【跡部】続・みえない星(三)
名前変換設定
恋戦記は現在一部のお話のみヒロインの名前変換可です薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
.
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……つ、疲れました」
「あーん? この程度で何言ってやがる」
「景吾先輩は慣れてるかもしれないけど、私は慣れてないんですっ!」
今日は十月四日。跡部のそれは盛大なバースデーパーティーが終わったあとのこと。もうそれなりに夜も遅い時間。跡部と彼の恋人の名前は、ホテルの自分たちの部屋に戻って来ていた。
今夜泊まるここもまた豪華なスイートルーム。シャンデリアのようなきらびやかな照明で照らされた室内に、カーテンを開け放している広い窓からは宝石のような夜景が見える。
「……わかってるよ。お疲れさん」
子供っぽく拗ねる彼女のご機嫌を取るべく、跡部はその丸いおでこにキスをする。ニヤリと微笑んだ。
「よく頑張ったな。もう今からは自由だぜ」
「ほ、ホントですか!?」
よほど嬉しいのか、名前はぱあっと表情を輝かせた。今は夜の九時。明日も休日だから朝まででも遊べる。
「じゃあ私、お風呂に入ってもう寝ますねっ!」
「待て、テメェどういうつもりだ」
まだ九時だというのに。年下の彼女は、行動までが幼児のようだ。
「え?」
「ふざけんな、年に一度の記念日なんだぞ。少なくとも日付変わるまでは俺に付き合え」
「あ…… すみません」
「ったく、ほらこいよ」
この調子で放っておいたら、あまりにも無邪気な彼女はさっさとドレスから室内着に着替えて、メイクを落としてくつろぎだしそうだ。お互いにせっかくドレスアップしてようやく二人きりになれたというのに。
年に一度の記念日をまだ終わらせたくない跡部は、名前の手を取って続きの別室に移動した。
この部屋にも大きな窓があり夜景が見える。そして窓辺のテーブルには、おいしそうなウェルカムフルーツとスパークリングワインが用意されていた。傍らにはメッセージカードが添えてあるのが見て取れる。
高級ホテルらしい行き届いたもてなしに名前は感嘆のため息を吐く。
「わぁ…… 夜景も綺麗だし、お酒とフルーツまである」
「ノンアルコールのスパークリングワインだ。用意してやるから、お前は座って待ってろ」
けれど、泊まり慣れている跡部は平然としている。しかも本日の主役だというのに、自ら給仕役を買って出た。
「え、いいですよ。私が準備しますよ」
けれど、もちろん今日の主役にそんなことをさせるわけにはいかない。名前は慌てて自分がしようとするが、逆に跡部に気遣われてしまう。
「……その靴じゃ歩くのも大変だろ。たまには俺様がサービスしてやるよ」
「……先輩」
十一センチのピンヒール。大人っぽいドレスにあわせた華奢なハイヒールは、セクシーだけど歩くのにはつらい。跡部の思いやりに名前は微笑んだ。
「……ありがとうございます」
テーブルのそばの二人がけのソファーに座って、名前は跡部を待つ。窓外の夜景は眺めれば眺めるほどに素晴らしい美しさだ。漆黒の闇の中の街明かりはまるで宝石のよう。
じっと見つめていたら、ふと名前は窓ガラスに自分の姿が映っていることに気がついた。
肩や背中を大胆に露出させた、ベアタイプの大人っぽいボルドーのドレス。深みのある色合いはこの季節らしく、もちろん跡部が選んだものだ。
シルエットは王道のプリンセスライン。歩くたびにふわりと揺れるフレアのラップスカートはちょうど膝丈で、可愛らしい彼女を大人っぽく見せてくれていた。
髪もアップに結い上げて、メイクもしっかりめだから、なんだか自分じゃないようだ。
「――名前、用意できたぞ」
不意に跡部に名前を呼ばれて、名前は現実に引き戻される。
「先輩……」
夜会服姿でグラスを持って立つ跡部は、まるで本物の貴公子のようだ。今夜のパーティーのために新調した華やかなタキシードは本当によく似合っていて、名前とひとつしか違わないとは思えない。
オールバックにセットした髪型も、普段とは違う大人っぽさで見とれてしまう。
「……? 何だよ」
「っ、何でもないです」
しかし、まじまじと見つめていたら不審がられてしまった。名前は慌てて用意してもらったお礼を言って、瞳を伏せた。
「……お誕生日おめでとうございます」
「ありがとよ」
グラスを小さく掲げて乾杯をしてから。二人はスパークリングワインを頂く。グラスの中の淡く美しいゴールドは今宵の月のようだ。
「……美味しいです」
遠慮がちにほんの少しだけグラスを傾けて、名前ははにかんだ笑みを浮かべる。その笑顔は本当に愛くるしく、いつもと何ら変わりない跡部の知っている彼女だ。
今夜は大人っぽくドレスアップしていて見違えるほどだったのに。表情をゆるめればいつも通り。
「よかったな」
