ねこのひかる(財前猫パロ)
名前変換設定
本棚全体の夢小説設定薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
※恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
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大学の友人たちとの飲み会などで、名前の帰宅が夜遅くになったとき。光は人の姿に変身したままで彼女と眠る。奥手な名前は、最初はずいぶん恥ずかしがっていたけど、光が強引に押し切ったのだ。
そして今日も、そんな夜。一人用の狭いベッドの中、抱き合って眠る二人は、まさに相思相愛の恋人同士だ。二人の愛を阻む障害など何ひとつなく、陽の当たる道と、幸福な未来だけが約束されているかのような、幸せな恋人同士。
けれど。穏やかな寝息をたてている彼女を、光は物足りない気持ちで眺める。お互いにパジャマ代わりのTシャツを着ていて、そして名前は、睡眠中ということもあり、胸を覆う下着をつけていなかった。
柔らかな彼女の膨らみは光の身体にしっかりと触れていて、彼女がもぞもぞと動くたびに、マシュマロのような感触を光に伝えてくる。
(はぁ…… キッツイわ……)
光の唇から漏れる、深いため息は既に熱を帯びていた。猫の姿のときは、そこまで興奮したりはしないのに。今の人間の男の子の姿では、今のこの状況は、まさに甘い拷問だった。
下腹部も充血しきっていて苦しいほどで。薄く開かれた彼女の口元を見るにつけ、光はその唇にかじりつきたくなる衝動に襲われる。
(……アカン。チュウしたら、猫に戻ってしまうんや)
そう、唇を重ねたら。光は元の猫の姿に戻ってしまう。またキスをすれば人の姿になれるけど、やはりこんな夜中、安らかに眠る彼女のとなりで変身を繰り返すわけにもいかず。光はさきほどから、まるでおあずけをされている犬のような状況に陥っていた。
しかし、光は規律に従順な犬ではなく、自分自身の欲求を何よりも優先させる、猫だった。
興奮にごくりと喉を鳴らして、光は名前の腕の中から抜け出した。身体を起こすついでに掛布団をそっとよけて、安らかに眠る名前の上に覆いかぶさる。
唇にキスはできないから。光は、それ以外のことをしはじめる。愛の営みの前戯の真似事。自身の下腹部の熱を鎮めるために、彼女の身体に悪戯をする。
どんなにお互いに愛し合っていたとしても。自分がどれほど彼女と結ばれたいと願っていても。光は名前とこれ以上先に進むつもりはなかった。
なぜなら。それは、自分が猫だからだ。名前と同じ人間ではない。どれほど彼女のことを想っていても、名前を本当の意味で幸せにすることなど、自分にはできはしないのだ。
人の姿でいられるのは一日四時間だけで、あとは猫の姿。働いて彼女を養ってやれるはずもなく、それどころか、自分の方が彼女にお世話をしてもらっている。
そして、寿命も違う。自分が十五年程度なのに対して、向こうは八十年。どんなに願っても、生涯を添い遂げることなど不可能なのだ。こんなにも違うのに、これ以上を望むなんて。名前の幸せな未来を壊してしまう。
同じ人間ではなく、飼い猫でしかない自分は。名前のことを愛していて、その幸せを願っていればこそ、これ以上先に進んではいけないのだ。……しかし、光は自嘲する。
(……ゆうても告白して了承させて、今勝手にこんなことしとる時点で、本当はもうアカンのやろうけどな)
彼女の首筋に温い舌を這わせながら、光は後ろ暗い感情に囚われる。今この時はよくても、いずれは名前のもとから去らねばならない自分には、これくらいがお似合いだ。
薄闇の中、カーテンの隙間から漏れる月の光だけを頼りに、光は、名前の身体を味わった。名前を起こしてしまわないように、気をつけながらの優しい愛撫。
心から名前を愛しているつもりだけど、現実の男女の恋愛でプラトニックなどありえない。光は名前のTシャツの裾に手を掛けて、めくり上げた。
愛する人の真っ白な裸身は、何度見ても息を呑むほどに美しい。何の穢れもない無垢なそれは、本来は自分が触れてはならないものだ。しかし、皮肉なことにその背徳感やうしろめたさが、光の性感をさらに高めていた。
