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間違ってるだろ!
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「だいぶ疲れているみたいだね、黒君。疲れたときは甘いものですよ」
差し出された箱には、見覚えがありそうで全くない、グログロしいチョコレートスナックが詰まっている。
「……なんだ、これは……」
「コアラのマッチョ。おいしいですよ」
「いや……オレは……」
「ああ、黒君は甘いものは苦手ですか」
彼は律儀に箱を爪で閉じてから伺うようにこちらを見た。
「白菜……あ、間違えた、若菜のこと、あんまり怒らないでくださいね。黒君だって分かるでしょう? 白菜……若菜は本当はオレのことが大好きなんです。でもお互い素直じゃないからああなっちゃうだけで……だから、ほら、白君が言えばあんなにおとなしく聞くんです」
促されてその女に目をやる。
いまの言葉が聞こえていたのか、”オレ”の大群に動転しているのか、または白とやらのオレの態度に戸惑っているのか、落ち着かない様子ながらも、それを押し隠すようにグラスのふちを指でなぞっていた。
そこに目の前の白のオレが何か話しかけてワインを注ぎ足す。
彼女はやはり息を詰めるようにして向こうのオレを見ると、ぎこちなく笑ってグラスを取る。
顔ばかりか指の先まで真っ赤になっているが、それは先ほどからワインを喉の渇きを癒すかのような飲み方をしているからであって、断じてそれ以外の意味はない……はずだ。
「オレにとっては、何だかよく分からないけどやたら怖い女性ってイメージなんだけど、こうして見たら普通ですよね。黙っていればおとなしそうに見えるし、あんな風にオレに緊張しているのを見たら、ちょっと可愛いかもしれないなんて……」
ギョッとして右のオレを振り返る。
彼も驚いたように言葉を飲み込み、苦笑いをする。
「いや、それでもオレには怖いですよ。でも、実際可愛いでしょう? あんな手に簡単に引っ掛かるなんて」
その言葉の真意が分からず、オレは黙って彼を見る。
彼は組んだ両指に口元を押し付けるようにしてその女に目をやった。
「占い師の手口ですよ。人は常に何かを我慢して生きている。朝起きること然り、会社に行くこと然り。だから『あなたは頑張り屋で辛抱強い』はほぼ全ての人間に当てはまる。日本人の生活は豊かだ。だから仕事以外のことにも比重を置く。いまや『あなたは忙しい』が当てはまらない日本人はいません。ましてや白菜……若菜は更新できなければ『ごめんなさい』と謝ってしまう。すると更新できないことは悪いこと、つまりサイトの更新が義務のようになってしまって、ますます彼女を追い詰める。しかし内心では思っている。ただの趣味なのにどうしてここまで命を削らなければいけないのか」
オレは戦慄してその横顔を見る。
慈悲に溢れた天使のように清らかな笑顔を浮かべて、こんなにあざといことを考えていたのか。
「……すみません。オレは君を少し誤解していたようです」
彼は可笑しそうに息を震わせただけで、少しだけ顔を上げて美馬さんの隣にいるほうのオレを見た。
「女性は共感を求める生き物なんです。白菜……若菜の屁理屈のような言い訳を否定せずにすべて聞いてあげたうえで、これだけよくあなたを理解しているんだとほのめかし、白君は言ったんです。『オレ”だけ”は分かっている』と。見てください、あんなに赤くなって、借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。もう白菜……若菜は白君の言うことなら何でも聞くでしょうね」
オレはさらに戦慄して美馬さんの隣にいる、白とやらのオレを見る。
慈悲に溢れた天使のように清らかな笑顔を浮かべて、そんなにあざといことを企んでいたのか。
「はあ、格好いいですよね。白君は。オレにはとても無理です」
「彼の真意が理解できていたなら、あなただってできるでしょう」
オレはとてつもない劣等感を噛み殺して、頼りなく背を丸める彼に言う。
「無理です。白菜……若菜の目を見て喋るなんて恐ろしいこと……白君にも憧れますが、黒君も同じように羨ましいです。こんな慈悲に溢れた天使のように清らかな笑顔を浮かべて、あそこまであくどいことを……オレには到底できません。ヒロインに嫌われたくないですよ。しかも白菜……若菜にあんなに強気に出られるなんて。白菜……若菜はキーボードひとつでオレを殺すこともできるんですよ。白菜……若菜は恐ろしい人です。白菜……」
「あのさあ、ハイクラ。いちいち律儀に私の名前間違えないでいいから」
急に鋭い視線を向けられ、灰と呼ばれたオレはテーブルの下に身を隠す。
そこまで怖いのか? これが……。
