このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

隠した気持ち

 認めたくない気持ちなんて、誰にでもある……。
 桜が咲き風が吹く度に舞い散る中、潮田うしだ兎斗うとは一人並木道をゆっくりと歩いていた。
 仲のいい友人達が部活動に励むなか、兎斗は帰宅部を選んでもう数日が立つ。それに正直に言えば部活なんてやっいるほど気持ちに余裕はなかった。
 基本的に動くことも、考えることも億劫な性格の兎斗は部活動には向いてないのは自身も百も承知だ。なのに今は本人が認めたくないほど悩んでしまっていることに腹が立っていた。
 悩みの原因は幼馴染みの五十嵐いがらし桜依るいだ。
 物心ついた時にはもう一緒にいた年上の幼馴染みだが、最近は何故かよそよそしくなった。
 今までならこっちが意識してると気付かずにヅカヅカと踏み込んできたし、飲み物だって飲んだものを飲まれたりした。ホラー映画なんて見ようものなら人の気もいざ知らず抱きついてきたし、暑い日には薄着で目の前をちょこまかと動くほど無意識に色々と兎斗の気持ちを荒立てていた。
 そんな桜依が、最近は飲みものも人が飲んだあとに飲まなくなったり、ホラー映画をみても怖いのを隠して抱きついても来ない。
 自惚れだとも思うかもしれないが兎斗はやっと意識されたのかと淡い期待を抱いてしまっているのだ。
 けれどそれさえも何だか恥ずかしくて自意識過剰な気がして腹が立つ。
 
「はぁ……」
 
 今日何度目かのため息に自身で呆れた。
1/3ページ
スキ