跡部もまた微笑み返す。そして、これまでずっと言いたくて言えなかった言葉を改めて口にした。
「ドレス、よく似合ってるぜ。馬子にも衣装かと思ったが、なかなかサマになってるじゃねーの」
「も~ 何ですかそれっ!」
跡部の軽口に名前はむくれる。しかし、その表情はどこか嬉しげだ。彼女のその様子に気をよくした跡部は、機嫌よく言葉を重ねる。
「今夜だけっていうのが、勿体ないくらいだぜ。普段もそういう恰好でいろよ」
「それはさすがに無理ですよ。ドレスですし」
「そうじゃねぇ。大人っぽくしとけってことだ」
ここぞとばかりに、跡部は自分の日頃の要望もあわせて伝える。
「……う」
「海外じゃカワイイはガキの専売特許なんだぜ。一人前に扱われてぇならちゃんと大人の女らしくしてろ」
無邪気な年下の彼女に対してずっと自分が願っていること。可愛らしいのはいいんだけど、そろそろしっかりして欲しいのだ。しかし、それを伝えたら拗ねられてしまった。
「……先輩は大人っぽい人の方が好きなんですか?」
「……あん?」
そういうことじゃない。ただ、もっとしっかりして欲しいというだけなのに。お約束の誤解をされる。けれど、跡部は動じない。口角を上げて余裕たっぷりに微笑むと、
「そりゃ、ガキよりは大人の女の方が好きだぜ」
「えー!」
不満げな声を上げる愛しい人を引き寄せて、触れるだけのキスをした。名前の濃色の口紅がわずかによれて、彼女は頬を淡く染める。
跡部は唇を離すと、そのまま彼女の可愛らしい顔を上目遣いでのぞき込む。
「……ガキとじゃあ、こういうことはできねぇからな」
「先輩……」
キスひとつでその気になってくれたのか。名前はどこか困ったような表情を浮かべると、大きな瞳をかすかに揺らした。
二人のグラスにはまだ炭酸入りのワインが残っているというのに。我慢できなくなった跡部は、ストレートに彼女を誘った。
「……しようぜ、名前」
「っ! いつもそんなことばっかり……」
戸惑いに怒ったふりをしているけれど、彼女は嫌がらなかった。
「拗ねるなよ。せっかくドレスアップしてるんだから、堪能させろ」
機嫌よくそう言って、跡部は強引に彼女を立たせると、部屋の隅に向かって行った。
「ほ、ホントにここでするんですか……?」
「いいだろたまには」
部屋の奥の巨大な姿見の前。磨き上げられた鏡面に二人の全身が映っている。深紅のドレスの名前を背後から抱きすくめている、礼服姿の跡部だ。
パーティーへの参加を終えて部屋に戻ってきたばかり。二人ともまだドレスアップしたままだった。髪もきちんとセットされており、上質な礼装は二人を実際よりもずっと大人びて見せてくれている。
「この格好でなら、着たままっていうのも悪くねぇな」
鏡に映った自分たちの姿を見て、跡部は満足げに笑う。オールバックに固められた彼の髪がわずかに崩れて、長い金茶の髪がひとふさ、彼の整った顔にかかる。
鏡越しに、名前は跡部と見つめあう。楽しげに細められた跡部の青い瞳の奥に欲望にくすぶる火種を見つけて、名前は下肢のその場所を潤ませた。
纏っているのは淑女らしいドレスだというのに、心の内はこんなにも浅ましい。跡部に誘われるまま鏡の前に立って、逞しい腕の中に閉じ込められて、はしたない期待に胸をときめかせてしまっている。
あまりにも素直な自分の心と身体の反応に、いたたまれなくなった名前はそっと瞳を伏せた。
「……っ」
鼓動の高まりが抑えられない。自分もまた、彼としたくなってしまっていた。けれど、こんな場所での行為。場所を変えてとお願いするなら今のうちなのに、名前はどうしても言い出せない。
しかし彼女が黙り込んでいるうちに、跡部の指先が名前のドレスのファスナーにかかった。
「あっ……」
「大人しくしてろ」
「……っ!」
緊張に身体を固くする名前を宥めながら、跡部は優しく彼女のドレスを乱してゆく。そのあいまに、自身もジャケットを脱ぎ捨てネクタイをゆるめた。
腕の中の彼女を促して、可愛らしい足先を締めつけている華奢なパンプスを脱がし、遠慮なく行為を進めていく。
「せ、せめてベッドで」
素直に靴を脱ぎながらも、名前は困ったような表情で、鏡の中の跡部を躊躇いがちに見上げた。可愛らしい彼女の恥じらいに、跡部の背筋をぞくりとした興奮が駆け抜ける。
本当は自分だってここで最後までしたいくせに。名前はあくまでも貞淑ぶって、隙あらば逃げ出そうとする。けれど、今夜は逃がさない。
「ダメだ」
跡部はそう言って、彼女を閉じ込める両腕に力を込めた。彼らしい傲慢な命令形。
「ッ!」
名前は小さく息を呑むと、戸惑いと不安に揺れる瞳を潤ませた。しかしその表情に跡部の欲望はますます煽られる。命じられるまま靴を脱ぎ、ドレスを乱されても、何の抵抗もせずにいるくせに。
本心とは逆の言葉ばかりを口にする彼女を、もっと追い詰めてやりたくなる。
「本当はここでしてぇくせに、何言ってやがる」
