出番待ちの紙袋

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主人公

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友達
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踊り手

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 小さなローテーブルの周りに座り、「おつかれーい!」と酒盛りを始める兄とヒラくんとフジくんを台所から見つめる。
 わたしの部屋だって言ってるのに、この鳥頭の兄は3歩歩いたらすぐに忘れるらしい。

 わたしは、「あんまり汚さないでよ!」と言いながらだし巻き玉子を焼いているあたり、まあ今日はご機嫌だ。

それもこれも、




「友達ができた?」

「うん」



 わたしはフジくんの言葉に頷き返した。
 清田くんはあの後すぐに連絡先を教えてくれて、「いつでも何でも聞いて!」とまで言ってくれた。大学に入って初めての友達だ。ついつい綻ぶ顔を隠しきれなかった。



「そっか、よかったじゃん」

「それ、ちゃんとした子だろうな!?」

「うん、優しそうな感じだよ。ちょっと高校の時のキヨくんに似てるの」



 ネタのように過保護を爆発させるフジくんに告げると、3人とも静止する。ヒラくんの「え……男?」と言う言葉に頷きながら、だし巻き玉子を切ってお皿に乗せたものを運んだ。



「……お前それほんとに大丈夫か?慎重にいけよ〜」

「大丈夫だって。すごく親切なんだよ」

「……男の親切には下心がつきものなのよ」

「……そうですなあ」



 深刻そうに言うフジくんと大きく頷くヒラくん。わたしは、初めてできた友達をよく知りもしないのにそんな風に言われて少しムッとする。
 「連絡先も、わたしから聞いたんだよ」と告げると、「あ、そうなの?」と3人とも顔が幾分柔らかくなった。



「あ、これ、俺からの入学祝い」

「え、ありがとう」



 フジくんが私の目の前にプリンをひとつ置いた。「しょぼ」と言うと、「これもつけちゃう」とその上にいちご大福を重ねる。



「いちご!」

「あれ、そっちのが好きだった?」

「うん、いちご大好き。よく知ってたねえフジくん」

「いや、それキヨから」

「……」



 フジくんはバツが悪そうに苦笑いを浮かべた。

 思わぬタイミングでキヨくんの名前が出てきて、思わず黙り込む。キヨくんなら知っているかもしれない。前に、ショートケーキのいちごだけくれた事もあったな。



「……ありがとう」

「いや本人に言ってよ」



 確かに。それはそうだ。

 わたしは、LINEを開くと、清田くんのひとつ上に並んだキヨくんをタップする。「いちご大福ありがとう」といちごの絵文字を添えて送った。

 フジくんはよしよしと頷くと、わたしのだし巻き玉子に箸を伸ばした。



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