へしさに
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恋戦記は現在一部のお話のみヒロインの名前変換可です薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
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「――へっへ~~! どうだ、いいだろ~~」
離れたところから聞こえてきたのは、自分の同僚でもある不動行光の得意げな声だった。
この本丸の近侍たるへし切長谷部はげんなりとしながらも、声のほうに足を向ける。
(……ったく、あいつは何をやっているんだ……)
自慢話は不動の悪癖だ。他愛も実害もないそれは、本来であれば無視が一番なのだろう。しかし、生真面目な長谷部はそれができない。
この本丸の近侍である自分にとっては、主に仕える他の刀剣たちの日頃の行いを把握しておくのも、業務の一環なのだと心の内で言い訳をして、長谷部は不動に声を掛ける。
「――何をしている、不動行光」
「へし切!」
目を丸くする不動の隣にいたのは、薬研藤四郎と宗三左文字だった。彼らもまた驚いた様子で口々に長谷部を呼ぶ。
「……長谷部」
「長谷部……」
不動は本丸の濡れ縁に腰を下ろして、薬研と宗三を捕まえて、やはりいつもの自慢話をしていたようだ。
不動を囲む二人のどことなく疲れた様子から、長谷部はそれを察した。
「……不動! お前はいつも」
反射的に小言を繰り出そうとした長谷部の機先を制するように、不動は得意げに胸を張る。
「いいだろ、へし切! この髪留め、主から頂戴したんだぜ!」
自らの髪に飾った淡い色の房飾りのついたそれを指差しながら、不動は「どうだ参ったか!」と言わんばかりの笑みを浮かべる。
確かにそれはこの本丸の主たる少女が、よく身につけていたものだ。
あの髪留めをつけて微笑む彼女の可憐な姿が長谷部の脳裏に蘇り、長谷部はつい不機嫌そうに瞳を細め、眉間に皺を寄せてしまう。
見せつけられて腹が立たないわけがない。
(……どうして俺じゃないんだ……)
女物の髪留めなど貰っても仕方がないと分かっていても、長谷部はそう思わずにいられなかった。しかも相手があの不動行光であれば尚のこと。
けれど、そんな長谷部の様子に気がついていないはずがないのに、不動は自慢をやめなかった。追い打ちをかけるように言葉を続ける。
「いつも身に着けてたお気に入りのものを下さったんだ。これって相当のことだろ!」
「っ、おい不動……!」
また恒例の口喧嘩が始まって、巻き込まれたらたまらない。薬研は焦った様子で不動を窘めようとするが。
しかし、長谷部は冷静だった。下らないとばかりに鼻を鳴らして笑うと、不動をきっちりと牽制する。
「それより、お前は今日の炊事当番ではなかったのか。山姥切国広が探していたぞ」
「っ、しまった!」
不動は慌てて立ち上がる。時刻はちょうど夕餉の支度が始まる頃合いだった。空の端は薄赤く染まり、夜の訪れが近いことを告げている。不動は焦った様子で、ばたばたと厨房に駆けて行く。
不動を追い払ってから改めて、長谷部は薬研と宗三に向き直ると。
「お前たちもこんなところで油を売っていないで、とっとと持ち場に戻ることだな」
そう言い捨てて、その場を後にする。
紫のカソックと金色のストラの裾を翻して去りゆく長谷部の背を、しかし、薬研と宗三は意外そうな面持ちで見送った。
「……長谷部って、やっぱり変わったよな」
「ええ、そうですね」
堅物で短気なその後ろ姿が見えなくなったのを見届けて、残された二人は彼のことを噂しあう。
前は真面目すぎるほど真面目で心が狭くて、やってきたばかりの不動とよく揉め事を起こしていたけど。主から近侍を拝命してしばらくたった今は、随分と心が広くなった。
その生真面目な性質は変わらないけど、心なしか振る舞いに余裕が出てきたと思う。
決して自ら口にすることはなくとも、以前の主に捨てられたことを長らく引きずって、その劣等感にも似た情念から、この本丸の主たる審神者の一番になることを誰よりも欲していた長谷部。
そんな彼が、名実ともに主の最もそば近くに仕える近侍に拝命された喜びは、いかほどのものであったのか。
積年の悲願が叶えられた今、長谷部の言動に多少なりとも余裕や落ち着きが出てきたのは、当然のことなのかもしれない。
長谷部の渇いた心が癒されつつあることに安堵しながら、薬研と宗三はこの本丸の主たる審神者のことを思い出す。
彼女はとても美しく、愛情深い女性だった。本丸の刀剣たち皆をとても大切にしてくれていて、刀剣たちもまたそんな主に報いようと、それぞれ日々の鍛錬に励んでいた。
不動が顕現した当初はぎくしゃくとしがちだった織田の刀たちが、今やこんなに和気藹々としているのも、ひとえに彼女の存在があってこそだったのだ。
***
「――本日もお疲れ様でした、長谷部さん。今日は何か変わったことなどありましたか?」
「いえ、特には……」
「そうですか。それなら良いのですが」
夜半。審神者に呼ばれた長谷部は、彼女の私室で今日一日の出来事を報告していた。
本日、審神者は政府関係者との会議により、終日留守にしていた。そんな彼女に今日の本丸の様子を伝えるのも、近侍たる長谷部の大切な務めだった。
もう夜も遅い時間のせいか、審神者は湯あみを済ませたばかりのようで、淡い色の単衣に、艶やかな長い髪を結わえることもせずに、片方の肩に流していた。
