MISS YOU MORE(R18)
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恋戦記は現在一部のお話のみヒロインの名前変換可です薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
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(……なんだってまた、こんなことに……)
心の中でぼやく孟徳とは対照的に、花は全力で頑張っていた。なし崩しでのもう一戦。さっきは孟徳に好き勝手されてしまったけど、今度はその逆を目指しているらしく、花が主導権を握っていた。
(……すごい景色だな)
自分の体の上で積極的に行為を進めようとする花を見上げながら。しかし、孟徳はそんな彼女に見惚れていた。自然と目尻が下がる。
「……そんなに頑張らなくてもいいのに」
囁きには甘さと愛おしさが乗る。
自分のために頑張ってくれる女の子を眺めるのが好きだ。それが花であれば嬉しさもひとしおだった。
けれど、孟徳の甘やかしに対して、花は毅然とした様子で首を振った。年下の姫君は可憐でありながらも意地っ張り。
(……花ちゃんは可愛いけど、調子に乗って煽りすぎたな)
先ほどの意地悪を少しだけ後悔しながら、孟徳は花の性格を思い出していた。
(だけど、そうだよな……。この子はこういう子だった)
絶妙な負けず嫌い。ただ大人しく男に食われるだけの子ではないのだ。必ずお返しをしようとしてくる。だからこそ愛しているんだけど、今回ばかりは。
(いいのか悪いのかわからなくなってきたな……)
責められるより責めるほうが好きだ。腐っても追いかけたいタイプの男。
姫君に狩られるよりは狩る方がいい。機会を作って近づいて懐に入り込んで、美しいドレスを脱がしてその全てを自分のものに。
(……でもまぁいいか、楽しいし気持ちいいし。……花ちゃんも、結構楽しそうだし)
今まさに孟徳に跨って、彼の屹立を自分の裂け目に埋めようとしている裸の彼女を見上げながら、孟徳はそんなことを考える。
相手の女の子が自分との愛の営為を心から楽しんでくれるのは素直に嬉しい。男冥利に尽きるとは、まさにこのことだ。
ようやく孟徳の屹立の先端を自分の体内に挿れ終えると、花は腰を落とし始めた。
「んっ…… っ……」
切なげな甘い喘ぎとともに、孟徳のものが花の体内に埋められてゆく。そして。
「あっ…… っ……」
ようやく孟徳のものを最奥まで呑み込み終えて、花はぶるりと体を震わせると小さく息をついた。
挿入の圧迫感を逃しているのだろうか。孟徳はそんな彼女に声をかけてやる。
「……よく頑張ったね。お疲れ様」
心からの労いの言葉をかけて、孟徳は花を見上げながら、上体をわずかに起こした。
花の細い腰に手を添えて優しく支えてやりながらも、女性上位のときの動き方を彼女に丁寧に教えてやる。花は頬を淡く染めながらも、頷きながら聞いてくれた。
かつて彼女に避妊具の付け方を教えたことを思い出して孟徳は淡く苦笑する。
こんなに純粋で可愛い年下の女の子に相手に避妊具の付け方を教えて、騎乗位のやり方まで教えて。つくづく何をしているのかと思うけど、男の醍醐味かなとも思う。
今まさに。自分の上で腰を動かし始めた彼女に向かって、喜びそうな言葉をかけてやる。だから、年下の子は大人扱い。
「――花ちゃんかわいい……。大人っぽくなったね。……胸も大きくなって、腰も細くなって、前よりもっと綺麗になった」
世辞ではなく本心から掌中の珠の成長を喜びながらも、孟徳は懸命に腰を揺らす裸の花に、熱を帯びた視線を送る。
少女のように華奢な花の裸身は、孟徳の本来の好みとは違っても素晴らしい美しさだと思う。
自分との行為を恥ずかしがりながらもしっかりと楽しんでいるのがわかる表情に、綺麗な鎖骨。身体の動きに合わせて揺れる丸い胸に桃色の先端。
すっきりとくびれた細い腰に小さなおへそ。大きく開かれた両脚の間の下生えの奥には、孟徳の楔を飲み込んでいる裂け目がある。
