【侑士】続・みえない星(二)
名前変換設定
本棚全体の夢小説設定薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
※恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
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HONY SO SWEET(R15)
バレンタインの日の夜。ここは関西の忍足のマンションだ。忍足の彼女の名前は、夕食の片付けと食器洗いを終えてリビングに戻ってきた。
「あれ、これどうしたんですか?」
テーブルの上に見慣れないマンガが置いてあるのを見つけて、名前は思わず忍足に尋ねた。確かこれは持ってなかったはずだ。でも、タイトルは名前も知っている。今ドラマが放映されている話題作で、自分も読んでみたかった作品だ。
「ああ、何や気になってもうてな。買うてきたんや」
机の上には、一巻から現在の最新刊の七巻までがばっちり積んである。恋愛小説だけじゃなくて、実は少女マンガも結構好きで読んだりする、忍足は微笑む。
「今ドラマやってるやつですよね」
そう言って、名前は第一巻を手に取った。マンガにはしっかりとドラマの宣伝の帯がついていた。人気アイドルが主演で月曜日の夜九時放送。
「先輩、これ読んでみてもいいですか?」
リビングの二人がけのソファー。英語で書かれた医学書のページをめくる忍足の隣に腰掛けて、名前はもくもくとマンガを読んでいた。話題作だけあってすごく面白い。絵も綺麗で、キャラもストーリーも魅力的で、つい続きが気になって読みふけってしまう。
早くも数冊読んでしまい、今はちょうど前半のハイライト。他にすごく好きな人のいるヒーローが、別の女の子と一線を越えてしまうというシーンだ。報われない想いを抱える登場人物たちの葛藤と、裸の身体を重ねるセクシーな描写を、ドキドキしながら楽しんでいると、急に横から声を掛けられた。
「――どこまで読んだん?」
「え!?」
驚いて、つい名前は変な声を出してしまう。
「えっとあの……」
まさか「ソータがエレナとしちゃうとこです」なんて言えるはずもなく。名前はしどろもどろになってしまう。けれど、忍足はそんな名前の不審な言動には構わずに、ニヤリと笑った。
「……ソータがエレナとやっとるとこ?」
「えっ! なんでわかるんですか?」
「お前見とればわかるで、そんなん」
読んでいた医学書を放り出して、ニヤニヤと笑いながら忍足は名前にくっついてくる。
「ちょっ、先輩っ……!」
なぜか嫌がる名前に半ば無理やり抱きついて、忍足は吐息混じりで彼女の耳元で囁いた。マンガのそのシーンのヒーローの台詞。
「……『抱かせてエレナ』」
「ッ! も、やめてくださいッ!」
あまりにも色っぽい決め声でからかわれて、名前は慌てだす。声まで格好いい彼氏に色っぽいネタで意地悪をされて、もう平静ではいられない。
「私エレナじゃないですっ!」
焦った名前は、忍足に抱きつかれながら、そんな当たり前のことを叫んでいた。
「ははっ、まあその通りやな。つか俺もエレナはいらんし」
サエコもやけどな。そんなことを呟きながら、忍足は不意にメガネを外した。テーブルの上にそっと置く。
「……抱かせて? 名前」
至近距離で彼女の目を見つめて、忍足は真顔で囁いた。顔も声もすごくカッコイイ大好きな彼氏にそんなことを言われて、名前は顔を赤くする。からかわれていると思い込んで、プリプリと怒り出した。
「じょっ、冗談やめてくださいっ!」
忍足の腕を自分の身体から外そうとしながら、名前は叫ぶ。けれどもちろん、テニスで鍛えている太い腕は外れない。むしろ逆に、ギュッと力を込められてしまう。
「冗談やあらへんで、俺はいつでも大真面目や」
「そ、そんなこと言っても誤魔化されません!」
不毛な口ゲンカ、ならぬ痴話ゲンカがなぜか始まる。けれどむしろ、これはじゃれあいと言った方が近いのかもしれない。