普段の彼女は長い髪を後ろでひとつに結んでいた。日中はきつく結い上げられているその髪が、おろされている様はとても新鮮で、洗いたての髪の艶やかさも相俟って、長谷部は彼女に見惚れてしまう。
(……相変わらずお美しい)
今日一日会えなかったからか、今宵の審神者はより一層麗しく見える。
淡く火照った白い肌も得も言われぬ色香を放ち、その無防備な姿はまさに、恋しい人と寝所に入る直前の女性の姿そのもので。
そんな彼女にあてられてしまった長谷部は、胸に秘めておくつもりだった言葉をうっかりと口にしてしまう。
「しかし主、なぜ不動に……」
「不動さんが、どうかなされたんですか?」
「いえ……。髪飾りなど、男には不要なのではと思いまして」
夜、寛いだ姿の彼女と居室で二人きりという状況に油断したのか、長谷部は自らの台詞に刺々しい響きをにじませてしまう。しまったと思ったときにはもう遅い。これではまるで絵にかいたような女々しい男だ。
自分の狭量さに臍を噛みながら、長谷部は彼女から視線を逸らす。自らの未熟さが呪わしい。今更このような嫉妬などこの人には見せたくはなかったというのに。白手袋をはめた手を握りしめ、畳の目を見つめながら、長谷部は悔いる。
「……髪飾り?」
審神者は一瞬だけきょとんとした顔をするが、すぐに合点がいったようで、柔らかな笑顔を見せると、長谷部に面を上げるように促した。そして、彼を安心させるべく事の次第を口にする。
「……あれは不動さんにどうしてもとせがまれたので、差し上げたんです」
あの髪飾りは頂きものではなく、なんと奪い取ったものだった。長谷部は話が違うとばかりにいきり立つ。
「ッ、不動……!」
あまりにもいい加減な仲間に対する怒りに、長谷部は拳を握りしめる。白手袋の生地が擦れて小さな音を立て、そこまでの怒りを見せる長谷部に、審神者は驚きと呆れが入り混じった顔をする。
「もう、そんなことで怒らないでください」
あまりにも分かりやすい、直情的な長谷部を宥めながらも、しかし審神者は不意に頬を染め、柔らかな笑みを浮かべる。
「……あなたには、もっと大切なものを差し上げたじゃないですか」
「――ッ!」
誰よりも大切な主のその言葉と可愛らしい微笑みに、長谷部は呼吸を忘れる。
その心に蘇るのは、彼女と初めて身体を繋げた夜のことだ。彼女から想いを告げられた数週間後の月の美しい夜に、長谷部は自らの主たる審神者と男女の一線を越えたのだった。
長い間恋い焦がれ何よりも欲していた主君の特別の座を、敬愛する主に望まれることによって手にできた喜びは、長谷部の生い立ちからくる劣等感や胸に抱えた苦しみを、癒して余りあるものだった。
そう。この本丸の大勢の刀剣たちの中からただ一人、自分は選ばれたのだ――。
女々しいとなじられようとも、かつての主に捨てられた過去に未だ囚われる長谷部にとっては、愛する主人に選ばれて他の刀剣たちからただ一人優越できた喜びは、何物にも代えがたいものだったのだ。
そんな長谷部の心中を知ってか知らずか、審神者は頬を淡く染めたまま気恥ずかしそうに微笑むと、おもむろに声を潜める。
「……差し上げたというよりは、貰って頂いたといった方が正しいかもしれませんね」
その愛らしいはにかみ笑顔に、長谷部は心を掴まれる。
「主……」
まるで野に咲く花のように可憐な人だ。
この愛くるしい笑顔を見せられて落ちぬ男はいないだろうと、長谷部は改めて愛しい主への思慕を新たにする。
そして、そんな彼女に。
「……あなたさえよければ、今宵もこちらで過ごしませんか?」
大胆な誘いをかけられて、長谷部は再び息を詰める。
「……っ!」
夜も遅い時間に呼び出されたこともあり、こうなることは予想の範疇だったが、いざ彼女の方から切り出されると、まるで初心な少年のように狼狽えてしまう。
相手は両想いの恋人、しかも可憐な少女のような人だというのに……。
日頃から「主のためなら何でもこなす」とことあるごとに嘯いて、汚れ仕事も平然とこなす長谷部だったが。心の内に純なところのある彼は審神者から夜伽を命じられるたびに、このような無防備で素直な振る舞いを見せていた。
愛しい彼女の肉体に触れることを許される喜びと、自分自身が必要とされる嬉しさに。主人に求められることを何よりの幸福とする長谷部の心は打ち震えるのだ。
――そう、出陣ではなく夜伽の命であろうとも。誇り高き刀剣の付喪神たるへし切長谷部は、敬愛する主人のために喜んでそれに応じていた。
「はっ……。主の命とあらば」
美しい藤色の瞳を細めて、その白手袋をした手を胸に当て。長谷部は彼らしい慇懃な笑みを浮かべる。
***
乱れた褥で一糸まとわぬ白い体を配下たる長谷部に愛されながら、審神者はこれまでの彼とのことを思い出していた。
誘いをかけたのは自分からだった。長谷部のことがどうしても好きで諦めきれなくて、自分からこの道に引きずり込んだのだ。
気持ちを告げることで生真面目な彼に軽蔑されるかもしれない恐怖はあったけど、彼が自分に向けてくる視線に熱いものが覗いていることに気づいていたから、審神者たる彼女は勇気を出して長谷部に想いを告げたのだった。
それがまさかこんなことになるとは、思っていなかったのだけれど……。
二人きりの閨房で見上げる恋人は、今宵もまた荒々しい男の貌を見せていた。
「――次は何を致しましょうか」
酷薄な笑みを浮かべながらそう口にして、スタンドカラーのシャツを脱ぎ捨てる長谷部に、審神者はこれから始められる営為への期待に、肉体の最奥をじんわりと潤す。