緊張と興奮に喉を鳴らして、光は彼女の身体に手を伸ばす。柔らかな胸の膨らみに触れ、先端に口づけをして、太ももをなでて、脚の間も確かめて。名前の無防備な身体を使って、光はたった一人で、自身の体内で燻る欲望の火種を宥めていく。
あまりにも虚しい営みだ。相手の反応はないに等しく、光はときおり温かな人形と身体を重ねているような錯覚すら覚えてしまう。そこに幸福感や充足感などない。あるのは気が遠くなるほどの胸の痛みと、息苦しさだ。
しかしこうすることでしか、光は自分自身を抑え込むことができなかった。真っ白な欲求を普段通りの手順で処理したあと。光は彼女の唇にキスを落として猫に戻る。
そのままの姿で、まるで何事もなかったかのように。光は名前に寄り添って眠る。彼女の可愛い飼い猫として。誰よりも愛しているからこそ、自分は彼女の恋人にはなりきれない。
見たくない現実から目を逸らすかのように、光はそっと瞳を閉じた。心の内に澱のように沈殿してゆく虚しさから逃げるように、眠りの世界に落ちてゆく。音のない夜が淡々と更けていった。
そして、翌朝。日が昇ってだいぶ時間が経っているけど。ベッドサイドの目覚ましはまだ鳴っていない。しかし、光は起きていた。眠りが浅かったのか、何かの物音をきっかけに、目覚めてしまった。
しかし、夜半の人の姿での行為を思い出してしまった光は、自分のすぐ隣で幸せそうに眠っている名前を、もの言いたげに見上げた。今は、もちろん猫の姿。人の姿のときはいつも小さく感じる名前が、とても大きく見える。
そんな名前の顔に、光は自分の鼻先を近づけると。濡れた鼻を彼女の唇に押し当ててから、ペロペロと名前の顔を舐めはじめた。愛しの飼い主で、そして恋人。早く起きて自分を構って欲しかった。
しかし、やすりのようにざらざらとした猫の舌で、柔らかな素肌を舐めても。名前はちっとも起きてくれない。多少の身じろぎはしても、眠ったまま。
(…………)
じれったくなった光は、再度名前の顔を舐める。
(……早よ起きんかい)
いつのまにか八つ当たりじみた怒りを覚えていた。こうなったらもう意地だ。名前が起きるまでちょっかいを出してやる。しかし次の瞬間、名前の唇を舐めたとき。ついうっかり口を触れさせてしまった。
(あ、しもた)
そう思ったときには、もう変身してしまっていた。人間の男の子の姿へと早変わり。光は慌てて腕をつき、名前に自分の体重がかからないようにする。
(やってもうたわ……)
すやすやと眠る彼女を見おろしながら、しかし光は自分の行動を反省した。昨夜から一体何をやっているのか。
しかし光は気を取り直すと、名前の隣に横たわり、彼女の身体を抱きしめた。華奢で小柄な身体は光の腕の中に収まる。いつもと逆だ。
(まあええわ。このままぎゅっとして……)
名前の温かな身体は、低体温の自分には本当に気持ちいい。ぬくぬくとしていて、まるで記憶の中の母猫のようで。
(……いや、別にこいつオカンやないしな)
我に返った光は、再び自分の腕の中の彼女を見おろした。幸せな寝顔に、なぜかムッとした。光は、やはり名前を起こすことにした。
「……ほら、名前。起き?」
囁くような声で彼女の名前を呼びながら、光は名前の身体を揺すった。しかし、名前はむにゃむにゃと口を動かすが、起きてはくれない。
けれど、こんなことでめげる光ではない。再度、光は名前の身体を揺らす。先ほどよりもずっと強く。名前はあからさまに嫌がる仕草をした。まだ眠っていたいのか、光に抵抗してくる。
名前がお寝坊さんなのは昔からだ。いつものことと分かっているから。光はもう腹も立たない。もう一度強く彼女の身体を揺らしながら、名前を呼んだ。
「名前。ほら、ええ加減に起き」
「……え?」
ようやく名前は目を覚ました。ぼんやりとした様子で光を見上げる。
「あれ、光、なんで……?」
人の姿をしている光に、名前は不思議そうな顔をする。
「我慢できんくて、チュウしてもうた」
「え、え~」
しれっとした光の返答に、名前は困惑する。朝からなんでそんなという様子だ。対する光は普段通りだ。平然とした様子で、あからさまに話題を変える。
「別にええやろ。それより今から散歩せえへん?」
