MISS YOU MORE(R18)
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恋戦記は現在一部のお話のみヒロインの名前変換可です薄桜鬼とテニプリは名前変換可、刀剣乱舞はネームレス夢です
恋戦記小説について
現在一部作品のみ名前変換可にしていますが、ヒロインの下の名前「花」が一般名詞でもあるため「花瓶の花」などで巻き込み変換されてしまいます
それでも良い方は変換してお楽しみください。それがダメな方はデフォ名「山田花」でお楽しみください
すみませんが、よろしくお願いいたします
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長いようで短い、ホリデーシーズンの休暇中。
花は孟徳と二人でとある高級ホテルにいた。本当は一緒に旅行に行きたかったけど遠出が出来なくて、結局近場のホテルで過ごすことになったのだ。
高層階のスイートルーム。ウェルカムドリンクのノンアルコールのスパークリングワインとフルーツを頂いてから、花は早速部屋付きのお風呂に入っていた。
ホテルのお風呂はやはりとても綺麗だ。床や壁は大理石で、海に面した壁が巨大な窓になっている。
花は乳白色の湯船に浸かりながら、窓外の景色を眺めていた。都会のビル群の向こうには輝く水平線が見える。
(……景色、すごいなぁ)
こんなところに泊まり慣れている身分ではない。花はお風呂の気持ちよさよりも、景色に心を奪われていた。自然と長風呂になる。すると、当然へそを曲げるのはこの人だ。
「……花ちゃん~~ やっぱり、ダメ?」
扉一枚挟んだ脱衣所から聞こえてくるのは甘ったるい孟徳の声だ。彼が好きな女性に対してだけ聞かせる、すがるようなお願いボイス。しかし、花はつれなかった。
「ダメですっ!」
力一杯返事をする。同じやりとりをすでに五回はしていた。花は改めて主張する。
「一緒にお風呂に入るのは、ダメですっ!」
しかし、孟徳はめげなかった。全力で花に食い下がる。
「ええ~~ いいじゃない、何もしないよ? 絶対に何もしないから!」
「も、孟徳さん! 少し前に『男の言う絶対に何もしないは絶対に嘘だから絶対に信じちゃダメ!』って言ってましたよね!?」
「え? やだなぁ、そんなこと言ったっけ?」
特技は暗記なのにも関わらず、孟徳は堂々と白を切る。そのあまりのわざとらしさに花は怒った。
「孟徳さんのバカ! もう、一緒にお風呂なんて絶対に――」
「冗談だよ、冗談! 君に嘘はつかない。約束する。だから、ちょっとだけでいいから……!」
(なんていう泣き落としが本当に通じるとはな……)
ダメ元の泣き落としが通じてしまった。花と同じバスタブ、同じ湯船に浸かりながら、孟徳は僥倖を噛みしめる。嬉しい。本当に嬉しい。
しかし、孟徳は優しすぎる彼女に若干の不安を覚える。
(……他の男にもこんなに甘いなんてことはない、よな? 俺に対してだけ、だよな?)
