出番待ちの紙袋

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主人公

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 わたしと清田くんは、初めは図書館で勉強していたけれど、その場所は段々とカフェやカラオケなどに形を変えていった。

 特にカラオケは、清田くんは歌がすごくうまかったし、わたしの下手くそな歌も楽しそうに聞いてくれるから、定番スポットになってきていた。



「え、清田くん曲作ってYouTubeに載せてるんだ」



 話す内容も、ゲーム実況者と打ち明けてからはお互いのプライベートのことが段々と増えた。清田くんが曲を作っていると言うビッグな情報を手に入れた。

 「聞きたい!」と食いつくと、彼にしては珍しく「……えー」と渋った。



「なんで」

「自分の作ったもん見せるの普通に恥ずいじゃん」

「……清田くんわたしの動画見てるじゃん」

「それを言われちゃ言い返せねえよ……」



 清田くんは「せめて俺がいないところで見て」とわたしにurlを送ってトイレに行ってしまった。度胸があるように見えて、こういうところが可愛いんだよな。

 urlをタップして聞き始める。ギターの音だけかと思ったけれど、ところどころ電子音やドラムの音も打ち込まれている。こういうの、フジくんがパソコンでやってるのを見たことがある。



「すごーい……」



 わたしは音楽には全く詳しくないけど、これを彼が作ったのかと思うとシンプルに尊敬。あ、ここいいな、というところを何度も巻き戻して聞いていると、清田くんがそーっとドアを開けて戻ってきた。



「……まだ聞いてんの?」

「そんな嫌な顔しないでよ」



 携帯を閉じるわたしを見ながら、清田くんが照れ臭そうにソファに座った。

 「すごい好きだった!あの、ピコピコ音とか、すごくレトロゲームを彷彿とさせて、あのDQとかそう言う類の!わたしわくわくしちゃってさ」と思わず早口になるわたしを見て、清田くんはふきだした。



「ほんっとゲーム好きだね」

「……あ、馬鹿にしたね?」

「してないよ。ちかちゃんのそういう好きに真っ直ぐところが俺は好き」

「……」



 清田くんと暫く見つめ合う。

 こんな真っ直ぐに「好き」なんて言われたことないかもしれない。それに、この人の好意は嬉しいと思ったのも、キヨくんの他には彼が初めてだった。



「意外と人付き合いが苦手で不器用なところもあって、でも、優しくて明るくて、ほんとの(名前)ちゃん知ってもっと好きになった」

「……」

「俺と付き合ってくれませんか」



 清田くんは、探るようにわたしの目を覗き込んで言った。しとしとと雨の降り続く梅雨の時期だった。



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