自分を誘惑してやまない艶やかな唇から素直な言葉を引き出すべく、跡部は名前を甘やかに煽る。ドレスの上から両脚の付け根にそっと触れた。その瞬間、名前は身体を震わせる。
深紅の美しい生地越しでもわかるくらいに、その場所は熱を持って柔らかくなっていた。満足した跡部は喉を鳴らして笑う。
彼女を腕の中に閉じ込めたまま、小さな割れ目を優しくなぞる。耳元で優しく囁いた。
「心配しなくても、ちゃんとここで最後まで可愛がってやるよ」
「……っ」
最後までというフレーズが効いたのか。名前は大きく目を見開き、そして頬を真っ赤に染めた。跡部に触れられているその場所がまた、じわりと潤む。
口先でいくら違うと言っても誤魔化せない、あまりにも素直な身体の反応。嬉しくなった跡部は、彼女にいやらしい言葉を投げかける。
「……また濡れたぜ。興奮したのか?」
「ち、ちがう…… もん……」
「……嘘つくな」
全身を映し出す巨大な鏡の前。名前は跡部の腕の中でドレス越しにその場所を撫でられながら、じれったそうに身体をくねらせる。
しかし、彼女が身体を揺らすたびに跡部の指先が意地悪に動いて、彼女の割れ目のさらにいい場所を刺激する。
「も…… センパイ……っ」
「逃げようったって無駄だぜ?」
身体をひねって名前が深紅のスカートをどれだけ揺らしても、その場所にぴったりと添えられた跡部の指先は離れない。それどころか、一番感じてしまう場所を見つけられてしまい、名前はたまらない気持ちになる。
「……っ!」
彼の指から逃れようとすればするほど、その場所に触れられて逆に心地よくなってしまうのだ。
巧みな愛撫に籠絡されて。気がつくと名前は跡部に全てを委ねて、うっとりと喘いでいた。彼の指先はいつの間にかスカートの中に侵入し、今度は薄いレースの下着越しに名前のその場所を嬲っていた。
鏡越しに跡部と見つめあいながら、名前は彼に愛されるための準備を整えてゆく。感じている姿をじっくりと鑑賞されながら、自分自身のその場所を懸命に潤した。
「あ…… ん……っ」
ついにこらえきれなくなったのか、美しく彩られた名前の唇からうっとりとした喘ぎがこぼれ出る。跡部は満足げに笑う。何本もの彼の指が柔らかく熟れた彼女の内側に、下着の横からすべり込んでゆく。
「……今夜はどんなふうにされてぇんだ?」
青い瞳をすっと細めて、跡部は楽しげに名前に問いかけた。名前の体内に差し入れられた彼の指先が巧みに動き、彼女をいっそうの窮地に追いやる。
朦朧とする意識の中で、跡部の吐息に混じるアルコールの匂いを感じ取り、名前は彼に問いかけた。
「センパイ…… 酔って……」
「……酔ってねぇ」
心の中で違うとつぶやいて、名前はぎゅっと瞳を閉じる。自身の内側で蠢く指先にその場所をゆっくりと拡げられながらも、彼女は思い返す。
さっきのスパークリングワインもパーティーで頂いたドリンクも、跡部はノンアルコールって言っていたけど、完全なそれではなかったような気がする。
自分も先ほどからずっと頭の芯がクラクラするのだ。このめまいは性の快楽とは明らかに別のもの。
跡部が後ろから身体を支えてくれているから立っていられるけど、本当はすでに足元もおぼつかない。
「……ほら、お前もちゃんと鏡見ろ」
「何言って……」
「……夜会服姿の俺を楽しめよ」
「っ!」
先ほどまで名前の腰に回されて彼女を支えていた跡部の片腕が、上方にずれる。ゆるめられたドレスの胸元に、大きな手を差し入れられた。そのまま、名前は跡部に胸の膨らみを掴まれる。
「ドレスの下は下着つけないって本当なんだな」
「も…… センパイ」
名前の柔らかな感触をじかに味わいながら、跡部は喉を鳴らしてクスクスと笑う。
「――下はつけてるのにな」
「っ!」
性感を煽るようにからかわれて、名前は羞恥に目を見開く。今日の彼女の着衣は全て跡部が用意したものだった。
美しい深紅のドレスも全てが柔らかく透けてしまうレースの下着も、セクシーなピンヒールもきらめくダイヤのジュエリーも、全て跡部の手によるもの。
本当は全部知っているくせに。白々しい彼の言葉に名前は唇を噛みしめる。
「……ま、どうせ脱がすからどっちでもいいけどな」
楽しげにそう言うと跡部は名前の脚の間から指を引き抜いて、再び彼女のドレスのファスナーを下ろした。ドレスの胸元はさらにゆるんで、名前の真っ白な胸の膨らみがこぼれ落ちる。
「ッ!」
胸を隠し、支える下着はつけていない。興奮に固く尖り始めた胸の突端が鏡に映り、名前は思わず瞳を閉じる。自身がそのような気持ちになっているせいか、鏡に映った自分の姿は裸よりずっといやらしく見える。
礼服姿の跡部の腕の中。彼はきっちりとドレスシャツを着込んでいるのに、自分だけが秘すべき場所も露わな姿で、恥ずかしくて仕方がない。しかし、案の定というべきか名前は跡部に叱られる。
「こら、目ぇ開けろ」
けれど、いくら跡部にそう言われても名前は目を開けられない。強い調子で彼に言い返す。
「イ、イヤですっ」
「……開けねぇなら続きしねぇぞ」
