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「やはり間違っています」
「何が?」
美馬さんはキョトンとした目でオレを見る。
『何が』もなにも片っ端からおかしい。手当たり次第説明していたら夜が明ける。
オレは肩をすくめて横を向く。
「面白いサイトを見つけたのでURLを携帯に送っておきました」
「えっ、何だろ。若菜さん、携帯携帯」
「はい! 携帯はこちらに」
思い思いの場所で談笑していた女性たちは、歓声を上げながら額をくっつけるようにして携帯に群れ集まる。
「なになに? 『夢小説あるある50』?」
途端に美馬さんを含めた数人の口元が引きつる。
「こ……これってさ、読むと死にたくなる系じゃない?」
「タイトルを見ただけで胃が痛くなってきました」
その様子を見て少しだけ胸がスッとする。
そう。これも間違っている。やはり間違っている。
「……あ、あっ、あー、充電切れそうー。あとでゆっくり読むことにするわ」
「充電器をお持ちしました」
「延長ケーブルどこかなー」
「コンセントはこちらです」
「……あ、ありがとう」
まるでリトマス試験紙のようだ。
夢小説サイト管理経験者たちはどんどん青くなっていくのに対し、そうでない者は新たな話題にキラキラと目を輝かせ、ますます頬の血色が良くなる。
「そ……その1。『ようこそ、夢の世界へ。お嬢さん』『あなたは○○○人目の夢見る乙女』まずサイトに入るとすげぇお嬢様的な待遇をされる……? その2。『お前の苗字を教えやがれ』『君の名前、僕に教えて?』名前はキャラクターに教えてくれとせがまれる」
「ゲフッ! ガフッ!」
「っていうかほとんどのサイトがそうですよね」
「そうですよ! うちだけじゃないですよ!」
「サイト作るときに参考にしようってあちこち覗いたけど、ほぼ全部のサイトでそうなってたから、『なるほど、こうするものなんだなー』って」
「ええ! これはお約束なんです! こうしなきゃいけない的な暗黙のルールがあるんです!」
「でも、サイトに入った瞬間からヒロインとして迎えられてる気がしますよね」
「うふふ、非日常の世界ですね。まさに夢の空間」
青ざめていたメンバーの顔色が少しずつ戻っていく。
夢小説ファンが大して気にしていないことと、同類の存在に安心したらしい。
「へぇ、そうなのかぁ」
「ええ、そうなんです」
感心したように呟いた美馬さんの独り言をすかさず拾い上げる。
「読者は夢を見に来ているんです。日常の悩みや厄介事を忘れ、理想の相手とドラマチックな恋に落ち、ただ酔いしれる場所です」
「私たちは酔ってますけどね」
「だってこの茶室のドリンクメニューには必ずお酒が入ってるし。むしろアルコールメニューの方が多い」
テーブルの中央に鎮座する優美なラインを描いた3段のケーキスタンドには、スイーツを押し退ける勢いでサキイカやミミガーがどっさり積まれている。
清楚な小花柄のカップ&ソーサーは気の毒にも生き別れになり、ソーサーには異様なオーラを放つ肉まんが乗っていた。
「……やはり間違っている」
「だから何がよ」
「夢サイトなら酒で酔わせるのではなく、夢小説で酔わせてください」
室内がシンと静まり返る。
「あ……いたたたたたた、胃が痛くなってきた」
美馬さんがわざとらしく顔を歪めると、周囲がそれを取り囲む。
「大丈夫ですか、お嬢様!」
「早くお薬を! お薬を!」
「若菜さんー! 死なないでー!」
「それです」
蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた一同が一斉にこちらを向く。
「一般的な夢サイトではトップページで『ようこそお嬢様』とお迎えするんです。お嬢様はヒロイン、管理人は下僕です。それがどうして奴隷のあなたがお嬢様であるヒロインを侍らせてハーレムを作っているんですか」
「んまっ! 失礼な! 蔵馬、口を慎みなさい」
「若菜さんは私たちのヒロインですよねー」
「お嬢様がだめならお姫様でどうでしょう」
「お嬢様を奴隷呼ばわりとは……」
一気に殺気立つ彼女たちにため息がこぼれる。
「分かりました。世の中は広い。中には変わった管理人もいるということで置いておきましょう。でもこの状況は間違っていますよね」
「何が?」
のんびりとした口調で返ってきた三度目のその言葉に、執拗に耳にぶら下がっていたウサギを力いっぱい首を振って投げつける。
「読者はオレとの恋を楽しむためにここに来ているんです。そのオレが、どうして茶室の片隅で縄で拘束された挙句に油揚げで挟まれてウサギのエサになっているんですか」
01.悪運だけで生きてる人の話
02.流しそうめんのように流される蔵馬さん
美馬さんはテーブルの上に頬杖をついて唇を尖らせた。
「最初は少女マンガみたいなのを目指してたし、幽白ファンや夢サイト訪問者の年齢層も学生が多かったしであの文体で始めたんだけどさ。今となってはあの頃小学生だった彼女達ももうお酒が飲める年なのよ」
「お陰さまでいつの間にか……」
「飲んじゃってまーす」
「イエーイ! かんぱーい!」
腕を伸ばして何度目かの乾杯をした美馬さんは再び椅子に座ると頭を抱えた。
「あんなにいい女になっちゃって……もはや『きゃ、ステキ! お姫様の気分だわ!』みたいな文章、書く方だけでなくて読む方も辛いのよ。それでこう、地味に軌道修正はしているんだけど、やっぱり1話目から読んでいくとどんどん文章が固くなっていくっていうか文字が詰まっていくっていうか、違和感がね。だからさ……。『君のペット』という黒歴史は新しい連載を立てて沈めるしかないのよ」
だからとっとと完結させろと言っただろう。
しかしオレは穏やかな目で彼女を見て言うのだ。
「でも……話が作れないならともかく、そんな技巧上の葛藤で執筆や更新が滞るのはつまらないことですよ」
オレはティーカップの取っ手をつまんで口に運ぶ。
時間もだいぶ遅い。お代わりを注いでくれた彼女は少し眠そうな顔をしていたが、その紅茶は色といい、香りといい相変わらず素晴らしかった。
「新連載をペットと並行して立てるには時間的にも体力的にも厳しいです。『君のペット』の執筆時間は忘れたほうがいい。あの頃はまだあなたは引越してきたばかりで、こちらには友人がいなかった。いまはこちらにも友達ができて人付き合いもある。あの頃は仕事も短期間の派遣が中心だったし、住んでいたのも狭い賃貸だったから家事や近所づきあいにもさほど時間を取られなかった。いまはどうですか。書くことにどれだけ時間を掛けられますか」
「……それで『飼いカノ』が進まなかったのか……気が付かなかった……」
バカなんだろうか、この人は。数十年単位で気付かなかったとは。普通3日で気が付くだろう。
さあ、もういい加減イヤミを言ってやれ。
だがしかし、それでもオレは微笑みを消すことなくカップを置いて、身体を少し彼女の方に向ける。
