悪い子になっちゃう?(R18)
名前変換設定
恋戦記は現在一部のお話のみヒロインの名前変換可です薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
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原田は名前の肉芽に舌を伸ばし、包皮を剥いて舐めてくる。
「左之助さんっ……。ああんっ……」
名前はあまりの恥ずかしさと心地よさに生きた心地がしない。心臓が破裂してしまいそうだ。
「……やっぱり、ここが弱いんだな」
原田は自分の口もと近くにボイスメモが起動中のスマホを置いたまま、ひときわ艶めいた声で囁く。
名前の秘唇に原田の吐息がかかり、名前はびくりと身体を震わせ、さらに蜜を溢れさせる。
ふたりだけの秘め事を電子機器で記録するという淫らな遊びに夢中になっていた名前は、秘唇からひっきりなしに水のような蜜を滴らせていた。
まるで原田の前でお漏らしをしているかのようだ。それだけでも恥ずかしいのに、お漏らしした水分を彼に舐めて綺麗にしてもらって、その様子をスマホで撮影されているなんて。
なんていやらしくて、恥ずかしくて、気持ちいいんだろう。
自分たちの淫らな喘ぎ声や息遣いに、舐められているときの水音。
それら全てが記録されていると思うと、名前はぞくぞくとした心地よさが煽られて、止まらなくなってしまう。
(もうダメ…… 恥ずかしいのに溢れちゃう……)
意識の上ではこんなこといけないとわかっているのに、本能の方はもう無理で、少しでも気を抜けば上の口で気持ちいいと叫んでしまいそうだ。
愛の営為の全てを電子機器で記録されていると意識するだけで、こんなに良くなれるなんて知らなかった。
「……ほら、名前。言ってみろよ。気持ちいいんだろ?」
「左之助さん……」
「言えばもっと良くなれるぜ? ……ほら、素直にイっちまえよ。名前」
原田の甘い囁きはまるで媚薬のようだ。愛する彼に促され、ついにこらえきれなくなった名前は、さらなる快楽を求めて身の内から湧き出る衝動を言葉にしてしまう。
「気持ちいいです……っ! 左之助さんにあそこ舐められるの、すごくすごく気持ちいい……っ!」
この浅ましい叫びも彼のスマホに記録されていると思うと、名前はさらに昂ってしまう。
自分に命じられるまま、あられもない痴態を晒す名前に加虐心を煽られたのか、原田は先ほどまで彼女の脚の間に置いていたスマホを手に取り、名前の口もとに移動させると、彼女を再び促した。
「……いいぜ名前。さっきのもういっぺん、スマホに向かって言ってみな」
「あっ……」
自分の口もと近くに置かれた、ボイスメモが作動中の原田のスマホ。気がつくと、名前はさらなる快楽を求めて、自分からスマホに顔を近づけて懸命に声を吹き込んでいた。
「――左之助さんにあそこいじってもらうの、すごく気持ちよくって大好きです……っ!!」
切なげに眉を寄せながら、自らの欲望の全てを開放するかのようにそう叫んだ名前は、ついにたったひとりで性の頂点を極めてしまう。
名前の無垢な裸体はひとときの間ぴくぴくと痙攣し、そしてゆっくりと弛緩した。
「よく言えたな、名前……。いい子だぜ。……すげぇ気持ち良さそうだったな」
愛おしそうに瞳を細めて、原田は名前の淫らさと従順さを賛美する。しかし、名前は複雑だ。
(いい子じゃないです……。してるときの声を録音されて、気持ちよくなってイっちゃう悪い子です……)
改めて、とんでもない言葉を口にしてしまった。羞恥と後悔と快感がないまぜになった不思議な喪失感が押し寄せて、名前はもう何度目かの涙をこぼしてしまう。
すごく気持ちよかったけど、またひとつ穢されてしまったような気がして。
原田は名前のその場所からようやく指を離すと、彼女の蜜で濡れそぼった指をすぐそばに用意していたティッシュで拭いた。自分の唾液で汚れた口もとも親指でぬぐい、長々と続いた奉仕の後始末をする。
名前は乱れた呼吸を整えながら、淡々と身だしなみを整える原田をぼんやりと見つめる。
意外なほど整った顔立ち、野性味と秀麗さをあわせもつ、すっきりとした容貌。体育教師らしくスポーツで鍛えた均整の取れた体躯は、まるで彫刻のように美しい。
性格だってすごく優しくて、大好きだ。ずっと、ずっと昔から……。
そのとき不意に。名前は数年前の出来事、原田に初めてキスをされたときのことを思い出した。
『俺の前でくらい素直になれ』
『俺だってそんなに立派な教師じゃないから、だからお前も悪い子になっていい』
そのときはまだ彼のことを先生と呼んでいたけど、今は違う。
(左之助さん……)
あなたに言われたとおりに素直になったら、あんなにも乱れてしまったのですが、こんな私でも好きでいてくれますか?
