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私は早乙女学園時代からずっと片想いをしている。
そしてこの恋は最初で、きっと最後の恋になるんだろう。
「うへぇ、終わったぁ」
自分でもびっくりするほど間抜けな声がでた。
手元の衣装を置いて、伸びをする。
バキバキやゴキッなど鳴ってはいけないような音があちこちでして、固まっていたた身体が解れていく。
今日のリハで調整が必要となった衣装の手直しが終わった。
万全の態勢で挑んだけれど、踊っている途中に装飾が取れたり、他と引っ掛かっちゃったり。
もちろんスペアの衣装も作ってあるけど、実際に着て動かないと分からないこともある。
最高のライブにするために手は絶対に抜かない。
「うわ、てっぺん越えてる」
時計を見ると0時を越えていた。
会場から戻ってきて作業を始めたのが20時過ぎ、だいぶ熱中していたみたいだ。
衣装をラックに掛けて部屋に鍵をかける。
事務所の廊下は真っ暗で自分の足音しか聞こえない。
初めて遅くまでいた時は真っ暗な廊下を歩くのが怖かったけど、今では慣れたものだ。
鞄ののポケットからスマホを取り出す。
画面を見るとメッセージアプリの通知が一件きていた。
「真斗くん?」
--------------------------------
遅くまでお疲れ様。
--------------------------------
メッセージが送られてきたのは2時間前。
リハのあと送ってくれていたらしい。
「『ありがとう!真斗くんも今日はお疲れさま』っと」
メッセージを送信してアプリを閉じる。
こんな時間だ、彼も寝ているだろう。
スマホをポケットに入れて事務所内を出た。
「わ、綺麗……」
外に出ると思っていたよりも明るくて上を見る。
夜空には満天の星が煌めいていて、思わず声が出た。
事務所から寮まではそこそこ歩く。
事務所の敷地とはいえ、夜道を一人で歩くのはいつも心細かったが今日はそんなことを気にせずに帰ることが出来そうだ。
「さ、帰ろ」
帰ったら友ちゃんに貰ったとっておきの入浴剤を入れて、寝る前には昨日買っておいた少しお高いアイスを食べよう。
明日は1日オフ、もう既にこんな時間だしちょっとくらい夜更かしして朝寝坊してもいいだろう。
prrr♪
事務所の前で空を見上げながら考え事をしていると、スマホが着信を告げる。
「ま、真斗くん?」
思いもよらぬ相手からの着信に少し戸惑いながら、通話ボタンをタップした。
「もしもし?」
『泉か、夜分遅くにすまない』
「ううん、大丈夫。真斗くんこそどうしたの?」
『メッセージがきたからな。今終わったのかと』
「うん、さっき終わって今事務所出たところ。もしかして起こしちゃった?」
メッセージアプリの通知で起こしてしまったかもしれない。
そもそも皆寝ている時間だ、明日返信すればよかったと後悔する。
『いや、先程まで他の者たちと談話室に居た。リハのあと戻ってきてからついつい話し込んでしまってな』
「ふふ、皆も明日はオフだもんね」
ライブが明後日に控えている為、ST☆RISHとQUARTET NIGHTは明日1日オフになっている。
HE★VENSも昼間聞いた限りだとオフみたいだ。
ゆっくり身体を休めてライブに望んでほしい事務所の計らいだろう。
「『ああ、泉も明日はオフだったな』」
「う、ん?」
真斗くんの声が二重に聞こえた気がして、星空から目を前に向ける。
そこには耳元からスマホを下ろし、通話を切る真斗くんがいた。
「ま、さとくん」
こんな時間にどうして、とか何か忘れ物?とか聞こうと思うのに言葉が出ない。
心臓がドキドキと大きな音をたてていて、なんだか工事現場みたいだ。
「あの時間にメッセージがきたということは、まだ事務所にいるのだと思ってな。勝手だが迎えにきた」
真斗くんは少し苦笑して私と向き合った。
生暖かい風が吹いて揺れた真斗くんの髪は星空と溶け合っていてとても綺麗だ。
こちらを真っ直ぐ見つめてくるその瞳を前にまた心臓がうるさいほどに高鳴る。
「えっと、迎えに来てくれてありがとう」
落ち着け、落ち着け。
手汗が出てきそうなくらい強くスマホを握って、なんともないように振る舞う。
ずっと学園時代から好きな人。
その人が自分を迎えに来た。
これ程嬉しいことがあるだろうか?
いや、ない!今日はなんていい日なんだ!