さすがに花が自分以外の男と一緒にお風呂に入るとは思わない。けれど、優しくて人気者の彼女の周りには、やはり男の影があるから。時々不安になってしまうのだ。
(……信じていいんだよね? ……花ちゃん)
君をずっと信じると確かに約束したけど、人間の性格はそう簡単に変わるものじゃない。不意に気持ちが沈みかける孟徳だったが、タイミングよく花が声を掛けてきた。
「――ホテルのお風呂、綺麗で広いですね」
今の花はいやに上機嫌だ。
さきほど「風呂に入れてよ」「ダメです!」の押し問答を続けていたときは、ちょっとご機嫌斜めだったけど。喉元過ぎて熱さを忘れたのか、今はニコニコとしていた。
孟徳は内心の葛藤はおくびにも出さず、しれっとした表情で答える。
「――そうだね。景色もいいし、やっぱりいいよねぇ。ホテルステイは」
高層階の部屋付きの豪華なお風呂。壁一面の巨大な窓からは綺麗な青空と都心のビル群と海が見える。
孟徳の自宅のタワーマンションも見晴らしがすごくいいけど、お風呂から外の景色は見れないしオーシャンビューではないから、孟徳にとってもこの眺めは新鮮だった。
改めて孟徳は今日宿泊しているホテルの設備の説明をする。
「お風呂以外だと宿泊者専用のスポーツジムやプールもあるんだよ。いつでも好きに使えるから、行きたくなったら言ってよ。一緒に行こう」
お高めのホテルには、宿泊者限定で自由に使える設備が色々ある。ジムにプール、軽食が楽しめる景色のいいラウンジ、バーもあるからお酒も飲める。花と二人で過ごせるせっかくのお休みだから、一緒に楽しいことをしたい孟徳だった。
「すごいですね」
花は驚いたように目を丸くする。彼女の純粋な反応が微笑ましくて孟徳は笑みをこぼした。
ベタだけどやっぱり、好きな女の子にこういう反応をしてもらえるのはすごく嬉しい。もっと喜ばせたくなってしまう。
「……君が行きたいなら、俺はどこにでも付き合うよ」
自然と微笑みを浮かべていた。好きな子はやっぱり甘やかしてあげたいのだ。何でもわがままを言って欲しい。
しかし、孟徳の姫君はちょっと驚いたような表情を浮かべると、真面目な顔で彼の申し出を辞退してきた。
「……ありがとうございます。でも私は、孟徳さんがしたいことがしたいです」
「えっ」
「……今日は、二人でのんびりしましょう」
孟徳の目をまっすぐ目を見つめて、花は心からの気遣いをしてくれた。
確かに、自分はいつも疲れていた。仕事で忙しく飛び回ることが多いから、本当は休みの日はのんびりしたい。
けれど、そんな理由で自分と一緒にいる女性を退屈させてしまうのは、孟徳の男としてのプライドが許さなかった。
それに何より大切な花を退屈させたくなかったのだ。自分と一緒にいるときは、心から楽しんでいて欲しい。
そういった理由があっての、先ほどの発言だったのだが。
やはり花はさすがだ。自分の気遣いを見抜いて、こうして逆に思いやりを返してくれる。男の優しさに甘えるだけの子ではないのだ。
「ありがとう、花ちゃん……」
孟徳は素直に感動してしまった。らしくないのかもしれないけど、これも相手が花だからだ。自分にとっての唯一の女性。
花もまた照れたような笑みを浮かべると。
「……孟徳さん、そっちにいってもいいですか?」
なんと、自分から孟徳の腕の中に納まってしまった。バスタブの中でのバックハグ。孟徳はここでも幸せを噛みしめる。
何もしないという約束だったのに、なんとなく雰囲気に甘いものが混ざり始める。
「……こうやって君と一緒にのんびり過ごすのが、俺にとっては一番の贅沢だよ。俺のそばにいてくれて、ありがとね」
孟徳は花の手を口元にもっていき、その甲に優しくキスをする。ちょっとしたお姫様扱いだ。
ほのぼのとした雰囲気に忘れそうになるけど、一緒にお風呂というシチュエーション。お互いの素肌を隔てているのはバスタオルの布一枚だけで。