愛しい原田の前でかつてない痴態を晒してしまった名前は、すっかり自信をなくしてしまい、消え入りたい気持ちになってしまう。
名前がしょんぼりとしているのにようやく気づいた原田は、ベッドがきしむ音をさせながら名前に近づくと、彼女の無防備な裸身を抱きしめて、慰めてやった。
「……よく頑張ったな、名前。すげぇ良かったぜ。今までで一番、可愛かった」
「本当、ですか……?」
「まさかお前が、こんなに乱れてくれるなんて思わなかったぜ……。頑張らせすぎちまったな」
ようやく満足したのか、憑き物が落ちたかのような穏やかさで苦笑する原田に、名前は安堵する。
ようやくいつもの彼らしさを見せてくれた原田に、名前もまた先ほどまでの情交の狂騒から離れて、落ち着きを取り戻した。
「も、ほんとですよっ……!」
原田は名前の顔の近くに置いていたスマホを手に取り、何事かを確認すると、ニンマリと人の悪い笑みを浮かべる。
「よかったな、名前。お前のやらしいとこ、ちゃんと全部撮れてるぜ」
「っ……!」
「録音したデータはお前にも送ってやるからな」
名前は頬を赤くしながらも、こくこくと何度も頷く。そんな彼女を横目に、原田は再び口を開いた。
「……それじゃあ、続きでもするか」
***
「――今度は俺を良くしてくれよ」
原田にそうねだられて、名前は愛しい彼に奉仕をしていた。一通りのことを済ませて、いよいよ彼のものを口に含む。
録音したデータは送ってもらえる、先ほどそう聞いて名前の献身もいつも以上に情熱的なものになっていた。
愛しい原田を喘がせて、その声を録音したデータが欲しい。それさえあればいつでも好きなときに、愛する彼の一番格好いい姿をありありと思い出せる。
(左之助さんっ…… 左之助さんっ……)
心の内で彼を何度も呼びながら、名前はとろりとした瞳で原田のものをきつく吸い上げる。
「いいぜ名前、お前のこれは最高だな……。……っは、ん……っ」
名前の奉仕に応えて、原田もまたいやらしい言葉と息遣いを唇に乗せたが、しかし……。
「っと、録音してるんだったな……」
ほど近くに置いていたスマホに気がつき、そのことを思い出した原田は自身の淫らな振る舞いを抑えようとする。声を押し殺して感情を抑え、平静を保とうとしてきた。
しかし彼に乱れてほしかった名前は、原田を喘がせようと口内の彼自身をさらにきつく吸い上げた。
「んっ…… 上手いぜ、名前……。その調子だ」
原田の下腹部に顔を埋める名前の髪を、原田は労うように優しく撫でる。既にある程度の存在感のあった彼のものは、名前の奉仕でどんどん大きく硬くなってゆき、その質量をいや増していた。
わかりやすく乱れることはなくても、彼もまた快楽を得ているのだ。
とはいえ、経験豊富な大人の男である原田を乱れさせるのは並大抵のことではなく。
心地よさそうな吐息は漏らしてくれるものの、余裕を失わない原田に名前はじれったくなってしまう。口淫の合間に、名前は原田を見上げると。
「……声、我慢しないでください」
「……さっきとは真逆だな」
「左之助さんに、もっと乱れて欲しいんです」
「おいおい、俺の真似でもしてるのか?」
名前のあまりにもあけすけな要求に、原田はおどけて肩をすくめる。しかし、妙なところで誠実な彼は、素直な本心を吐露してくれた。
「……男の喘ぎ声なんて、録っても仕方ねぇだろ?」
そう口にする原田がどこか寂しげに思えて。気がつくと、名前は強い口調で抗弁していた。
「仕方なくないです……! 左之助さんの声聞きたいです。我慢しないでください」
「……何だよ、そんなにいいのかよ」
名前の勢いに原田はもう何度目かの微苦笑を見せる。自分に素直な欲望をぶつけてくる年下の恋人が、愛おしくて仕方がないようだ。
惚れた女にこれほどまでに熱く求められるのは男冥利に尽きると、そう思っているのだろうか。
やがて。名前の熱心な奉仕の甲斐あって、原田は感じている声や仕草を抑えなくなった。無防備なありのままの姿を名前の前でさらけ出している。
「はあっ…… んんっ…… すげぇイイ……」
原田は自らの怒張を名前にきつく吸われながら、恍惚に浸った様子でつぶやく。
「とんでもねぇ技、身につけやがって……」
片手を背後について、上体を軽くのけ反らせて。喉をぐっと反らして。原田は瞳を閉じて、もたらされる快感を享受していた。
名前の口淫の巧みさを揶揄しながらも、確実に余裕を失くしつつあるようで、原田の額にはうっすらと汗がにじんでいた。
「っは……。今までのも、今しゃべってるこれも全部録音されてると思うと……。っ、やべえな……。すげぇ興奮しちまう……」
名前の吸い上げに合わせて呼吸を乱しながら、原田は掠れた声で素直な思いを口にする。
「こんなん初めてだぜ……。いつもよりずっと、ゾクゾクする……。お前も今までこんなにイイの味わってたんだな……」