孟徳はまるでご褒美を与えるかのように、花のその場所を優しくくすぐった。ちょうど、女の子が一番感じてしまう小さな肉芽。
「ああっ…… そこ、だめっ……」
ぶるりと大きく身悶えて。花は甘やかな悲鳴をあげて仰け反った。
けれど、言葉とは裏腹の『うれしい、もっと』という本心を男の本能で嗅ぎ取って、孟徳はそこばかり責めてやる。花の裂け目がさらに潤い、孟徳の肉の楔を締めつける。
やはり口では恥ずかしがっても身体はとても正直だ。人間ならみんな持っている浅ましい本能。女の子にだってそういった欲望はあるのだ。それは花も例外ではない。
孟徳に肉芽を弄られて裸の身体を身悶えさせて、今にも果てそうになっている花を見上げながら。孟徳は心の内で呟いた。
(女の子はやっぱり、ここで落ちちゃうんだねぇ……)
そして、孟徳は言葉でも花を責めてやる。
「……花ちゃん綺麗だよ。すごくかわいい。ゾクゾクする」
歯の浮くような台詞を臆面もなく口にできるのは、ひとえに余裕のなせる技だ。愛されている自信と愛している自信からくる、男の余裕。
「……っ!」
花は孟徳に肉芽を刺激される心地よさに浸りながらも、小さく息を呑んで頬を染めた。
孟徳は柔らかく微笑むと花の肉芽から指を離して、今度は彼女の胸の膨らみに触れた。なめらかでしっとりとした吸いつくような肌は、女性ならではの素晴らしさだ。
丸いふくらみの色づいた先端をつまんでやるたびに甘やかな吐息を漏らす彼女に、愛おしさが止まらなくなる。
愛の営為のさなかでも、花がここまで無防備に自分の裸身を好きに弄らせてくれることはないから。孟徳はずっとこのまま花の肉体を愛でていたい気持ちになった。
けれど、自分の下肢の屹立はさらなる刺激を欲していた。やはり花の腰の動きだけでは満足できない。
男としての切実な衝動に駆られるものの、表向きだけは笑顔を作って、孟徳はおもむろに口を開いた。
「……そろそろ気が済んだ?」
「え?」
「今度は俺の番」
そう口にして、孟徳は花を抱き寄せて身体の上下を入れ替えた。無防備な彼女を優しくベッドに組み敷いた。
「……っ!」
女性上位の交合を楽しんでいる花の裸体をずっと弄って遊んでいたら、やはりというべきか本格的に責めたくなった。
女の柔らかな肉体は、やはり組み敷いて蹂躙してこそだと思う。主導権を握るのは、上に立つのは、やっぱり自分の方でいたい。
「……もう意地悪しないから、このまま最後までいかせてくれる?」
先ほどとは逆だ。今度は懇願する形で、孟徳は花を思い通りに操ろうとした。愛しい姫君のご機嫌取りも忠実なる臣下の務めだ。これ以上拗ねられても面倒だから。
「……君は頑張らなくてもいいよ」
とはいえ、本音は言葉の細部に乗ってしまう。『頑張らなくていい』ではなく『頑張らなくても』いいのだと。
「でも……」
「……こういうときくらい、ちゃんと俺に甘えること。俺にも格好つけさせてよ」
責められるばかりでは嫌なのだと、それとなく伝えながら、孟徳は花に別の角度からもお願いする。
「最後は、君と抱き合っていきたいから」
「…………」
「――いや?」
こう言えば優しい彼女は拒めないと知っている。やっぱり好きな女性には甘えるに限る。それらしく言いくるめて、今度こそ最後まで。
***
その後。一日ホテルの部屋でだらだら過ごしていたら、夜遅くになっていた。
孟徳と花は上階のバーでピアノの生演奏があるというので聴きに来ていた。場にふさわしい格好ということで、ふたりともドレスアップしている。
花は孟徳が用意してくれた淡いサーモンピンクの大人っぽいワンピースを着ていた。首筋のキスマークはコンシーラーで隠してある。孟徳もまた小綺麗なスーツを身につけて、髪をセットしていた。
「ホテルのバーって初めてです……」
「大丈夫だよ、浮いてない。……その服も似合ってる。俺の見立て通りだ」
花を勇気づけて、孟徳はスマートにエスコートをする。花もまたその場から浮かないように背筋を伸ばして、歩みを進めた。
バーは雰囲気のある間接照明で薄暗かった。まるで海の底にいるかのようだ。窓際に設置された黒いグランドピアノに照明の明かりが反射してとても美しかった。窓外の夜景もまるで宝石のようで。