「……ッ!」
愛の営みの最中の跡部はこの上もなく意地悪だ。艶やかな低い声で囁かれて、名前は身体を震わせる。熱を帯びた吐息を耳殻にかけられるが、しかし名前は目を開けなかった。
「……ムリ」
「……あん?」
名前のドレスのファスナーを下ろした跡部の手が、彼女の下腹部に戻ってくる。
「テメェ俺の言うことが聞けねぇのか」
「っ! せんぱ……」
スカートの中に手を入れられて、今度は下着の中まで進められた。一番感じてしまう突起にお仕置きのように直接触れられて、名前はか細い悲鳴を上げて白い喉を反らす。
「やっ……!」
この瞬間を待っていたはずなのに、名前は反射的に身体をよじって跡部を拒もうとしてしまう。
しかし、跡部は彼女の胸の膨らみを掴んでいた方の手で、名前の身体をしっかりと抱きしめると、彼女の自由を奪った。そのまま跡部は彼女の下肢を可愛がっている指先を、大胆に動かしてゆく。
「あっ…… やっ……」
名前の身体に痺れにも似た甘やかな快感が押し寄せて、彼女の瞳が潤み始める。
跡部はそんな彼女を鏡越しに見下ろすと、楽しげに唇の端を上げた。そして、名前のその場所への愛撫の合間に、彼女の太ももに指をすべらすと、機嫌よく笑った。
「……今日はずいぶんやらしい下着つけてるみてぇじゃねぇか。そんなに俺を喜ばせたいのか?」
ドレスのスカートの下は、タンガタイプのショーツとニーハイのストッキングに、それを吊すガーターベルトという扇情的な装いだった。こんなに恥ずかしい下着も、跡部が用意したから頑張ってつけただけなのに。
「今夜はサービスがいいんだな」
自分から進んでしたことのように言われて、名前は羞恥と困惑に涙をこぼしそうになる。
「……お前からのバースデープレゼントはこれなのか?」
そう言って、嬉しそうにガーターのベルト部分を撫でる跡部に。名前は我慢できなくなり、つい言い返してしまう。
「ち、ちがうもん……」
けれど、その言葉はあっさりと無視されて、跡部はまた名前のその場所を可愛がり始める。今度はまるでじらすように、下着の上から小さな割れ目をゆっくりとなぞる。
とろけるような快感が名前の身体に戻ってくる。もどかしいような、たまらない気持ちになって。名前は甘い吐息を溢れさせ、華奢な身体を仰け反らせた。
……跡部の愛撫はこんなにも心地よかっただろうか。自身の一番弱い場所を優しく嬲られながら、名前はそんなことを考える。
いつも心地いいけれど、今夜はアルコールのせいか性感がより増幅されているような気がする。布越しに優しく愛されているだけなのに、意識が次第に霞ががってくる。
もっと欲しくなってしまった名前は、こらえきれずに脚を広げて腰を反らした。彼女の仕草に応えるように、跡部の愛撫が激しくなる。
その場所を指先で強く擦られて、名前は反射的に甲高い悲鳴を上げる。
「あ…… ん……っ!」
目を見開いて喉を反らした。そのとき、彼女は自分の正面の大きな鏡を見てしまう。
そこに映っていたのは、跡部の腕の中で裸同然の姿で淫らに喘ぐ自分自身で、名前の身体を背徳感にも似た甘い痺れが駆け抜ける。今まで感じたことのない甘美な被虐の快感に、名前は酔わされる。
「……っ!」
その快感をもっと感じたくなってしまった彼女は、興奮に潤んだ瞳で鏡の中の跡部を見上げた。鏡の中の彼は鋭い瞳を愛しげに細めながら、名前のその場所に優しく丁寧な愛撫を施していた。
今まで改めて見たことがなかった、愛の営みのさなかの跡部の表情に、名前は心臓をぎゅっと掴まれたような切なさを覚える。
この上もなく幸せそうな青い瞳に、力強くも繊細で大切な何かに触れるように動く指先。その全てが自分だけに捧げられているのかと思うと、それだけで名前は満たされて幸福の頂点を迎えてしまいそうになる。
今も浅い場所をかき混ぜられているだけなのに、気持ちと身体の昂ぶりを押さえきれなくなっていた。跡部に愛されている名前のその場所がさらに疼いて、はしたない蜜を溢れさせる。
彼女のその場所の変化に気づいた跡部は、名前の様子を確かめようと顔を上げた。そのとき、鏡越しに二人の視線が絡み合う。まるで彼女を挑発するかのように、跡部は不敵な笑みを浮かべる。
「……そんなにいいのか?」
「っ!」
そんなにいい、なんて思っていても口に出せるはずがない。名前は羞恥と、そして彼に追い詰められる快感に涙をこぼす。
「も、いじわる」
「……ほら、鏡に手ぇつけ」
身体の訴える快感に心が追いつかず、ついに泣き出してしまった彼女を、しかし跡部は優しく促した。さらなる興奮と快楽を与えてやるべく、彼女を追い立ててゆく。
言われた通りに手をついたらどんなことをされるのかくらい、もちろん名前も分かっていた。
けれど、もっと悦楽の高みに攫われたくて。名前は跡部に命じられるまま、鏡面に両手をついて彼に向かって腰を突き出した。
