楽をもっと味わってみたい。さらなる快楽の深みに堕ちてゆきたい……。
行為の虜となってしまった元審神者は、無意識のうちにそんなことを願ってしまう。
理性も羞恥も、既に奪われてしまっていた。今や彼女の肉体に残っているのは、この上もなく浅ましい性の欲求だけだった。自身の肉体がしきりに訴えるそれを、羞恥を失った元審神者はあまりにもあっさりと口にしてしまう。
「あるじさま…… もっと……」
「……もっと、どうされたいのですか?」
「もっと…… ガラス玉で」
自身の陰核を愛されたいのだと、潤んだ瞳で懇願してくる元審神者に、長谷部は満足げに笑う。物欲しそうな顔で淫らな願いを言葉にする快楽に従順な彼女に、長谷部はさらなる愛おしさと征服欲とを呼び起こされる。
……この可憐な人の大切な場所をもっと可愛がって、苛め抜いてやりたい。この人をもっと大胆に乱れさせてみたい……。にわかに加虐心を呼び起こされた長谷部は、喉を鳴らして笑った。
「……素直な方ですね」
そうとだけ口にして、彼女の秘裂に渡されたその縄から手を離すと、愛しい人のたっての願いを叶えてやるべく、長谷部はゆっくりと身体を起こし、彼女の脚の間に陣取った。ほっそりとした白く美しい二本の脚を限界まで大きく広げさせる。
彼女の無垢な秘唇は、さきほどまでの丹念な愛撫で、既に熟しきっていた。長谷部は愛くるしいその場所の様子を、ここぞとばかりにじっくりと鑑賞する。
二枚の肉の花弁は愛液で濡れ光り、さらなる愛撫と刺激を求めひくひくと震えていた。中央の意外なほどに大きな裂け目には、淫らな紐がぴんと渡され、淫らな渓谷の深くまでしっかりと食い込んでいる。
紐に通されたいくつものガラス玉も、少女の性器を大胆に彩り、彼女の全身に施された菱縄縛りの縄化粧と相まって、今の元審神者は、これ以上ないほどに淫らな女奴隷か、自らの主人に腹と性器を見せた服従の姿勢を取る雌犬のようだった。
長谷部はそんな彼女の痴態を存分に堪能すると、ついに彼女の陰核に重なるトンボ玉を、その指先でしっかりと捉えた。
***
「ああッ……!」
ようやく訪れた快楽にひときわ甲高い喘ぎを漏らし、はしたなく身悶える元審神者を見おろしながら、長谷部は彼女を容赦なく性の高みに押し上げてゆく。
巧みな指遣いで少女の陰核の包皮を剥き、これ以上ないほど無防備になった彼女のそこを、長谷部は美しくも硬質な大粒の宝珠でたっぷりと嬲ってやっていた。
元審神者は縄の掛かった秘裂から歓喜の蜜を溢れさせ、かつての下僕であり現在の主人である長谷部に、今まさに淫らに征服されようとしていた。
一糸まとわぬ豊満な肉体を菱結びに緊縛され、秘すべき裂け目にまでいくつもの玉を通した紐を張られて淫猥に整えられた裸身を、長谷部に存分に愛玩され、いたぶられている元審神者は、まるで伝承に伝わる哀れな人柱のようだ。波打ち際の巨岩に裸で縛められ、怒れる神々の手により魔物の生贄とされそうになった人間の女性。
今の元審神者もまた、人身御供――神嫁として、その無垢な肉体を長谷部に捧げ、彼に蹂躙されていた。
いかに彼女が長谷部のかつての主であったとしても、真名を盗られた以上は彼に服従するほかなく、今や元審神者の少女は長谷部に、その美しい裸身の全てを淫らに使役されていた。
豊かな乳房や潤んだ秘唇に縄を掛けられ、性器を異物で愛玩され、目くるめく背徳の悦楽をその肉体に教え込まれ、乱れ悶えるさまを視姦され続けている。
「――もう充分、潤いましたね」
やがて、長谷部は薄い笑みを浮かべ彼女の秘裂から指を離すと、
ついに自身の単衣を脱ぎ捨てた。生まれたままの姿に戻った長谷部は、彼女のそこに渡された縄を解くと、固く充血しきった下腹部の楔を、彼女の秘唇に宛がった。
「っ、長谷部……」
「行きますよ」
「来て…… 早く……」
手首を縛められたまま、両脚を大きく広げて、元審神者は潤んだ瞳で長谷部を呼ぶ。彼女もまた存分に濡れたその場所に、長谷部の灼熱の楔が打ち込まれるのを待ちわびていた。
彼女に望まれるままに、長谷部は少女の秘唇に張り詰めた自分自身を差し入れる。少女のそこはいっそ拍子抜けするほどすんなりと、限界まで張り詰めた長谷部自身を受け入れた。
「……ああっ ……ああ」
固く充血しきった長大な長谷部の肉棒を、その場所にずぶずぶと沈められながら、元審神者は菱結びに緊縛された肉体を歓喜に震わせた。
股縄だけは解かれたものの、未だに元審神者の両の手首や胴は金の組紐で縛められ、彼女は身体の自由を長谷部に奪われたままだった。それでも女体の最奥に存在する欠落を、愛する男に埋めてもらえた喜びからか、元審神者は焦点を失った瞳を細め、満ち足りた笑みを浮かべながら、うっとりと喘いだ。
