出番待ちの紙袋
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kiyo
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ちびちびと日本酒を飲みながら、うっしーとガッチさんとフジに囲まれてやいのやいのと揶揄われているちかちゃんを遠巻きに眺める。
そうか、この子も誰か違う男のもんになったのか。
漠然とそんな予感はしていた。環境が変わって、ちかちゃんの気持ちも変わって、俺の知らないコミュニティで過ごすことがグッと増えたから。
「写真ないの?」
「あー、たしかに初期のキヨに似てるわ、ちょっとだけ」
ちかちゃんはといえば、さっきから全く俺の方を見ない。目と目が合うことがない。
なんだっつんだ。まったく。また日本酒を一口。
「キヨくんいいの?」
「なにが」
「いや、色々と」
「は?」
「怒んなよ」
もうセーブして飲まないモードのレトさんにこっそり話しかけられたけど、イライラしながらあしらう。
「ちかちゃん、ぶっちゃけもうやった?」
「へ?」
「ごほっ」
すっかり悪酔いのフジはちかちゃんの肩を組みながら言うと、その言葉にうっしーがむせた。ガッチさんはすっかり出来上がって笑っている。
ちかちゃんは「なにを?」とフジを見つめ返している。「エッ言わせんの!?ちかちゃんえっちかよ」と笑うフジにまた一口酒を飲んだ。あいつ、いい加減にしろよ。
「……え」
「あら?あらあら?その反応は〜」
「し、してないよ!そんな!まだそんなに経ってないのに!」
「とか言って〜秒読みですね〜」
「フージ、セクハラで訴えられるぞ」
「いけね」
うっしーの言葉でやっと止まるこの下ネタマシーン。
俺は自分のリュックをとると、中から財布を出す。ちらっと覗く今日も渡せそうにない入学祝いの紙袋にため息が出そうになった。
机の上に5000円札を一枚置き、「帰るわ俺」と立ち上がった。
「え?」
「……飲みすぎたっぽい、きもちわりいし、帰る」
「大丈夫?」
「大丈夫、タクシー拾うし」
飲みすぎたっぽいのはガチだった。
ビールやら日本酒やら焼酎やら、おっさんたちのペースに合わせて飲んでいたらいつのまにかグロッキーだ。他の要因もあるだろうけれど。
軽く手を挙げると、飲み屋を出た。
夜風がじめっとしていて、梅雨は嫌だなぁとぼんやり思いながら、家の方へ向かう。人通りは思いのほか少なく、一歩路地を入れば人っ子一人いない。
「……き、キヨくん」
「……」
うわずったような声に振り返ると、バッグを持ったちかちゃんが俺を追いかけてきていた。
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ちびちびと日本酒を飲みながら、うっしーとガッチさんとフジに囲まれてやいのやいのと揶揄われているちかちゃんを遠巻きに眺める。
そうか、この子も誰か違う男のもんになったのか。
漠然とそんな予感はしていた。環境が変わって、ちかちゃんの気持ちも変わって、俺の知らないコミュニティで過ごすことがグッと増えたから。
「写真ないの?」
「あー、たしかに初期のキヨに似てるわ、ちょっとだけ」
ちかちゃんはといえば、さっきから全く俺の方を見ない。目と目が合うことがない。
なんだっつんだ。まったく。また日本酒を一口。
「キヨくんいいの?」
「なにが」
「いや、色々と」
「は?」
「怒んなよ」
もうセーブして飲まないモードのレトさんにこっそり話しかけられたけど、イライラしながらあしらう。
「ちかちゃん、ぶっちゃけもうやった?」
「へ?」
「ごほっ」
すっかり悪酔いのフジはちかちゃんの肩を組みながら言うと、その言葉にうっしーがむせた。ガッチさんはすっかり出来上がって笑っている。
ちかちゃんは「なにを?」とフジを見つめ返している。「エッ言わせんの!?ちかちゃんえっちかよ」と笑うフジにまた一口酒を飲んだ。あいつ、いい加減にしろよ。
「……え」
「あら?あらあら?その反応は〜」
「し、してないよ!そんな!まだそんなに経ってないのに!」
「とか言って〜秒読みですね〜」
「フージ、セクハラで訴えられるぞ」
「いけね」
うっしーの言葉でやっと止まるこの下ネタマシーン。
俺は自分のリュックをとると、中から財布を出す。ちらっと覗く今日も渡せそうにない入学祝いの紙袋にため息が出そうになった。
机の上に5000円札を一枚置き、「帰るわ俺」と立ち上がった。
「え?」
「……飲みすぎたっぽい、きもちわりいし、帰る」
「大丈夫?」
「大丈夫、タクシー拾うし」
飲みすぎたっぽいのはガチだった。
ビールやら日本酒やら焼酎やら、おっさんたちのペースに合わせて飲んでいたらいつのまにかグロッキーだ。他の要因もあるだろうけれど。
軽く手を挙げると、飲み屋を出た。
夜風がじめっとしていて、梅雨は嫌だなぁとぼんやり思いながら、家の方へ向かう。人通りは思いのほか少なく、一歩路地を入れば人っ子一人いない。
「……き、キヨくん」
「……」
うわずったような声に振り返ると、バッグを持ったちかちゃんが俺を追いかけてきていた。
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