鏡の前でこんなことをするなんて、恥ずかしくて仕方がない。甘美な期待と、わずかな羞恥心に頬を染めている浅ましいその表情も、全てが透けてしまう下着だけを身につけた恥ずかしいその場所も、全部跡部に見られているのに。名前は自分を抑えられない。
二度目の悦楽の頂点を早く極めてしまいたくて、加虐趣味あふれる彼のいいなりになってしまっていた。
「そうだ、それでいい……」
これまでの愛撫で熱く熟したその場所に、何本もの指を入れられて。快感に霞み始める意識の中、名前は跡部の艶やかな声を聞く。
磨き上げられた巨大な鏡の前で、全てが鮮明に映し出されているというのに。跡部の愛撫にすっかり酔わされてしまったのか、名前はすっかり恍惚に浸った様子でうっとりと喘いでいた。
恥じらいなどとうに忘れ、あまりの性感の高まりに焦点を失いかけている二つの瞳は、けれどしっかりと鏡の中の自身を見つめて、そこからも貪欲に快感を得ようとしていた。
色づいた突端も露わな胸の膨らみは、彼女が身体を揺らすたびにはしたなく揺れ、艶やかな口紅の引かれた唇は薄く開かれ、上気した頬は淡く染まっていた。
申し訳程度に裸の身体に絡んでいる深紅のドレスも、全てが透けるいやらしいショーツやセクシーなガーターベルトも、全て鏡に映し出されて名前と跡部の興奮を加速させていた。
「気持ちいいかなんて…… 聞くまでもねぇな」
満足げにそう言って、跡部は青い瞳を細める。愛しの恋人は、鏡の中でずいぶんとよさそうに喘いでいる。
彼女のその場所からは水のような蜜が溢れて、跡部が指を動かすたびにくちゅくちゅと淫猥な音をたてていた。
「はぁ……っ あ……んっ」
甘いため息を漏らして、名前は幸せそうに身体をくねらせる。腰を揺らして、跡部の指が自分の中のさらにいい場所に当たるように、身体の位置を変えてきた。
「……いやらしいヤツだぜ」
快感に貪欲な浅ましい彼女を見下ろして、楽しげにつぶやくと、跡部は鏡面についていた名前の両手を、自分の上半身に回させた。両腕を上げさせて、自分の首の後ろに絡めさせる。
ずっと前屈みだった名前の背筋がまっすぐに伸び、そして、彼女は背後の跡部に自分の裸身を見せつけるように、背中を反らせた。無防備で無垢な彼女の全てが、巨大な姿見に映る。
深紅のドレスの絡んだ真っ白な裸体に、跡部に触れられている胸の膨らみ、ガーターベルトに吊されたニーハイストッキングを身につけたしなやかな脚と、今まさに跡部の指先に嬲られている透けるショーツをつけたその場所も、全てが鏡に映って彼女と跡部を昂ぶらせてゆく。
「あ……っ」
さらに腰をくねらせて、自分の一番恥ずかしい場所を自分で鏡に映して、名前は満足そうに微笑んだ。跡部に指を入れられているその場所だ。彼の大きな手のひらをぴったりと添えられて、今も優しく嬲られている。
うっとりと息を吐いてから、もっと高みに上りつめたい名前は、跡部にさらなる愛撫をねだった。
「……仕方ねぇな」
跡部は楽しげに笑うと、鏡の中の彼女を見下ろした。当人に乞われるままに、豊かな胸の膨らみと潤んだ性器をさらに情熱的に可愛がる。
彼女の上下の突端を愛してやりながら、跡部はショーツの中の名前のその場所に差し込んでいる指を増やして、彼女の身体を悦楽の高みへと押し上げていく。
「あっ…… あ……っ」
切なげな、愛くるしい息遣いを聞きながら。そして、鏡に映る彼女の媚態を楽しみながら、跡部は名前の首筋に口づけた。
愛用の薔薇の香水が匂い立つ、柔らかく美しい肌。美味しそうなその肌を、跡部はきつく吸い上げて、舌を這わせて甘く噛む。
夜会服姿で彼女の首筋に歯を立てている跡部の姿は、まるで伝承の吸血鬼のようだ。白磁の肌にブルーダイヤの瞳が美しい、彫刻のように完璧な容貌。
霞みがかった意識の中、名前は不意に鏡の中の跡部の姿を見失う。けれど、それはほんの一時だけのこと。名前は背後から自分を抱きしめてその首筋に顔を埋めている、鏡に映った彼を見つけて安堵する。
跡部は名前の体内から一旦指を引き抜くと、ショーツの紐に手を掛けた。サイドで蝶結びにされている細いリボンを、じらすようにゆっくりと引っ張る。
名前は興奮と期待でその場所をさらに潤しながら、鏡に映った自分自身の姿を見つめた。
スカートをたくし上げられたまま、少しずつ跡部にショーツを脱がされてゆく自分の姿。名前の鼓動はいやがうえにも高まってゆく。
繊細なレースでできた全てが柔らかく透けるいやらしい下着でも、彼に脱がしてもらうその瞬間はこんなにも興奮してしまうのだ。
やがて両サイドの支えを失った名前のショーツは、音もなく絨毯の上に落ちた。
跡部は手近な場所にあった小さな一人掛けのソファーを引き寄せると、名前を座らせた。
上体を背もたれに預けさせて、彼女の両脚を左右それぞれの肘置きに掛けて、アルファベットのMの字のように大きく開かせる。そして、ドレスのスカートをたくし上げた。
ショーツはもう身につけていない。名前の潤んだその場所が、磨き上げられた鏡に映る。
「あ……っ」