「っ…… 長谷部……」
長谷部を見上げる審神者は、既に一糸まとわぬ姿だった
「他ならぬあなたの命とあらば、何でも叶えて差し上げますよ」
ストラやカソックはもちろんのこと、カマーバンドや白手袋も外した半裸の彼に見おろされながら、そう囁きかけられるこのひとときが、審神者は堪らなく好きだった。
主人への恭順をことさらに誇示しながらも、その実はこんなにも傲岸で嗜虐的な、彼が愛しくてたまらない。
ずっと俯いていたせいで流れ落ちてきた鈍色の前髪を、長谷部は薄明りの中でかきあげる。そんな姿もまた、審神者の瞳には男らしく蠱惑的に映る。
「……どんな淫らなことでも構いませんよ。御随意にどうぞ」
いかにも楽しげに笑って、、慇懃な物腰でこちらを煽るような言葉を口にする不遜さも彼らしく、審神者は羞恥に息を呑む。
「……っ」
普段の長谷部も物言いは丁寧ながらも、どこか傲慢さを漂わせているけれど。二人きりの閨での彼は、日頃隠そうとしている高慢さを、むしろ審神者に見せつけてくる。
けれど、昼間の彼とは全く違う、男としての欲望と本性をむき出しにしている今の長谷部にもまた、審神者はどうしようもなく魅せられていた。
堅物で誇り高い彼が綺麗事の鎧をはいだ獰猛な本性を、自分だけに見せてくれていると思えば、嬉しさと喜びとで心が震えた。
日頃の潔癖で高潔な彼も、愛の営みのさなかの淫らな加虐趣味溢れる尊大な彼も、審神者は同じほどに愛していた。
けれど『次に何をして欲しいか』だなんて、そんなふうに尋ねられて素直に答えられるはずもなく、審神者は羞恥と戸惑いに瞳を揺らし、長谷部から視線を逸らした。
しかし、そんな彼女を長谷部は執拗に追い詰める。
「……ほら、ちゃんと口にして頂けないと分かりませんよ?」
分からないなんて嘘だ。聡い彼は自らの主が何を望んでいるかくらい言われずとも察せるはずで、ただ、淫らな言葉を少女たる審神者に口にさせたいだけなのだ。
その証拠に、長谷部は今も実に楽しそうな笑みを浮かべている。
彼が戦いのさなかに垣間見せる酷薄な笑みとは似て非なる、倦んだ熱と高揚感を瞳の奥に覗かせた不敵な笑みは、可愛らしい獲物をいたぶって楽しむ、残酷な捕食者のそれだった。
今の彼は刀剣ではなく、本能に根差した衝動に突き動かされているただの男だ。その振る舞いのあまりの自然さに、審神者自身も長谷部との交合のさなかにあっては、彼が刀剣の付喪神で自分がその主だということを忘れてしまう。
そんな彼に向かって、審神者は無言で両腕を伸ばす。彼女が何も口にせずとも。長谷部は審神者の願いをすぐに察して、一糸纏わぬ彼女を抱き起してやる。
審神者は満ち足りた様子で淡く微笑むと、無垢な身体で半裸の長谷部に抱きついた。
長谷部も彼女の裸の背に腕を回し、二人は座したままじっと抱き合う。
長谷部の厚い胸板に、審神者の豊かな乳房が形が変わるほどに押しつけられて。やがて呼吸が苦しくなったのか、あるいは興奮のためなのか、審神者は熱く荒い息を吐く。
彼女は長谷部の胸に自身の乳房を押しつけたまま、彼の耳元で何事かを囁きかけた。
先ほど彼に尋ねられたことだ。どのようにして愛されたいか。
彼に求められるまま、自分の肉体が欲するままに、ため息混じりで彼女が口にした願いは、あまりにも浅ましいものだった。しかしそれに満足したのか、長谷部は表情を緩めて吐息のみで短く笑う。
愛する主人に求められることは、長谷部にとっては何にも代えがたい喜びだ。それは夜伽のさなかでも変わらない。
長谷部は薄い笑みを浮かべたまま、審神者をその片腕に抱いて自ら敷布に倒れこむ。
彼女を押し倒すのではなく、彼女の身体が自分の上にくるように、長谷部は座した姿勢から、自身の背が敷布につくようにして横たわった。
「……さぁ、始めてください」
ズボンの前を寛がせ、自らの屹立した猛りを取り出して長谷部は審神者を促した。彼女はこくりと頷いて、彼のそれを愛撫するべく自ら体の位置を変える。
***
仰向けになった長谷部の上に覆いかぶさった審神者はただ一心に、固く反り返った彼自身を口いっぱいに頬張っていた。寝そべる彼の下腹部に自身の頭部がくるようにして、恍惚に浸った様子で口淫に耽っている。
すでに二人とも一糸まとわぬ姿で、長谷部と審神者を隔てるものは何もなかった。
「はあっ…… ん……」
充血し、固くたちあがった彼のものを深くまで咥え込むたびに、審神者の瞳はうっとりと潤む。
自分の下に横たわる長谷部に、脚の間の秘裂を舐めあげられながらの口淫だ。上下の口を同時に長谷部に満たされて、審神者は肉体の充足と被虐の興奮がないまぜになった、淫らな幸福の虜となっていた。すっかり感じ入ってしまい、自ら抜け出すことができないほどに耽溺している。
審神者と長谷部が興じていたのは、四十八手でいうところの二つ巴だった。長谷部もまた興奮に瞳を眇め、自分自身をよりいっそう硬くしながら、口元に押しつけられた彼女の剥き出しの秘裂に、丹念に舌を這わせていた。
肉色の花弁のような陰唇を押し開き、潤んだ裂け目を舐めてやりながら、長谷部は彼女の秘裂の上端にある突起を、丁寧に指先で刺激する。
やはりそこは深く感じてしまう場所なのか、下肢の突起に触れられるたびに、審神者は長谷部の猛りから口を離して悶えてしまう。
熱を帯びた甘い喘ぎを漏らしながら切なげに眉を寄せ、審神者は先ほどまで自分自身が口にしていた、長谷部の肉体の昂ぶりを見つめた。
