kiyota


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　ニコニコ動画は元々、流行ってる音楽やギターの弾き語りの人を検索するために登録していた。けれど、ふとランキングを見た時に目に入った『キヨ』というユーザーネームに、親近感を覚えてゲーム実況を見始めた。
　そこからは、宿題をしてる時のBGMとしてよく声を聞いていた。

　キヨは、最終兵器俺達というグループの一人で、時折こうして、誰かと一緒にしている実況をあげている。

　その中で知ったのが、最俺のメンバー・こーすけの妹である「ちかちゃん」。



『ちかちゃんそこ左』

『え、違うよ右だよ』

『違うよ左だよ』

『ひぃっ！待って、待って、無理！キヨくん！キ゛ヨ゛く゛ん゛！！うそばっか！！』



　動画の中でいつも最俺メンバーに弄ばれているちかちゃんだけど、素人目に見ても圧倒的にゲームがうまくて、同い年なのに本当にすごいなとシンプルに尊敬した。



『えっと、全身ネーム　ギタリストキヨさんからです、ありがとうございます』

『キヨくんギタリストなん？』

『ちげーよ』



　レトさんとキヨのやっているラジオにちかちゃんが出ると聞いたからメールを送ったら、まさかの読まれた。

　俺は画面の前で硬直する。



『キヨさんレトルトさんちかさんこんばんは！いつもラジオ楽しく聞いています。僕は、高校2年生です。わ、同い年だ』

『ほんとだね』

『大学進学するのか、就職するのか決められずにいます。みなさんの進路の決め手はなんだったのでしょうか』

『そっか、キヨくんは大学行ってるよね』

『そーね。俺は推薦だからあんまり参考にならないかもしれないけど』

『ちかちゃんは将来のこととか決めてるの？』



　レトさんの言葉に、ちかちゃんは暫く「んー」と唸ると続けた。




『わたしは働き始める前にもっとゲームのこと勉強したいと思うから、大学受験をしようと思ってるけど、経験値を大事にしたいから早く社会に出たいって言う人が決して間違ってるとも思わないよ。

どれを選んでも正解不正解はないから、自分のどの気持ちを大事にしたいかで考えるといいかもしれない。頑張ろうね！』

「……」

『大人より深いこと言うもんじゃないよお前』



　レトさんの呆れた声。
　ちかちゃんの言葉を噛み締める。自分が何を大切にしたいのか。

　この子はどんだけ視野が広いんだと思った。尊敬。憧れると思った。

　それから数年後、俺が大学で出会った本物のちかちゃんは、人付き合いと数学が苦手で、でも優しくて真っ直ぐで、すごく可愛い女の子だった。



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