とろりとした瞳で、名前は興奮に声を上げた。彼女の嬉しそうな声に跡部は満足そうに笑う。
「見えるか?」
「見える……」
「もっと見せてやるよ」
性感の昂ぶりに熱く熟し切った名前のその場所に、跡部は指を伸ばした。ひんやりとした指先で肉厚の花びらを広げて、奥まった位置にある彼女の入り口を鏡に映す。
煌々とした明かりのもとで、二人は淫猥な遊びに興じる。
「あ……っ」
「いつも、ここに入れてるんだぜ」
「……っ!」
彼女の一番恥ずかしい場所を広げて鏡に映してやりながら、跡部は名前を煽るようにからかう。
素直な彼女は鏡に映った自分の姿に興奮し、さらにその場所を濡らしてしまう。
ひくひくと震えていた名前のそこから、ついに透明な蜜が溢れてきた。名前の反応に気をよくした跡部は、彼女のそこを弄り始める。
「やっ…… だめぇ……」
「……ダメじゃねぇだろ。素直になれよ」
「……っ!」
鏡の前で大きく脚を広げたまま、名前は無防備なその場所を、跡部にたっぷりと弄ばれる。
引っ張って広げられ、摘んで弾かれ、からかうように擦り上げられた。跡部の繊細な指先は心地よく、名前はうっとりと甘く喘ぐ。
剥き出しのそこを鏡に映して、彼に可愛がられている彼女の姿はかつてないほど淫らで、跡部もまた自身のそこをいっそう昂ぶらせた。
「やぁ……っ ん……」
熱を帯びた吐息を漏らして、名前はまるでいやいやをするように左右にゆるゆると上体をよじる。本当に嫌なら脚を閉じてしまえばいいのに。そうしようとはしない彼女に跡部は笑った。
「イヤじゃねぇくせに、嘘つくな」
低い声で彼女の耳元で囁いて、跡部は名前の下肢の突起に指を伸ばす。
「……あっ」
そこに触れられた瞬間、彼女はひときわ愛らしい悲鳴を上げた。ぎゅっと目を閉じて、自分たちを映している鏡面から目をそらす。
「……目ぇそらすな。ちゃんと見てろ」
熱く潤んだ彼女のそこを丁寧に可愛がってやりながら、跡部は艶やかな声で名前に命じる。名前は羞恥に息を呑むが、彼に命じられた通り正面の姿見に視線を戻した。
「あ……っ!」
そこに映っていたのはあまりにもはしたない自分の姿で、名前はかすれた声を上げて、大きな瞳を潤ませた。
裸の身体に赤いドレスを絡ませて、ショーツを脱いだ脚を大きく広げて、その場所を跡部に愛されている自分の姿は、何ていやらしいんだろう。
隠さなければならない秘所は全て暴かれて鏡に映されて、彼の意地悪な指先に甘い悪戯をされていた。
こんなにも恥ずかしいことをされているのに。鏡に映った自分の表情は、どこか喜んでいるようにさえ見える。興奮に上気した頬は淡く染まり、大きな瞳は性感の高まりにうっとりと潤んでいた。
けれど、こんなにもいやらしく恥ずかしい姿なのに、名前は鏡に映る自分自身から目が離せない。感じたことのない快感と興奮に襲われて、むしろずっとその淫猥な姿を眺めていたくなっていた。
彼女のその様子に満足した跡部は、名前の下肢の突起に触れながら、そのすぐそばの小さな入り口に指を差し入れた。鏡に映る可愛らしい媚態を楽しみながら、次第に愛撫を激しくしていく。
「あっ…… あ……」
名前の掠れた喘ぎを聞きながら、跡部はさらに彼女を追い上げる。無防備な美しい首筋に舌を這わせて、きつく吸い上げた。そして、耳元で甘く囁く。
「……綺麗だぜ」
「っ……!」
吐息混じりの艶やかな声。名前は思わず鏡の中の彼を見上げてしまう。鏡越しに目が合って、名前は跡部に微笑みかけられた。唇の端だけを上げた、彼のいつもの不敵な笑み。
その瞬間、名前の突起が跡部の爪先で強く弾かれた。あっと思う間もなく、名前は悦楽の高波に攫われる。
ひときわ愛らしい悲鳴を上げて、磨き上げられた鏡面に自身の全てを映して。名前は華奢な身体を痙攣させた。
ソファーの肘置きに両方の脚を掛けたまま、名前は焦点のぼやけた瞳で荒い息を吐く。ついに性感の頂点を極めてしまった。けれど、これはまだ一度目。夜は長く、そして、跡部との行為はこんなものでは終わらない。
名前はそっと瞳を閉じた。頂点の余韻に浸りながら、乱れた呼吸を整える。すると跡部が正面に回り込んできた気配がした。次は何をされるのかと名前は重いまぶたを開ける。
まだ腰砕けで身じろぎすらままならないのに。跡部は名前をソファーから立ち上がらせようとした。
肘置きに掛けられた細い脚をそれぞれおろして、自分の身体に彼女を寄りかからせて抱き起こす。そのままゆっくりと絨毯の上に座らせた。
そして、跡部はソファーをどけると、どこかに行ってしまった。ひとりにされてしまった名前は、座り込んだまま、さきほどまでの甘やかな行為を反芻する。
跡部に見つめられたまま、鏡の前で脚を広げて、興奮の頂点を迎えてしまった。
(……その瞬間を迎えるとき、自分はあんなふうになるんだ)
これまで知らなかった自分の新たな一面を、またひとつ跡部に教えられて、名前は下肢をさらに潤ませる。