「ええやん別に。チョコの前にお前を」
「ッ! ……お、おフロ! おフロもまだなのにっ」
「……仕方あらへんな」
***
「……何でこうなるの?」
「ええやん、マンガでもあったやろ?」
乳白色のお湯の中。名前はなぜか忍足と一緒に湯船に浸かっていた。マンガのそのシーンと同じように、体育座りの名前を後ろからかかえ込むようにして、忍足が座っている。恥ずかしくて抵抗したのに、結局丸め込まれてこんなことになってしまった。
お互いタオルを巻いているけど、お湯の中で裸同然の格好でこんなにもくっついて、名前はいやでも変な気持ちになってくる。けれど、忍足の左腕は、逃がさないとばかりに自分の腰に回されていて、名前は勝手にバスタブから出ることもままならなかった。大学生になった今でもテニスに打ち込むスポーツマンらしい、逞しい腕が憎らしい。
(せ、先輩の意地悪……)
この腕に捕らえられてしまったら、自分はもう逃げ出せない。
「……いっしょにフロ入るの初めてかもな」
「……え? ……は、ハイ」
後ろから声を掛けられて、名前はドキッとする。白いお湯がたぷんと揺れて、入浴剤のミルクの香りが漂う。優しい、いい匂いだ。彼女のあまりにもぎこちない反応に、忍足はくすりと笑った。
「……何でそんなガチガチなん?」
穏やかに笑いながら、忍足は名前の片手を取った。右手同士を指先まで絡める恋人つなぎ。
「ッ! 先輩」
指を絡められてびっくりしたのか、名前は非難がましい声で忍足を呼ぶ。
「ちゃんとリラックスし? 別に何もせぇへんし」
「……っ!」
妙に意識して自分だけ緊張するというのも、やらしいことを考えてますと白状しているようで、逆に気恥ずかしい。ずっと腰に回されたままの忍足の左腕を気にしながらも、名前は言われた通りに力を抜いた。
「ん……」
軽く息を吐きながら、バスタブの中で脚を伸ばす。
「……そ、エエ子やで」
右手の指を絡めながら、忍足は機嫌良く笑う。上下する喉の気配と息遣いをすぐ後ろで感じて、名前の胸は高鳴った。
「先輩……」
まだ緊張は完全には解れていないけど、名前はおずおずと、後ろにいる忍足にもたれかかった。タオルを巻いた上半身を忍足に預けたら、そのまま後ろから抱きしめられた。
名前の腰に回されている忍足の左腕に力が込められ、恋人繋ぎをしている右手も、そのまま名前の胸の上に回される。忍足の裸の身体がさらに近づく。ほとんど密着していると言ってもいい。
けれど、忍足に抱きしめられるのが大好きな名前は、忍足を近くに感じて幸せな気持ちになる。少し熱いくらいの湯加減も、真冬の今は逆に丁度いいくらいで、ぽかぽかと気持ちいい。
「きもちいいです……」
ようやく気持ちが落ち着いてきた。身体から力が抜けてくる。やっぱりお風呂っていいな。彼女がそんなことを思った、そのとき。
「……ん、俺はまだまだやな」
「え? ……きゃっ!」
名前の腰にゆるく回されていた忍足の腕が、急に動いた。ちゃぷんと水面が揺れて、お湯の中で名前のタオルが外される。
「ッ、先輩……!」
「……ちょっとだけど、俺も気持ち良うなってきたわ」
裸の名前の胸を、忍足は左手でふにふにと揉む。
「……っ!」
浴槽の中で、しっかりと捕らえるように抱えられていて、名前は抵抗できない。二人が浸かるには狭いその場所では身動きもままならず、されるがままになってしまう。名前の二つの膨らみを、忍足は片手で可愛がる。
「……っ あ……んっ」
名前の唇からいやらしい声が漏れる。強引な愛撫に、けれど素直な身体は感じてしまうのだ。もたらされる心地よさには抗えない。両胸の先端を同時に刺激されて、名前は喉を反らせてのけぞった。
「や…… んッ」
僅かに身体を震わせる。
「……むっちゃかわええで?」
性感を煽るように忍足に囁かれた。熱い吐息が耳元にかかる。
「っ、先輩……」
「……名前が感じとる顔が、見れへんのが残念やわ」
「も……」