それをようやく思い出したのか、花がにわかにソワソワとし始めた。ようやく自分がすごく大胆なことをやらかしてしまったと気づいたらしい。
だけど、好きな人と触れ合いたいという気持ちは花の方にもあるらしく、彼女は孟徳の腕の中から逃れようとはしなかった。少しだけ恥ずかしそうにしながらも、彼の腕の中におさまったまま。
このチャンスを逃す孟徳ではもちろんない。孟徳は花の首に顔を埋めて、嘘にならない程度にそれらしい小芝居を打つ。
「ん~ なんか眠くなってきた……」
「えっ、大丈夫ですか……?」
すると、孟徳の演技を真に受けたのか、ちょっと焦った返事を返された。花が動いたせいで湯舟がばしゃりと揺れる。
「あはは、冗談だよ。なんかね、こうしてると幸せだなって思うんだ……。こうやって、君と一緒にいられるだけで、俺は満足だよ」
ひとまずそう返事をして、孟徳は花と一緒に温かなお湯につかりながら、しばらくの間外の景色を眺めていた。
そして、ようやく。孟徳は花を毒牙にかけることに成功する。
「――絶対に何もしないって言ったじゃないですか……」
「――ごめん、やっぱり無理だった……」
とりあえずの謝罪をしながらも。孟徳はなし崩しで愛の行為に及んでいた。花を抱きしめて、愛撫をしている。すでに二人とも裸で、身体に巻いていたタオルは行方不明になっていた。広い浴室内には花の甘い喘ぎとシャワーの音が反響している。
浴室で行為に及ぶとき、孟徳はシャワーを出しっぱなしにするのが好きだった。水音を聞きながらの愛の行為は、なんとなく雰囲気が高まるのだ。相手の女の子も背徳感を刺激されるのか、反応が目に見えて良くなってくる。
それは花も例外ではなく、今日の彼女はいつもよりずっと可愛らしくて淫らだった。抵抗らしい抵抗もせず、無防備な裸身を孟徳の好きに弄らせてくれる。脚の間もすっかり潤っていて、これならいつでも孟徳のものを入れられそうだ。
出しっぱなしのシャワーのお陰で浴室内は温められていた。湿度の高い閉鎖空間は、いかにも風呂場らしい。
花の素肌はほんのりと火照り、首筋にはうっすらと汗が浮かんでいた。その汗すらも愛おしく思えて、孟徳はそれを舐め取る。すると、花がぴくりと身体を震わせた。
(……孟徳さん、雰囲気作りうまいな)
いつものこととはいえ、花は改めて孟徳の旺盛なサービス精神に舌を巻く。SはサービスのSでMはわがままのMだって言うなら、今の孟徳はSだと思う。きっと。
(他の女の子ともお風呂でしたことあるのかな。あるんだろうなきっと……)
シャワーを出しっぱなしにしながら、浴室の壁に両手をつかせた女の子を背後から愛撫して、その子の体液を舐めとっていたに違いないのだ。今このときと同じように。
(……っ)
孟徳に抱かれながらも、花はつらつらと考えなくてもいいことを考えてしまう。
ヤキモチが妬けるけど仕方がない。過去のことは責められないから、花は今にだけ集中する。彼の今と未来は自分にだけ捧げられているのだから、それだけで我慢しないと。
しかし、胸の奥はやはり痛む。本当は孟徳の全てをこの身体に縛り付けてしまいたい恋心。孟徳を愛するうちに、いつしか花の胸の奥にもそういった気持ちが芽生えていた。
彼の身も心も、過去も未来も。彼の人生すべてを乗っ取って、この身に縛りつけられたら、どれほど満足できるだろう。
孟徳の熱く濡れた息遣いと場数を踏んだ慣れた愛撫で、脚の間を浅ましく濡らしながら、花は懸命にこみ上げる妬心を抑える。
(……でも、もしかしたら)
孟徳もこうやって、自分のことを縛りつけておきたかったのかもしれない。花は不意にそのことに思い至る。消えない不安を打ち消すために鎖で繋いで、自分だけの鳥籠に。
孟徳に無垢な裸身を愛されながら、花は湿度の高い閉じられた世界でそんなことを夢想する。