既に演奏は始まっており、ピアノの美しい旋律が流れていた。演目は有名な洋楽で、場の雰囲気にぴったりの大人っぽいアレンジを加えられている。そして。
「……わ、公瑾さんです」
「なんであいつが……」
ここにきてまさかの知人との遭遇である。
演奏者は公瑾だった。雰囲気のあるバーで都心の夜景を背景にグランドピアノを弾く公瑾は文句なしにかっこよかった。端正な容姿に見事な演奏は場の雰囲気に馴染みすぎるほどに馴染んでいる。
その場に居合わせた客、特に女性客の多くは彼の演奏だけではなく彼本人に心を奪われているようだった。花もまた知人の名演奏に嬉しそうな顔をして、孟徳はあからさまに嫌そうな顔をする。
孟徳の今まさに花の腰を抱こうとしていた手が、出鼻をくじかれて引っ込められる。
結局。公瑾に見つかりたくないという理由で、ふたりは彼の視界に入らないカウンター席に腰を落ち着けた。早速、グラスを拭いていたバーテンダーがふたりに会釈をしてくる。
しかし、こんなところに来るのなんて初めてだ。戸惑いを隠せずにいる花の代わりに、孟徳が二人分のドリンクをオーダーしてくれた。
「彼女にはノンアルコールのなにか甘いものを。俺には――」
「――かしこまりました」
洗練された大人の空間そのもののバーカウンター。孟徳にとっては見慣れた光景でも、花にとってはそうではない。
先ほど公瑾のピアノに気を取られていた花は、今度はバーテンダーの所作に釘付けだった。
高級店に勤めるバーテンダーはやはり腕がいいようで、シェイカーを振る仕草も格好良く、眺めているだけでも楽しくなる。しかし。
「…………」
先程から自分ではなく他の男ばかりを気にする花に孟徳は複雑な気持ちになってくる。せっかく二人でいるのに関心を自分に向けてくれないのが不満だった。
けれど、この自由さが彼女の美点だ。いついかなるときも自分だけを見つめてくれる女には、いっそ飽きてしまっているから。
よそ見ばかりの姫君を自分の方に振り向かせたくて孟徳は耳元に唇を寄せた。
「……花ちゃん、さっきからさ。俺の前で他の男に見惚れるのは感心しないよ?」
「えっ……!?」
「バーテンダーはともかく、周公瑾に心奪われるのはいただけないな」
カウンターテーブルの下。孟徳はさりげなく自分の膝を花の脚にそっと添わせるように密着させた。不意の触れ合いにどきりとしたのか、花はぴくりと小さく肩を震わせる。
しかし、花は孟徳の膝がくっつけられた状態で、離すこともせず、くっつけ返すこともせず。ただ孟徳のするがままにされていた。
気を利かせたバーテンダーが孟徳に目礼してその場をすっと離れ、孟徳と花を二人きりにする
「っ…… ピアノの演奏が綺麗だなって思ってただけですよ。別に、何もないです」
「何もないのは当たり前だよ。そうだとしても、あいつばっかり見るのはやめてよ? 君の視界に入る男は俺だけでいい」
まるで、ささやかな痴話喧嘩のようだ。独占欲をあえて覗かせる孟徳と、困惑しながらも言い訳をする花。
孟徳は花を責めながらも彼女の方に上体を少し傾けた。さりげなくふたりの肩が触れ合う。
座る位置はぬかりなく彼女の左側を陣取っている。右利きの彼女がグラスを持つのは右手。グラスを持つ右手にガードされないのは、彼女の左側だ。
まだお酒はきていないけれど、仮にきたとしても阻まれることはありえない位置。
孟徳は不自然にならない程度にさらに距離を詰め、彼女に自分を意識させる。彼女の膝の上の左手に己の右手をそっと重ねた。
まさかそんなことをされると思っていなかったのか、花の目が驚きにわずかに見開かれ、大きな瞳が潤みはじめる。
「っ、大袈裟ですよ……。なんでそんな……」
妙に押しの強い孟徳の言動に花が戸惑っているうちに、ちょうど二人分のお酒ができあがった。
バーテンダーは引き続き花たちから少し離れたところで別の客をもてなしていた。連れの男の要望通りの『彼女の視界に入らない』場所だ。
「……まぁいいや、お酒もきたし乾杯しようか」