「……鏡がコッチについとれば良かったんやけどな」
浴槽の外の壁には鏡が張られていた。曇り止めを施されているらしいその大きな鏡は、無人の洗い場をくっきりと映し出している。
「先輩のバカ…… ヘンタイ」
忍足に両胸を愛されながら、名前は涙目で彼を非難する。
「ヘンタイやあらへんで、オトコなら普通それくらい思うで」
「そう…… なの……?」
「せやで」
無知で純粋な彼女に、忍足は適当なことを吹き込む。他のオトコのことなんて知るわけないけど、そういうシチュエーションの『作品』はよくあるし、この際そういうことにしてしまう。
「…………」
名前は黙り込む。どうやら納得してくれたようだ。彼女の素直さに感謝しながら、忍足は名前を抱きしめる。充血した下腹部を、彼女の身体に押しつけた。案の定、名前はびくりと身体を震わせた。
「……何もしないって言ったのに」
「……名前はホンマにかわええな。あんなん信じとったん?」
「~っ!」
からかうように笑われて、名前は悔しさに唇を噛む。やっぱり男の子の『絶対に何もしない』は絶対に嘘なんだ。今さらそんなことを思う。めっちゃ術中にはまってる。自分を抱きしめる忍足の右腕にさらに力がこめられて。ずっと胸を可愛がっていた左手が、今度は下腹部に伸びてきた。
「……ッ」
名前が脚を閉じる間もなく、忍足の手はあっさりと彼女のその場所に沿わされた。
「も…… やだぁ」
「嫌やあらへんやろ。ココこんなにしとるくせに」
お湯の中でもわかる。その場所は入り口付近まで、名前の体液で濡れていた。お湯とは明らかに違うそのぬめりに、忍足は口の端を上げた。彼女が感じてくれているのが嬉しい。
お湯が入ってしまわないように気をつけながら、忍足は名前のその場所を弄る。指先で中を弄ってやりながら、上部の突起も刺激して、彼女をもっとよくしてやる。
「……っ」
名前の視界がぼやけ始める。お風呂のせいなのか忍足のせいなのか、もうわからない。くらくらとした目眩を覚えて、名前は抵抗する気力をなくしてしまう。身体から力が抜けて、自分から脚を広げてしまった。その仕草に応えるように、忍足は自分の指を彼女の奥まで差し入れる。
「あっ……」
嬉しそうな声を漏らして、名前は身体を仰け反らせた。忍足は口角を上げた。性感の虜になりつつある可愛い恋人に、言葉責めを仕掛けていく。
「……俺より、名前の方がずっとヘンタイさんやな」
まずは、ささやかな意趣返し。けれど、反論は返ってこなかった。そこに指を入れられて、内側を愛されるのがよほど気持ちいいのか、名前はただ甘い喘ぎを漏らしながら、忍足の愛撫を受け入れていた。
忍足は強引に名前を自分の方に向かせると、そのまま口づけた。すぐに舌を入れて、彼女のそれを絡め取る。口内を丹念に探ってやりながら、忍足は名前の脚の間へさらなる愛撫を施していく。指を足して内側をさらに拡げてやり、彼女の身体の準備を整えていく。
しっかりと彼女の中を拡げてやってから。唇を離して、忍足は名前を元の姿勢に戻した。改めて、華奢な身体を抱え直す。さらに指をもう一本、彼女のその場所に沈めていく。充分に拡げられて潤ったその場所は、追加されたその指をあっさりと呑み込んだ。
「ん……っ」
「痛ない?」
既に意識を混濁させている様子の、素直な恋人はこくりと頷いた。忍足は喉を鳴らして笑うと、切れ長の瞳を細めた。
「ほんなら、もっと良くしたるわ」
本番さながらの抜き差しが始まる。お湯が中に入らないように、指は完全には抜かずに、忍足は名前のその場所への出し入れを繰り返す。白い喉を反らして心地よさそうに喘ぐ名前を、忍足は背後から抱きしめる。あまりの気持ちよさに名前は瞳を閉じた。忍足に身体の全てを預ける。
お風呂で響いてしまうのに、もう声を抑えることもできない。はあはあと呼吸を荒くして名前は夢中で喘いだ。粘膜が擦り上げられるのがたまらない。あまりにも良くて、もっとしてもらいたくなってしまう。時々、親指で突起まで可愛がられて、名前は一際甲高い声を上げた。