シャワーの音と孟徳の息遣い、そして浴室の大理石の壁だけが。今の花の世界の全てだった。
***
浴室内に避妊具はないから、自然と出来ることは限られる。
花の脚の間の肉の花弁が孟徳の手によってしっかりと広げられ、その真ん中に孟徳の屹立の竿の上部がぴったりと押しつけられる。
「……っ」
そのまま、孟徳は花に太ももを閉じさせた。充血した孟徳の肉の楔が花の脚に挟まれる形になる。
楔の先端を花の裂け目に押しつけているわけではないから、このまま孟徳が腰を揺らしても挿入にはならない。ただ、前後に擦れ合うだけだ。
孟徳は自分の楔の下部を片手で支えるようにしながら、もう片方の手で花の腰を掴んだ。
「今日はこれで、動くね……?」
こんなことをされるのは、生まれて初めてだ。花は期待と不安に喉を鳴らしてしまう。
「――あっ…… つっ……!」
花にとっては初めての体験だった。入れてないけど入れているみたいで、なんだかすごく気持ちいい。
孟徳が前後に腰を揺するたびに、孟徳の楔の先端が花の一番感じてしまう肉芽に当たる。疑似挿入のじれったさも相まって、心地よさに溶けてしまいそうだ。
自分の裂け目の内側がさらに濡れていくのを花はしっかりと感じとる。過剰な潤いはすぐに溢れて、孟徳の屹立を濡らしてしまう。
こんなにわかりやすい反応をしたら、きっとからかわれてしまう。けれど、我慢しようとすればするほど花の身体は昂ぶった。
女性の体液が潤滑油代わりになるのは、普通の性行為と変わらないのだ。そして早速、孟徳が煽ってくる。
「……体液が溢れてきたね。花ちゃんも、気持ちいいんだ?」
「っ……!」
「このまましっかり感じて、沢山濡らしてね。その方が俺も都合がいいし……」
甘く錆びた声で囁いて、孟徳は花の首筋に唇を触れさせた。そのまま、きつく吸い上げる。そこは服で隠れない場所だ。
「……っ、ダメです、そんなとこ」
痕をつけられたくなくて、花は身体をよじってささやかな抵抗をする。彼女の腰の角度が自然と変わるが、孟徳は彼女の身体を優しく抑えつける。
「……こら、勝手に動いたら俺のが入っちゃうよ? だから君は動いちゃダメ」
「……っ!」
「今日は大人しく、俺の好きにされること」
「っ、そんな……」
そんなのひどい。けれど、孟徳の言う通り避妊具をつけていない彼のものが入ってしまったら大変だから。花は仕方なく、何の抵抗もせずに孟徳の愛撫を受け入れた。
「……っ ……んっ」
首筋に唇を這わされて、時おり厚く濡れた舌で舐められて、無防備な素肌をきつく吸い上げられる。
見える場所に痕はつけないで欲しいのに、孟徳の口づけと濡れた舌がくすぐったくて、花は甘く喘いでしまう。自分の無防備な身体を彼の好きにされるのが心地よい。
「あっ…… も、うとく、さ……っ」
「……ん、いいよ。君の中からいっぱい溢れてきてる……。首筋舐められるのも好きなんだね」
露骨な言われ方をされてしまって、花は反射的に否定してしまう。
「っ、ちが…… いま……」
「嘘だね」
「っ」
「……君はやっぱり可愛いな。素直で、すごくいい。ずっとそのままでいて?」
「……っ」
なんだか、またしても上手く嵌められてしまった気がする。
だけど愛の営みの最中に花が孟徳を出し抜くなんて不可能だ。場数を踏んだ大人の彼にはやっぱり敵わない。いつもこの手にやられてしまう。
「……ねぇ、もっと濡らして欲しいな。次は何してあげようか? 君はどうされるのが好き?」
「……っ!」
身体を重ねているときの孟徳は意地悪だ。やっぱりいじめっこ気質で、今も花を困らせて楽しんでいる。
しかし、花もまた孟徳のわかりやすい煽りに身体を反応させてしまった。体液をいよいよ溢れさせて孟徳の屹立を濡らしてゆく。
孟徳は腰を前後に動かして、花のその場所に自らの楔を擦りつけて快楽を得ながらも、空いた方の手で花の乳房を掴んできた。孟徳の手によって花の秘部と胸とが同時に刺激される。