いつまでも圧をかけ続けても仕方がない。孟徳はいったん花から身体を離すと彼女を酒に誘った。
あくまでもここは高級ホテルのバーカウンターだ。出逢い目的のスタンディングバーではない。人目もある上に知人までいる。あまりベタベタしすぎるのは良くない。後々やりづらくなってもいけないから、孟徳は計算して花から距離を取る。
しかし、孟徳がやっと自分から離れてくれて花は安堵したようだった。あからさまにほっとした顔をしている。ふたりで乾杯をして、さっそく花はカクテルに口をつけた。
「……わぁ、おいしいですね」
「口に合ってよかった。シンデレラは有名なノンアルコールのカクテルだよ。パイナップルとオレンジとレモンのジュースをシェイクして作るんだ」
「そうなんですね。孟徳さんのはなんていうお酒なんですか?」
「俺のはアプリコットフィズだよ。甘い、杏子のお酒なんだ。飲んでみる?」
「っ、はい……!」
「はいどうぞ」
「ありがとうございます」
孟徳が先ほどまでちびちびとやっていたお酒を、花はためらいなく口にした。恋人同士だから間接キスも気にしない。
「……おいしいです。ホントに杏子の味がしますね」
「でしょ。度数も弱いし、君でも飲めそうだね」
「孟徳さんは、いつもこういうところで、こういうお酒飲んでるんですか?」
「……え?」
不意にそんなことを訊かれて、孟徳は一瞬だけ返答に窮した。
「……バーなんてもうそんなに行かないよ。今は忙しいしね。普段飲むのは…… そうだな、もう少し度数が強いのが多いかも」
嘘にならない程度の無難な答えを返して、孟徳は花から返された己のカクテルに再び口に運ぶ。
今日は花に合わせて度数の低い甘いお酒を頼んだ孟徳だったが、グラスを傾けながら訥々と語る彼は大人の男らしい格好よさだ。横顔だってとても綺麗で。
孟徳の意外なほど長い睫毛にすっきりとした鼻梁、存在感のある喉仏に花は見惚れた。バーの間接照明は孟徳の横顔をより大人っぽく演出している。
いつもより少しだけ華やかなスーツも似合っていて、髪をセットしているのが非日常の格好よさだった。職場で強権を振るう常務でも、花の前でおどけてみせる孟徳さんでもない、歳相応の世慣れた大人の男性の姿。
そういえば孟徳のこういう姿は今まであまり見たことがなかったかも。花はふと思い至る。
「そうなんですね……」
先ほどの孟徳の返しに花はそうとだけ答えた。なぜかしみじみとしている様子の彼女が面白くなってしまった孟徳は淡く微笑むと。
「――今はまだ少し目立っちゃうから、君がもう少し大人になったら、また二人で飲みに来ようか」
「……私、そんなに浮いてますか?」
「そうじゃないよ。ただ、今日は顔見知りもいるし、なんか落ち着かないんだよね」
少し離れたところでピアノを弾いてる周公瑾を目で指して孟徳は小さく肩をすくめた。なんとなく先ほどから視線を感じる。腕時計で時間を確かめて、孟徳は花に水を向けた。
「……日付が変わる前に、部屋に戻ろうか」
「あっ、はい……」
「――早く、君を抱きしめて眠りたい」
さりげなく上体を花の方に傾けて。「いいよね?」と甘く囁いた。自分の膝を花の脚に軽く触れ合わせたまま、孟徳は彼女の小さな手をカウンターの下でぎゅっと握る。
カウンターテーブルの下で手を握るのはこれで二度目だ。今回はただ手を重ねるだけではない。恋人繋ぎのように指を絡ませて深く握り込み、花に欲望をアピールする。
高級ホテルのバーカウンターという非日常の空間の雰囲気に吞まれているのか、彼女の頬にさっと朱が走った。意外なほど素直な花の反応に孟徳の機嫌が上向く。あと少し。
「……孟徳さん、酔ってませんか?」
「まさか。酔うわけないでしょ、あれくらいで…… 俺はいつだって君に本気だよ。今だって本気で口説いてる」
「っ……!」
「――行こうか」
一瞬だけ体を離して、彼女を立たせて。再び手を取りエスコート。こうやってバーで女性をお持ち帰りするのはいつぶりだろうか。随分久しぶりな気がする。
恥ずかしさに戸惑っている様子の花だったが、孟徳を拒むこともせず大人しく彼についてきた。俯いて頬を染めたまま、しかし、花は孟徳の手をきゅっと握り返してきた。