本当は愛しい彼のものをずっと口にしていたいのに、自分自身の秘裂への愛撫があまりにも心地よくて、口を離してしまったのだ。彼の大切なものに歯を当ててしまいたくはない。
「っ…… 長谷部……」
彼の昂ぶりへの愛撫を邪魔された憤りからなのか、あるいは自身の秘裂への愛撫の心地よさのためか。
審神者は非難めいた声を上げると、熱い息を漏らし、長谷部の下腹部に顔を埋めた。彼の反り返った猛りに頬を摺り寄せて、瞳を閉じて甘く悶える。
そんな審神者の様子に長谷部は満足げに笑うと、彼女の裂け目への愛撫の合間に、密やかに囁きかけた。
「……そのままでいいですよ。そのまま、感じていてください」
けれど、そのときに。長谷部のため息のような呼気が、審神者の濡れた秘裂に当たってしまう。彼女は切なげな声を上げ、真っ白な裸身を跳ねさせる。
「ああっ……」
たしかな熱と湿度を孕んだ風のような刺激がたまらない。艶やかな低い長谷部の声にも、どうしようもなく感じてしまう。
「……可愛いですよ。そのまま、あなたは俺に愛されていればいいんです」
そこまで口にしてから、改めて。
「ね……?」
長谷部は審神者の濡れたその場所に、ふっと息を吹きかける。
「やっ……!」
審神者はひときわ甘い喘ぎを漏らし、まるで一匹の魚のように大きく身体を跳ねさせる。
長谷部の裸の肉体の上にうつ伏せで寝そべっているから、審神者の身体の反応はたとえどんなに小さなものでも、彼に伝わってしまうのに。
そんな中で、これ以上ないほど素直で分かりやすい反応を示してしまい、審神者の頬にさっと朱がさす。
薄明りの中、長谷部に自身の秘部の全てを暴かれて確かめられている羞恥を、審神者は改めて感じてしまう。
潤んだ裂け目をしっかりと広げられて、覗きこまれて、好きに弄られて。そして愛撫に感じている身体の反応すらも、つぶさに知られてしまうなんて。
けれどそれは同時に、被虐の興奮にも似た心地よさを彼女の肉体にもたらしていた。
「も、そんなことしないで……」
審神者は長谷部に哀願するが、今まさに愛されている裂け目をしとどに濡らしながらでは説得力はなく、むしろその姿はさらなる愛撫をねだっているようにしか見えなかった。長谷部は喉を鳴らして笑う。
「……主は実にお可愛らしい」
どこか彼女を嘲るような声色と、否定も肯定もせず話をそらすその様に、審神者は長谷部にやめるつもりがないことを感じ取る。
長い睫毛を伏せて、審神者は熱く甘い息を吐く。長谷部の瞳が楽しげに細められる様を瞼の裏に描きながら、審神者は自身の無垢な裸身を長谷部へと差し出した。
彼の手によって自身の秘部へもたらされる快楽にのみ意識を集め、性の頂点へと上り詰めるべく、その裸の身体から余計な力を抜いてゆく。
審神者の身体が柔らかく緩み切ったことを確かめて、長谷部は彼女の細い腰を掴んで、改めてその濡れた秘裂を自身の口元に引き寄せた。潤ったその場所を長谷部に再び舐めあげられて、審神者は歓喜の声を上げる。
今宵もまた彼の渇きが癒えるまで、この身体を貪られ、じっくりといたぶられるのだ。
長谷部に嬲られ翻弄される興奮と期待に、審神者の背筋をぞくりとした震えが駆け抜ける。
彼女のその場所に長谷部の指が差し入れられ、ぐちゅりと淫らな水音を立てた。
***
「はぁっ…… んんっ……」
二つ巴の体位のまま、配下たる長谷部に自らの性器を愛されながら、審神者は夢中で一糸まとわぬ自らの肉体を反応させる。
先ほどからずっと、審神者は自分自身のその場所を、長谷部の好きにされていた。
逃げようにも、審神者の細い腰は彼にしっかりと掴まれており、それもできない。もっとも今の彼女に、長谷部の愛撫から逃れたい気持ちなどなかったが。
「あっ…… 長谷部……っ」
むしろ彼女は喜んで彼の奉仕を受け入れ、さらなる愛撫を求めていた。
もう少しで性の頂点を極めることができるのだ。審神者は無我夢中といった様子で、彼の口元に濡れた秘裂を押し付けて、白い身体を仰け反らせていた。
本能のままにその場所へのさらなるを刺激を欲しがりながら、ただ一人悦楽の頂点を迎えるべく、長谷部の名を呼び喘ぐ審神者はあまりにも淫らで、その姿はまるで美しい獣のようだった。
しかし長谷部は、今まさに上り詰めようとしている彼女への愛撫を、寸前でやめてしまう。
「……え?」
泣きそうな瞳で戸惑う審神者を、長谷部は自分の身体の上からおろし、敷布の上に仰向けで寝かせた。間を置かず、そのまま彼女に覆いかぶさる。
先ほどとは違い、今度はお互いに見つめ合える向きで、長谷部は審神者と身体を重ねた。
「……っ、長谷部」
物欲しそうに自分を見上げてくる審神者に、長谷部は薄い笑みを浮かべる。
審神者の潤んだ瞳は、自身の秘裂に今すぐ彼の猛りを差し入れて欲しいと告げていた。
しかし、長谷部は自らの主のたっての願いを一蹴する。
「――まだですよ」
「ッ!」
驚きに呼吸を詰める審神者を尻目に、長谷部はおもむろに膝立ちになると、敷布に寝そべる彼女の片足を高く上げさせた。
「……!」
これから長谷部が何をしようとしているかに気が付いて、審神者はひときわ甘い息を吐き、桜色の唇を震わせる。
彼女の長い睫毛がゆっくりと上下に動かされ、その頬にもう何度目かの朱がさした。
つま先への口づけは崇拝で、甲への口づけは隷属だ。長谷部は審神者の白い足先に、丁寧に口づけを落としてゆく。
つま先から順に付け根に向かって、唇を這わせ、舌で舐め、愛おしげに頬をすり寄せる。
薄明かりの中で長谷部はこれみよがしに、彼女の足を愛撫していた。
