序章
澄み切った青空と白い雲。街の少しはずれにある大きな屋敷の屋根に季節外れのひまわり色が風に揺れていた。
揺れるひまわり色と同時に鳴っているきれいな鈴の音は、彼女のトレードマークだ。
この屋敷の者……といえばそうなのだが実際のところは違う。この屋敷に彼女が来たのはつい先日のことで、住んでいると言うよりは押しかけたあげく家主に《住まわせてもらっている》に近い。
それでも人とのかかわりをあまり好まない彼女にとってそれはとても奇跡に近い。一緒にいてもいいと思える相手を見つけたのだから。
そんな風に言えば大袈裟に聞こえるかもしれないが、それぐらい彼女は人とのかかわりを避けていた。
もちろん善も悪も等しいぐらいに嫌いと言えば簡単だ。だけどどちらかといえば《興味がない》に近い感情なのだろう。
そんな彼女が《一人にしたくない》と思える相手がこの屋敷の家主だった。だからと言ってそれは恋愛感情ではない。ただ本能が《一人にしたくない》と訴えていただけ。
曖昧な記憶の中で覚えている眩しく儚い白と厳しくも優しい黒の面影を持っている家主を見ていたかった。そしてどこかで《名前を呼ばれたい》と願っているだけ。
ただ、それだけの感情が彼女をここに留めていた。
「おい」
屋根にいる彼女に低い声が下から聞こえた。その声を持つ人物を見るために少しフチ際に移動してから下を覗き見る。そこには和装のはちみつ色の髪を持った男性が立っていた。
揺れるひまわり色と同時に鳴っているきれいな鈴の音は、彼女のトレードマークだ。
この屋敷の者……といえばそうなのだが実際のところは違う。この屋敷に彼女が来たのはつい先日のことで、住んでいると言うよりは押しかけたあげく家主に《住まわせてもらっている》に近い。
それでも人とのかかわりをあまり好まない彼女にとってそれはとても奇跡に近い。一緒にいてもいいと思える相手を見つけたのだから。
そんな風に言えば大袈裟に聞こえるかもしれないが、それぐらい彼女は人とのかかわりを避けていた。
もちろん善も悪も等しいぐらいに嫌いと言えば簡単だ。だけどどちらかといえば《興味がない》に近い感情なのだろう。
そんな彼女が《一人にしたくない》と思える相手がこの屋敷の家主だった。だからと言ってそれは恋愛感情ではない。ただ本能が《一人にしたくない》と訴えていただけ。
曖昧な記憶の中で覚えている眩しく儚い白と厳しくも優しい黒の面影を持っている家主を見ていたかった。そしてどこかで《名前を呼ばれたい》と願っているだけ。
ただ、それだけの感情が彼女をここに留めていた。
「おい」
屋根にいる彼女に低い声が下から聞こえた。その声を持つ人物を見るために少しフチ際に移動してから下を覗き見る。そこには和装のはちみつ色の髪を持った男性が立っていた。
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