初めての生放送
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生放送が終わって、キヨくん達は共演者の方々に挨拶に行くと言って控室を出ていった。気を遣ったのかわたしに来なくてもいいよというヒラくんの言葉が妙に優しくて変な感じがした。
「……」
別世界。
行きの飛行機の中からずっとよぎっていた言葉が頭の中をぐるぐる巡っている。みんなが戻ってくるまで、と思ってテスト勉強のために取り出した英単語帳が妙にその言葉を助長していた。
何がしたいんだろう、わたしは。お兄ちゃんの言葉にまんまと乗っかってやってきたけど、結局何にもできなかった。どんどん進んでるキヨくん達の足を引っ張るだけだった。
机に突っ伏した時、扉が開いた音がする。
「……あれ、キヨくん達は……いない、ですかね?」
「……」
扉から顔を覗かせていた男性に、小さく頷く。
この人、たしかさっき生放送で一緒だった人だ。
「……レトルトさん」
「え、はい」
「……あ、きょ、今日はありがとうございました」
「……あぁ、こーすけの妹の……」
今気がついたらしかった。もうサングラスもマスクも外しているから、それもそうかと思う。
レトルトさんは、「こちらこそ、ありがとうございました」とわたしなんかに腰が低く頭を下げた。
たしか、キヨくんが仲良くしてる人だったと思う。何度かキヨくんと一緒に撮った動画を見たことがある。子供のわたしにもこんなに丁寧なところを見ると、すごくいい人なんだろうなって勝手に予想がついた。
「……キヨくん達は、他の方たちに挨拶に行きました」
「あ、そう……君は?いかないの」
「……わたしは、ちょっと……」
机の上にある単語帳の表紙を手のひらでなぞりながら愛想笑いを浮かべる。レトルトさんは「今日緊張してたね」と少し笑いながら部屋の中に入った。
「はい……生放送とか初めてだったし、その、どんな風にしてたらいいのかわからなくて」
「だよね~俺も顔出してイベント出るの苦手」
「……そうなんですか?」
意外だ。キヨくんとテンポ良く会話を続けているように見えたけどな。わたしの顔を見て、レトルトさんは「もうね、汗だくよ」と笑う。
「ちかちゃんほんとはもっと面白くて楽しそうにゲームするのにね」
「へ?」
「俺見てるんだよちかちゃんのでてる最俺の動画。一番うめーもんゲーム。声も聞きやすいしさ、すげーいいよ」
「……」
実況者の大先輩が、わたしを褒めている。
わたしはお礼を言うことも忘れて棒立ちだ。
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生放送が終わって、キヨくん達は共演者の方々に挨拶に行くと言って控室を出ていった。気を遣ったのかわたしに来なくてもいいよというヒラくんの言葉が妙に優しくて変な感じがした。
「……」
別世界。
行きの飛行機の中からずっとよぎっていた言葉が頭の中をぐるぐる巡っている。みんなが戻ってくるまで、と思ってテスト勉強のために取り出した英単語帳が妙にその言葉を助長していた。
何がしたいんだろう、わたしは。お兄ちゃんの言葉にまんまと乗っかってやってきたけど、結局何にもできなかった。どんどん進んでるキヨくん達の足を引っ張るだけだった。
机に突っ伏した時、扉が開いた音がする。
「……あれ、キヨくん達は……いない、ですかね?」
「……」
扉から顔を覗かせていた男性に、小さく頷く。
この人、たしかさっき生放送で一緒だった人だ。
「……レトルトさん」
「え、はい」
「……あ、きょ、今日はありがとうございました」
「……あぁ、こーすけの妹の……」
今気がついたらしかった。もうサングラスもマスクも外しているから、それもそうかと思う。
レトルトさんは、「こちらこそ、ありがとうございました」とわたしなんかに腰が低く頭を下げた。
たしか、キヨくんが仲良くしてる人だったと思う。何度かキヨくんと一緒に撮った動画を見たことがある。子供のわたしにもこんなに丁寧なところを見ると、すごくいい人なんだろうなって勝手に予想がついた。
「……キヨくん達は、他の方たちに挨拶に行きました」
「あ、そう……君は?いかないの」
「……わたしは、ちょっと……」
机の上にある単語帳の表紙を手のひらでなぞりながら愛想笑いを浮かべる。レトルトさんは「今日緊張してたね」と少し笑いながら部屋の中に入った。
「はい……生放送とか初めてだったし、その、どんな風にしてたらいいのかわからなくて」
「だよね~俺も顔出してイベント出るの苦手」
「……そうなんですか?」
意外だ。キヨくんとテンポ良く会話を続けているように見えたけどな。わたしの顔を見て、レトルトさんは「もうね、汗だくよ」と笑う。
「ちかちゃんほんとはもっと面白くて楽しそうにゲームするのにね」
「へ?」
「俺見てるんだよちかちゃんのでてる最俺の動画。一番うめーもんゲーム。声も聞きやすいしさ、すげーいいよ」
「……」
実況者の大先輩が、わたしを褒めている。
わたしはお礼を言うことも忘れて棒立ちだ。
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