姫君の恥じらいながらの意思表示。己の『勝ち』を確信した孟徳は満足げに瞳を細めると、心の中で口笛を吹いた。
◆番外編(孟花+文若、文若からの電話中にイチャイチャする孟花)
その翌日の昼間。今日もまた孟徳と花はホテルのスイートルームでまったりと過ごしていた。
見たかった映画を室内の巨大なテレビで流しながら、ルームサービスで頼んだ紅茶とコーヒーを二人で飲んでいた、そのとき。孟徳のスマホが鳴った。
しかし、彼はそれを無視して優雅にコーヒーを口に運ぶ。着信音は聞こえているはずなのに頑なに出ようとしない孟徳に、花はおずおずと声をかける。
「あの、孟徳さん、スマホが鳴って……」
「――え? 俺は聞こえないけど?」
この反応はひどいと思う。花は困惑するが。
「……冗談だよ、そんな顔しないでよ、花ちゃん」
孟徳は柔らかく苦笑すると、花の頭をポンポンとなでて、どことなく嫌そうにつぶやいた。
「……あの着信音は私用スマホに文若がかけてきてるな」
「じゃあ、出ないと……」
「嫌だよ! 休暇中に君といるのになんであんな辛気臭い顔したやつの相手なんてしなきゃいけない」
「でも、文若さんも用事があってかけてきてるんじゃないんですか……?」
「仕方ないな…… じゃあ、電話中ずーっと君が俺の腕の中にいてくれるなら、あいつからの電話に出てもいい。どう?」
「っ、わ、わかりました……」
「よし、交渉成立だ。おいで、花ちゃん」
孟徳は立ち上がって先程から鳴りっぱなしのスマホを手に取ると、大きなソファーに腰を下ろして両手を広げた。
まるで乙女ゲームのスチルのような絵面だけど、花にときめきはあまりなかった。むしろちょっとした罰ゲームだ。
「それでは、失礼します……」
花は仕方なく彼の腕の中に収まる。彼の脚の間にちょこんと座って後ろから抱きしめられる形になる。
「……っ!」
なんだか意味もなく緊張する。いよいよお仕置き感が増してきた。
休み中に私用スマホが鳴っただけなのだから、完全プライベートのはずなんだけど。鳴らした相手が文若だから、花は何かあったのかと心配していた。
しかし孟徳は飄々とした様子で楽しげに口の端を上げると、スマホの画面をタップして電話に出た。そして、すぐに花の脚の間に右手を滑り込ませてくる。
「……!」
花は声を殺したまま身体を固くするが、孟徳は普段通りだ。
「――俺だ。どうした、文若」
仲がいいように見えて、あくまでも孟徳と文若は職場の上司と部下という関係。純粋な友達とは違う。
孟徳の仕事用の声は格好いいけど威圧感があって、花はドキッとする。緊張感が高まる。
『……常務。休暇中に申し訳ありません。急ぎでご連絡したいことがございまして』
電話越しに聞く文若の声がなんだか新鮮だ。文若もまた孟徳を相手にしているからか、畏まった様子だった。
「急ぎ?」
孟徳は不機嫌な様子で訝しげに問い返す。
けれど、孟徳の悪戯な指先は花の脚の間のその場所に容赦なく触れてきた。下着の上から裂け目の上を何度も何度も往復し、花の一番感じてしまう肉芽を引っ掻くようにして刺激してくる。
ビリビリとした甘い心地よさを感じて、花は思わずため息をこぼしたくなるが。そんなことをしたら文若の耳に届いてしまう。花は息を殺しながら体を固くした。
まだ、下着の中に手を入れられたわけではない。でもこの調子だと今すぐにでも入れられそうで、花は覚悟を決めた。
孟徳にどんなことをされたとしても、喘ぎ声だけはこらえないと。あんな声を文若に聞かせるわけにはいかない。
まさか己の電話相手がそんなことになっているとは夢にも思っていないであろう文若は、淡々と話を続ける。
『――ええ。常務、昨日深夜に彼女を伴ってコンラードホテルの宿泊者専用のバーに赴かれたそうですね』
「……否定はしない」
孟徳がそう口にしたと同時に、彼の右手が花の下着の中に入れられて、ついに孟徳の指が花の割れ目の中に入り込んでくる。
花は無言のままじっと耐えるが、孟徳は容赦がなかった。あっという間に指を増やして、花のその場所をほぐすように、大きくかき混ぜ始めた。
(っ……!)