陶酔に浸ったその横顔はまさに、恋しい女性にかしずいて、彼女を崇めることを何よりの喜びとする、被虐趣味の男そのものだ。
自らの忠誠心をことさらに見せつけるように、褥での長谷部はときおり、あまりにも倒錯的な振る舞いを見せる。
「っ、長谷部……」
足への口づけは思った以上に恥ずかしい。秘すべき淫らな場所でもないのにこんなにも羞恥を煽られて、興奮してしまうのは一体どうしてなのだろう。
行灯の柔らかな明かりの中で、愛おしげに自分のふくらはぎに唇を寄せる長谷部の横顔は、ずっと見つめていたいと思わせるほどに美しい。
恍惚に細められた藤色の瞳も、伏せられた長い睫毛も、元々の冷たさを感じさせるほどに整った容貌と相まって、いっそ凄艶なほどだった。
そんな長谷部に自分まで引きずられ、審神者は脚の間の秘裂をさらにはしたなく濡らし、羞恥と興奮に頬を赤く染めながら、浅い呼吸を繰り返していた。
長谷部の愛撫によって、あまりにも淫らに昂ってしまった審神者の肉体は、彼女本人には如何ともしがたく、審神者は荒い息を吐きながら、苦しいほどの胸の高鳴りを必死に宥めていた。
きっと、長谷部は全て分かってやっている。倒錯的な振る舞いをあえてしてみせることによって、自分を追い詰めてその反応を楽しんでいるのだ。
けれど、いかにこれが加虐趣味な彼の策略だと分かっていても、審神者は自分自身の肉体の昂ぶりを抑えることができない。彼の狙い通りに、さらなる高みに押し上げられてしまう。あともう少しで、性の頂点をただ一人極めてしまいそうになっていた。
ぞくぞくとした震えが審神者の背筋を走り抜け、彼女は形容しがたい心地よさと浮遊感に囚われる。
彼女の秘裂は長谷部に与えられた興奮に歓喜し、剥き出しのそこから間断なくはしたない蜜を溢れさせ、敷布に染みをつくっていた。
溶けそうなほどに潤んだ粘膜はてらてらと濡れ光り、ひくひくと震えながら、長谷部自身による侵襲を今か今かと待ちわびていた。
彼に片足を持ち上げられているから、審神者のその場所の在りようは、全て長谷部に見えている。
聡い彼が審神者の秘裂がそのような状態にあることに、気づかぬはずがない。しかし長谷部は、決して審神者のそこに触れようとはしない。
堪え切れなくなった審神者は、形のよい唇を薄く開いて、何かをねだるような瞳で、長谷部を見上げた。
生真面目でストイックな長谷部は、愛の営みすらも求道的だった。通り一遍のことでは飽き足らず、どこまでも快楽を追求する。
そんな彼から、審神者は数々の艶事の手ほどきを受けていた。先ほどの互いの性器を同時に舐め合う二つ巴もそうだ。あのような愛しあい方があるなんて、長谷部に教わらなければ、彼女はきっと知らないままだった。
そう。審神者の閨中での振る舞いは、全て長谷部に教えられたものだった。審神者の濡れやすく達しやすい淫らな身体もまた、長谷部の手によって仕込まれたと言ってよかった。
「……っ、長谷部……」
ついにこらえきれなくなったのか。審神者はいまだに彼女の脚への愛撫を続ける彼を呼ぶが、長谷部は彼女の呼びかけには答えずに、ただひたすらに幸せそうに彼女の肉体を慈しんでいた。
脛への口づけは服従で、腿へのそれは服従だ。長谷部の口づけは、審神者の脚の付け根に向かってゆっくりと降りてゆく。
「……こんなところまで俺に愛させるなんて、いけない方ですね」
審神者の太腿に愛おしげに唇を寄せながら、長谷部は彼女をそう責める。
しかし、彼の瞳は恍惚にうっとりと細められ、その姿は長谷部が自ら望んで審神者の白い足を愛撫している、まぎれもない証左であった。
「も…… 長谷部……」
自分の意志でそうしているくせに、まるで審神者のせいのように言われ、彼女は抗議の声を上げるが、そんな彼女もまた嫌がるそぶりを見せつつも、長谷部に抗うことはしていなかった。
脚を下ろしたりはせずに、長谷部にされるがまま、自分の肉体の全てを彼の好きに弄らせて、もたらされる興奮を享受している。
長谷部はようやく審神者の脚を下ろしてやると、その瞳を飢えた獣のように爛々と光らせたまま、彼女の脚を大きく広げた。ついに審神者のその場所へと指を伸ばす。
「もう少し、慣らしておきましょうか」
「あ……っ」
割れ目の表面を指先で優しくなぞられて、審神者は甘い喘ぎを漏らす。既に充分潤っていた肉色の粘膜は、ひくひくとはしたなく震えながら、長谷部の侵入を待っていた。
そんなところに直接触れられてしまったら、審神者はひときわ甲高い悲鳴を上げるほかない。
一糸まとわぬ身体で大きく脚を広げて、長谷部の眼前で自分自身の全てをさらけ出しながら、もうたまらないとばかりに、審神者は甘く身悶えた。
そんな彼女を見おろしながら、長谷部は唇の端を上げて笑うと、彼は審神者の潤んだ秘裂に、きっちりと揃えた長い指を差し入れた。そのままゆっくりと沈めていく。
「あっ…… んんっ……」
ようやく彼女のその場所に、欠落を埋めるものが与えられる。審神者は歓喜の表情を浮かべると、白い喉を反らして心地よさそうに喘いだ。
長谷部は男の指を下の口でくわえ込みうっとりと身もだえる審神者を見おろしながら、彼女のその場所の準備をさらに整えてやるべく、そこに入れた指をゆっくりと大きく動かし始めた。
長谷部の指の動きに合わせて、彼女のそこからはとめどなく蜜が溢れ、くちゅくちゅと卑猥な水音を立てる。
「も…… 長谷部……っ」
もうたまらないとばかりに、審神者は困ったような声を上げ、彼を見上げてくる。