「それは立ち止まって考える間もなく無我夢中に毎日を送っていたということです。あなたは色々なことを限界まで頑張ったんだ。胸を張っていいことですよ」
「蔵馬……」
頼む。いい加減にしてくれ。
苦悩と裏腹にオレは腕を伸ばし、その肩に手を置く。
頼むからやめてくれ。もういっそ死なせてくれ。
「ただ……美馬さん、失礼なことを言うけれど悪く取らないでください。あなたもそろそろ無理が利かない年齢なんです。実際、体調がいいとは言えないでしょう。睡眠時間や食事の時間を削るのは無謀です。それを考えあわせても、やはりペットに集中することが一番です。あなたはプロではないんだ。文体が変わったくらいで裏切られたなどと怒る人はいないし、いたとしたってあなたに何の不利益もない。仕事ではないんですから。あれこれ余計なことを考えずに書きたいように書いたらいいんです。これはただの趣味なんですよ」
「……うん」
何やら言いたいことはありそうだったが、女はそう言っただけで口を閉じた。
オレは呆然としてそんな彼女をまじまじと見る。
この人が、このオレに、年齢がどうのと言われて激怒しないとはどういうことだ。
しかしオレの表情には動揺ひとつ浮かばない。
ただ小さく笑い、からかうように顔を近付けてその眼を覗き込む。
「あなたがそうして悩んで、苦しんで、少しでもいいものを書きたいと頑張っていることをオレだけは分かっている。……それじゃ、だめですか」
驚いたように彼女は口を開いて何か言おうとするが、その前にオレは勢いよく立ち上がった。
「あまりその人を甘やかさないで欲しい」
途端に周囲で息を詰めて見守っていた一同が満足したように緊張を解く。
「やっぱり黒様がキレたー」
「何分? 何分もった?」
「私としては白様が白旗上げるところを見たかったな」
オレが何分黙っていられるかを賭けにされていることは知っていた。
しかしだめだ、耐え難すぎた。これ以上続いたら発狂したかもしれない。
怒りなのか羞恥なのか屈辱なのかよくわからないが、耐え難い激情に歯を噛み締めていると、からかうような声が掛かる。
「まだまだ青いな、黒君は」
「黒か青かはっきりしてください」
「うるさいですよ、点」
「オレは蔵馬。です」
「オレが蔵馬,ですよ。あなたの目は節穴ですか」
「はっきりしないのはあなたたちのほうだ」
立ち上がったままのオレをさらに別のオレが見上げる。
「いや……オレもよく分からないな。いったい彼は何色なんですか」
「良く見てください、紅い狐君。ほら、点が付いている」
「ああ……分かりづらいな。オレたちみたいに色をつければいいのに」
「オレたちも少し混乱しそうですけれどもね。オレが黒い狐」
「オレは紅い狐」
「オレは金の狐。何故金なのかはログから推察してください」
次々に立ち上がるオレたちの脇で、小学校低学年くらいのオレと思しき少年がこましゃくれた笑顔を浮かべる。
「こうしてみるならわかりやすいけど、おはなしにいろはでませんからね。そのてんぼくはキャラがたってるでしょ、ね? おねえさんたち」
「か・わ・い・いー!!」
「こっちにおいで、クッキー食べましょ。チビ蔵馬くん」
オレはもう口をきくのも面倒になり、黙って座った。
それを待っていたように左隣から声が掛かる。
「今日は言い返して来ないんですね」
……なにが悲しくて自分とケンカしなければいけないんだ。
黙って横を向く。が、そこにはやはりオレがいる。
03.灰蔵馬さんの怖ーいお話
うんざりとしてテーブルを離れると、膝枕で熟睡しているコエンマが目に入る。
それで何となくそちらに向けた足が止まる。
しかし引き返そうとしたところで海藤に捕まった。
「南野としてはどう思っているんだい?」
「……何を?」
オレは海藤の陰になって見えなかった黄泉の様子をチラッと伺う。
「さっき美馬様が話していたこと。乙女口調をやめるのはキャラの成長ってことで何とか説明がつかないこともないでしょ?」
「思春期ですしね」
「プロの小説家だって文体が変わるのはよくあることだしね」
「ここの作品の特徴は一人称のほうなんです。一人称だと感情移入はしやすい」
「けれど、基本的には主人公の見た世界が全てになるから広がりが出ない」
「あ、でも一人称だと幽白を知らない読者が来ちゃっても背景説明はしやすいですよね」
……姿が見えないと思ってホッとしていたのに、こんなところにいたのか。
けんけんごうごうと小説論を繰り広げる海藤達の話を聞き流しながら黄泉の様子を探る。
コエンマの膝枕に対抗心でも燃やしたのだろうか、いかにも黄泉の好みらしい彼女の膝に頭を乗せているが、無節操に生えている角のせいで首がおかしな方向に曲がっている。
一方、膝の主はよっぽど確とした小説論を樹立させているのだろう。プロである海藤との論議にも見事に渡り合い、熱弁をふるっていた。
当然、声も身振りも大きくなり、中途半端な体勢で寝そべっている黄泉の頭は何度も転がり落ちそうになっている。これで眠れるわけがない。
しかし彼は眉ひとつ動かさずに穏やかな呼吸を繰り返していた。
……何を企んでいるんだ。
「怖い顔をして、黄泉にまで嫉妬ですか」
不意に声を掛けられて振り向くと、そこにはまたしてもオレがいる。
一体何なんだ、この怪奇現象は。
オレの心境などお構いなしに目の前のオレは眉間を押さえて目を伏せる。
「オレの顔をしているんですから、こんな楽しい場所にいながら白けた顔でひとりぼっちになられると迷惑なんです」
彼は群れるように付き従っていた女性たちの肩を一斉に抱き寄せる。
黄色い歓声がさらにそれを包んだ。
周囲を見渡せば確かにそれぞれ小さなグループを作り、オレを除いては全員誰かしらと楽しそうに盛り上がっていた。
灰などと呼ばれたオレでさえ、テーブルの下で数名と菓子を囲んでいる。
目の前のオレが言うことも分からないではない。傍目から見ればオレは相当淋しげに映るに違いなかった。
しかし考えようによってはこの状態はこれまでよりはだいぶマシだ。
つまりここはヒロインとオレとの恋愛小説の世界であり、彼女たちはそれぞれにオレのドッペルゲンガーと楽しそうに話をしている。
これは間違いではないだろう。
解放された気分で息をつくと、目の前にいたオレは不審そうに眉根を寄せる。
「君たち、黒君がひとりぼっちで可哀想だから仲間に入れてあげましょう」
「はい。あ……あそこ空いてるかな、席を確保してきますね」
「じゃあ、私は飲み物を用意しておきます」
彼の言葉に、取り巻いていた女性たちがさらに小さなグループに分かれて離れていく。
ひとり残った彼は不敵に笑って腕組みをした。
04.てんくろ漫才
「美馬」
背もたれに身体を預けて首を傾げ、だいぶリラックスした様子で白のオレと話していた彼女が反射的に顔を強張らせる。
「な、なあに? ……ああ、てんくらか」
「天ぷらみたいな呼び方をしないでください」