「あっ…… つっ……」
こんなことをされてはもうたまらない。二方向から押し寄せる快楽の波にさらわれながら、花は無防備な裸身を仰け反らせる。
今日の行為は、全て孟徳がリードしてくれていた。今も自分の屹立が花の中に入ってしまわないように手で抑えながら、腰を規則的に動かしている。
けれど、それは裏を返せば全てが彼の手の上ということだ。孟徳がその気になれば、避妊具をつけていない彼の屹立は、いともたやすく花の中に入れられてしまうだろう。
(そんなことになったら、どうしよう……)
さすがに孟徳がわざとそんなことをするとは思わないけど、事故を起こしてしまう確率はゼロではない。
けれど、花は興味を抑えられなかった。避妊具をつけていない彼のものを入れられたら、一体どうなってしまうのだろう。まだ、生身のままでの挿入は体験したことがなかった。
すると、まるで花の心を読んだかのように孟徳が囁きかけてきた。
「なんか、こんなことしてたら、入れたくなっちゃったな……」
「え……」
「……だめ?」
言うが早いか、孟徳は自分のものの角度を変えてきた。避妊具をつけていない彼の楔の先端が、花の裂け目にほんの少しだけ押し込まれる。
孟徳はそのまま、腰を前後に動かし始めた。彼の屹立が花の中にジリジリと入り込んでゆく。
「っ…… だ、だめ……です……」
このまま最後まで押し込まれてしまってはたまらない。花は孟徳を拒もうとするが。
「どうして? ……こんなに濡れてるんだから、君も入れられたいのかな、って」
「っ……!」
「出すときは外でするから大丈夫だよ、それに、もしできても俺の奥さんになればいい」
生で入れても外で出せば平気、できたら責任取るから……。孟徳の言うことは一理あるといえばそうだけど。
「そ、それでも、だめです、つけてないなら……」
入れられたい気持ちはすごくあった。興味もあった。しかし、花はきちんと彼を拒んだ。大好きな孟徳相手でもなしくずしにされたくなかったのだ。
すると、不意に孟徳が柔らかく微笑む。
「……じゃあ、つけてればいいってことだね?」
「え?」
「ちょっと待ってて、今からつける」
「えっ、え……?」
「実は用意してたんだ」
四角い個包装を見せられて、花は言葉を失う。
「っ、そんな……」
全然気がつかなかった。反射的に『どうして』と思うが、あらかじめ風呂場に置いていたのかもと思い至る。お風呂の用意をしてくれたのは孟徳だから。
花が動揺しているうちに、孟徳はそれを手早くつけてしまった。そして……。
「……つけれたから、入れるね?」
「えっ! ――つっ、あっ……!!」
あっと思うまもなく、花はあっさりとその場所を孟徳に貫かれてしまった。限界まで硬さを増した孟徳の屹立は花の肉体の最奥までひと息に到達する。
突き抜けるような快楽に花の瞳に生理的な涙が浮かぶ。裸の身体を仰け反らせて甘く震えながら、花は孟徳を非難した。
「も、うとくさんの…… バ、カ……」
しかし、こんなものは彼女に恋する男からしたらご褒美でしかないだろう。『すごく気持ちいいです』と顔に書いてある。
孟徳もまた花を見おろしながら、歯の浮くような台詞を口にした。
「――バカでいいよ。俺は君のためならどんな愚かな男にだって成り下がれる」
「っ……」
裸の花を抱きしめて落ち着かせてやったあと。孟徳は花の胸を揉みながら、首筋に口づけを落としてきた。
甘い台詞に甘い振る舞い。孟徳は女の子が欲しい言葉をくれて、して欲しいことをしてくれる。
だけど、だからこそ逆に胡散臭い。言い慣れてる感というか、他の人にも言っていそうな模範解答。
それでも嬉しく思えてしまう自分が浅ましい。花は孟徳に無防備な裸身を愛されながらも唇を噛んだ。
孟徳が好きだ。ズルいところも含めて全部。彼が与えてくれる惜しみない幸福を噛み締めながらも、花の脳裏にはほろ苦い寂しさがこみ上げる。