そうやって長谷部にすがって甘えるのは、あまりにも心地よいときの彼女の癖だ。自らの主が性の頂点を迎える寸前であることを察した長谷部は、彼女をしっかりと導いてやるべく、審神者のそこにさらなる愛撫を加えてゆく。
彼女の秘裂に入れた指を動かすのはそのままに、その突端に位置する小さな突起の包皮を剥いた。そのまま、長谷部はその場所を指の腹で可愛がり始める。
そこは彼女が最も感じてしまう場所だった。審神者は脚を大きく広げたまま、切なげに身悶える。
「やっ…… だめぇ……」
ダメと口にしてはいるものの。大きく広げた脚を閉じようともせず、長谷部に甘く媚びながら、ゆるく頭を左右に振る彼女は、「もっと」とせがんでいるようにしか見えない。
口では恥じらいながらも、白い裸身をくねらせながら、男の昂ぶりをあさましく求める自らの主人に長谷部は表情を緩めると、そんな彼女に優しく命じた。
「……まだ行けますよ。力を抜いてください」
「も、や……っ」
「……全て俺にお任せください、主。力を抜いて」
いやいやと口にしながらも、しかし審神者は長谷部に命じられるまま、深く息を吐き、その華奢な肉体から余計な力を抜いてゆく。
初心なふりをしながらも、審神者はもう何度も長谷部の手によって性の頂点を極めていた。勘所はすでに抑えている。彼女は恥じらいながらも、長谷部に見つめられながら自らの肉体の準備を整えていった。
そして、審神者の身体が柔らかく緩んだ瞬間を見計らい、長谷部は審神者の淫らな突起にひときわ強い愛撫を加える。
無防備になったそこへの刺激は、いとも簡単に彼女を興奮の頂へと押し上げる。
***
甘やかな悲鳴を上げながら、審神者はびくびくと身体を痙攣させる。今宵も、いともたやすく導かれてしまった。
自らの近侍たる長谷部に見つめられながら、性の頂点を極めてしまった審神者は、はしたない自分を恥ずかしく思いながらも、長谷部の手によって、自分がこの上もなく淫らな身体に作り替えられてしまったことを喜んだ。
自分の無垢さや清らかさの全てを愛する彼に奪って貰えたのなら、それは彼女にとって本望だった。
今の審神者にとっては、長谷部に尽くされて求められ、そして彼に奪われることこそが、何よりの幸福だったのだ。
惚けた瞳で荒い息を吐く審神者を、長谷部は満足げな笑みを浮かべて見おろす。結果を出すのは当然とばかりの不遜な笑みに、審神者の胸の鼓動が跳ねる。長谷部のあの表情は、どうしようもないほどに彼女の理性を弱らせる。
審神者に対してはたとえ愛の営みのさなかであっても、
慇懃でへりくだった態度を崩さないくせに、その丁寧な物腰からときおり覗かせるプライドの高さと尊大さこそが、長谷部の魅力であり色気だった。
普段はあれほどまでに忠実な下僕を気取る彼が垣間見せる傲慢さは日頃の振る舞いとの落差で、たまらなく色っぽく男らしく見える。その鮮やかな差異に、審神者はどうしようもないほど、心を掴まれてしまっていた。
審神者の達したばかりの無垢な肉体に、長谷部は改めて優しく触れた。骨ばった大きな手のひらを彼女の身体に這わせながら、その女らしい曲線をどこまでも辿ってゆく。
性の頂点を迎えたばかりの審神者の肉体はどこもかしこも鋭敏で、彼女は長谷部に撫でられながら、まるで美しい白魚が跳ねるように、無垢な裸身をびくびくと素直に反応させていた。
あまりにも無防備な主人を、愛おしげに見おろしながら長谷部はうっとりとつぶやいた。
「……かわいい方だ」
しかし、長谷部はあまりにも淫らで愛くるしい彼女に、何かの危機感でも覚えたのか、自分に裸体を撫でられながら、蕩けるような笑みを浮かべる審神者に釘を刺す。
「このようなお姿は、俺以外の男に見せてはいけませんよ」
「も…… 見せません……」
長谷部がいるのに他の男となんてありえない。貞操観念を疑われたように感じた審神者は憤るが、長谷部は切れ長の瞳を眇めて彼女を嘲るように笑うと、言葉に棘をにじませて吐き捨てる。
「さてね…… あなたにその気がなくとも、あなたを狙う男は大勢おりますからね」
もちろんこの本丸にもね、と平然と続けられ、審神者は驚きに息を呑む。
「っ」
長谷部の皮肉めいた、嘲るような薄い笑み。どこか酷薄さすら感じさせるあの表情に、嫉妬深く独占欲の強い彼の本性と自分への想いの強さを垣間見て、審神者の背筋を歓喜の震えが駆け抜ける。
愛しい彼にこんなにも想われて、執着されていることが嬉しい。
審神者は長谷部を見上げたまま、不安定になりがちな彼を宥めるように囁いた。
「私には長谷部だけです…… あなただけを……」
愛していると、そう口にすることで彼を安心させてやりたかった。
そう。刀剣とその主人という間柄ながら、こんなふうに抱き合って男女の契りを結ぶのは、後にも先にもきっと彼とだけだ。審神者たる彼女にはそんな不思議な確信があった。
そんな審神者の真摯さにようやく安堵したのか、長谷部は口元を緩めると柔らかな笑みを浮かべた。
先ほどの彼女を嘲るような笑みとは違う、穏やかなその笑顔は、俺もあなたを愛していますとその美しい藤の瞳で彼女に伝えているかのようだった。
そして、ついに。一糸纏わぬ審神者の身体に、長谷部が覆いかぶさってくる。ようやくそのときが訪れる。興奮と期待に審神者は秘裂をさらに潤した。
充血しきって、固く反り返った長谷部のものが、審神者のその場所の奥にある小さな入口を、先走りのにじんだ先端で探す。
「あ……っ」
審神者が歓喜のにじんだ声を上げる。ついに長谷部に入り口を探し当てられたのだ。
「っ……!」