「こちらこそ勝手に迎えに来てしまってすまない。もう遅い、寮へ帰ろう」
「うん!」
真斗くんの横に並んで歩く。
さりげなくこちらを気にしながら歩幅を合わせてくれているところは、学園時代から変わらない。
そんな彼に惹かれた。
「ライブ、成功させようね」
「そうだな」
星空を見上げながら思うのは明後日のライブのこと。
ずっと見てきた、支えてきた。
だからこそ成功させたい。
「泉」
真斗くんに呼ばれて、自然と立ち止まる。
私と向き合った真斗くんは何かを決意したような表情をしている。
私より高い真斗くんの後ろには星空が煌めいていて、どこか現実離れしたような錯覚に陥る。
「ライブ前に言うことではないかもしれないが、俺はお前が好きだ」
「……ぇ」
壊れたオモチャみたいに心臓がドキドキいっている。
今なら聴診器を当てずとも、心臓の音が聞こえそうだ。
頭の中で真斗くんが言った言葉が何度も再生される。
「学園時代からお前のことが好きだ、ライブ前だからこそ伝えたいと思った。俺と一緒になって欲しい」
言葉の一つ一つが甘く心に入ってくる。
段々と目の前が歪んで涙が溢れてきた。
「わた、しも……ずっと、真斗くんの事が好きです」
「それは、本当か……?」
「うん。ずっと、学園時代から好き」
真斗くんの瞳が大きく見開き、次の瞬間には身体が温かく包み込まれ視界には何も見えない。
それが抱き締められていると理解するのに時間はかからなかった。
「ま、真斗くん……っ、あの」
「まさか想いが通じているとは思ってもいなかったのでな……、とても嬉しい」
真斗くんが肩口で話すと擽ったくて私は身をよじった。
ふと抱き締める力が少し強くなって、真斗くんの匂いが胸一杯に広がる。
「明後日のライブ、ファンもそうだがお前にも想いを届けるよう、必ず」
「うん、楽しみにしている」
そっと私は真斗くんの背中に手を回した。
「今日は夢の王国へようこそ!」
「「「「「「「キャー!!」」」」」」」
最終リハも無事終えて迎えたライブ当日。
ファンの歓声と熱気が会場一杯に広がっている。
スタッフだから客席では観られないけど、春ちゃんと一緒に舞台袖でライブを観ることにした。
オープニング映像が終わって、ST☆RISHからQUARTET NIGHT、HE★VENSへとバトンが渡されセットが完成していく。
途中MCを挟みつつ、ユニットと2回目のグループ曲が終わり今は最後のMC。
HE★VENSから始まったそれは彼らの今までを物語っていた。
関係者だから知っていることの方が多かったけど、それでも胸が一杯で涙が止まらない。
関係者だからこそ、なのかもしれない。
そして嶺二先輩がST☆RISHへバトンを渡した。
音也くんから語り出したそれは、今までの思い出を振り返るのに十分な程だった。
学園時代からずっと一緒に切磋琢磨してきて、初めはグループになるなんて思わなかったし自分が作曲家の道を進まなかったことも当時は予想外つかなかった。
そしてここまでこれることも。
色々あった1年間は今まで歩んできた人生の、どの思い出よりも強く鮮明に残っている。
そしてデビューした後に新しくセシルくんが入ってきて、そこからも色々あって。
大変だったことも少なくなかった。
それでも春ちゃんと友ちゃんと皆でここまでやって来たね。
ステージを観ると丁度真斗くんが話すところだった。
「振り返れば……、随分遠くまで歩いて来たものだ」
スッと入ってきたその言葉は、さらに涙を溢れされるには十分過ぎた。
ステージを観ることが出来なくて、顔を覆って下を向く。
そうだね、そうだ。
随分長い道のりを歩いてきたね。
ST☆RISHが輝く姿をずっと側で見させてくれて、ありがとう。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
今すぐにでも伝えたいことが涙と一緒に溢れてくる。
そっと背中を撫でられて顔をあげると、涙で一杯の春ちゃんがいた。
「……春ちゃん、ここまで皆を連れてきてくれてありがとう」
「穂花ちゃん……!私こそ一緒に歩んできてくれて、ありがとう……っ」
お互い涙でぐしょぐしょになった顔で笑い合う。
ステージではプログラム最後の曲が流れ始めていた。
ああ、駄目だよこの曲は。
また涙が止まらなくなっちゃうじゃないか。
甘い甘い歌詞から始まるその曲は、これ以上は出ないくらい涙している私に追い討ちをかける。
沢山の幸せをくれた君へ、ありがとう。
そっと会場を観ると、幾多のペンライトが煌めいている。
涙越しにみる景色はあの夜にみた満天の星空のようだった。