まるでうわごとのような原田の口ぶりから、そして名前の口内のものの硬さや太さから、彼の限界が近いことを名前は察する。
(左之助さん…… 好きです…… 早く、出してください……)
名前は心の中で彼の名前を呼びながら、よりいっそう熱を入れて奉仕する。彼女の口内の原田のものがさらに硬さを増し、ぎちぎちと膨れ上がってゆく。
「……っ くっ……」
短い眉を寄せ、原田は何かをこらえるかのように喘ぐ。
名前はそんな原田をさらに追い上げるべく、瞳を閉じて荒い呼吸を繰り返す彼を見つめながら、口内の原田自身にさらなる奉仕を加えてゆく。
彼の切なげな喘ぎを聞きながら、彼の弱い場所を舐めて、何度もきつく吸い上げて、そして。
「っ、名前……! 出す……っ。飲んでくれ」
完全に余裕を失った原田の、あまりに切実な掠れ声とともに。彼の白く濁った欲望が、名前の口内に射出された。
苦心しながら、名前は一滴残さず原田の愛欲の化身を呑み込んで、その身の内に彼の全てを刻みつける。
原田は乱れた呼吸を整えながら、長い前髪をかきあげると、どこか照れたように頬を染めて微笑んだ。
「……良かったぜ、名前」
「左之助さん……」
「早くお前の下の口にも直接ぶちまけてぇよ……。今はまだしないけどな」
「っ……!」
下の口にも直接、それは早く子供が欲しいということだ。愛する原田にそう告げられて、名前は胸の鼓動を高鳴らせる。
まだ短大生の名前にとって、子供なんてずっと先のことだけど、つい夢を見てしまう。愛する原田との子供、幸せな結婚生活。
原田はベッドサイドに置いていたスマホを取って停止ボタンを押した。ずっと作動していたボイスメモを止める。
「名前、なんか飲み物持ってくるぜ。待ってろよ」
原田はそう口にして下着だけを身に着けると、そのままキッチンに向かってしまった。
ほんの少しの間を置いて。原田が持ってきてくれたのは、砂糖を溶かしたぬるめのホットミルクだった。名前は礼を言って受け取り、それを口にする。
初めて飲んだ原田の白濁は独特の苦い味がしたけど、それもミルクの優しい味ですっかり流されてしまった。
名前がミルクを飲み干すのを待って、原田は再び彼女を行為に誘った。下着を脱ぎ裸になると、スマホを操作してベッドサイドに置く。
ラテックスの個包装もいつの間にか手近なところに置いてあり、淡々としていながらも準備の良い彼に、名前はやはり戸惑ってしまう。
「……や、やっぱりまだするんですか、録音」
「なんだよ、毒を喰らわば皿までって言うだろ?」
「……毒、なんですか?」
「こんなん毒みてぇなもんだろ。病みつきになっちまう、やべぇ毒だよ。……お前だってそうだろ?」
「っ!」
そうですね。とはさすがに言えず、名前は羞恥と戸惑いに目を反らす。
原田はずるい、こんな搦手を使われてしまったら。作動中のスマホの隣で彼と最後まで愛し合うしかなくなる。
「左之助さん……。恥ずかしいです……」
「今更なに言ってやがる……。いいからお前は、大人しく俺に抱かれてな」
原田の琥珀の瞳が、名前の至近で甘く笑う。蜂蜜を溶かしたような笑みが、名前の心から倫理の枷を優しく外す。
そう。名前もまたすでに囚われていたのだ。原田という、どこまでも甘美な危うい毒に。
名前をベッドに寝かせると、原田はラテックスの個包装を手に取った。破って装着してから、自分の下で期待に胸を震わせている愛しい人に声をかける。
「……入れるぜ」
名前が頷く間もなく、原田は限界まで充血した自分自身を彼女の中に差し入れた。
「っ、あっ、ああっ……!」
薄く開いた名前の唇から、細切れの喘ぎが漏れる。原田の怒張はずぷずぷと音を立てながら、名前のその場所に沈み込んでゆく。
太く長くそして硬い自分の分身を、原田は腰を揺すって名前の最奥まで押し込んだ。
「……っ」
ようやく挿入が終わり、名前は小さく息をつく。不意に彼女が痛みをこらえているように見えて、原田は眉を寄せて問いかけた。
「……大丈夫か?」
「平気……です」
「ならよかったぜ」
原田は名前をいたわるように触れるだけのキスをする。ときおり過激な行為を強いることはあっても、優しい人なのだ。
名前は彼の口づけを受けて淡い笑みを浮かべる。挿入の苦しさは薄れていったようだ。
原田と名前はひとときの間、甘く優しく睦みあう。それは、今宵の交接の中でようやく訪れた二人の穏やかな時間だった。……そして。
「……名前、動くぜ」
やがて訪れた原田の声かけに、名前は小さな頷きを返す。
いやらしい水音と肌と肌とがぶつかり合う乾いた音。そして、ベッドのマットレスがきしむ音が名前の耳に届く。
もちろん、原田の荒い息遣いや自分自身のひときわ甲高い喘ぎ声も。