まるで、挿入の前段階のようだ。花はベッドで裸の自分を愛でているときの孟徳の姿をありありと思い出し、己の浅ましさにぎゅっと目を閉じる。
声をこらえなければならないせいか、妙に快感が強まってしまう。自分の身体がいつも以上に敏感になっている気がして、花は戸惑う。
(なんでだろう…… 今日はすごく、感じちゃう、な……)
孟徳の腕の中にいるだけで、なんだかおかしな気持ちになってしまう。着ている服の全てを脱ぎ捨てて、彼に抱きついてしまいたくなるような。
そして、花の最も感じてしまう肉芽に孟徳の親指が添えられた。
(っ…… そんなとこ……!)
花は心の内で悲鳴を上げるが、今まさに文若と電話中の孟徳に対してダメと伝えられるはずもない。
それどころか下手に拒もうとすれば余計にひどいことをされてしまいそうで。花は両手で口を抑えて、孟徳の蹂躙を甘んじて受け入れた。
(ああっ…… んっ…… っ……!)
しっかりと足を広げたまま、花は心の内で存分に喘ぎながら、びくびくと身体を震わせる。脚の間の肉芽を孟徳に手加減なしで嫐られているのだ。もうたまらない。
孟徳の腕の中でまるでいやいやをするように小さく頭を振りながら、花は彼の手によって与えられる快楽に耐えていた。
(これ以上続けられたら、ほんとにイっちゃうよぉ……)
花は大きな瞳に生理的な涙を浮かべるが、孟徳の愛撫は止まらない。確実に彼女を追い詰めてくる。
(イっちゃうときの声、文若さんに聞かれたら、恥ずかしくて生きていけない……)
花がそんなことになっているにも関わらず、電話の向こうの文若は淡々と話を続けていた。
『――私のところに匿名のタレコミがございました。おそらくは周公瑾の手のものでしょう。隠し撮りと思しき画像も添付されておりました』
「……なに?」
文若と孟徳の仕事の込み入ったやり取りを聞きながら、脚の間の裂け目を孟徳に好きに弄られて気持ち良くなっているなんて、もうめちゃくちゃだ。
孟徳も文若の話に合わせて緊迫感のある声を出しているけれど、その前に大事な電話をしながら、恋人の陰核を刺激して裂け目の中をグチャグチャにかき混ぜるのをやめて欲しい。
孟徳と文若の会話の内容はそこそこ真面目なもののはずなのに、孟徳のせいで今まさに悦楽の高みに押し上げられようとしている花はそれどころではなかった。
まるで仕事中の文若のすぐ隣で、彼に気づかれないようにしながら、孟徳と愛の行為に耽っているかのような背徳感だ。
『――文若に気づかれないように最後までできたら君の勝ちだからね、花ちゃん』
『――孟徳さん、ひどいです……』
『――別にひどくはないでしょ。したいって言ってきたのは君の方なんだから』
『――っ』
『――じゃあ、入れちゃうね』
『……あっ ……んっ』
『文若に見つかりたくなかったら、ちゃんと大人しくしてるんだよ……』
やがて、花の中に入れられている孟徳の指先は、彼女をさらに追い詰めるかのように大きく動き始めた。
花のその場所から勢いをつけてすっと引き抜かれて、またずぷりと入れられる。まるで本番さながらの律動だ。花の裂け目の中を彼のものが何度も繰り返し行き来する。
花は先程よりずっと両手で口元を抑えていたが、今や上の口よりも下の口のほうが危険な状況だった。
孟徳の巧みな愛撫によって、花のそこからは浅ましいほどに体液が溢れ出ていた。孟徳がほんの少し指を動かせば、まるでそのような楽器のように、淫らな水音を奏でてしまいそうだ。
しかし、素直な身体の反応は止めようがなく、花は孟徳の腕の中で手慰みの悪戯をされながら、水のような愛液をとめどなく滴らせていた。感じすぎて裂け目の中がぐっしょりとなっているのが、自分でもわかる。
(こんなやらしい音、文若さんに聞かれたくないよ……)
早くふたりの電話が終わって欲しい。花はそう願うが、なかなか都合良くはいかない。文若の孟徳に対するお小言はまだまだ続きそうだった。
『――あなたが彼女相手にだらしなく鼻の下を伸ばされてお戯れをなさっている画像はこちらで握り潰しましたが。常務! 公共の場で女性を伴っている際は、常に周囲に目配りをしながら節度ある振る舞いを――!』