この人は、きっと。真の意味で自分だけのものにはなってくれない。
今と未来を捧げてくれても「女性はもう花だけだから」と彼本人が何度口にしようとも。
孟徳は多忙でなかなか一緒にはいられない。職業人としての彼もまた、いつだって大勢の人たちから求められている。
けれど、その苦しみを飲み干すことも、孟徳への愛の証だから。甘いだけではない彼の全てを、華やかさと表裏一体のその陰ごと、彼を愛したい。
いつしか、花の身体から挿入の痛みは消えていた。代わりにじんわりとした心地よさがやってくる。するとタイミングを計ったかのように囁きかけられた。
「……そろそろ動くね。たくさん気持ちよくなって?」
***
「……っ、ん…… っ……」
何かをこらえるかのような喘ぎを漏らしながら。花はバスタブのへりに手をついて、孟徳に背後から愛されていた。いつもと違う場所でするのは、やはり興奮してしまう。
自分のすぐ目の前には巨大な窓があり、都心のビル群と海が見える。臨海地区の高層階。今はちょうど夕方で、茜色の太陽が水平線の向こうに沈んでいこうとしている。そして、花の耳を終始くすぐるシャワーの水音。
背後で孟徳が腰を揺らしているから、時おり肌と肌とがぶつかる音が花の耳に届いて、それがたまらなく生々しかった。
花が与えられる快楽に浸っていると、不意に孟徳がシャワーの湯を止めた。水流が弱まりシャワーの音がなくなる。
「もう……とく、さん……?」
「――今度は向かい合ってしてみようか。……こっちを向いて、窓のへりに腰掛けてごらん」
孟徳は自分のものを抜いて、花にこちらを向かせると再び彼女の中に侵入を果たした。二度目の挿入に花は甘やかな喘ぎを漏らす。
「……っ! ん…… っ……」
まるで彼に甘えてすがるように孟徳に抱きついた。
ラグジュアリーホテルの大理石のバスルームで、巨大な窓から差し込む夕日に照らされながら抱き合う裸のふたり。
まるで、大人向けの恋愛映画のワンシーンのようだ。それくらいロマンチックで素敵なロケーション。
「花ちゃん可愛い…… そうやってもっと俺に甘えてよ」
大好きな花に甘えられて孟徳はご機嫌だった。何かにつけて、孟徳は花を甘やかしたがる。
「ほら、もっと俺の腰に足を絡めて」
孟徳に命じられるまま、花は彼の腰にゆるく脚を絡めた。挿入がより深くなり、孟徳のものが花の最奥まで届く。
そのまま彼の屹立に奥を優しく何度も小突かれて、花はたまらなくなって熱っぽい吐息を漏らした。
「あっ…… んっ…… ん……っ……」
「……すごくいい反応だね。君の中もトロトロになってるよ、わかる?」
孟徳の問いかけに花は恥ずかしそうに頬を染めながらも、こくりと頷いた。孟徳は満足げに話を続ける。
「……俺がほんの少し動くだけでも、ほら」
くちゅっ、ずぷっ。生々しい水音が浴室内に反響する。花のその場所があまりにも潤っているから、こんな音がするのだ。
「……っ」
花はあまりの恥ずかしさに頬を染めて瞳を揺らすが、孟徳は攻め手を緩めない。
「……これだけ濡れてると、俺も止まらなくなりそうだよ、君をめちゃくちゃにしたくなる」
昼と夜の境目の時間。オレンジ色の夕日を浴びながら熱っぽい瞳で囁く孟徳は、とても男らしくて艶めいていた。琥珀の瞳の奥に宿るぎらついた光は、獲物を狙う肉食獣そのもので。
「……お風呂場でするの、好き? ベッド以外の場所でするほうが、君は興奮できるのかな?」
優しく穏やかな口調ながら明確に花を羞恥を煽ってくる孟徳に、花は返答に窮して口を噤んだ。けれど、孟徳は執拗に追撃してくる。
「――それとも、ここが明るいからドキドキしてるの?」
「っ……!」
「……俺は君が相手なら、どこでだって興奮できるよ」
「孟徳さん……」
相変わらず孟徳は口がうまい。けれど、そうやって甘やかされるのが嬉しくて、花の中はきゅっと締まって、とろりと体液を溢れさせた。