「え、散歩?」
「せや、たまには外で日光浴したいわ。あと体動かしたいし」
光は完全室内飼いだった。日光浴も運動も健康のためには必要なことだ。そういえば、ここ数日はとても天気がよかった。光が外に出たいと思うのもわかる。
「わかったよう」
仕方がなさそうにそう言うと、名前は起き上がった。まだ眠いけどがんばろう。朝のお散歩。だけど、光となら、なんだかとても楽しそうだ。名前はそんなことを思いながら、いそいそと洗面台に向かった。
Tシャツにパーカーにお気に入りのショートパンツ。動きやすさ優先のカジュアルな格好。近場だからこれで十分だ。家の鍵とスマホをポケットに入れて、支度を終えた名前は、光を呼ぼうとリビングに戻る。
名前に待たされていた光は、窓辺で日向ぼっこをしていた。朝日が差し込む窓のそばで、風に揺れる白いレースのカーテンを背に、片膝だけを立てて座っている。窓外の景色を気怠げに眺める横顔は端正で美しく、名前は息を呑む。
「……ッ」
猫のときも美人さんだねってよく褒められていたけど、光は人間の男の子のときも、とても綺麗で格好よかった。あまりの美少年ぶりに、名前はしばらくの間、光に見惚れてしまう。
そういえば、猫の姿のときも。天気のいい日、光はこうやって窓辺で日向ぼっこをしていた。両の前足を折りたたんで座って、のんびりと外の景色を眺める。飛んでいる小鳥なのか、どこか遠くの風景なのか、何を見ていたのかは分からないけど。
不意に、人の姿の光が消えて。入れ替わるように、猫の光の小さな姿が、名前の眼前に現れる。いつもと何ひとつ変わらない、ちょこんとした可愛らしい黒い姿。
元に戻ってしまったのだろうか。不安に囚われた名前は、慌ててごしごしと両目を擦る。けれど、彼女が目を開けた、次の瞬間。そこには先ほどまでと同じ人の姿の光がいた。
まだ夢の中にいるようだ。けれど今はまぎれもない現実。名前は安堵の息を吐くと、人の姿の彼に呼びかけた。
「――光、準備出来たよ。行こっ!」
光はようやく名前に気がついた様子で、彼女を振り返ると。
「……ったく、時間掛かりすぎやろ」
淡々とそう言って、立ち上がった。けれど、名前には分かる。今の光は結構上機嫌だ。その口元にも、彼女にだけわかるくらいの淡い笑みが浮かんでいた。
名前の自宅マンションから数十分歩いたところにある、比較的規模の大きな公園。水場やアスレチックや、手入れされた芝生のある、ご近所の住民たちの憩いの場だ。
まだ朝の早い時間で通行人は少なく、ときどきランニングや犬の散歩をしている人が通るくらい。そんな人のいない公園の美しい芝生を、光と名前は独占していた。
寝転がって目を閉じている光のとなりで、名前は足を崩して座っていた。しかし、名前は先ほどから何度もあくびを噛み殺していた。少し歩いたとはいえ、まだ朝早い時間。完全には目覚めていないようだ。
「……眠いなら、膝枕したるで」
おもむろに目を開けて、光は名前を見上げた。
「え?」
彼の意外な発言に、名前は目をしばたたかせる。
「いいよ、恥ずかしいし。それに……」
きょろきょろと周囲の様子を確かめてから、名前は声をひそめると。
「……せっかく光が今の姿なのに、寝ちゃうのもったいないよ」
何のてらいもなく、可愛いことを言ってくれる名前に、光は吐息だけで笑った。心なしか、声も柔らかくなる。
「――ガチ寝したらしっぽビンタで起こしたるよ」
「もう、しっぽないくせに」
今の姿では、だけど。しかし、名前は光に甘えて膝枕をしてもらうことにした。起き上がって芝生の上に座り直した光の太腿の上に、名前は自分の頭を乗せる。芝生の上に身体を横たえて、瞳を閉じた。
いつもと逆だ。普段は名前が光にしてあげているのに。
(……膝枕っていいな)
相手の身体のぬくもりと、愛情を感じることができて幸せだ。温かな幸福感に包まれる。光が好きなのもわかる。
(……これからはもっとしてあげよう)
光を愛しているから。自分ができることの全てをしてあげたい。名前は心からそう思っていた。大事な飼い猫で、そして恋人なのだから。
朝の澄んだ空気と柔らかな日差しを感じながら、名前は光の膝枕でまどろむ。やっぱり、光と過ごす時間が一番好きだ。名前にとっては何よりも幸せな時間。光に髪をなでられながら、名前は改めて噛みしめていた。