文若のわかりきった説教に苛立ったのか、孟徳は花の無防備な陰核をぎゅっと爪で押し潰してきた。堪らえきれずついに花は甘やかな喘ぎを漏らしてしまう。
「っ、ああっ…… ……っ!」
小さな囁きだったけれど、人の声はノイズとはみなされず、スマホのマイクに拾われてしまう。
『――常務? どなたかとご一緒なのですか?』
文若ににわかに緊張が走る。神経質で警戒心の強い文若らしく、さっそく確認を入れてきた。
空気を読んで聞こえなかったフリをしてくれるほど、文若は甘くもなければ色ごとに長けてもいない。
花はしまったという顔で口を噤むが、孟徳は堂々と白を切る。
「安心しろ、文若。ここに部外者はいない。お前が口を挟むようなことじゃない」
文若に対しても嘘をつかない孟徳だから、誰もいないとは言わなかった。明らかに違和感のある言い回し。けれど最後に「お前の文句は聞かない」ときっちり圧をかけるのが彼らしかった。
『そう、ですか……』
語るべき言葉を失くし、文若は黙り込む。花もまた懸命に沈黙を守っていたが、孟徳の容赦ない愛撫は今も続いている。
何本もの指をきっちりと揃えて、花のその場所に入れたり出したり、孟徳はまるで本番さながらの動きで花を追い詰めてくる。
花の顔はもう真っ赤だ。完全に余裕をなくしていた。けれど、今にも気をやって果ててしまいそうな花に対して、孟徳は平静そのものだった。
花の無防備な裂け目を手慰みにしながらも、ポーカーフェイスを崩さずに文若との長電話に興じている。
今の孟徳は、なんだかマフィアのボスみたいだ。高級ホテルの一室で、愛人の裸の身体を玩具にしながら、部下との長電話に興じている、裏社会のボス。
「しっかし、あんなところにまで孫家の奴らが潜り込んでるとはなぁ。ご苦労なことだ」
孟徳の話題転換をきっかけに花は昨夜のことを思い出す。
あの場でずっとピアノを弾いていた公瑾が盗撮することはきっと不可能だ。だから、他にも仲間がいて写真を撮ったのはその人なんだろう。だからこそ孟徳は孫家の奴らなんて言い方をしている。
(……撮られてたの、全然気づかなかったな)
孟徳の腕の中で自分の身体を好き勝手に弄ばれながらも、花は深く反省した。
孟徳に優しくエスコートされて甘やかされて、浮かれていた自分がひたすらに情けなかった。もっと自分がしっかりした大人だったら、盗撮にも気づけて孟徳を守れたかもしれないのに。
けれど。意気消沈する花に対して、孟徳は当然の権利といった様子で怒りを燃やした。
「――しっかし、俺と彼女の憩いのひとときを邪魔するとは、あの男もよほど『早死したいと見える』なぁ、文若」
思いのほか低い声に、花の胸がぎゅっと掴まれる。孟徳は守ろうとしてくれているのだ。花と二人で過ごす時間と、花自身を。
孟徳の指が花の中からようやく抜かれて、花はほっと息をつく。孟徳の右手はまだ花の脚の間の近くにあったけど、下着の中から彼の手が出ていっただけで、花はだいぶ安心できた。ようやく落ち着けそうだ。
けれど、その一方で。
「……っ、常務』
電話の向こうの文若は明らかに沈んだ様子だ。しかし、怒り心頭らしい孟徳は彼に冷たく追い打ちをかけた。
「――お前たちはずっと何かを勘違いしているようだが、俺はタレントでも政治家でもないし、彼女だって恋愛禁止のアイドルグループのメンバーじゃない」
『……存じております』
「俺も彼女もただの私人で一般人だ。お互い独身だし、彼女も二十歳を過ぎている。なにより両家の親公認の付き合いで結婚の約束もしている。やましいことは何ひとつない」
『……つまり、今後も振る舞いを改めるつもりはないと』
「そうなるな」
孟徳の気持ちは嬉しい。けれど、花は素直に喜べなかった。こんな調子で大丈夫なのだろうか。
孟徳だけではない、文若のことも気がかりだった。生真面目で思い詰めやすい神経の細やかな彼が、心配で仕方がない。
『そう、ですか……』
文若は絞り出すように呻いた。孟徳を支えることを生き甲斐にしている彼が、その孟徳に拒否されてどれほど傷ついているだろう。