間を置かず始まった長谷部の侵襲に、審神者は苦しげに眉を寄せる。もう何度も経験しているものの、圧倒的な質量と体積に身体が押し広げられてゆく圧迫感は凄まじく、審神者は夢中で息を吐き、挿入の痛みから気を散らす。
充血しきった彼のものを沈められてゆくこのときは、やはり苦しく感じてしまうけど、愛する長谷部の全てをこの身体で受け止めて、彼とひとつになるこの瞬間は、審神者にとってこの上ない幸福でもあった。
この痛みや苦しみも含めて、彼の全てを受け入れてあげたい。その胸に抱える癒えぬ傷も、根深い劣等感も、常に高潔であろうとするプライドも、全て。
やがて、長谷部に自分自身の最奥まで貫かれ、今宵もまた彼に肉体の全てを侵された審神者は、再び喉を反らして喘いだ。
「ああ……っ」
まだ挿入の痛みが残っているのか、彼女は形のいい眉を切なげに寄せていた。長谷部は繋がりあったまま、まるで彼女を労わるように、審神者の頬や首筋に、触れるだけのキスを落としてゆく。
「っ…… ん……」
しばらくたって、彼女が落ち着いてきた頃を見計らい。審神者の頬に張りついている髪をよけてやりながら、長谷部は彼女に囁きかける。
「……どうです?」
「ん、平気……」
審神者の返答は意外なほどにしっかりとしたものだった。彼女の身体から痛みが引いたことを察し、長谷部は柔らかく微笑んだ。
「……そうですか」
そう口にして、長谷部は審神者の膝裏に手を入れて、そのまま彼女の両脚を大きく開かせて、敷布に押しつけた。
若干女性に負担がかかる姿勢だが、それは長谷部が交合の際に最も好む体位だった。
審神者の表情も乳房も長谷部を受け入れている秘裂も、その全てが見渡せて、それでいて長谷部のものを彼女の最奥まで差し入れられる姿勢。
淫らな体位を長谷部に無理に取らされて、審神者は興奮に呼吸を荒くする。
いよいよこれから始まるのだ。一糸まとわぬ無垢な身体で抱き合いながら、二人同時に性感の頂点を目指してゆく。
審神者は長谷部のものを受け入れている秘裂をさらに熱く潤して、彼自身をきゅうきゅうと締めつけた。
固くなった男のものを秘裂に入れられて、このような淫らな体位を取らされて喜んでいる浅ましい自分。それはきっと長谷部にも伝わっている。
しかし、長谷部は口の端を上げて薄く笑うと。
「――それでは手加減はいたしませんよ」
鼓膜を震わせる囁きに、審神者は甘い眩暈を覚える。
当初は緩やかだった抜き差しはすぐに早くなり、審神者は長谷部の裸の背に腕を回しながら、じんわりとした快感に酔いしれていた。
……長谷部が好きだ。日頃の鍛錬ですっきりと引き締まった肉体も、冷たさを感じさせるほどに整った顔立ちも、全てが彼の愛すべき美点だ。
しかし審神者にとって長谷部の一番の魅力は、仄暗い闇を抱えた内面だった。情緒のバランスを欠いた彼が、ときおり見せる捨てられた子犬のような瞳や、従順を装いながらも、いつ自分に牙を剥くかわからないその高慢な危うさに、審神者はどうしようもなく魅せられていた。
心に傷を抱えた長谷部に鬱屈した情念を向けられるたびに、審神者たる彼女もまた仄暗い優越感と高揚感を覚えていた。
誰かに切実に求められることが、誰かの生殺与奪の権を握ることが、あれほどまでに甘美な陶酔と満足感とをもたらしてくれるなんて知らなかった。
長谷部の愛はまるで阿片だ。けれど、今更それに気がついてももう遅い。すっかり蝕まれてしまった今となっては、自分はもう長谷部なしでは生きていけなくなっていた。
まるで藤の花が飾られた黄金の檻だ。それに囚われている自分はさながら、籠の鳥か虫篭の蝶といったところなのだろう。金色の美しい鎖で柔らかに縛められて、その自由を奪われている。
けれど愛しい彼になら、風切羽を切り落とされて、小さな胸を潰されて、艶やかな鱗粉をまとった羽根に鋭い針を打たれても、審神者は構わないと思っていた。
長谷部は自分の肉体のすべてを支配して、自分は彼の心のすべてを支配する。この共依存にも似た関係の行きつく先が悲劇でも、長谷部と一緒なら幸せだ。
何があっても離れない。離れられない……。
「……っは、主……」
長谷部にきつく抱かれながら、審神者はその身体の内側に、彼の精を注ぎ込まれる。
もう何度目かの悦楽の頂点を迎えながら、愛する長谷部の腕の中で審神者は意識を手放した。
***
それから、どれほど経ったのだろうか。眠っていた審神者は、室内の物音と人の気配に目を覚ました。
時刻は既に明け方だった。ぴったりと閉められた障子の向こうは薄明るく、日が昇っていることが察せられた。
昨夜は一緒に眠ったと思ったはずが、自分の隣に長谷部はいなかった。審神者は寂しく思いながらも、布団から身体を起こし、あたりを見回した。
愛しい姿は鏡台のほど近くにあった。もうずっと早くに起きていたのか、長谷部は既にカソックや武具を身に纏い、今はちょうど白手袋をはめているところだった。
その端正な横顔に昨夜の彼との交合を思い出し、審神者は淡く頬を染める。けれど、そうこうしているうちに。
「……すみません。起こしてしまいましたね」
長谷部に気づかれてしまった。
さすがは刀剣の付喪神だ。たとえここが戦場でなくとも、自分に向けられた視線や気配はすぐに察知する。
「……長谷部」
まだ起きたばかりの、しどけなく乱れた姿で彼を呼ぶ審神者に、長谷部は柔らかな笑みをこぼす。
「……もう少しご一緒したかったのですが、あいにく燭台切光忠と早朝稽古の約束をしておりましたので」
「そうだったの……」
審神者は肩を落とす。仕方がないこととはいえ、愛する彼ともう少し一緒に過ごしたかった。