「ん…… や……ッ あ……」
抜き差しのペースは容赦なく上げられていき、名前の身体はどんどん昂ぶっていく。浴室内に彼女の切なげな息遣いが響く。
「……むっちゃかわええで」
彼女の首筋に唇を寄せながら、忍足は言葉でも名前の身体を煽っていく。
「ホンマにこっちに鏡があって、お湯が透明やったら最高やったわ」
彼女をからかうように、言葉責めの続きを仕掛ける。
「きっと、めちゃくちゃやらしいで」
水を向けられて、つい名前はその光景を想像してしまう。座ったまま、鏡に向かって大きく脚を開いて、忍足に後ろから無垢な身体と無防備なその場所を愛される。それだけでも恥ずかしいのに、鏡に映った自分の痴態にまた感じてしまって、きっと忍足を喜ばせてしまうのだ。あまりの恥ずかしさに、名前は涙ぐむ。
「も…… そんなこと言わないで……」
しかし、素直な身体はさらに蜜を溢れさせた。広げられている脚も決して閉じられず、忍足は満足げな笑みを浮かべて、興奮にさらに潤んだその場所の愛撫を続けた。
「……んっ ……あ」
繰り返される出し入れに、名前の限界が近づいてくる。のぼせてしまいそう。それに、本当に頂点を迎えてしまいそうだ。お風呂の、しかも湯船の中なのに。ここで達してしまったら、自分はどうなってしまうんだろう……。甘やかな空想に、名前は浸る。
忍足の指は相変わらず、自分のその場所の愛撫を続けている。いくつもの痣をつけられた首筋には舌が這わされ、下肢の突起も執拗に刺激され続けている。自分のコントロールはとうに離れた、欲求に素直な身体はどんどん高まって、既に直前の浮遊感に囚われていた。
「ん……」
もうたまらなくなった名前はまた、甘い喘ぎを零す。心地よさに溶けそうな意識の中で、名前は不安と、ほんの少しの期待を感じてしまう。けれど、そんな一番気持ちのいいときに。忍足の指が急に抜かれた。
「……え?」
思わず、名前は残念そうな声を出す。あまりにも残酷な、急なおあずけだ。湯船の温かさと忍足の丁寧な愛撫で、すっかり火照ってしまった身体が切なさに疼く。
「……ココで最後までしたら風邪引いてまうからな」
だからちょっとだけガマンやで。名前をギュッとして、忍足は囁く。耳殻に息がかかる。忍足の低い声に名前はまた感じてしまう。身体の奥がさらに潤う。
「ほな、ベッド連れてったるわ」
そう言われて、耳朶を甘噛みされて。なぜか、名前はとどめを刺されてしまったかのような気持ちになった。
エアコンを効かせた寝室で、忍足は風呂上がりの恋人の素肌を堪能する。たっぷりと湿り気を帯びた柔らかな肌は、高い体温と相まって最高の心地よさだ。入浴剤のふんわりとした残り香を楽しみながら、忍足は名前の無垢な身体に舌を這わせる。
今日はなぜか、甘い味がする。綺麗な鎖骨を辿って、片方の胸の膨らみの先端を口に含んだ。舌先でそこを刺激しながら、空いている方の手を彼女の下方に這わせる。肉付きのよい太ももを、優しく撫でた。
「あっ…… ん……」
下肢を撫でられてもどかしくなったのか、名前の唇から僅かな喘ぎが漏れる。
「……っ、センパイ」
ずっと閉じられていた名前の瞳が開かれる。潤んだ瞳で何かを求めるように、自分を見上げてきた。忍足は唇の端を上げて彼女を促す。何を求められているかくらい分かるけど、彼女に言わせたかったのだ。
「……どしたん?」
「あ、あのね……」
発情しきった彼女に可愛らしく挿入をねだられて、忍足は満足げに微笑んだ。
***
ベッドで全てを終えてから。名前はお気に入りのニットガウンを着て、布団の中で震えていた。
「……名前、エアコンの温度もっと高くした方がエエ?」
「ん…… これで平気です。 ……ありがとうございます」
最中もずっとついていたエアコンはよく効いていて、室内は暖かなはずなのに。名前は寒気を訴えて、厚着をして布団の中で震えていた。
「いちお風邪薬飲んどこな。持ってくるわ」