鏡の前での行為が、あれほどまでに心地いいなんて思わなかった。普段とは違う、淫猥な遊びにも似た背徳感あふれる愛の交歓に、名前は嵌り込んでゆく。
絡み合う二つの身体は驚くほど淫猥で、そして、自分の恥ずかしい場所を鑑賞されるのも、たまらない気持ちよさだった。
跡部もそれを分かっているのか、殊更にそのような場所にばかり視線を這わせて、名前の性感を煽ってくる。
「――飲めよ」
上方から降り落ちてきた彼の声に、名前は現実に引き戻される。いつの間にか戻って来た跡部に押しつけるようにグラスを差し出され、名前はそれを手に取った。
注がれていたのは、さきほどの澄んだスパークリングワインではなく、ドレスと同じく血のように赤いカクテル。ほのかなカシスの香りに誘われて、名前はそれに口をつける。
甘く優しい口あたりが、アルコールの強さを巧妙に隠す。破滅的な愛に溺れる美貌の貴婦人の名を冠したウオッカベースのカクテルを、名前はそうとは知らず飲み干した。
頂点を迎えたばかりの無防備な身体。あっという間に酔いが回り、彼女の視界が大きく傾いだ。
「……続き、しようぜ」
朦朧とした意識の中、名前は跡部に誘われる。しかし、強いアルコールにすっかり酔わされてしまった彼女は、返事ができない。
そんな名前を見下ろして跡部は満足げに微笑むと、彼女の手の中の空のグラスを取り上げて、絨毯の上に転がした。
そのまま名前を強引に立ち上がらせて、残酷なまでに美しい鏡面に両手をつかせる。
「……ほら、もっと腰上げろ」
鏡の中の青い瞳が嗜虐に細められるのを見て、しかし名前は下肢を潤してしまう。心の奥の被虐心が、不意に頭をもたげる。
今宵の跡部は美しくも淫らな魔物のようだ。無垢な彼女を愛欲の営為に引きずりこむ様は、中世の絵画に描かれた淫魔のようでもあり、彼女の白い首筋に唇を這わせる様は、物語の中の吸血鬼のようにも見える。
そんな彼の誘惑に抗えず、名前は命じられるまま腰を突き出して、何も身につけていないその場所を差し出してしまう。この場所に、もっと意地悪でひどいことをして欲しかった。
「……上出来だ」
楽しげなその言葉とともに、彼女の細い腰が跡部の両手に抱えられる。甘やかな期待に、名前の唇から熱い吐息がこぼれる。潤んだ彼女の入り口に、充血しきった跡部のそれが宛がわれ、そして。
「……あっ ……ん」
白い喉を反らして、名前は恍惚の笑みを浮かべて喘ぐ。ようやく彼女のそこに、張り詰めた跡部自身が与えられたのだ。名前の表情を鏡越しに楽しみながら、跡部は彼女のその場所にゆっくりと自分自身を沈めてゆく。
挿入の瞬間の痛みに眉を寄せる表情も、深い場所までゆっくりと入れられているときの多幸感溢れる表情も、愛の営みのさなかの名前は全てが可愛らしくて、跡部は何度でも堪能したくなる。
カクテルと性感に酩酊したとろりとした瞳もたまらない色っぽさで、めちゃくちゃにしてやりたい欲望がかき立てられる。そして、最後まで自身を沈めきってから。跡部は抜き差しを開始した。
鏡の中の彼女の嬌態を楽しみながら、跡部は名前を背後から突き上げる。
裸同然の名前の身体はとても扇情的だ。二つの胸の膨らみは、跡部が抜き差しを繰り返すたびに激しく揺れ、華奢な身体に絡みつく深紅のドレスは、いよいよずり落ちそうになっている。
うなじも露わなアップのヘアスタイルは色っぽく崩れて、後れ毛が白い首筋にかかり、濃色の口紅も切なげに喘ぐ彼女をより淫らに、より大人の女性らしく見せている。
ずっとつけたままだったダイヤモンドの長いピアスもゆらゆらと揺れて、まぶしいほどの室内の明かりを反射してきらめいていた。
そのあまりにも蠱惑的で美しい姿を、瞳を閉じて性感を夢中で享受している本人にも見せてやりたくて。跡部は抜き差しのペースを落とし、艶やかな声で囁きかけた。
「――可愛いぜ。見てみろよ」
跡部に促されて、名前は目を開ける。鏡面に映った自分はまるで知らない女の子のようだった。白い身体に深紅のドレスを絡ませて、ドレスと同じ色の口紅をつけて、跡部の腕の中で彼と身体を繋げて、心地よさそうに頬を淡く染めている。
その様はとても大人っぽくて、いやらしい。自分自身の淫らな姿を跡部に見せつけられて、名前はさらに興奮してしまう。
ぞくりとした快感が彼女の身体を駆け上がり、下肢の内側に呑み込んでいる跡部自身をきゅっと締め上げた。
「……感じたのか?」
喉を鳴らして楽しげに笑う跡部に、しかし名前は切なげに訴える。
「感じちゃった……」
もうたまらないといった様子で、名前は鏡面に赤く塗られた爪を立て、眉を寄せた。
「気持ちいい…… 気持ちいいの……」
二度目の頂点を早く迎えたくてたまらない。名前は跡部にさらなる突き上げをせがむ。
ここが巨大な鏡の前で、浅ましく彼を欲しがる自身の全てが跡部に鑑賞されているというのに。こらえきれなくなった名前は、跡部の揺さぶりを求めはじめた。
すっかり彼に魅了されてしまった。名前はその無垢な身体を心ごと、自分から跡部に差し出す。