けれど。あまりにもわかりやすくしょげる審神者に、長谷部は表情を緩めて呼気だけで笑う。
「っ……ははっ」
生真面目であまり表情を崩さない彼が、ときおり見せる破顔一笑。その爽やかな笑顔もまた、彼の愛しいところだった。
日頃の振る舞いやそのプライドの高さから、いっそ高慢さや冷酷さすら感じさせる彼が垣間見せる、年相応に幼いあの表情もまた、審神者の心を惹きつけてやまなかった。
手袋をはめ終えた長谷部は、改めて審神者に向き直ると。
「そこまでお寂しいのでしたら、今宵も参りますよ」
「えっ……?」
審神者は驚きに瞳を見開く。しかし長谷部はそんな彼女を見つめたまま、言葉を重ねた。
「あなたがお望みなのでしたら、今宵も参ります」
――あなたを抱きに。
美しい藤の瞳は雄弁にそう告げていた。
長谷部は布団から身を起こしたばかりの審神者のもとにやってくると、彼女の前で片膝をついた。彼女のほっそりとした白い手を取って、その甲に口づける。
「愛しています」
長谷部が改めて口にした言葉に、審神者は息を呑む。まさかそんなことを言ってもらえるなんて思わなかった。審神者の頬に熱が集まり、彼女は恥じらいに瞳を伏せる。
敬愛する女性の前に跪き、彼女の手の甲に口づける。そんな西洋の騎士のような振る舞いも、カソック姿の長谷部なら様になる。
こうべを垂れる彼の鈍色の前髪が流れ落ち、早朝の柔らかな薄明りを受けて艶めく。
『――愛しています。愛するあなたの願いなら、俺は何だって叶えてみせます』
審神者の手の甲から唇を離したそのときに、長谷部が心の内で呟いた言葉が、その唇に乗ることはない。
しかしそれでも、既に分かちがたい絆で結ばれている彼女には、長谷部のその想いは充分すぎるほど伝わっていた。
そんな彼にかしずかれ、審神者は幸福に包まれながら、花のように笑った。
以下あとがきです
あとがき
お疲れ様です。作者です。
お久しぶりの更新となってしまいすみません
本当はもっと早く完成させてアップしたかったのですが、
なかなか作業時間が取れなかったり、パソコンが壊れて買い替えたり、
作業が予想以上に難航したり、パソコンが壊れて(略)でした。
パソコンなのですが電源が入らなくなったので、
中のデータは全てなくなってしまいました。つらいです……。
話を戻します。
刀ステの長谷部くんが、あまりにもイケメンかっこよかったために、
このたび長谷部沼にどっぷりとはまってしまいました。
Wくんの長谷部は最高ですね。最高のイケメンヘラでした。
光忠との殺陣も真剣必殺の半裸も、おはぎの宴も最高でした。
本番中の舞台上でおはぎを吹くイケメン俳優……。
最高すぎます。これは運命の恋に落ちるしかありません。
ご本人様のブログの長谷部くんのキャラ衣装の画像も全部保存して、
毎日にやにや眺めています。再演も楽しみですね。
さて今回。
そのようなわけ(?)で、長谷部くんのキャラ解釈はステに寄せています。
ステのイケメンヘラでヤンデレな長谷部くんとのR18でした。
いかがでしたでしょうか。
お話のテーマは禁断・共依存で、BGMはラルクのキスキスキス(XXX)です。
ラルクの楽曲もテーマが禁断の恋のようで、
歌詞にもエデンとか禁断の果実といった単語が出てきます。
とてもかっこいい曲なので、よろしければぜひ。
今回、力を入れた描写なのですが、69とヒロインの足へのキスです。
足の甲やつま先やふくらはぎへのキスってエロいですよね。
まさに服従と崇拝って感じでドキドキします。
69も今回初めて書いてみてとても新鮮でした。
あとは事後の明け方のシーンもお気に入りです。
「あなたを抱きに」もそうなんですが、
武装&カソック姿で片膝をついてヒロインの手の甲にキスするシーンも気に入っています。
騎士が王女に忠誠を誓うみたいなキスを、長谷部くんにやらせたかったのです。
最後の「『愛するあなたのためなら~』長谷部の心中のつぶやきがその唇に乗ることはない」
なのですが、こちらは長谷部くんのキャラ紹介の
「(主の)一番であることを渇望しているが口にすることはない」をアレンジしました。
他にも原作ゲームの台詞など入れているので、ニヤリとして頂けたら嬉しいです。
原作ゲームの台詞といえば、軽傷の「っ……ハハッ」と「だからァ?」がすごく好きで
なので、今回のお話も長谷部くんが「ハハッ」と笑う描写を多く入れています。
長谷部くんは主に対してはいつもすごく丁寧だと思うんですけど、
ときどき粘着質で嫌味ったらしいところもあったりして、そこもすごく愛しいです。
あと個人的には、主に対する丁寧な態度よりも、
敵に対する酷薄な態度や破壊ボイスの口調や雰囲気が、
長谷部くんの素だと思っているので(個人の主観です)
このお話の長谷部くんも、酷薄さや冷たさや野卑さをときおり覗かせています。
あえてそういう風に書きましたので、そこもお楽しみ頂けたら嬉しいです。
いわゆる鬼畜敬語攻めというやつですね(笑)
キャラ解釈についてここまで色々と書きましたが、多少のこだわりはあるものの、
個人的には原作ゲームもステも花丸もどの長谷部くんも大好きです。
みんな違ってみんないいですよね。
かっこいいorかわいい長谷部くんなら、何でも美味しく頂けます。
花丸は公式同人誌だと思って楽しんでいます。織田組のEDも最高でした。
いつかミュージカルでもカッコよくてかわいい長谷部くんを、
見れたらいいなと思っています。
それでは長いお話とあとがきを、お読みくださりありがとうございました。
ではまた。