いま、明らかにオレと間違えたな、あの女。
『戦闘態勢に入った』としか表現しようのない表情の変化に腹が立って来る。
「さあ、美馬。ホストのあなたが座り込んで鼻の下を伸ばしてオレを独り占めしてどうするんですか」
「なっ、鼻の下なんて……」
「白君もですよ。今日はゲストが多いんですから」
丁寧な物腰とは裏腹に険のある眼差しを向けられ、しかし白の方のオレはおっとりと”点”に向き直った。
「ああ、すみません。今日はゲストも多いけど、オレも多いからいいかと思って。20年も頑張ったんですから、たまには労わってあげてもバチは当たらないでしょう?」
「えっ? いやいや、ごめん、ちょっと酔ってボンヤリしてたのよ。みんなのところに行ってあげて」
そしてこの女が慌てたように手をばたつかせたのも、恐らくは”点”の皮肉のせいではないだろう。
果敢に飛び込んだ”点”が不憫に思えた。
「ほら、美馬もこう言ってますよ。黄泉かコエンマを叩き起こせばソファにも座れます。そろそろ起こしてください」
「そうですね。そうします」
答えたほうのオレは、そう言いながらものんびりとした動作でミネラルウォーターの蓋をねじ切り、空のコップに注いで女の前に置く。
「大丈夫ですか? すみません、オレが飲ませ過ぎたんです」
「え? あ、うん、大丈夫大丈夫。気にしないで。……あの、行ってあげて」
何ともまあ、しおらしくなってしまったものだ。
この人ももしかしたら何人かに分裂して、その中で一番おとなしいのがそこに座っているのかもしれない。
そんな馬鹿げた考えにオレは軽く頭を振った。
実際に何人もいるのはオレのほうなのだ。
彼らがオレの一部を少しずつ削りだしたものなのか、それとも全然違う世界から来たものなのかはわからない。
ただ、たくさんいるオレたちの中で、美馬さんの隣を頑なに譲らないオレは、彼女を管理人としてでなく、夢小説のヒロインとしてしか見ることができないのかもしれない。
だからきっとこう言うのだ。
「すまない、蔵馬,君。黄泉はあなたが起こしてくれませんか?」
そこにいるのがヒロインだったら、オレもきっと動かない。
彼女は分かっていないのだろう。うろたえた顔をして”点”の様子を疑う。
「あの……蔵馬、私はほら、天ぷらが言ってるみたいにホストだから」
「天ぷらじゃなくててんくらです」
「……あんた、てんくらでいいの?」
「蔵馬,です」
「面倒くさい。てんくらにしなさい」
……つまりは”点”を会話に引きずり込むことが彼女の目的だったのだろうが、”ヒロイン”にここまで露骨に困惑されたらさすがに堪えるものだろう。
しかし、彼はもうそこを離れるわけにはいかないのだ。離れたら夢が終ってしまう。
だが……。
”点”は苛立ちを吐き出すかのように深いため息をついた。
……こちらだってオレなのだ。
困ったことにオレはどんな手段を使ってでも目的を果たそうとする。
白と呼ばれた方はともかく……。
「オレを懐柔しているつもりですか、美馬の分際で。天ぷらが海老天になろうが天丼になろうがオレは蔵馬,を譲る気はありません」
こういうどうでもいいところまで突っかからずにいられない性質はオレにはないと思うのだが、ここにいるオレたちの中ではどちらが多数派なのだろう。
オレはチラッと海藤の後姿を見た。
気は進まないが、これはもう黄泉を起こすしかないかもしれない。
このままだと死体が転がる。
しかし幸いなことに”点”はオレより忍耐強かったらしい。
「だいたい『座り込んでいないで』と言われて白君を追っ払おうとは横着もいいところでしょう。あなたが動けば済む話です」
どうやら白を動かすより美馬さんを動かす方が早いと判断したようだった。
「酔っ払いを立ち歩かせたら後悔するよ。後始末するのは天ぷらだからね」
「あなたはさっきから酔った酔ったと言っていますが、口は普段通りに達者じゃないですか。顔が赤くなったのをいいことに酔ったふりをしているんでしょう? さあ、立ってください」
”点”が美馬さんの腕を取る。
あまり関わりたくないのだが、そろそろ出ざるを得ないようだ。
「えー、だるいー」
「あなたという人は……」
「今日は大目に見てあげてください。座っている間は顔にしか出ないんですが、この状態で立つと貧血を起こすんです」
言おうと思った言葉が自分の声で読み上げられ、踏み出しかけた足を驚いて止める。
「わっ、あの、でも顔色さめればでんぐり返っても平気だから、そうそう、この水飲んで10分もすれば」
焦ってますます顔を赤くしながら、先ほど注いでもらっていたミネラルウォーターに手を伸ばす。
――ナンダ、自己申告シテイタノカ。ソレハ良カッタ。
何か薄気味が悪いような、それでいながらすぐに覚める浅い夢でも見ているような奇妙な感覚に飲み込まれそうになり、そんな言葉を心の中に並べることで思考を停止させる。
実際に考えても無駄だった。
そのオレも、そっちのオレも、あのオレもそこのオレも向こう側のオレもすべてオレではあるが、オレの意思とは無関係に動いて喋っている。
だいたいオレが”オレたち”の中でどういう場所にいて、ここにいる彼女たちひとりひとりの中でどういう場所にいるのかも皆目見当がつかないのだ。
茶室中の至るところで発せられている話し声や笑い声が、引いては返すさざ波のようにオレを包み込む。
「だったら、顔色が戻るまではここにいます」
それもオレだ。
「白君、オレの話を聞いていましたか」
それもオレだ。
「じゃあ、こうしましょう、白君。オレが君の代わりに美馬を見ているから、あなたはあっちに行っていてください」
さっきは好戦的などと表現したが、違うな。
彼はおそらく負けず嫌いなのだ。
そう、彼……いや、オレはそういう子供じみたところがある。
オレがその役回りに立ってしまっていたとしてもそう言ったかもしれない。
美馬さんの手の中でグラスの水がちゃぷちゃぷと揺れている。
……しかし、そうは言わなかったかもしれない。
或いはあと2秒考えていたら、もう少しうまい立ち振る舞いができた。
オレが妖狐の姿であったならどう言っただろう。
または、そこであくびをしている妖狐だったらどう言っただろう。
20年前のオレだったらどう言っただろう。
考えても仕方のないことか。オレは黙って踵を返す。
06.無責任一代蔵馬
……と、足元に異様な気配を感じ、ハッと下を向くと、リードをつけた週刊誌が複数の脚をかいくぐって移動している。
いよいよ本格的な怪奇現象が起こり始めたようだ。魔界でもこんな光景は見たことがない。
その姿を凝視しているオレに気付いたのか、週刊誌はビクッと飛び跳ねると、挟んでいた……というよりは「くわえていた」と表現すべきだろうか、何か便箋のようなものを落として脱兎のごとく逃げて行った。
オレはそれを何気なく拾って開いてみる。