「……仕方ねぇな」
跡部は名前のドレスをさらに乱して、スカートのすそをくわえさせた。彼女の下肢、ほっそりとしたウエストから足の爪先までの全てが、磨かれた鏡に映し出される。
すでにショーツは脱がされて、ガーターベルトとニーハイストッキングしか身につけていない。いやらしい下着と、跡部のものを呑み込んでいる剥き出しのその場所を、彼に見せつけるような姿勢を取らされて。
名前はあまりの快感に瞳を閉じた。深紅の布地をくわえたまま白い喉を反らして、細い腰をさらに跡部に向かって突き出して、甘やかな期待に胸を高鳴らせながら、彼からの突き上げを待つ。
彼女のその姿に、跡部はどうしようもないほど欲情する。たまらなく可愛らしくていやらしい、自分だけの愛しい人をめちゃくちゃにしてやりたい。鏡に映った可憐な媚態を堪能しながら、跡部は再び抜き差しをしはじめた。
そのペースはあっという間に速くなる。名前はあまりの心地よさに、深紅の布地をくわえたまま、声を殺して懸命に喘ぐ。待ちかねたクライマックスがようやく訪れる。名前は喜びと興奮のただ中にいた。
夜会服を纏った跡部と彼に抱かれている無垢な彼女は、美しいヴァンパイアと、彼に狩られ、全てを奪われる哀れな獲物そのものだった。
申し訳程度に彼女の裸の身体に絡む深紅のドレスも、まるで滴る血のようで、彼の激しい突き上げを全身で受け止めながら、うっとりと恍惚に浸る名前のその表情は、愛らしく、そして素晴らしく淫らだった。
情欲に焦点を失った瞳は、しかし、自分自身の浅ましい姿をしっかりと捕らえており、そこからも貪欲に快感を得ているようだった。
鏡を使った淫らな行為にすっかり夢中になっている様子の、彼女の姿態を楽しみながら、跡部は抜き差しを繰り返す。
きらびやかなジュエリーと美しいドレスと、そして扇情的な下着を纏ったまま乱れる、自分だけの愛しい姫君。
王子に化けた悪い魔物に淫らな遊びを教えられ、少女らしい恥じらいを失って、本能のままに快楽を貪る大胆な姿は、よそゆきのしとやかな姿よりも遥かに魅力的だ。
彼女の媚態に誘惑された跡部は、彼女の下肢の突起に指を伸ばす。
「やっ……!」
一番感じてしまう場所に触れられて、名前は甲高い悲鳴を上げる。彼女の唇からドレスのスカートのすそが離れる。
跡部は名前の突起を刺激してやりながら、ドレスのファスナーを完全に下ろして、彼女の身体から深紅のそれを脱がしてやった。
彼女のそこから自分自身を引き抜いて、ドレスを絨毯の上に落として、再び自身をその場所に差し入れる。
跡部と繋がり合ったまま、裸の身体にガーターベルトとニーハイストッキングという破廉恥な恰好で、名前は跡部に下肢の突起をいじられる。夜会服姿の跡部の腕に囚われて、名前は真っ白な裸身をくねらせて身悶える。
室内は明るく、そして二人のすぐそばにある巨大な窓はカーテンも閉めていない。窓の外を誰かが通れば二人の――名前の痴態は丸見えだった。大きな鏡の前で、跡部と身体を繋げて楽しんでいる姿を見られてしまう。
しかしここはホテルの高層階。窓の外はきらめく夜景で、人目の心配などする必要はなかった。
名前は自身の裸体に這わされる跡部の視線だけを意識しながらうっとりと乱れて、彼との交わりの心地よさに溺れていた。
跡部は彼女をさらなる性感の高みに押しやってやるべく、下肢の突起の愛撫をやめ、その細い腰を両手で掴んだ。今度は二人で、悦楽の頂点に上りつめる。
跡部のゆるやかな抜き差しは、いつしか彼女の全てを奪い尽くす激しいものへと変わっていた。名前の無垢な身体は心ごと、愛しい跡部に蹂躙される。
二人はいっそうの快楽を求め合い、互いの身体を夢中で貪った。悦楽の極みを目指して二人同時に駆けのぼる。
そして、ついに彼女の真っ赤な唇から甘い悲鳴が溢れ出た。跡部の腕の中の無防備な裸身が痙攣する。
淫らで美しい狩りのしめくくりに相応しい、見事な頂点を迎える愛しい姫君の姿を青い瞳に焼きつけながら、跡部は自身の欲望を彼女の無垢な身体に注ぎ込む。崩れ落ちる華奢な身体を抱きとめて、愛の言葉を囁いた。
彼からの愛の言葉を聞きながら。跡部に全てを奪われて、精を注がれた喜びに満たされて。薄れゆく意識の中、彼の腕の中で、名前は恍惚の笑みを浮かべた。
***
翌朝。名前はベッドの中で目を覚ました。かろうじて白いシルクの寝衣を着ていたものの、自分で着た覚えがないから、これはきっと彼が着せてくれたのだろう。
昨夜の濃密な情事と深酒のせいか、いまだ身体は重く怠く感じる。しかし、名前は自分を奮い立たせてベッドから起きだすと、鏡の前に立った。
「……あ」
頬を淡く染めて、名前は情事のさなかのような甘く掠れた吐息を漏らす。鏡に映る彼女の首筋には、まるでヴァンパイアに血を吸われたかのような暗赤色の噛み痕があった。
「夢じゃなかったんだ……」
数時間前にこの場所で、愛する人と愉しんだ淫らな饗宴を思い出し、名前は再び脚の間をとろりと潤す。