やはり、今夜の原田はやはりわざと音を立てるようにしている。彼の意図に気づいた名前は、ベッドサイドに置かれた原田のスマホを意識してしまい、ますます興奮に昂ってしまう。
このやりとりの全てが録音されていると思うと、身の内を流れる体液の全てが沸騰してしまいそうだ。
名前は自分自身の内側を浅ましく濡らしながら、抜き差しされている原田の怒張を夢中で締めつけていた。
「っは……! 名前っ……!」
早いペースで腰を動かしながらも、原田はこの世でただひとりの愛しい人の名を呼んだ。
録音していることを念頭に、記録に残すために原田はあえて名前の名前を口にしていた。
それを察した名前もまた、激しい突き上げの合間に愛する彼の名を叫ぶ。
「左之助…… さんっ……!」
名前を口にした瞬間、名前の内側がきゅっと締まり、よりいっそう快感が強まった。
この瞬間も原田のスマホで記録されていると思うと、興奮しすぎて気をやってしまいそうだ。
しかし名前はさらなる悦楽を求めて、自ら浅ましい本心を口にする。
「ああっ……! すごくいいっ…… です……!」
録音されている中で、あえて淫らな言葉を口にして興奮を高めてしまうなんて、自分はなんてはしたない、悪い子なんだろう。
(でも左之助さんは……)
初めてキスくれたあのとき『悪い子でいい』って言ってくれた。
自分の気持ちを抑え込み『先生の前でだけはいい子でいたい』と泣いてしまった、まだ単なる生徒だった名前に対して。
そんな熱く優しい原田と恋人同士になり、内気で控えめだった名前も少しずつ変わっていった。
前よりも積極的になり、自分の素直な気持ちを抑えることなく表現できるようになった。
そんな彼女の積極性と素直さは、この瞬間も存分に発揮されていた。
「左之助さんっ…… 好きですっ……」
原田の激しい突き上げを受けながら、名前はさらなる快楽を求めて大胆に喘いだ。全ての音声が記録されていることを念頭に、自ら卑猥な言葉を口にする。
「ああん…… もっとぉ……」
激しい突き上げを受けながら甘く悶える名前を見おろしながら、原田は満足げに笑う。
「いいぜ…… もっと良くしてやるよ……」
名前は原田の助けを借りながらそのまま快感を高めてゆき、ついに愛欲の頂点を迎えた。
「あああっ…………!!」
その瞬間の名前の甲高い悲鳴も、そして彼女の後を追うように頂点を極めた原田の射出の瞬間の切なげな喘ぎも、原田のスマホにしっかりと記録される。
薄い膜の中にびゅるびゅると精を放ちながら、原田は名前をかき抱き、強引に唇を重ねた。
しばらくのあいだ触れるだけのキスをして、絶頂の余韻を存分に噛み締めてから。ようやく原田は身体を起こし、スマホのボイスレコーダーをオフにしたのだった。
***
「今日はすごかったです……」
「はは、そうだな。……こんなにイイなら、またやってみるか?」
「っ、だめです……! こんなの一度きりです……! こんな、恥ずかしい……!」
事後のお決まりの睦み合い。名前は原田の裸の胸に頬を寄せながら、今宵もまた彼に甘えていた。
しかし、つい先ほどまであんなにも浅ましく乱れていたくせに、営みを終えたとたんに貞淑ぶりだす名前に、原田はつい彼女をからかいたくなってしまう。
「……一度きり、ねぇ」
ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべながら、あえて彼女に水を向けてやる。
「ま、お前がまたしたくなったら、いつでも言ってくれよ」
「っ! 左之助さん……! またしたくなんてならないです、絶対……!」
あからさまに動揺し無駄に意地を張る名前に、原田はつい吹き出してしまう。こうまで見え透いた嘘もなかなかない。
けれど、それもまた彼女の可愛いところだ。原田の垂れた目じりがさらに下がり、口もとに甘い微笑みが浮かぶ。
「……わかったよ。お前がそんなに言うんなら、そういうことにしといてやるさ」
「っ……!」
いつもの原田らしい、余裕たっぷりの甘やかしだ。そんな彼にあてられて、名前はしどろもどろになってしまう。
本当はすごくよかったからまたしたかったけど、そんなことはさすがに言えない。
意味もなく視線を泳がせる名前を見つめながら、原田はいたって気軽にとんでもないことを口にする。
「……じゃあ、今度は録音したやつ聞きながらしてみるか? きっとすげぇ興奮するぜ」
「っ! 何言ってるんですか!」
さすがにこの発言は看過できない。名前はもう真っ赤だ。原田の言う通りいつも以上に甘い時間を過ごせそうだけど、今度こそ名前の心臓は恥ずかしさに破裂してしまう。
しかし、原田はさも当然のことのように。
「何言ってるんですかって……。いや、してみたくなるだろ普通は」
「普通って……! 左之助さんの普通がわかりません……!」
飄々とした顔で過激な行為に誘ってくる原田に、名前は混乱してしまう。