そこには縦に『黒蔵馬 蔵馬, 蔵馬。 紅い狐 黒い狐 金の狐 妖狐 銀狐 白蔵馬 灰蔵馬 青蔵馬 ぴんくらま チビ蔵馬……』とオレの分身達の呼称がズラリと書いてあり、それぞれから横に向かって丸やら星やらハートやら猫やらのマークが並んでいた。
オレは椅子に座り直し、片手で頬杖を突いてテーブルの上に広げた便箋を覗き込む。
『金の狐』の隣に並ぶマークの隙間の細かい文字に気付く。
紙を手に取って眼に近づけると『お金持っていそう』とのコメントが入っていた。
タイトルは書いていなかったが、そんなものを見るまでもなく、「オレたち」の人気ランキング表だ。
一番マークの多い『蔵馬,』の文字の隣の花丸の中に『1』と記入してあり、『妖狐』『銀狐』からは矢印が伸びて『2』と書いてある。『白蔵馬』の隣に『4』が見つかり、『チビ蔵馬』には『5』が振られ、順に辿っていくと『黒蔵馬』の隣には髑髏マークの中に『ビリ』と書いてある。
妖狐姿のオレのほうがいいという声は割としょっちゅう聞くし、外見も全く別人だからこの順位は分からないでもない。
チビ蔵馬とはあの子供のことだろう。あれも性格はともかく外見は愛らしく見えなくもない。おまけに子供なんだからという理由で投票しやすい。この順位にも頷ける。
問題はその他のオレたちだ。外見は全く区別がつかない。
ピンクと灰は間違えた方向にキャラが突出しているから判別はしやすいが、他のオレたちは性格も話し方もほぼ同じだ。だが……
『・一番お話ししたので』
『・全員にホワイトデーのプレゼントを配ってた』
『・肩を抱かれたときに魂売り渡しました』
このようなコメントがオレ以外には満遍なくついているということは、このような世界においては本来オレはフェミニストなのではないだろうか。
『・口説かれちゃったら仕方ない』
かと言って黒と呼ばれるオレが、誰かを冗談ではなく真剣に口説き始めたら蜂の巣をつついたような騒ぎになるのは明白だった。
そんなオレが灰の下に来るのは当然と言えば当然だろう。
この場合、順位がどうということより、20年も夢小説に付き合っているオレの性格がなぜこんなふうなのかということのほうが問題なのだ。
やはり何か間違っているのだ。
「黒さん、さっきから真剣に何を見……」
不意に誰かがこちらに気付き、その場の全員が顔色を変えて立ち上がる。
「あっ!?」
「あのっ! これは……あの、あの」
「ああっ!? あんなところにUFOが!!」
「落ちてましたよ。何かの順位表のようですが……」
オレの言葉に彼女たちはますます青ざめ、引きつり笑いを浮かべて口々に裏返った声を出す。
「これは、これは……あれです! 本日の発言数ランキング!」
「妖狐より黒の狐の方が何倍も喋っていませんか?」
便箋から目を上げると、咄嗟に返答した彼女を隠すように横から手が伸びる。
「……じゃなくて、お茶をお代わりした回数表です!」
「妖狐は酒しか飲んでいませんよ」
「……じゃなくて、まばたきした数ランキング!」
「オレ、数時間単位でしかまばたきしていませんか」
「……なわけないじゃないですか! 冗談ですよ、冗談。これは、えっと」
代わる代わるオレの視界に顔を割り込ませた彼女たちは次のアイディアを探し、チラチラと妖狐を横目で見ながら口元を覆ったり天井を見たり指を折って何か数えたりしている。
どうやら”点”の次に妖狐と銀の狐が多く、オレが一番少ないというのがネックのようだ。
「よ、黄泉さまと目を合わせた数……」
「髪の毛の本数……」
「右手を……右手を……右手をグーにした数……」
「『おい』と言った数というのはどうでしょう?」
「あっ、それいい! ……あ」
オレの意見に思わず乗ってしまった彼女たちは一様に凍りつく。
実にいい反応だ。
こんなことを楽んでしまうオレはやはり間違っている。
ニコニコとその様子を眺めていると、背後から別の声が掛かった。
「ねえねえ、人気投票の紙知らない?! どっか行っちゃったんだけど! やばいよ、黒蔵馬に見つかったら茶室が魔界植物園になっちゃうよ!」
「ここにありますよ」
「あったー! 良かっ……あ」
「なるほど、人気投票でしたか。それは気が付かなかったな」
一度は順位表を返そうと差し出すが、ふと思い返して引っ込めた。
「これ、もらっていいですか?」
「なっ、なぜ!?」
「記念に」
「やめてくださいーーー!!」
次々に伸びてくる手をヒラヒラとかわしてピンク色の便箋が揺れる。
困った。実に楽しい。実に間違っている。
「違うんです、違うんですこれは! おふざけというかお遊びで!」
「分かっています」
「まさか黒さんがここまで気にするとは露ほども思わず!」
「気にしていませんよ」
「大丈夫ですから! 決して人の目に触れぬように処分しますから返してください!」
「別にいいですよ。ネタにしてもらっても」
「そっ、そんな自棄にならないでください!」
「いや、そんなつもりは……」
彼女たちは一斉に手を引っ込めて首を傾げる。
「どうして気にしてくれないんですか!」
「黒蔵馬さんがこのサイトの看板息子でしょう?!」
「悔しがってくださいよー! 点蔵馬抹殺とか謀ってくださいよー!」
オレにどうしろと……。
いきり立つ彼女たちに手招きをしてオレについたコメントを指し示す。
『調整票』『若菜さんの手前』『親心』……と散々な書き込みが並ぶ中、ひとつだけついたハートマークの脇に『空気読まなくてごめんなさい』と書いてある。
「こんなものをいちいち気にするような人間が20年も美馬さんに付き合っていられると思いますか」
目を上げると、彼女たちは白けた顔で横を向く。
「つまんない」
「ノリが悪い」
「可愛くない」
思わず苦笑いを浮かべると、それに気付いた彼女たちは先を争うようにして顔を近付けてきた。
「なにニヤニヤしてるんですか! そんなんだからこんな順位になるんだってば!」
「そうよ! 私だって入れるか入れまいかよっぽど悩んだけど理性が勝っちゃったのよ! 私の理性くらい壊してみせろって言うのよ!」
「ただクールにしていればモテるなんて神話は流川君の時代で終わったんです」
「お茶会では分身さんがいっぱいいるけど、夢のお相手は蔵馬だけでしょ? しかも恋愛ものなんだから、やっぱりこういう村八分覚悟のコッソリ投票を集めて1位になってくれないと締まらないわよ」
あちらこちらに散らばっている『オレ』を探せば、彼らと話している相手はそれぞれに頬を赤らめたり、よそ行きの笑顔をしている。
ギンギンと目を吊り上げるヒロインに囲まれて説教されているオレはため息をつくしかなかった。
「オレはどこで何を間違えたんでしょうね……」
「他人事か!!」
このお話は前後編の本編と10本のサイドストーリーがありますが、とにかく長いお話なのでサイドストーリーは読まなくても大丈夫なように書いてあります。サイドストーリーはよほど気が向いたらお付き合いくださいね。
※サイドストーリーを読んだ後はブラウザバックで戻らないと迷子になってしまいます。本編以外では「前へ」「次へ」は使わないことをお勧めします。