また孟徳の楔に快楽を与えてしまった。その場所を簡単に濡らして彼を喜ばせてしまう、自分の浅ましさに恥ずかしくなった花は、孟徳の首筋に顔を埋めた。
ささやかな照れ隠しだ。今の自分の顔を見られたくない。
すると。恥じらう花の姿に欲望を刺激されたのか、孟徳はぽつりと呟いた。
「――花ちゃんかわいい……。なんかもうほんとに、ゴムなしで突っ込みたくなってきたよ……」
さっきまでの格好つけはどこへやら。孟徳もまた柄にもなく照れてしまったようで、頬がほんのり赤かった。不慣れな性行為に戸惑う初心な少年のような表情で、そんなことを口走る。
「……だって、こんなにグショグショになってるしさ」
まるで何かのついでのように、孟徳がぽつりとこぼした呟きに、花の頬が赤く染まる。経験の多い孟徳が驚いてしまうほどあの場所を濡らしてしまった自分が恥ずかしい。だけど……。
「つ、つけずにするのは…… だめ、です……」
「……わかってるよ。今はしないから、安心して」
孟徳の返事に花は安堵するが、彼に水を向けられてつい興味を持ってしまった。すごく気持ちいいって言われてるけど、本当なのだろうか。
「――っ」
花は不意に考え込んでしまうが、孟徳に気づかれてしまう。
「……もしかしなくても、俺のお姫様はつけずにするのに興味あるのかな?」
「っ、それは」
「ねえ、答えてよ」
孟徳の腰が再び律動を始める。ゆったりと大きく、まるで花を堕とそうとするかのように。
孟徳に嘘は通じないから肯定しても否定しても、彼に本心が伝わってしまう。さすがに恥ずかしくなってしまった、花は沈黙を貫こうとするが。
「……ねえ花ちゃん。生でするのに、興味あるの?」
しかし。孟徳の放つ絶妙な威圧感には逆らえない。
「そ、そんなことない、です……」
「……嘘、だよね」
「っ……」
無難な返答をしたらあっさりと見破られてしまった。
「ほら、ちゃんと本当のこと言ってよ、花ちゃん。……じゃないと、ずっとこのままだよ。のぼせるまで離してあげない」
「……そんな」
孟徳はそんなに自分に卑猥なことを言わせたいのだろうか。
けれど、これは本当に言うまで離してもらえなさそうで、花は観念して腹をくくった。孟徳を見上げながら、彼の目を見つめて。
「ほ、本当は……」
「本当は?」
「つけずにする、の…… 興味、あります……」
恥ずかしさに声が震える。もう消えてしまいたい。嘘の分かる孟徳は、花のこの言葉が本心だとわかったはずで。
しかし、孟徳は恥ずかしい本心を吐露した花をからかうこともせず、満足そうに瞳を細めた。
「よく言えました」
「……っ!」
「……『生でしたいです』だなんて、いけない子だね。だけど、すごく可愛い」
(そこまでは、言っていない気がするんだけどな……)
肌を重ねているときは特に素直な女の子が好きらしく、孟徳は花が愛の営みに積極的になると、いつも手放しで喜んでくれる。
だからこそ、彼を喜ばせたい一心で花はいつの間にか、かなり大胆なことでもできるようになっていた。
いつの間にか調教されていて、今だって彼の願い通りにこんなにも卑猥な発言をしている。
孟徳は上機嫌なのを隠しもせずに花の裸身を優しく撫でると。
「……君の願いはなんでも叶えてあげたいけど、さすがにそれは、まだダメかな」
「……っ」
「危ないから、ね」
「男はつけずにする方が気持ちいいけどね。女の子は違いはあまり分からないと思う」
「……っ」
そういえば花も聞いたことがある。
ゴム手袋をして握手をするか素手でするか、それくらいの違いがあって、つけずにすると女の子のあそこの温もりや濡れた感じを直に味わえるのだとか。
意地悪だけど何だかんだ花に優しい孟徳は、本当に無体を働いたりしない。
けれど不意に、孟徳は花の腰を掴んで自らの屹立を花の最奥までぐっと押しこんできた。