何せ、名前にとっては原田が初めての恋人なのだ。他の男性を知らないから、何が普通なのかもわからない。
まだ恋を知ったばかりの名前にとっては、最中の声を録音するのも、それを聞きながらベタベタするのも、心理的なハードルがかなり高いのだが。
しかし、原田は戸惑う名前を横目に、自分のスマホを手に取った。
「おっ、そうだ。試しに今、再生してみるか」
「えっ!?」
名前があっと思う間もなく。ピッという電子音が鳴り、覚えのある声が原田のスマホから流れ始める。
『――こら、声我慢するんじゃねぇ』
『でも……』
『往生際が悪いぜ、名前。いいかげん観念するんだな』
『む、無理です……』
電子機器を通しているため印象が違うが、間違いなく自分たちの声だ。名前は目を見開いて固まってしまう。
原田のスマホからゴソゴソという衣擦れのような音が大きく聞こえ、名前はこれが自分が寝そべったまま首を左右に振ったときの音だと理解する。
本当なら小さなはずの音がこんなにも大きく再生されて、名前は最近のスマホの性能の高さに目を見張ってしまう。こんな音まで拾ってしまうなんて……。
『……なら、我慢できねぇようにするしかねぇな』
加虐心を煽られた原田の声とともに、ずちゅっという卑猥な水音がした。これは、名前の秘唇に原田の指が強引に押し込まれたときの……。
『やああっ……!!』
少しくぐもった甲高い悲鳴がスマホから流れてくる。これは間違いなく自分の悲鳴で、そして。
『おっ、ようやく録音しがいのある感じになってきたじゃねぇか』
『……左之助さんっ!』
嘲るような原田と彼を非難する自分の掠れた声が続くが、原田は名前の非難などものともしない。むしろ彼女にとどめを刺すべく容赦なく煽ってくる。
『いくら声我慢したって、今までのやらしい息遣いは全部録られてるんだぜ? どうせ同じだろ』
『お、同じじゃないです……っ』
『同じだよ。感じてるのに我慢してるときのお前も、すっげぇヤラシイからな。……かわいくって、めちゃくちゃにしてやりたくなる』
『っ、そんな……』
『だから、観念しろって』
原田のスマホに記録されていたのは、まぎれもなく先ほどの自分たちの淫らなやりとりだった。
電子機器を通しているせいで声の印象は変わっているが、友人や知人が聞けば間違いなく、原田と名前が「している」ときの声だと気づいてしまうはずだ。
「すげぇ、本当にバッチリ録れてるな」
「さ、左之助さん……! 再生やめてください、恥ずかしい……!」
「そりゃあ、聞けねぇ相談だな」
あまりの恥ずかしさに耐えきれなくなってしまった名前は、原田からスマホを奪おうとするが。
もちろんそれは叶わずに、返り討ちにされてしまう。名前は両の手首を原田に抑え込まれて、抵抗できなくさせられてしまった。
「っ、左之助さん……! 離してください……!」
「この状況でそう言われて、離す男はいねえと思うぜ? 名前」
いつもはあれだけ優しくて大人っぽいのに。今の原田はヤンチャさ全開だ。好きな女の子をからかって遊んでいる小さな男の子のような、楽しげな笑み。
「丁度いい。今からちょっとだけ聞いてみるか」
「……っ!」
自分の抵抗によって、逆に原田を焚きつけてしまったことにようやく気づき、名前は青ざめる。
けれど、こうなってしまった原田を止めることなどできず、ついに観念した名前は項垂れる。
「……リクエストを受け付けてやるよ。どこから聞きたい?」
そんなことを聞かれても困る。名前は真っ赤な頬で、黙ったまま瞳を伏せる。
「特に希望がねぇなら、適当に再生してみるか。……っと、ここはどうだ?」
そう口にして、原田は再びスマホを操作する。
ゴソゴソという雑音が入り、スマホが移動させられて先ほどとは別の場所に置かれた気配がする。
『っ…… 左之助さん……』
『今度はコッチを録ってみようぜ』
あっ、この場面は……。このとき自分が何をされていたかを思い出し、名前は脚の間をきゅんと潤わせてしまう。
そう、このときからスマホを脚の間に置かれて、秘唇から聞こえるいやらしい水音の全てを記録されてしまったのだ。
恥ずかしくて、聞くのがつらいから停止して欲しい。
意識の上ではそんなことを思うものの、名前の心の奥底では、もっとこの先を聞きたいという淫らな好奇心が、確かに頭をもたげていた。
『名前は下の口も可愛いからな、こっちの声も録っておきてぇんだよ』
『左之助さん、恥ずかしいです……』
ここでスマホの中の原田が、喉を鳴らして笑った。今更何言ってんだ、とでも言いたげに。
『だから、それがいいんだろ? ……ほら、始めるぜ。名前』
『……っ、左之助さんの、イジワル』
『男はみんな、こんなもんだぜ? ほら、良くしてやるから観念しな』
ぐちゅぐちゅっ! ぐちゅぐちゅぐちゅっ! ぐちゅちゅっ!