まるで我が事のように花は胸を痛めたが、今回の揉め事の原因である自分に、文若に寄り添う資格などないのだ。
孟徳はまだ怒りが収まらない様子で、低い声で彼を呼んだ。
『――おい、文若」
『……はい』
「周公瑾には俺の方から話をつけておく。俺たちに金輪際おかしな手出しができないように、あの陰湿な芸能くずれにはきっちり分からせておかないとな」
孟徳と公瑾は昔から折り合いが悪いらしく、孟徳は彼に対しても辛辣な言葉を吐き捨てる。
『……っ』
文若は小さく息を呑むが、平静を装って言葉を続けた。
『……また揉み消しが必要な事態になりましたらお早めにご連絡ください。マスコミ対応も、できることとそうでないことがございますので』
「要件はそれだけか?」
『……常務』
「なんだ?」
『私は、常務とあの者の交際に反対しているわけではありません。ただ、人目のある場所での振る舞い方だけを考え直して頂ければ、それで……』
「彼女と仕事、どちらかしか選べないなら、俺は彼女を選ぶね。仕事なんてスッパリ辞めてやるさ」
『っ、常務……!』
ここまでくると文若が可哀想になってくる。花はいよいよ心臓が握りつぶされるかのような痛みを覚えたが、今更どうしようもない。
「――話はそれだけか?」
『はい…… 休暇中ご連絡差し上げて申し訳ございま――』
文若の口上が終わる前に、孟徳はスマホを放り投げた。ちょうど花の目の前、厚いカーペットが敷かれた床に孟徳のスマホが叩きつけられ鈍い音を立てる。
いつも空恐ろしいほどに冷静な孟徳が、感情に任せてこんなことをするなんて。孟徳の粗暴な振る舞いに花は驚きを隠せなかったが、同時に言い知れない悲しみも覚えてしまう。
ただ好きなだけなのに、ただ愛しているというだけなのに。自分たちをとりまく現実はこんなにもままならない。
「――はい、花ちゃん。もう電話終わったから」
「……孟徳さん、スマホを投げるのは」
「別にいいでしょ。しかしやっぱりあいつからの電話なんてろくなことじゃないな」
「……すみません、孟徳さん。……私がもっとしっかり気をつけていれば」
「どうして君が謝るの。謝らなきゃいけないのは俺の方だよ。俺のせいで君を巻き込んだ」
「孟徳さん……」
「たかがデートすら思うようにできないなんて、どうかしてるね。嫌になっちゃうよ」
「……そう、ですね」
孟徳は努めて明るく振る舞っているようだが、やはり纏う空気が重い。そんな彼を励ましたくて。
「……でも、ここには誰もいませんよ。今は好きなだけ、イチャイチャできます」
花は孟徳の方を振り返り、彼を抱きしめた。ままならない現実と、自分たちを傷つけるだけのしがらみから、この人を守りたい。守ってあげたい……。花は改めて決意する。
(これからは、私がちゃんと気をつけないと……)
愛する孟徳のために。そして、彼を陰に日向に支えてくれている文若たちのためにも……。
***
「……ったく、あのお方は」
スマホを左手に握りしめたまま、眉間に皺を寄せて、荀文若は大きなため息をついた。
「しかし、電話中にあのような……」
孟徳との電話中、一瞬だけハッキリと耳に届いた女性の呻くような声。そして孟徳の『ここに部外者はいない』という発言。
もしかしてと思ったが、自分との通話の最後、孟徳は電話を切らずにスマホを投げたのだ。
おそらくは自分に聞かせるためにあえてそうしたのだろう。スマホが床にぶつかったと思しき鈍い音の直後に聞こえてきた声。
『――花ちゃん電話終わったから』
『――孟徳さんスマホを投げるのは……』
これ以上は聞いてはいけない気がして、慌てて自分から電話を切ったが、文若は再び深いため息をつく。
「花、頼んだぞ…… 真に常務をお守りできるのは、もうお前しかいないのだ……」
自分にできることは、もはや何もない。あとはただ、祈ることだけ……。文若の苦悩はずっと晴れぬまま、その胸の内に澱のように降り積もる。
END
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