今まさに全ての欠落を埋められて、心身を充足させた彼女は、甘やかな至福のただ中にいた。そして長谷部もまた彼女と同じ想いに浸っていた。
「――ああ、夢のようだ。これでようやくあなたを俺だけのものにできた」
これまで渇望し続けていたものを、ようやく手に入れることができた。このまま交合を続け、彼女の四肢の隅々まで自身の神気を行き渡らせて、秘裂の最奥に吐精すれば、元審神者を自身の眷属にすることができる。
積年の悲願の達成を前に、長谷部の背筋に歓喜と興奮の震えが駆け抜ける。
「……愛しています。――様……」
長谷部は陶酔のただ中で恋しい人の真の名をつぶやくと、彼女の細い腰をしっかりと掴み、僅かに持ち上げた。
肉体に縄を食い込ませ、互いの真名を呼びあいながらする交合は、想像を絶するほどの快楽を、絡み合う二人にもたらしていた。今回の情交はこれまでよりもずっと、心身の深くで繋がりあえているような気がする。
手首の縄だけを解かれた元審神者は、長谷部の首の後ろに腕を回し、彼女の秘唇の最奥を彼自身で穿つ長谷部に、縋りつくように抱きついていた。長谷部が彼女のそこに腰を打ちつけるたびに、元審神者はあえかな声を上げ、彼自身をきゅうきゅうと締めつけていた。
彼女への愛はあっても酷薄な長谷部は、元審神者の全てを自分自身のものとするべく、容赦のない抜き差しを繰り返し、彼女の肉体の隅々まで自らの情欲と神気を注ぎ込んでいた。
長谷部の律動はかつてないほどに激しく、彼女をどこまでも追い上げ、その全てを欲望の炎で焼き尽くしてしまうかのようで。それはあまりにも彼らしい支配と征服の仕方だった。どこまでも自分自身の欲求や願いに忠実で、狙った獲物を決して逃がすことはない。
そう、彼が忠実なのはあくまでも自身の欲望に対してだった。今の長谷部にとっては、元主人の彼女よりも、自身の望みを満たすことが重要だったのだ。
純度の高い歪な忠誠心は脆く壊れやすそうでいて、その実はずる賢く強かだった。
今も高慢で独りよがりな情交で元審神者を散々に凌辱していながら、長谷部はこの期に及んでもなお、まるで彼女に縋るように、元審神者の少女の真名をうわごとのように繰り返していた。
胸の内に欠落と闇を抱えながらも懸命に、元主人の愛を乞う長谷部に、絵物語で語られる恋に狂い破滅してゆく哀れな男の姿が重なり。そんな長谷部の姿に、彼を愛する元審神者は、いとも容易く絆されてしまっていた。
「……っ」
彼女のこめかみに一筋の涙が伝う。いじらしい彼が哀れで、どうしようもないほどに愛おしい。
惚れた弱みとはこのことだ。その弱みにつけこまれ、ついに自分はこれまで過ごした現世を捨て、人ならざる者に身を落とすことになってしまった。
祟り神と化した、かつての臣下であり情人でもあった男に仇なされ、今まさに彼に全てを奪われようとしている。
「……さぁ、どうか俺を求めてください。――様……」
狂気すら孕んだその囁きに、しかし、元審神者は肉体の最奥を熱くする。たとえ全てを失うことになっても、愛する彼に求められることこそが、哀れな少女の幸福だった。
彼に乞われるがまま元審神者は、長谷部の望む言葉を口にする。
「長谷部…… 私を永遠にあなただけのものにして……」
この瞬間に、言霊によるまじないが完成してしまう。それは彼女の意志では決して破ることのできない、永遠の呪いでもあった。
真名を呼ばれて求められ、それを了承してしまえば、その永久の呪縛が成立してしまうと知っていたのに、元審神者は長谷部の求めに応じてしまった。
彼女の言葉を聞き届けた長谷部は、満ち足りた淡い笑みを浮かべると、この儀式の最後の仕上げとして、彼女と自分自身とを性の頂点へ導くべく、再び律動を速めていった。
そしてついに、その瞬間が訪れる。
「あああっ……! 長谷部……!」
長谷部のものを濡れた秘裂に咥えこんだまま、元審神者は悦楽の頂点を極めてしまう。彼女の秘唇はひと息に収縮し、充血しきった長谷部自身を、ぎゅうぎゅうときつく締めあげる。
「っ……! は……」
少女の肉体に促されるまま、まるで搾り取られるように、長谷部は自分自身の全てを彼女の中に吐き出した。
「っ、主……! ――様……!」
元審神者を主と呼び間違えながらも、長谷部は続けざまに少女の真名を口にして、逞しい裸の腕で彼女を強引に掻き抱く。
――ついに堕とされてしまった。自分はやがて人ではなくなり、彼の眷属となるのだろう――