20251228
「何が?」
美馬さんはキョトンとした目でオレを見る。
『何が』もなにも片っ端からおかしい。手当たり次第説明していたら夜が明ける。
オレは肩をすくめて横を向く。
「面白いサイトを見つけたのでURLを携帯に送っておきました」
「えっ、何だろ。若菜さん、携帯携帯」
「はい! 携帯はこちらに」
思い思いの場所で談笑していた女性たちは、歓声を上げながら額をくっつけるようにして携帯に群れ集まる。
「なになに? 『夢小説あるある50』?」
途端に美馬さんを含めた数人の口元が引きつる。
「こ……これってさ、読むと死にたくなる系じゃない?」
「タイトルを見ただけで胃が痛くなってきました」
その様子を見て少しだけ胸がスッとする。
そう。これも間違っている。やはり間違っている。
「……あ、あっ、あー、充電切れそうー。あとでゆっくり読むことにするわ」
「充電器をお持ちしました」
「延長ケーブルどこかなー」
「コンセントはこちらです」
「……あ、ありがとう」
まるでリトマス試験紙のようだ。
夢小説サイト管理経験者たちはどんどん青くなっていくのに対し、そうでない者は新たな話題にキラキラと目を輝かせ、ますます頬の血色が良くなる。
「そ……その1。『ようこそ、夢の世界へ。お嬢さん』『あなたは○○○人目の夢見る乙女』まずサイトに入るとすげぇお嬢様的な待遇をされる……? その2。『お前の苗字を教えやがれ』『君の名前、僕に教えて?』名前はキャラクターに教えてくれとせがまれる」
「ゲフッ! ガフッ!」
「っていうかほとんどのサイトがそうですよね」
「そうですよ! うちだけじゃないですよ!」
「サイト作るときに参考にしようってあちこち覗いたけど、ほぼ全部のサイトでそうなってたから、『なるほど、こうするものなんだなー』って」
「ええ! これはお約束なんです! こうしなきゃいけない的な暗黙のルールがあるんです!」
「でも、サイトに入った瞬間からヒロインとして迎えられてる気がしますよね」
「うふふ、非日常の世界ですね。まさに夢の空間」
青ざめていたメンバーの顔色が少しずつ戻っていく。
夢小説ファンが大して気にしていないことと、同類の存在に安心したらしい。
「へぇ、そうなのかぁ」
「ええ、そうなんです」
感心したように呟いた美馬さんの独り言をすかさず拾い上げる。
「読者は夢を見に来ているんです。日常の悩みや厄介事を忘れ、理想の相手とドラマチックな恋に落ち、ただ酔いしれる場所です」
「私たちは酔ってますけどね」
「だってこの茶室のドリンクメニューには必ずお酒が入ってるし。むしろアルコールメニューの方が多い」
テーブルの中央に鎮座する優美なラインを描いた3段のケーキスタンドには、スイーツを押し退ける勢いでサキイカやミミガーがどっさり積まれている。
清楚な小花柄のカップ&ソーサーは気の毒にも生き別れになり、ソーサーには異様なオーラを放つ肉まんが乗っていた。
「……やはり間違っている」
「だから何がよ」
「夢サイトなら酒で酔わせるのではなく、夢小説で酔わせてください」
室内がシンと静まり返る。
「あ……いたたたたたた、胃が痛くなってきた」
美馬さんがわざとらしく顔を歪めると、周囲がそれを取り囲む。
「大丈夫ですか、お嬢様!」
「早くお薬を! お薬を!」
「若菜さんー! 死なないでー!」
「それです」
蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた一同が一斉にこちらを向く。
「一般的な夢サイトではトップページで『ようこそお嬢様』とお迎えするんです。お嬢様はヒロイン、管理人は下僕です。それがどうして奴隷のあなたがお嬢様であるヒロインを侍らせてハーレムを作っているんですか」
「んまっ! 失礼な! 蔵馬、口を慎みなさい」
「若菜さんは私たちのヒロインですよねー」
「お嬢様がだめならお姫様でどうでしょう」
「お嬢様を奴隷呼ばわりとは……」
一気に殺気立つ彼女たちにため息がこぼれる。
「分かりました。世の中は広い。中には変わった管理人もいるということで置いておきましょう。でもこの状況は間違っていますよね」
「何が?」
のんびりとした口調で返ってきた三度目のその言葉に、執拗に耳にぶら下がっていたウサギを力いっぱい首を振って投げつける。
「読者はオレとの恋を楽しむためにここに来ているんです。そのオレが、どうして茶室の片隅で縄で拘束された挙句に油揚げで挟まれてウサギのエサになっているんですか」
01.悪運だけで生きてる人の話
02.流しそうめんのように流される蔵馬さん
美馬さんはテーブルの上に頬杖をついて唇を尖らせた。
「最初は少女マンガみたいなのを目指してたし、幽白ファンや夢サイト訪問者の年齢層も学生が多かったしであの文体で始めたんだけどさ。今となってはあの頃小学生だった彼女達ももうお酒が飲める年なのよ」
「お陰さまでいつの間にか……」
「飲んじゃってまーす」
「イエーイ! かんぱーい!」
腕を伸ばして何度目かの乾杯をした美馬さんは再び椅子に座ると頭を抱えた。
「あんなにいい女になっちゃって……もはや『きゃ、ステキ! お姫様の気分だわ!』みたいな文章、書く方だけでなくて読む方も辛いのよ。それでこう、地味に軌道修正はしているんだけど、やっぱり1話目から読んでいくとどんどん文章が固くなっていくっていうか文字が詰まっていくっていうか、違和感がね。だからさ……。『君のペット』という黒歴史は新しい連載を立てて沈めるしかないのよ」
だからとっとと完結させろと言っただろう。
しかしオレは穏やかな目で彼女を見て言うのだ。
「でも……話が作れないならともかく、そんな技巧上の葛藤で執筆や更新が滞るのはつまらないことですよ」
オレはティーカップの取っ手をつまんで口に運ぶ。
時間もだいぶ遅い。お代わりを注いでくれた彼女は少し眠そうな顔をしていたが、その紅茶は色といい、香りといい相変わらず素晴らしかった。
「新連載をペットと並行して立てるには時間的にも体力的にも厳しいです。『君のペット』の執筆時間は忘れたほうがいい。あの頃はまだあなたは引越してきたばかりで、こちらには友人がいなかった。いまはこちらにも友達ができて人付き合いもある。あの頃は仕事も短期間の派遣が中心だったし、住んでいたのも狭い賃貸だったから家事や近所づきあいにもさほど時間を取られなかった。いまはどうですか。書くことにどれだけ時間を掛けられますか」
「……それで『飼いカノ』が進まなかったのか……気が付かなかった……」
バカなんだろうか、この人は。数十年単位で気付かなかったとは。普通3日で気が付くだろう。
さあ、もういい加減イヤミを言ってやれ。
だがしかし、それでもオレは微笑みを消すことなくカップを置いて、身体を少し彼女の方に向ける。
