出番待ちの紙袋
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来るんじゃなかったかも。わたしは早々に後悔していた。
大学に入ってはじめての友達ができたわたしは浮き足立って、学部の先輩が主催する新入生歓迎会に参加してみた。ギリギリまで兄は「大丈夫かよ」と言っていたけど、それを信じるべきだったと今は思う。
「ねえねえ彼氏いるのー?」
「……」
先輩に絡まれている。
ただでさえ女の子の少ない工学部。女と言うだけで異常なまでに歓迎され、先輩たちに囲まれた。カルピスを飲みながら曖昧に笑うけど正直味がしない。
2年生の先輩は、ほとんど成人していないはずだ。なのに当たり前のようにお酒を飲んでいる。しかも、断りもなくタバコまでふかすし、やたらボディータッチが多くて、正直気持ち悪い。
「ちかちゃん飲まないの〜?」
「……わたし、未成年なので……」
「真面目〜!」
「1回飲んでみなよ、初飲酒、社会経験だよ」
飲酒なら、前にウーロンハイを間違えて飲んで大変なことになりましたが。と言わなかったわたしを褒めて欲しい。
謎のお酒の入った飲みかけのジョッキをグイグイとわたしに押し付けてくる先輩に、いい加減笑えなくなってきた。
「……」
「一杯だけ!ね!」
「ノリわりいな〜」
わたしを毒づくような言葉にぱっと顔を上げると、目の前に座っている先輩がイライラしたように、ぐりぐりとたばこを灰皿に押し付けている。
わたしは、1杯だけならと、目の前のジョッキを見つめる。
と、それがどこからともなく伸びてきた手によってわたしの目の前から消えた。
「え」
いつの間に来たのか、わたしと先輩の間に割り込むように座って、ジョッキの中のお酒を飲み干したのは、清田くんだった。
清田くんはそれを飲み干すと、「うっまー!何のお酒っすかコレ!」と先輩に話を振った。
「え……ジンジャーハイ」
「ジンジャーハイか、美味いっすね、もう一杯いっていいですか俺」
「飲み放題だし頼め頼め」
「あ、神崎さんと山本さんもなにか飲みます?」
目の前のタバコの先輩のグラスが空いていることにもぱっと気づいた清田くんは、先輩たちの注文をまとめると、素早く店員さんにオーダーした。
邪魔をされたものの、思いのほかよくできた後輩に気分を良くしたらしい先輩たちは、「お前名前何?」と清田くんに尋ねた。
「清田っす」
「キヨお前気に入ったわ」
「あざっす」
聞きなれた名前で呼ばれる清田くんの横顔を見上げつつ、わたしはごくりとカルピスを飲んだ。少しだけ味がした。
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来るんじゃなかったかも。わたしは早々に後悔していた。
大学に入ってはじめての友達ができたわたしは浮き足立って、学部の先輩が主催する新入生歓迎会に参加してみた。ギリギリまで兄は「大丈夫かよ」と言っていたけど、それを信じるべきだったと今は思う。
「ねえねえ彼氏いるのー?」
「……」
先輩に絡まれている。
ただでさえ女の子の少ない工学部。女と言うだけで異常なまでに歓迎され、先輩たちに囲まれた。カルピスを飲みながら曖昧に笑うけど正直味がしない。
2年生の先輩は、ほとんど成人していないはずだ。なのに当たり前のようにお酒を飲んでいる。しかも、断りもなくタバコまでふかすし、やたらボディータッチが多くて、正直気持ち悪い。
「ちかちゃん飲まないの〜?」
「……わたし、未成年なので……」
「真面目〜!」
「1回飲んでみなよ、初飲酒、社会経験だよ」
飲酒なら、前にウーロンハイを間違えて飲んで大変なことになりましたが。と言わなかったわたしを褒めて欲しい。
謎のお酒の入った飲みかけのジョッキをグイグイとわたしに押し付けてくる先輩に、いい加減笑えなくなってきた。
「……」
「一杯だけ!ね!」
「ノリわりいな〜」
わたしを毒づくような言葉にぱっと顔を上げると、目の前に座っている先輩がイライラしたように、ぐりぐりとたばこを灰皿に押し付けている。
わたしは、1杯だけならと、目の前のジョッキを見つめる。
と、それがどこからともなく伸びてきた手によってわたしの目の前から消えた。
「え」
いつの間に来たのか、わたしと先輩の間に割り込むように座って、ジョッキの中のお酒を飲み干したのは、清田くんだった。
清田くんはそれを飲み干すと、「うっまー!何のお酒っすかコレ!」と先輩に話を振った。
「え……ジンジャーハイ」
「ジンジャーハイか、美味いっすね、もう一杯いっていいですか俺」
「飲み放題だし頼め頼め」
「あ、神崎さんと山本さんもなにか飲みます?」
目の前のタバコの先輩のグラスが空いていることにもぱっと気づいた清田くんは、先輩たちの注文をまとめると、素早く店員さんにオーダーした。
邪魔をされたものの、思いのほかよくできた後輩に気分を良くしたらしい先輩たちは、「お前名前何?」と清田くんに尋ねた。
「清田っす」
「キヨお前気に入ったわ」
「あざっす」
聞きなれた名前で呼ばれる清田くんの横顔を見上げつつ、わたしはごくりとカルピスを飲んだ。少しだけ味がした。
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