これ以上ないほど卑猥な音がスマホから流れてきて、名前は息を呑む。
「っ……! すごく、おっきい音です……!」
羞恥と興奮に瞳を潤ませる名前を横目で見やって、原田は喉を鳴らして笑った。
「おいおい、こんなのまだ序の口だぜ?」
「序の口、なんですか……?」
「そりゃあそうだろ……。後半のお前はもっとヤバかったからな」
「えっ……!?」
「すっげぇ乱れて、気持ちいいって叫びまくって、グショグショになってやがったからなぁ」
「っ、そんな……!」
原田の言う通り、ぐちゅぐちゅという水音はさらに大きくなってゆく。そして。
『やぁん…… ダメぇ…… ダメなのにぃ……』
鼻にかかった甘い声でダメダメと口にしながらも、明らかにこれ以上ないほどに喜んでいる浅ましい女の声が聞こえてくる。
『ダメなのに、はもっとしてってことだろ? わかってるぜ、名前』
そして、女の声を追うように聞こえてくるのは、いやらしい欲望を剥き出しにした男の声だ。
ぐちゅりっ! ぴちゃぴちゃ! ぐちゃりぐちゃり!
『やあん……っ! なんでこんなにおっきな音…… するのぉ……!』
『そりゃあ、お前がすげぇ感じてて、メチャクチャ濡らしてるからだろ』
『いやぁ……!』
『可愛いぜ、名前。このままずっと俺で感じまくって、もっとやらしいとこ見せてくれよ』
卑しい欲にまみれた男女のやりとりが、ひとときのあいだ続いて。
『……名前の下の口もやべぇな。……すげぇ可愛くてやらしい』
恍惚に浸った様子の男がぽつりとつぶやいた、そのとき。
ガバッという衣擦れにも似た音がするやいなや、じゅるじゅるという野性の獣が獲物の血を啜るときのような音がし始めた。
こんなあからさま過ぎる物音を聞かされてしまえば、ふたりの間で一体何が行われているのか嫌でも察せられる。
そう、原田が名前の割れ目に吸いついてきたのだと、理解してしまって……。
『……左之助さんのバカぁ……』
けれど。スマホから流れてくる名前の声は、原田をなじりつつも明らかな歓喜をにじませていた。
「おっ、いいとこ来たじゃねぇか。このまま聞いてみようぜ」
「えっ、本当に、まだ聞くんですか……!?」
原田のスマホからは引き続き、荒々しい呼吸音や淫らな水音が流れてきている。何かを舐める音や何かを啜る音に、興奮しきった野犬のような息遣い。
これが誰が何をしているときの音かなんて、もはや考えたくもなかった。原田は平然としているが、名前にとっては恥ずかしすぎる。
名前の割れ目のすぐそばにスマホを置いていたから、驚くほど細かな音……例えばシーツと身体が擦れる音まで正確に記録されていて、名前は羞恥のあまり気絶しそうになっていた。
名前の頬はますます赤くなり、不自然なほどにそわそわとしている。原田は名前のわかりやすい反応を楽しみながら、彼女をさらに慌てさせるべく口を開いた。
「このまま、お前のやらしい音を楽しむのもいいが……。少し先に進めてみるか」
「え?」
原田のスマホからは、ひっきりなしにいやらしい水音が流れ続けている。そんな中で一組の男女の熱っぽいやりとりが聞こえてきた。
『……ほら、名前。言ってみろよ。気持ちいいんだろ?』
『左之助さん……』
『言えばもっと良くなれるぜ? ……ほら、素直にイっちまえよ。名前』
彼の甘い囁きはまるで悪い魔法のようだ。
愛する彼に促され、ついにこらえきれなくなった名前は、音声の全てが記録されているの知りながら、さらなる快楽を求めて自分自身の浅ましい欲望の全てを解き放った。
『気持ちいいです……っ! 左之助さんにあそこ舐められるの、すごくすごく気持ちいい……っ!』
原田に促されるままに、名前はあられもない痴態を次々に披露してゆく。
その様子はまるで己の淫らさを衆目の前で晒すことで、強い快楽を得ているかのようだ。
そんな彼女に焚きつけられた原田は、先ほどまで彼女の脚の間に置いていたスマホを名前の口もとに移動させると、再び彼女を促した。
『……いいぜ名前。さっきのもういっぺん、スマホに向かって言ってみな』
あっ、この場面は……。先ほどの自らの振る舞いを思い出し、名前はにわかに焦りだす。
このあと気持ちよくなりすぎてしまった自分は、とんでもないことを口走ってしまうのだ。
「さ、左之助さん……! 恥ずかしいです、ダメ……!」
「ダメじゃねえだろ? ほら、ちゃんと聞いてろ」