「それは立ち止まって考える間もなく無我夢中に毎日を送っていたということです。あなたは色々なことを限界まで頑張ったんだ。胸を張っていいことですよ」
「蔵馬……」
頼む。いい加減にしてくれ。
苦悩と裏腹にオレは腕を伸ばし、その肩に手を置く。
頼むからやめてくれ。もういっそ死なせてくれ。
「ただ……美馬さん、失礼なことを言うけれど悪く取らないでください。あなたもそろそろ無理が利かない年齢なんです。実際、体調がいいとは言えないでしょう。睡眠時間や食事の時間を削るのは無謀です。それを考えあわせても、やはりペットに集中することが一番です。あなたはプロではないんだ。文体が変わったくらいで裏切られたなどと怒る人はいないし、いたとしたってあなたに何の不利益もない。仕事ではないんですから。あれこれ余計なことを考えずに書きたいように書いたらいいんです。これはただの趣味なんですよ」
「……うん」
何やら言いたいことはありそうだったが、女はそう言っただけで口を閉じた。
オレは呆然としてそんな彼女をまじまじと見る。
この人が、このオレに、年齢がどうのと言われて激怒しないとはどういうことだ。
しかしオレの表情には動揺ひとつ浮かばない。
ただ小さく笑い、からかうように顔を近付けてその眼を覗き込む。
「あなたがそうして悩んで、苦しんで、少しでもいいものを書きたいと頑張っていることをオレだけは分かっている。……それじゃ、だめですか」
驚いたように彼女は口を開いて何か言おうとするが、その前にオレは勢いよく立ち上がった。
「あまりその人を甘やかさないで欲しい」
途端に周囲で息を詰めて見守っていた一同が満足したように緊張を解く。
「やっぱり黒様がキレたー」
「何分? 何分もった?」
「私としては白様が白旗上げるところを見たかったな」
オレが何分黙っていられるかを賭けにされていることは知っていた。
しかしだめだ、耐え難すぎた。これ以上続いたら発狂したかもしれない。
怒りなのか羞恥なのか屈辱なのかよくわからないが、耐え難い激情に歯を噛み締めていると、からかうような声が掛かる。
「まだまだ青いな、黒君は」
「黒か青かはっきりしてください」
「うるさいですよ、点」
「オレは蔵馬。です」
「オレが蔵馬,ですよ。あなたの目は節穴ですか」
「はっきりしないのはあなたたちのほうだ」
立ち上がったままのオレをさらに別のオレが見上げる。
「いや……オレもよく分からないな。いったい彼は何色なんですか」
「良く見てください、紅い狐君。ほら、点が付いている」
「ああ……分かりづらいな。オレたちみたいに色をつければいいのに」
「オレたちも少し混乱しそうですけれどもね。オレが黒い狐」
「オレは紅い狐」
「オレは金の狐。何故金なのかはログから推察してください」
次々に立ち上がるオレたちの脇で、小学校低学年くらいのオレと思しき少年がこましゃくれた笑顔を浮かべる。
「こうしてみるならわかりやすいけど、おはなしにいろはでませんからね。そのてんぼくはキャラがたってるでしょ、ね? おねえさんたち」
「か・わ・い・いー!!」
「こっちにおいで、クッキー食べましょ。チビ蔵馬くん」
オレはもう口をきくのも面倒になり、黙って座った。
それを待っていたように左隣から声が掛かる。
「今日は言い返して来ないんですね」
……なにが悲しくて自分とケンカしなければいけないんだ。
黙って横を向く。が、そこにはやはりオレがいる。
03.灰蔵馬さんの怖ーいお話
うんざりとしてテーブルを離れると、膝枕で熟睡しているコエンマが目に入る。
それで何となくそちらに向けた足が止まる。
しかし引き返そうとしたところで海藤に捕まった。
「南野としてはどう思っているんだい?」
「……何を?」
オレは海藤の陰になって見えなかった黄泉の様子をチラッと伺う。
「さっき美馬様が話していたこと。乙女口調をやめるのはキャラの成長ってことで何とか説明がつかないこともないでしょ?」
「思春期ですしね」
「プロの小説家だって文体が変わるのはよくあることだしね」
「ここの作品の特徴は一人称のほうなんです。一人称だと感情移入はしやすい」
「けれど、基本的には主人公の見た世界が全てになるから広がりが出ない」
「あ、でも一人称だと幽白を知らない読者が来ちゃっても背景説明はしやすいですよね」
……姿が見えないと思ってホッとしていたのに、こんなところにいたのか。
けんけんごうごうと小説論を繰り広げる海藤達の話を聞き流しながら黄泉の様子を探る。
コエンマの膝枕に対抗心でも燃やしたのだろうか、いかにも黄泉の好みらしい彼女の膝に頭を乗せているが、無節操に生えている角のせいで首がおかしな方向に曲がっている。
一方、膝の主はよっぽど確とした小説論を樹立させているのだろう。プロである海藤との論議にも見事に渡り合い、熱弁をふるっていた。
当然、声も身振りも大きくなり、中途半端な体勢で寝そべっている黄泉の頭は何度も転がり落ちそうになっている。これで眠れるわけがない。
しかし彼は眉ひとつ動かさずに穏やかな呼吸を繰り返していた。
……何を企んでいるんだ。
「怖い顔をして、黄泉にまで嫉妬ですか」
不意に声を掛けられて振り向くと、そこにはまたしてもオレがいる。
一体何なんだ、この怪奇現象は。
オレの心境などお構いなしに目の前のオレは眉間を押さえて目を伏せる。
「オレの顔をしているんですから、こんな楽しい場所にいながら白けた顔でひとりぼっちになられると迷惑なんです」
彼は群れるように付き従っていた女性たちの肩を一斉に抱き寄せる。
黄色い歓声がさらにそれを包んだ。
周囲を見渡せば確かにそれぞれ小さなグループを作り、オレを除いては全員誰かしらと楽しそうに盛り上がっていた。
灰などと呼ばれたオレでさえ、テーブルの下で数名と菓子を囲んでいる。
目の前のオレが言うことも分からないではない。傍目から見ればオレは相当淋しげに映るに違いなかった。
しかし考えようによってはこの状態はこれまでよりはだいぶマシだ。
つまりここはヒロインとオレとの恋愛小説の世界であり、彼女たちはそれぞれにオレのドッペルゲンガーと楽しそうに話をしている。
これは間違いではないだろう。
解放された気分で息をつくと、目の前にいたオレは不審そうに眉根を寄せる。
「君たち、黒君がひとりぼっちで可哀想だから仲間に入れてあげましょう」
「はい。あ……あそこ空いてるかな、席を確保してきますね」
「じゃあ、私は飲み物を用意しておきます」
彼の言葉に、取り巻いていた女性たちがさらに小さなグループに分かれて離れていく。
ひとり残った彼は不敵に笑って腕組みをした。
04.てんくろ漫才
「美馬」
背もたれに身体を預けて首を傾げ、だいぶリラックスした様子で白のオレと話していた彼女が反射的に顔を強張らせる。
「な、なあに? ……ああ、てんくらか」
「天ぷらみたいな呼び方をしないでください」
いま、明らかにオレと間違えたな、あの女。