「っ…… ああっ…… んっ……」
「生のままではできないけど、その代わり……。今日もたくさん気持ち良くしてあげるね」
「っ……!」
花は瞳を潤ませる。
「大好きだよ、花ちゃん。……ずっと俺だけのものでいてね?」
まるで自分だけの籠の鳥を愛でるかのような彼の瞳に、花は甘い眩暈を覚える。
気がつけば、窓の外には輝く夜景があった。
愛の行為を最後まで終えて倒れ込んだ花にバスローブを着せてから、孟徳は彼女をお姫様抱っこで抱えあげた。そして、楽しげに瞳を細めると
「お疲れ様。今日は楽しかったよ。……ごちそうさま」
甘く囁いて、無抵抗の花からサラリと唇を奪う。孟徳はズルい。またしても、してやられた感がある。
(……っ)
花は今日の愛の行為を反芻した。疑似挿入をしていたら本当に挿入されて、卑猥な言葉を言わされて……。
けれど、窓から見える夕日と海がすごく綺麗で、またひとつ新たな快楽を知ってしまった気がする。
お風呂場でするのってすごい。けれど。
(今度は普通に、お風呂に入りたいかな……)
孟徳はともかく、あんな愛の行為は自分にはまだ早いように思った。
***
「――大丈夫? のぼせてない?」
行為を終えたあとはいつも、孟徳は優しく労ってくれる。今だって先ほどまでの煽りは鳴りを潜めて、甲斐甲斐しく花の世話を焼いてくれていた。そして、花はといえば。ホテルの室内着に着替えてベッドで横になっている。
「……孟徳さんのせい、です」
「ごめんごめん。でも、君だってあんなに気持ちよさそうに――」
しかし、孟徳は反省の色もなく花をからかうような言葉を口にしたから。花は彼を睨みつけた。すると。
「……ほんとごめん、冗談」
いっそ珍しいほど素直に、孟徳は謝ってきた。花が彼の真意を測りかねていると、孟徳は恥ずかしそうに頬を掻く。
「なんかね、スイッチ入るともう止まんなくなっちゃうんだよね。君相手だと、どうしようもないね」
『狼藉を働いてしまったのは、相手がほかならぬ君だから……』
女の子が欲しい言葉をくれる孟徳だけど、百点満点の回答だからこそ逆に怪しい。
この言い訳を他の女の子に対してもしてきたのかなと思わせてしまう。これまでの孟徳の振る舞いを考えればなおさら。
ちょっと恥ずかしそうに、だけど明らかに何かをごまかそうとしている様子の孟徳に、花は口をへの字に曲げた。
でも、孟徳のそんなところを責めるのは、それこそ今更だ。
昔からずっと、精神安定のために女性の肌がどうしても必要だったのだろう。女性でしか埋められない心の穴。孟徳にはきっと、それがあるのだ。
花と結ばれてからその性質は鳴りを潜めていたけど、根本のところは変わっていない。ふとした瞬間に顔を出す。
結局、人間の本質なんてそう簡単に変わるものではないのだ。愛で全てが救われましたなんて、おとぎ話の世界にしかなくて。
だけどそんな身も蓋もない事実に、花は負けん気を刺激された。自分でもどうしてかわからないけれど、抗いたかったのだ。自分たちを引き裂こうとする、夢も希望もない無慈悲な何かに。
「……じゃあ、今度は私が孟徳さんを気持ちよくしてみせますっ」
「えっ?」
強い瞳で彼を見つめながら、花は孟徳ににじりよる。さっきまで散々好き勝手してくれたこの人に、目にもの見せてやりたい気持ちがあった。それはもう意地のような。
「ちょっ……! やめようよ花ちゃん……! さっきまで風呂場であんだけっ……!」
まさかこのタイミングでそんなことを言われるとは思わない。孟徳は慌てて話題を変えようとしたが。
「あっ、お、お腹すいてない!? 花ちゃん! ルームサービスでなにか頼んでひと休みでも……」
花にかかれば、孟徳だってこのていたらくだ。予想不可能な振る舞いに幼い少年のように振り回されている。懸命に誤魔化そうとする孟徳だったが、花の意志は揺るぎなかった。