「……あ、せや」
名前の前髪を梳きながら、光はおもむろに口を開いた。
「……なあに」
名前は夢うつつに答える。瞼はもう閉じてしまう寸前。しかし。
「お前、一昨日よその雄猫と遊んできおったやろ」
「……え?」
光のその台詞に。名前は閉じかけの目を驚きに見開いた。眠気もすっかり吹き飛んでしまう。
「身体から匂いがプンプンしとったわ。ふざけんなや。お前には俺がおるやろ」
「ええ~」
あからさまに不満そうな光に、名前は困惑する。ちょっと抱っこしただけだ。そのあと、頭をスリスリこすりつけられた気もするけど。
意外にも光はちょっと面倒くさい男の子。クールに見えてやきもちやきで、無口なふりをして饒舌で。
「だから一昨日スリスリがしつこかったんだ」
「しつこいとは何やねん。俺のモンやってちゃんと上書きしといたんや」
そういえば、と名前は思い出す。いつもはそっけないくせに、猫は縄張り意識が強いのだ。独占欲も意外に強くて、普段と違う匂いの飼い主に自分の匂いをつけ直すのも、そういう理由。光は苦々しい顔で。
「ったく、油断も隙もないわ。ほんまに……」
「光……」
猫の雄にも人間の雄にも嫉妬するなんて大変そうだ。ライバル大増量。そういえば名前が他の男子に粉をかけられていたときは、光はストレスのあまり四キロの体重を三キロに減らしていた。
今は戻って元気になったけど、あのときはそんなことが原因で痩せたのかと、名前はとても驚いた。
「もう、そんなこと心配しなくてもいいのに」
あからさまにムッとしている光が可愛くて、嬉しくなってしまった名前は、にっこりと笑った。今は人の姿の、ヤキモチやきの愛猫を見上げる。
名前の予想通り。光は彼女から目を逸らしていた。しかし、唇は不満げに尖り、頬は淡く染まっている。それを確かめて、満ち足りた気持ちになった名前は、そっと目を閉じた。彼の膝の上で再びうとうとする。
気がついたら、吸い込まれるように眠ってしまっていた。
「――名前、名前、いつまで寝とんねん」
肩口を強く揺らされて、名前は目を覚ました。
「……光」
「ほら、もう帰るで」
促すようにそう言われる。怠い身体に力を入れて、名前は起き上がった。公園に来たばかりは、降りそそぐ陽光も柔らかく朝の空気も肌寒いくらいだったのに。
いつのまにか日差しは強く、太陽の位置もだいぶ高くなっていた。ふと、どのくらい眠っていたのか気になって。ついうっかり名前は光に尋ねてしまう。
「……今、何時?」
しかし、本当は猫の光が時間の分かるものなど身に着けているはずもなく。
「……俺に聞かれても分からんわ」
光は淡々とそう答える。けれど、彼は不意に楽しそうに口の端を上げて。
「――自分のスマホでも見たらええんちゃう」
「うん、そだね」
彼に水を向けられた名前は、ショートパンツのポケットに手をやった。スマホを取り出して待ち受け画面を確認する。
「あっ! 何これ!」
いつの間にか、壁紙が自分の寝顔写真に設定されていた。もちろん犯人は。
「アホづらで寝とるからや」
「も、バカ!」
可愛い愛猫の可愛いイタズラ。けれど、しつけの一環で、名前は怒ったふりをする。
猫なのに、なぜか光はデジタル機器に強かった。扱いはお手の物。名前が操作しているところを眺めるうちに覚えてしまったらしいけど、名前はその説明には納得していない。
まだちょっと怒っている飼い主さんの数歩後ろを歩きながら。光はさきほどの写真を撮ってしまったときのことを思い出す。
自分の膝枕で眠る彼女が可愛くて、つい出来心で撮ってしまった。普段は撮られるばかりだったけど、自分で初めてそうしてみてやっと、撮る方の気持ちが分かった。
愛しているから写真を撮るんだ、大好きな人のかけがえのない今を切り取り、形に残す。全ては移ろい変化してゆくこの世界で、それはほぼ唯一の今を記録し形に残す手段だ。名前の撮影会にも今度は嫌がらず付き合ってあげよう。光は気持ちを新たにする。
天気のいい朝。お散歩から帰宅中。自分の前を歩く可愛い飼い主さんは相変わらずご機嫌ななめだけど。
(……今日もええ日になりそうやな)
口の端を上げて微笑んで、光は青く澄んだ初夏の空を見上げた。