ねえ、真斗くん。
私がST☆RISHと歩んできた歴史はあなたを好きな想いと一緒にあるんだよ。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
私の、最初で最後の大好きな人。
そしてこの恋は最初で、きっと最後の恋になるんだろう。
「うへぇ、終わったぁ」
自分でもびっくりするほど間抜けな声がでた。
手元の衣装を置いて、伸びをする。
バキバキやゴキッなど鳴ってはいけないような音があちこちでして、固まっていたた身体が解れていく。
今日のリハで調整が必要となった衣装の手直しが終わった。
万全の態勢で挑んだけれど、踊っている途中に装飾が取れたり、他と引っ掛かっちゃったり。
もちろんスペアの衣装も作ってあるけど、実際に着て動かないと分からないこともある。
最高のライブにするために手は絶対に抜かない。
「うわ、てっぺん越えてる」
時計を見ると0時を越えていた。
会場から戻ってきて作業を始めたのが20時過ぎ、だいぶ熱中していたみたいだ。
衣装をラックに掛けて部屋に鍵をかける。
事務所の廊下は真っ暗で自分の足音しか聞こえない。
初めて遅くまでいた時は真っ暗な廊下を歩くのが怖かったけど、今では慣れたものだ。
鞄ののポケットからスマホを取り出す。
画面を見るとメッセージアプリの通知が一件きていた。
「真斗くん?」
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遅くまでお疲れ様。
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メッセージが送られてきたのは2時間前。
リハのあと送ってくれていたらしい。
「『ありがとう!真斗くんも今日はお疲れさま』っと」
メッセージを送信してアプリを閉じる。
こんな時間だ、彼も寝ているだろう。
スマホをポケットに入れて事務所内を出た。
「わ、綺麗……」
外に出ると思っていたよりも明るくて上を見る。
夜空には満天の星が煌めいていて、思わず声が出た。
事務所から寮まではそこそこ歩く。
事務所の敷地とはいえ、夜道を一人で歩くのはいつも心細かったが今日はそんなことを気にせずに帰ることが出来そうだ。
「さ、帰ろ」
帰ったら友ちゃんに貰ったとっておきの入浴剤を入れて、寝る前には昨日買っておいた少しお高いアイスを食べよう。
明日は1日オフ、もう既にこんな時間だしちょっとくらい夜更かしして朝寝坊してもいいだろう。
prrr♪
事務所の前で空を見上げながら考え事をしていると、スマホが着信を告げる。
「ま、真斗くん?」
思いもよらぬ相手からの着信に少し戸惑いながら、通話ボタンをタップした。
「もしもし?」
『泉か、夜分遅くにすまない』
「ううん、大丈夫。真斗くんこそどうしたの?」
『メッセージがきたからな。今終わったのかと』
「うん、さっき終わって今事務所出たところ。もしかして起こしちゃった?」
メッセージアプリの通知で起こしてしまったかもしれない。
そもそも皆寝ている時間だ、明日返信すればよかったと後悔する。
『いや、先程まで他の者たちと談話室に居た。リハのあと戻ってきてからついつい話し込んでしまってな』
「ふふ、皆も明日はオフだもんね」
ライブが明後日に控えている為、ST☆RISHとQUARTET NIGHTは明日1日オフになっている。
HE★VENSも昼間聞いた限りだとオフみたいだ。
ゆっくり身体を休めてライブに望んでほしい事務所の計らいだろう。
「『ああ、泉も明日はオフだったな』」
「う、ん?」
真斗くんの声が二重に聞こえた気がして、星空から目を前に向ける。
そこには耳元からスマホを下ろし、通話を切る真斗くんがいた。
「ま、さとくん」
こんな時間にどうして、とか何か忘れ物?とか聞こうと思うのに言葉が出ない。
心臓がドキドキと大きな音をたてていて、なんだか工事現場みたいだ。
「あの時間にメッセージがきたということは、まだ事務所にいるのだと思ってな。勝手だが迎えにきた」
真斗くんは少し苦笑して私と向き合った。
生暖かい風が吹いて揺れた真斗くんの髪は星空と溶け合っていてとても綺麗だ。
こちらを真っ直ぐ見つめてくるその瞳を前にまた心臓がうるさいほどに高鳴る。
「えっと、迎えに来てくれてありがとう」
落ち着け、落ち着け。
手汗が出てきそうなくらい強くスマホを握って、なんともないように振る舞う。
ずっと学園時代から好きな人。
その人が自分を迎えに来た。
これ程嬉しいことがあるだろうか?
いや、ない!今日はなんていい日なんだ!