ゴソゴソという物音が聞こえる。まるで誰かが録音中のスマホに自分から顔を近づけたかのような。そして、すぅと息を吸い込むような音がして。
『――左之助さんにあそこいじってもらうの、すごく気持ちよくって大好きです……っ!!』
今度こそ、自らの欲望の全てを開放したかのようなあられもない女の叫びが、原田のスマホから流れてきた。
そして、その女はどうやら、自分ひとりで快楽の頂点を迎えてしまったらしい。
掠れた悲鳴を上げながら、まるで巨大な魚が跳ねるようにベッドの上をビクンビクンとのたうって。
やがて。しん、とあたりが静まり返った。ひとときの間、無音が続いたのちに男の労わるような声が流れてくる。
『よく言えたな、名前……。いい子だぜ。……すげぇ気持ち良さそうだったな』
その声自体は優しいが、相手の女の淫らさを揶揄しているのは明らかだった。そののちに、グズグズという女の泣き声が聞こえてきて。
そして、誰かがベッドから起き上がりティッシュペーパーを引き出した音がした。
ここまで再生してから、原田はようやく一時停止ボタンを押した。そして、名前をからかい始める。
「左之助さんにあそこいじってもらうの、すごく気持ちよくって大好きです、か……。まったくお前は男を悦ばせる素質がありすぎるだろ。録音されてるってわかってて、こんなやらしいこと叫んじまうんだからな」
ニヤニヤと笑いながら、自分の淫らさを揶揄してくる原田に、名前は顔を真っ赤にしながら、ぷるぷると震えだしてしまう。
「しかもこれ叫んだあと盛大にイってやがったし」
録音データという証拠があるため言い逃れもできず、名前は無言で視線をさ迷わせることしかできない。原田はそんな名前を容赦なく追い詰めてくる。
「左之助さんにアソコ舐められるの気持ちいい、もなかなかの名言だったが……。それにしても、自分ひとりだけイっちまうなんて、そんなに良かったのか?」
「……だ、だって」
「ん?」
「左之助さんが悪いんです、こんな……」
ついに。あまりの恥ずかしさに耐えられなくなった名前は、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。これにはさすがの原田も慌てる。
「っ、おい泣くんじゃねぇよ」
女の、特に名前の涙にはめっぽう弱い原田だ。さすがにからかいすぎを反省したのか、名前の両手の戒めをほどき、流れる涙を指先で拭ってやる。
「……悪かったよ。泣くなって」
なんとか宥めようとするが、名前はあからさまにむくれてしまう。
「左之助さんは意地悪すぎますっ……!!」
「機嫌直せよ、名前」
本格的に怒りだしてしまいそうな様子の名前の気をそらすべく、原田は奥の手を使った。
「……それじゃあ、俺の喘ぎ声でも聞いてみるか?」
「えっ! 聞きたいです!」
「……なんだよ、こういうときだけは積極的なんだな」
意外なほどあっさりと、名前の機嫌は直ってしまった。
今泣いたカラスがもう笑うといった、素直そのものの様子に苦笑しつつも。原田はボイスメモを操作し、再生ボタンを押した。
『いいぜ名前、お前のこれは最高だな……。……っは、ん……っ』
名前の奉仕に応えて、原田もまたいやらしい言葉と息遣いを唇に乗せてくる。しかし。
『っと、録音してるんだったな……』
近くに置いていたスマホに気がつき、さすがに気恥ずかしくなったのか、原田は自身の淫らな振る舞いを抑え、平静を保とうとする。
しかし彼に乱れてほしかったらしい名前は、口内の彼自身をさらにきつく吸い上げた。
『んっ…… 上手いぜ、名前……。その調子だ』
あからさまに乱れることはなくても、原田もまた快楽を得ているようで、時間の経過とともに、原田の息遣いが次第に乱れてくる。
それと同時に名前の奉仕も大胆になってきたのか、ちゅううっという何かをきつく吸い込むような音がしてくる。
とはいえ、経験豊富な原田を乱れさせるのは並大抵のことではなく、心地よさそうな吐息は漏らすものの余裕を失わない原田に、名前はじれったくなったようだ。
『……声、我慢しないでください』
『……さっきとは真逆だな』
『左之助さんに、もっと乱れて欲しいんです』
『おいおい、俺の真似でもしてるのか?』
名前のあまりにもあけすけな要求に、原田はおどける。しかし、妙なところで誠実な彼は素直な本心を吐露してくれた。
『……男の喘ぎ声なんて、録っても仕方ねぇだろ?』