エアコンのリモコンをテーブルの上に置いてから、忍足はそう言って部屋を出て行く。一人残された名前は、ひとまずベッドの外に出た。寝室に置かれている小さなテーブルの前にぺたんと座って、忍足を待つ。
水の注がれたコップと風邪薬の錠剤の瓶と、あとは名前が昼間にあげたチョコレートを持って、忍足はすぐに戻って来た。
「ほら、薬と水や。あと、チョコも持ってきたから食っとき」
チョコは栄養価が高いからな。なんて解説をしながら、忍足は名前の前のテーブルの上にそれらを置いた。
「……ありがとうございます」
お礼を言って、名前は風邪薬の瓶を手に取った。錠剤を取り出して、水と一緒に飲む。そして、チョコレートを頬張った。昼間自分が贈った高級なもの。甘くてとっても美味しい。
「チョコ美味しいです」
自分が選んで忍足に贈ったものなのに。名前はついそんなことを言って微笑む。多くの女の子と同じように、甘いものが大好き。チョコレートも大好きだった。
「ん、ほんなら俺にも食わして」
「え?」
けれど唐突に、妙に機嫌のよい忍足に不思議なことをねだられて、名前は戸惑う。食べさせるって、つまりはいわゆる「はい、あーん」なのだろうか。ちょっとだけ気恥ずかしくなってしまいながらも、大好きな忍足の希望はなんでも叶えてあげたくて、名前はチョコレートを手に取った。
アルミ箔で個包装された、プレート状のミルクチョコ。自分が持つところだけを残して包装紙をはがして、忍足の口元に差し出す。
「はい、あ…… どうぞ」
あーんとはやはり言えなくて、名前はぎこちない言い回しで彼を促す。しかし。
「そんなん嫌やわ。口移しがええ」
「え~!」
唇を尖らせて可愛くわがままを言われてしまって、名前はさらに困ってしまう。けれど、拒んでもどうせまた丸め込まれて、結局やらされてしまうんだろう。にやにやと楽しげに笑う忍足の視線を感じつつも、名前は仕方なくチョコの端をそっとくわえた。
「…………」
くわえているので喋れない。名前は黙ったまま顎を上げて、チョコを忍足の口元に差し出す。ちょうど、キスをねだるときと同じ格好。でもそれよりも遥かに照れてしまうのはどうしてなんだろう。
「ん、めっちゃ美味そうやわ」
とてつもなく楽しげにそんなことを言いながら、忍足は名前の頬に手を添える。食べたいなら早く食べればいいのに、忍足はなかなかそうしようとはしない。恥ずかしそうにチョコをくわえて自分に差し出している、名前をじらすように。その羞恥を煽るように、彼女の表情を楽しんでいる。
『早くして下さい! チョコ溶けちゃいますし!』
そう言いたくても言えずに、名前は恥ずかしさに瞳を潤ませる。実際に唇が触れているところは、僅かだけど溶け始めていた。
「……かわええからずっと眺めとりたいけど、溶けてまうからな」
残念そうにそう言うと、忍足はようやく差し出されていたチョコを口にした。顎を斜めに傾けて、僅かに唇を開いて。まるで深いキスをするように。
その様は、まるであの有名な合コンゲームのようだ。けれど二人の唇の距離は、それよりも遥かに近い。器用に名前の唇からチョコを奪い取り、忍足はそのまま彼女の唇にキスをする。
「……っ!」
驚いた名前は反射的に逃げようとするが、それを許す忍足ではない。力強い腕で彼女をぐいっと引き寄せて。チョコはすぐに呑み込んで、深い口づけに移行する。カーペットの敷かれた床の上に彼女を押し倒して、何度も何度も口づけた。
「……もっぺん、するの?」
潤んだ瞳を不安げに揺らし、名前はキスの合間に忍足に尋ねる。
「……俺はしたくなってもうたんやけど、名前は?」
なぜか逆に聞き返される。カラダは平気なん、と続けられて。素直な名前は頬を染めてしまう。風邪の具合の話をしているはずなのに『カラダは』なんて言われるとまた照れてしまうのだ。先ほどの口移しの羞恥で、寒気なんてどこかにいってしまっていた。
大好きな彼氏からの甘すぎるおねだりを断れるはずもなく。
ベッドの上でチョコ味のキスをされながら、名前は幸せな気持ちで、忍足の背中に腕を回した。