横目で見守るオレの視線には気づいていないのだろう。その女は相変わらず赤い顔で白と呼ばれたオレを見上げるように何か話し掛けると、小娘のようにはにかんで笑った。
……薄気味の悪いものを見てしまった。
20251228
差し出された箱には、見覚えがありそうで全くない、グログロしいチョコレートスナックが詰まっている。
「……なんだ、これは……」
「コアラのマッチョ。おいしいですよ」
「いや……オレは……」
「ああ、黒君は甘いものは苦手ですか」
彼は律儀に箱を爪で閉じてから伺うようにこちらを見た。
「白菜……あ、間違えた、若菜のこと、あんまり怒らないでくださいね。黒君だって分かるでしょう? 白菜……若菜は本当はオレのことが大好きなんです。でもお互い素直じゃないからああなっちゃうだけで……だから、ほら、白君が言えばあんなにおとなしく聞くんです」
促されてその女に目をやる。
いまの言葉が聞こえていたのか、”オレ”の大群に動転しているのか、または白とやらのオレの態度に戸惑っているのか、落ち着かない様子ながらも、それを押し隠すようにグラスのふちを指でなぞっていた。
そこに目の前の白のオレが何か話しかけてワインを注ぎ足す。
彼女はやはり息を詰めるようにして向こうのオレを見ると、ぎこちなく笑ってグラスを取る。
顔ばかりか指の先まで真っ赤になっているが、それは先ほどからワインを喉の渇きを癒すかのような飲み方をしているからであって、断じてそれ以外の意味はない……はずだ。
「オレにとっては、何だかよく分からないけどやたら怖い女性ってイメージなんだけど、こうして見たら普通ですよね。黙っていればおとなしそうに見えるし、あんな風にオレに緊張しているのを見たら、ちょっと可愛いかもしれないなんて……」
ギョッとして右のオレを振り返る。
彼も驚いたように言葉を飲み込み、苦笑いをする。
「いや、それでもオレには怖いですよ。でも、実際可愛いでしょう? あんな手に簡単に引っ掛かるなんて」
その言葉の真意が分からず、オレは黙って彼を見る。
彼は組んだ両指に口元を押し付けるようにしてその女に目をやった。
「占い師の手口ですよ。人は常に何かを我慢して生きている。朝起きること然り、会社に行くこと然り。だから『あなたは頑張り屋で辛抱強い』はほぼ全ての人間に当てはまる。日本人の生活は豊かだ。だから仕事以外のことにも比重を置く。いまや『あなたは忙しい』が当てはまらない日本人はいません。ましてや白菜……若菜は更新できなければ『ごめんなさい』と謝ってしまう。すると更新できないことは悪いこと、つまりサイトの更新が義務のようになってしまって、ますます彼女を追い詰める。しかし内心では思っている。ただの趣味なのにどうしてここまで命を削らなければいけないのか」
オレは戦慄してその横顔を見る。
慈悲に溢れた天使のように清らかな笑顔を浮かべて、こんなにあざといことを考えていたのか。
「……すみません。オレは君を少し誤解していたようです」
彼は可笑しそうに息を震わせただけで、少しだけ顔を上げて美馬さんの隣にいるほうのオレを見た。
「女性は共感を求める生き物なんです。白菜……若菜の屁理屈のような言い訳を否定せずにすべて聞いてあげたうえで、これだけよくあなたを理解しているんだとほのめかし、白君は言ったんです。『オレ”だけ”は分かっている』と。見てください、あんなに赤くなって、借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。もう白菜……若菜は白君の言うことなら何でも聞くでしょうね」
オレはさらに戦慄して美馬さんの隣にいる、白とやらのオレを見る。
慈悲に溢れた天使のように清らかな笑顔を浮かべて、そんなにあざといことを企んでいたのか。
「はあ、格好いいですよね。白君は。オレにはとても無理です」
「彼の真意が理解できていたなら、あなただってできるでしょう」
オレはとてつもない劣等感を噛み殺して、頼りなく背を丸める彼に言う。
「無理です。白菜……若菜の目を見て喋るなんて恐ろしいこと……白君にも憧れますが、黒君も同じように羨ましいです。こんな慈悲に溢れた天使のように清らかな笑顔を浮かべて、あそこまであくどいことを……オレには到底できません。ヒロインに嫌われたくないですよ。しかも白菜……若菜にあんなに強気に出られるなんて。白菜……若菜はキーボードひとつでオレを殺すこともできるんですよ。白菜……若菜は恐ろしい人です。白菜……」
「あのさあ、ハイクラ。いちいち律儀に私の名前間違えないでいいから」
急に鋭い視線を向けられ、灰と呼ばれたオレはテーブルの下に身を隠す。
そこまで怖いのか? これが……。
横目で見守るオレの視線には気づいていないのだろう。その女は相変わらず赤い顔で白と呼ばれたオレを見上げるように何か話し掛けると、小娘のようにはにかんで笑った。
……薄気味の悪いものを見てしまった。
20251228