原田の自分自身を卑しむような寂しげな声が聞こえるやいなや、名前は強い口調で抗弁していた。
『仕方なくないです……! 左之助さんの声聞きたいです。我慢しないでください』
『……何だよ、そんなにいいのかよ』
名前の勢いにつられて、原田はもう何度目かの苦笑をする。自分に素直な欲望をぶつけてくる年下の恋人が、愛おしくて仕方がないようだ。
やがて。名前の熱心な奉仕の甲斐あって、原田は感じている声や仕草を抑えなくなった。無防備な姿をさらけ出している。
『はあっ…… んんっ…… すげぇイイ……』
原田は自らの怒張を名前にきつく吸われながら、恍惚に浸った様子でつぶやく。
『とんでもねぇ技、身につけやがって……』
ぎし……とベッドのきしむ小さな音が聞こえる。原田が片手を背後について、上体をのけ反らせていたからだろう。
名前の口淫の巧みさを揶揄しながらも、ボイスメモの中の原田は確実に余裕を失くしつつあるようだ。
『っは……。今までのも、今しゃべってるこれも全部録音されてると思うと……。っ、やべえな……。すげぇ興奮しちまう……』
名前の吸い上げに合わせて呼吸を乱しながら、原田は掠れた声で素直な思いを口にする。
『こんなん初めてだぜ……。いつもよりずっと、ゾクゾクする……。お前も今までこんなにイイの味わってたんだな……』
「……左之助さんの声、かっこいいです」
「……何だよ、別に普通だろ」
名前はどこか恍惚に浸った様子でため息を漏らすが、原田はいたって冷静だ。むしろ、なんとなく微妙な気持ちになっていた。
名前の可憐な喘ぎや息遣いならいくらでも聞いていたいが、例え自分のものであっても、男の喘ぎ声に特別な感慨など抱きようもなかった。
むしろ、性欲に支配された男特有の切羽詰まった卑しさや聞き苦しさばかりを感じ取ってしまう。
しかし、名前はすっかり感激している様子で妙にはしゃいでいた。
「普通じゃないです! かっこいいです。ずっと聞いてたくなります……」
浮かれた様子でそう口にして、名前は原田の裸の胸に頬を摺り寄せてくる。そんな彼女に、原田は再び意地悪をしたくなってしまう。
といっても、今度は優しい意地悪だ。可愛い人から愛の言葉を引き出したいだけの。
「……ったく、かっこいいのは声だけなのか?」
「っ! 全部かっこいいです。見た目も中身も生き方も……! 左之助さんの全部が、かっこよくって大好きなんです……!」
あまりにもあっけなく願いが叶えられて、原田は苦笑してしまう。名前の少女らしい素直さは、ときに原田の大人らしい打算も駆け引きも全て飛び越えてしまう。
無邪気に全てを差し出して愛してくれる可憐な恋人に、原田も素直に礼を言う。
「……ありがとよ。まさかここでお前に褒めてもらえるとは思わなかったぜ」
情事のさなかの喘ぎ声よりも、むしろこちらを録音したかったと後悔しつつ、原田は先ほどから再生しっぱなしだったスマホのボイスメモを、ようやく停止させた。
名前の素直さに穏やかな満足を得た原田は、彼女のおでこに触れるだけのキスを落とす。
「……名前、好きだぜ。録音したやつはまた今度送ってやるから、今日はもう寝ようぜ」
精神的な充足感を得たら、今度は睡魔がやってきた。今夜は大人げなく張り切ってしまったから、疲れたのだろう。
スマホを床に落とし、手が届かないようにしてから。原田は名前の髪を優しく撫でた。
「そうですね……」
名前もまた情後の疲労が訪れたのか、素直に同意してくれた。
「明日も早起きして出かけるんだろ?」
「はい、そのつもりです」
明日は出かける予定があった。隣町の百貨店で、いわゆる買い物デートだった。
「まぁ俺はわざわざ出かけなくても、お前と一日ベッドの上でじゃれあうのも悪かねぇんだけどな」
「も、左之助さん」
相変わらずの原田らしい軽口に名前は膨れるが、しかしそこは彼に愛されている恋人らしく、心の内で悪くないかもと思ってしまう。
朝から晩まで原田とベッドの上でいちゃいちゃするのはきっと幸せだ。もうすっかり毒されている。彼なしじゃいられないほどに。
「――名前、おやすみ」
原田の甘い囁きがふり落ちてくる。情後の恋人を寝かしつけようとする優しい声に、名前の瞼はおりてゆく。
「……はい、おやすみなさい」
愛を交わしたあとの蕩けるような余韻の中、名前は幸福な眠りについた。明日の朝ちゃんと早起きできたのかは、ふたりだけの秘密だ。