自身の肉体の最奥で長谷部自身が脈打つのを感じながら、少女は朦朧とした意識の中でそんなことを思うが、しかし彼女はこれ以上ない幸福に浸っていた。
情に流されるまま真名を奪われて、四肢の隅々まで長谷部の神気で満たされて、ついに自分は永遠に彼に囚われて生きることになってしまった。
しかし、長谷部を愛する元審神者にとっては、それこそが無上の喜びだった。
愛する人の唯一無二の存在として、永久に共に在ること。それは刀剣時代に主人に捨てられた来歴を持つ長谷部が渇望し、焦がれ続けた願いでもあったが、同時に元審神者たる少女の切なる望みでもあった。
愛する存在との永遠の絆を追い求めてしまうのは、神であろうと人であろうと、きっと同じだ。誰かを愛する心があれば、きっと誰もが願ってしまう。たとえそれが、決して叶わぬ夢まぼろしであろうとも。
***
儀式としての交合を終えてから。元審神者の少女は、ようやくその身体から全ての紐を外されて、生まれたままの姿に還り、長谷部の腕に抱かれていた。絶頂の余韻で意識を濁らせたまま、彼のうわごとのような囁きを聞いている。
「俺は幸せです…… 主…… やっとあなたを俺だけのものにできた……」
全てを長谷部に捧げ、人の身体すらも失った自分は、もう彼の主人でもなければ敬う価値もないと思うのに、それでも自分を崇めるような言葉を口にする長谷部に愛を感じて、元審神者は再び瞳を潤ませる。
こんなにも執着されて求められることが嬉しく、だからこそ、そんな彼の想いに応えたいと願ってしまった。
元審神者はその小さな手のひらを、長谷部の大きな背に回す。小刻みに震える肩口に彼が泣いていることを知った彼女は、まるで怯える子犬を宥めるように、その鈍色の髪を優しく撫でた。
どれくらいそうしていただろうか。肉体の最奥から再び沸き立つ欲求を感じ取り、少女は長谷部に行為の続きをしたいとせがんだ。何かに操られるかのように、浅ましくも素直な言葉を口にしてしまう。
つい今しがたまで行っていた異物や縄を使った享楽的な情交で、失ってしまった理性や羞恥は未だ取り戻せていないのか、元審神者は長い睫毛を伏せてその頬を、長谷部の胸に摺り寄せた。
愛する男にすがり甘える情婦のようなその仕草は、彼女が今なお快楽の余韻に囚われて、さらなる刺激を求めている証左でもあり、そんな彼女に長谷部は藤色の瞳を眇めて笑んだ。
「ええ…… あなたの思うままに」
その後の長谷部と元審神者の交わりはあまりにも奔放で自由だった。全ての縄を外された少女の生まれたままの肉体は、どこまでも伸びやかで、長谷部の愛撫に呼応して柳の枝のようにしなり、あるいは美しい魚のように跳ね、淫らに痙攣した。
長谷部の迸る欲求をその身体の全てを使って受け止めながら、少女は無防備な裸身を弓なりに反らせて、ひときわ華やかな声で喘ぐ。
今も彼女は長谷部の身体の上に跨って、快楽に瞳を潤ませながら、愛する男の肉棒に貫かれる幸福を貪っていた。
「ああっ…… ああ……」
嫣然と微笑みながら、薄く開いた唇から甘い喘ぎを漏らして、何かにとりつかれたかのように夢中で腰を揺らす彼女は、本能のままに振る舞う美しい獣そのものだった。理性も羞恥も長谷部の手によって奪われて、あまりにも淫猥で大胆な姿を彼の眼前で披露している。
金の組紐を食い込ませていた箇所に薄赤い痣を残した裸身が乱れに乱れ、元審神者は自身の痴態を長谷部に見せつけるかのように、存分に喘いだ。
そして。いつしか彼女の裸体は、内側から淡い光を放ち始めた。神の嫁となり、人でなくなったからだろうか。緊縛の痕跡が残る無垢な肉体は、この上もなく淫らでありながらも、全てを受け入れ包み込む聖女のような神々しさを、見るものに感じさせていた。
しかしながら、その裸身のあらゆる部分に紐を張られた痕を残し、情交に耽る彼女はやはり、春画や責め絵に描かれる淫猥な女奴隷の姿と重なり、聖と性という相反する二項を同時に体現する彼女は、まるで聖娼のようでもあった。
今や少女は長谷部にのみ隷属する娼婦となり、長谷部もまたそんな彼女を愛玩する主人となり、かつての臣下たる長谷部に、元審神者は自ら進んでその裸身を捧げていた。
無垢な肉体を彼に玩具のように使役され、淫らに酷使され、浅ましい蜜を溢れさせる秘唇に様々な快楽を教え込まれて、少女は長谷部の手によって自身の肉体を、この上もなく淫らに作り替えられていく。
しかし、本能に根差した欲求と被虐の快楽の虜となっていた彼女は、長谷部の支配を素直に受け入れた。そんな元審神者はさながら、彼のためだけに生きる、永遠の虜囚のようにも見えた。