『戦闘態勢に入った』としか表現しようのない表情の変化に腹が立って来る。
「さあ、美馬。ホストのあなたが座り込んで鼻の下を伸ばしてオレを独り占めしてどうするんですか」
「なっ、鼻の下なんて……」
「白君もですよ。今日はゲストが多いんですから」
丁寧な物腰とは裏腹に険のある眼差しを向けられ、しかし白の方のオレはおっとりと”点”に向き直った。
「ああ、すみません。今日はゲストも多いけど、オレも多いからいいかと思って。20年も頑張ったんですから、たまには労わってあげてもバチは当たらないでしょう?」
「えっ? いやいや、ごめん、ちょっと酔ってボンヤリしてたのよ。みんなのところに行ってあげて」
そしてこの女が慌てたように手をばたつかせたのも、恐らくは”点”の皮肉のせいではないだろう。
果敢に飛び込んだ”点”が不憫に思えた。
「ほら、美馬もこう言ってますよ。黄泉かコエンマを叩き起こせばソファにも座れます。そろそろ起こしてください」
「そうですね。そうします」
答えたほうのオレは、そう言いながらものんびりとした動作でミネラルウォーターの蓋をねじ切り、空のコップに注いで女の前に置く。
「大丈夫ですか? すみません、オレが飲ませ過ぎたんです」
「え? あ、うん、大丈夫大丈夫。気にしないで。……あの、行ってあげて」
何ともまあ、しおらしくなってしまったものだ。
この人ももしかしたら何人かに分裂して、その中で一番おとなしいのがそこに座っているのかもしれない。
そんな馬鹿げた考えにオレは軽く頭を振った。
実際に何人もいるのはオレのほうなのだ。
彼らがオレの一部を少しずつ削りだしたものなのか、それとも全然違う世界から来たものなのかはわからない。
ただ、たくさんいるオレたちの中で、美馬さんの隣を頑なに譲らないオレは、彼女を管理人としてでなく、夢小説のヒロインとしてしか見ることができないのかもしれない。
だからきっとこう言うのだ。
「すまない、蔵馬,君。黄泉はあなたが起こしてくれませんか?」
そこにいるのがヒロインだったら、オレもきっと動かない。
彼女は分かっていないのだろう。うろたえた顔をして”点”の様子を疑う。
「あの……蔵馬、私はほら、天ぷらが言ってるみたいにホストだから」
「天ぷらじゃなくててんくらです」
「……あんた、てんくらでいいの?」
「蔵馬,です」
「面倒くさい。てんくらにしなさい」
……つまりは”点”を会話に引きずり込むことが彼女の目的だったのだろうが、”ヒロイン”にここまで露骨に困惑されたらさすがに堪えるものだろう。
しかし、彼はもうそこを離れるわけにはいかないのだ。離れたら夢が終ってしまう。
だが……。
”点”は苛立ちを吐き出すかのように深いため息をついた。
……こちらだってオレなのだ。
困ったことにオレはどんな手段を使ってでも目的を果たそうとする。
白と呼ばれた方はともかく……。
「オレを懐柔しているつもりですか、美馬の分際で。天ぷらが海老天になろうが天丼になろうがオレは蔵馬,を譲る気はありません」
こういうどうでもいいところまで突っかからずにいられない性質はオレにはないと思うのだが、ここにいるオレたちの中ではどちらが多数派なのだろう。
オレはチラッと海藤の後姿を見た。
気は進まないが、これはもう黄泉を起こすしかないかもしれない。
このままだと死体が転がる。
しかし幸いなことに”点”はオレより忍耐強かったらしい。
「だいたい『座り込んでいないで』と言われて白君を追っ払おうとは横着もいいところでしょう。あなたが動けば済む話です」
どうやら白を動かすより美馬さんを動かす方が早いと判断したようだった。
「酔っ払いを立ち歩かせたら後悔するよ。後始末するのは天ぷらだからね」
「あなたはさっきから酔った酔ったと言っていますが、口は普段通りに達者じゃないですか。顔が赤くなったのをいいことに酔ったふりをしているんでしょう? さあ、立ってください」
”点”が美馬さんの腕を取る。
あまり関わりたくないのだが、そろそろ出ざるを得ないようだ。
「えー、だるいー」
「あなたという人は……」
「今日は大目に見てあげてください。座っている間は顔にしか出ないんですが、この状態で立つと貧血を起こすんです」
言おうと思った言葉が自分の声で読み上げられ、踏み出しかけた足を驚いて止める。
「わっ、あの、でも顔色さめればでんぐり返っても平気だから、そうそう、この水飲んで10分もすれば」
焦ってますます顔を赤くしながら、先ほど注いでもらっていたミネラルウォーターに手を伸ばす。
――ナンダ、自己申告シテイタノカ。ソレハ良カッタ。
何か薄気味が悪いような、それでいながらすぐに覚める浅い夢でも見ているような奇妙な感覚に飲み込まれそうになり、そんな言葉を心の中に並べることで思考を停止させる。
実際に考えても無駄だった。
そのオレも、そっちのオレも、あのオレもそこのオレも向こう側のオレもすべてオレではあるが、オレの意思とは無関係に動いて喋っている。
だいたいオレが”オレたち”の中でどういう場所にいて、ここにいる彼女たちひとりひとりの中でどういう場所にいるのかも皆目見当がつかないのだ。
茶室中の至るところで発せられている話し声や笑い声が、引いては返すさざ波のようにオレを包み込む。
「だったら、顔色が戻るまではここにいます」
それもオレだ。
「白君、オレの話を聞いていましたか」
それもオレだ。
「じゃあ、こうしましょう、白君。オレが君の代わりに美馬を見ているから、あなたはあっちに行っていてください」
さっきは好戦的などと表現したが、違うな。
彼はおそらく負けず嫌いなのだ。
そう、彼……いや、オレはそういう子供じみたところがある。
オレがその役回りに立ってしまっていたとしてもそう言ったかもしれない。
美馬さんの手の中でグラスの水がちゃぷちゃぷと揺れている。
……しかし、そうは言わなかったかもしれない。
或いはあと2秒考えていたら、もう少しうまい立ち振る舞いができた。
オレが妖狐の姿であったならどう言っただろう。
または、そこであくびをしている妖狐だったらどう言っただろう。
20年前のオレだったらどう言っただろう。
考えても仕方のないことか。オレは黙って踵を返す。
06.無責任一代蔵馬
……と、足元に異様な気配を感じ、ハッと下を向くと、リードをつけた週刊誌が複数の脚をかいくぐって移動している。
いよいよ本格的な怪奇現象が起こり始めたようだ。魔界でもこんな光景は見たことがない。
その姿を凝視しているオレに気付いたのか、週刊誌はビクッと飛び跳ねると、挟んでいた……というよりは「くわえていた」と表現すべきだろうか、何か便箋のようなものを落として脱兎のごとく逃げて行った。
オレはそれを何気なく拾って開いてみる。
そこには縦に『黒蔵馬 蔵馬, 蔵馬。 紅い狐 黒い狐 金の狐 妖狐 銀狐 白蔵馬 灰蔵馬 青蔵馬 ぴんくらま チビ蔵馬……』とオレの分身達の呼称がズラリと書いてあり、それぞれから横に向かって丸やら星やらハートやら猫やらのマークが並んでいた。