「こちらこそ勝手に迎えに来てしまってすまない。もう遅い、寮へ帰ろう」
「うん!」
真斗くんの横に並んで歩く。
さりげなくこちらを気にしながら歩幅を合わせてくれているところは、学園時代から変わらない。
そんな彼に惹かれた。
「ライブ、成功させようね」
「そうだな」
星空を見上げながら思うのは明後日のライブのこと。
ずっと見てきた、支えてきた。
だからこそ成功させたい。
「泉」
真斗くんに呼ばれて、自然と立ち止まる。
私と向き合った真斗くんは何かを決意したような表情をしている。
私より高い真斗くんの後ろには星空が煌めいていて、どこか現実離れしたような錯覚に陥る。
「ライブ前に言うことではないかもしれないが、俺はお前が好きだ」
「……ぇ」
壊れたオモチャみたいに心臓がドキドキいっている。
今なら聴診器を当てずとも、心臓の音が聞こえそうだ。
頭の中で真斗くんが言った言葉が何度も再生される。
「学園時代からお前のことが好きだ、ライブ前だからこそ伝えたいと思った。俺と一緒になって欲しい」
言葉の一つ一つが甘く心に入ってくる。
段々と目の前が歪んで涙が溢れてきた。
「わた、しも……ずっと、真斗くんの事が好きです」
「それは、本当か……?」
「うん。ずっと、学園時代から好き」
真斗くんの瞳が大きく見開き、次の瞬間には身体が温かく包み込まれ視界には何も見えない。
それが抱き締められていると理解するのに時間はかからなかった。
「ま、真斗くん……っ、あの」
「まさか想いが通じているとは思ってもいなかったのでな……、とても嬉しい」
真斗くんが肩口で話すと擽ったくて私は身をよじった。
ふと抱き締める力が少し強くなって、真斗くんの匂いが胸一杯に広がる。
「明後日のライブ、ファンもそうだがお前にも想いを届けるよう、必ず」
「うん、楽しみにしている」
そっと私は真斗くんの背中に手を回した。
「今日は夢の王国へようこそ!」
「「「「「「「キャー!!」」」」」」」
最終リハも無事終えて迎えたライブ当日。
ファンの歓声と熱気が会場一杯に広がっている。
スタッフだから客席では観られないけど、春ちゃんと一緒に舞台袖でライブを観ることにした。
オープニング映像が終わって、ST☆RISHからQUARTET NIGHT、HE★VENSへとバトンが渡されセットが完成していく。
途中MCを挟みつつ、ユニットと2回目のグループ曲が終わり今は最後のMC。
HE★VENSから始まったそれは彼らの今までを物語っていた。
関係者だから知っていることの方が多かったけど、それでも胸が一杯で涙が止まらない。
関係者だからこそ、なのかもしれない。
そして嶺二先輩がST☆RISHへバトンを渡した。
音也くんから語り出したそれは、今までの思い出を振り返るのに十分な程だった。
学園時代からずっと一緒に切磋琢磨してきて、初めはグループになるなんて思わなかったし自分が作曲家の道を進まなかったことも当時は予想外つかなかった。
そしてここまでこれることも。
色々あった1年間は今まで歩んできた人生の、どの思い出よりも強く鮮明に残っている。
そしてデビューした後に新しくセシルくんが入ってきて、そこからも色々あって。
大変だったことも少なくなかった。
それでも春ちゃんと友ちゃんと皆でここまでやって来たね。
ステージを観ると丁度真斗くんが話すところだった。
「振り返れば……、随分遠くまで歩いて来たものだ」
スッと入ってきたその言葉は、さらに涙を溢れされるには十分過ぎた。
ステージを観ることが出来なくて、顔を覆って下を向く。
そうだね、そうだ。
随分長い道のりを歩いてきたね。
ST☆RISHが輝く姿をずっと側で見させてくれて、ありがとう。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
今すぐにでも伝えたいことが涙と一緒に溢れてくる。
そっと背中を撫でられて顔をあげると、涙で一杯の春ちゃんがいた。
「……春ちゃん、ここまで皆を連れてきてくれてありがとう」
「穂花ちゃん……!私こそ一緒に歩んできてくれて、ありがとう……っ」
お互い涙でぐしょぐしょになった顔で笑い合う。
ステージではプログラム最後の曲が流れ始めていた。
ああ、駄目だよこの曲は。
また涙が止まらなくなっちゃうじゃないか。
甘い甘い歌詞から始まるその曲は、これ以上は出ないくらい涙している私に追い討ちをかける。
沢山の幸せをくれた君へ、ありがとう。
そっと会場を観ると、幾多のペンライトが煌めいている。
涙越しにみる景色はあの夜にみた満天の星空のようだった。
ねえ、真斗くん。
私がST☆RISHと歩んできた歴史はあなたを好きな想いと一緒にあるんだよ。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
私の、最初で最後の大好きな人。
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