オレは椅子に座り直し、片手で頬杖を突いてテーブルの上に広げた便箋を覗き込む。
『金の狐』の隣に並ぶマークの隙間の細かい文字に気付く。
紙を手に取って眼に近づけると『お金持っていそう』とのコメントが入っていた。
タイトルは書いていなかったが、そんなものを見るまでもなく、「オレたち」の人気ランキング表だ。
一番マークの多い『蔵馬,』の文字の隣の花丸の中に『1』と記入してあり、『妖狐』『銀狐』からは矢印が伸びて『2』と書いてある。『白蔵馬』の隣に『4』が見つかり、『チビ蔵馬』には『5』が振られ、順に辿っていくと『黒蔵馬』の隣には髑髏マークの中に『ビリ』と書いてある。
妖狐姿のオレのほうがいいという声は割としょっちゅう聞くし、外見も全く別人だからこの順位は分からないでもない。
チビ蔵馬とはあの子供のことだろう。あれも性格はともかく外見は愛らしく見えなくもない。おまけに子供なんだからという理由で投票しやすい。この順位にも頷ける。
問題はその他のオレたちだ。外見は全く区別がつかない。
ピンクと灰は間違えた方向にキャラが突出しているから判別はしやすいが、他のオレたちは性格も話し方もほぼ同じだ。だが……
『・一番お話ししたので』
『・全員にホワイトデーのプレゼントを配ってた』
『・肩を抱かれたときに魂売り渡しました』
このようなコメントがオレ以外には満遍なくついているということは、このような世界においては本来オレはフェミニストなのではないだろうか。
『・口説かれちゃったら仕方ない』
かと言って黒と呼ばれるオレが、誰かを冗談ではなく真剣に口説き始めたら蜂の巣をつついたような騒ぎになるのは明白だった。
そんなオレが灰の下に来るのは当然と言えば当然だろう。
この場合、順位がどうということより、20年も夢小説に付き合っているオレの性格がなぜこんなふうなのかということのほうが問題なのだ。
やはり何か間違っているのだ。
「黒さん、さっきから真剣に何を見……」
不意に誰かがこちらに気付き、その場の全員が顔色を変えて立ち上がる。
「あっ!?」
「あのっ! これは……あの、あの」
「ああっ!? あんなところにUFOが!!」
「落ちてましたよ。何かの順位表のようですが……」
オレの言葉に彼女たちはますます青ざめ、引きつり笑いを浮かべて口々に裏返った声を出す。
「これは、これは……あれです! 本日の発言数ランキング!」
「妖狐より黒の狐の方が何倍も喋っていませんか?」
便箋から目を上げると、咄嗟に返答した彼女を隠すように横から手が伸びる。
「……じゃなくて、お茶をお代わりした回数表です!」
「妖狐は酒しか飲んでいませんよ」
「……じゃなくて、まばたきした数ランキング!」
「オレ、数時間単位でしかまばたきしていませんか」
「……なわけないじゃないですか! 冗談ですよ、冗談。これは、えっと」
代わる代わるオレの視界に顔を割り込ませた彼女たちは次のアイディアを探し、チラチラと妖狐を横目で見ながら口元を覆ったり天井を見たり指を折って何か数えたりしている。
どうやら”点”の次に妖狐と銀の狐が多く、オレが一番少ないというのがネックのようだ。
「よ、黄泉さまと目を合わせた数……」
「髪の毛の本数……」
「右手を……右手を……右手をグーにした数……」
「『おい』と言った数というのはどうでしょう?」
「あっ、それいい! ……あ」
オレの意見に思わず乗ってしまった彼女たちは一様に凍りつく。
実にいい反応だ。
こんなことを楽んでしまうオレはやはり間違っている。
ニコニコとその様子を眺めていると、背後から別の声が掛かった。
「ねえねえ、人気投票の紙知らない?! どっか行っちゃったんだけど! やばいよ、黒蔵馬に見つかったら茶室が魔界植物園になっちゃうよ!」
「ここにありますよ」
「あったー! 良かっ……あ」
「なるほど、人気投票でしたか。それは気が付かなかったな」
一度は順位表を返そうと差し出すが、ふと思い返して引っ込めた。
「これ、もらっていいですか?」
「なっ、なぜ!?」
「記念に」
「やめてくださいーーー!!」
次々に伸びてくる手をヒラヒラとかわしてピンク色の便箋が揺れる。
困った。実に楽しい。実に間違っている。
「違うんです、違うんですこれは! おふざけというかお遊びで!」
「分かっています」
「まさか黒さんがここまで気にするとは露ほども思わず!」
「気にしていませんよ」
「大丈夫ですから! 決して人の目に触れぬように処分しますから返してください!」
「別にいいですよ。ネタにしてもらっても」
「そっ、そんな自棄にならないでください!」
「いや、そんなつもりは……」
彼女たちは一斉に手を引っ込めて首を傾げる。
「どうして気にしてくれないんですか!」
「黒蔵馬さんがこのサイトの看板息子でしょう?!」
「悔しがってくださいよー! 点蔵馬抹殺とか謀ってくださいよー!」
オレにどうしろと……。
いきり立つ彼女たちに手招きをしてオレについたコメントを指し示す。
『調整票』『若菜さんの手前』『親心』……と散々な書き込みが並ぶ中、ひとつだけついたハートマークの脇に『空気読まなくてごめんなさい』と書いてある。
「こんなものをいちいち気にするような人間が20年も美馬さんに付き合っていられると思いますか」
目を上げると、彼女たちは白けた顔で横を向く。
「つまんない」
「ノリが悪い」
「可愛くない」
思わず苦笑いを浮かべると、それに気付いた彼女たちは先を争うようにして顔を近付けてきた。
「なにニヤニヤしてるんですか! そんなんだからこんな順位になるんだってば!」
「そうよ! 私だって入れるか入れまいかよっぽど悩んだけど理性が勝っちゃったのよ! 私の理性くらい壊してみせろって言うのよ!」
「ただクールにしていればモテるなんて神話は流川君の時代で終わったんです」
「お茶会では分身さんがいっぱいいるけど、夢のお相手は蔵馬だけでしょ? しかも恋愛ものなんだから、やっぱりこういう村八分覚悟のコッソリ投票を集めて1位になってくれないと締まらないわよ」
あちらこちらに散らばっている『オレ』を探せば、彼らと話している相手はそれぞれに頬を赤らめたり、よそ行きの笑顔をしている。
ギンギンと目を吊り上げるヒロインに囲まれて説教されているオレはため息をつくしかなかった。
「オレはどこで何を間違えたんでしょうね……」
「他人事か!!」
このお話は前後編の本編と10本のサイドストーリーがありますが、とにかく長いお話なのでサイドストーリーは読まなくても大丈夫なように書いてあります。サイドストーリーはよほど気が向いたらお付き合いくださいね。
※サイドストーリーを読んだ後はブラウザバックで戻らないと迷子になってしまいます。本編以外では「前へ」「次へ」は使わないことをお勧めします。
20251228