彼の一言だけで
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金髪のキヨくんもどきくんと無理矢理2人きりにされたわたしは、小一時間程札幌の街を二人で歩いた。あの誘ってくれた子も、元からそのつもりで誘っていたのだろうし、打ち合わせ済みってところだろう。
嫌な感じ。
正直、キヨくんもどきくんは一生懸命話題を探して私に振ってくれたり、気遣いもかなりしてくれているのが伝わってきたけれど、その殆どから下心しか感じなかった。そんな自分も気持ち悪くて嫌だった。
いつの間にか身につけた愛想笑いを顔に張りつけたまま、歩き回った記憶はほぼない。
「ほんとに家まで送らなくていい?」
「うん、いい」
早く1人にしてくれ。
わたしは彼に手を振って別れると、大きなため息をついて愛想笑いを剥がす。
改札をぬけて電車に乗り、携帯を見るけれど、今日誘ってくれた子からの連絡は一切なく、LINEの通知がキヨくんから1件だけあった。
「!」
キヨくんから連絡が来たと言うだけで、単純に嬉しくて心臓が跳ねるあたり、自分でもゲンキンだなぁと思うけれど仕方ない。
急いでLINEを開くと、「おめでと」とだけ来ていた。
多分、動画のことだと思う。
キヨくんがわたしのことを気にかけてみていてくれて、メッセージを入れてくれて。そのことだけでさっきまで疲れていた気持ちが全部吹き飛んだ。
最寄りの駅で降りて改札をぬけ、家までかけ出す。
今日は4人で動画をとるって言ってたから、多分キヨくんもうちに居るはずだ。早く会いたい。
中学の時まで運動部だったのに、文化部、帰宅部と変遷をたどったわたしの体力は落ちに落ちていて、家に着く頃には息が上がっていた。
「ただいま!」
「おかえりー」
ローファーを脱ぎながらリビングに向かって叫ぶと、お母さんの呑気な声が返ってくる。玄関には男物の靴が沢山。
わたしは、カバンを置くことも手を洗うことも忘れて、お兄ちゃんの部屋にそのままいきおいよく駆け込んだ。
.
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「ちかちゃん」
「ん?」
キヨくんにお礼を言って自分の部屋に入り、荷物を下ろしていると、キヨくんがおずおずと私の部屋の外から呼びかけた。
扉を開けると、ころんとイチゴがひとつ転がったお皿を持っている。
「これ、いる?」
「……食べかけ?」
「……だってLINE返さないから」
キヨくんが言い訳する子供のように言うから、わたしは笑ってしまう。「いちご好きしょ?」と言う彼に頷くと、「ありがと」とそれを受け取った。
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金髪のキヨくんもどきくんと無理矢理2人きりにされたわたしは、小一時間程札幌の街を二人で歩いた。あの誘ってくれた子も、元からそのつもりで誘っていたのだろうし、打ち合わせ済みってところだろう。
嫌な感じ。
正直、キヨくんもどきくんは一生懸命話題を探して私に振ってくれたり、気遣いもかなりしてくれているのが伝わってきたけれど、その殆どから下心しか感じなかった。そんな自分も気持ち悪くて嫌だった。
いつの間にか身につけた愛想笑いを顔に張りつけたまま、歩き回った記憶はほぼない。
「ほんとに家まで送らなくていい?」
「うん、いい」
早く1人にしてくれ。
わたしは彼に手を振って別れると、大きなため息をついて愛想笑いを剥がす。
改札をぬけて電車に乗り、携帯を見るけれど、今日誘ってくれた子からの連絡は一切なく、LINEの通知がキヨくんから1件だけあった。
「!」
キヨくんから連絡が来たと言うだけで、単純に嬉しくて心臓が跳ねるあたり、自分でもゲンキンだなぁと思うけれど仕方ない。
急いでLINEを開くと、「おめでと」とだけ来ていた。
多分、動画のことだと思う。
キヨくんがわたしのことを気にかけてみていてくれて、メッセージを入れてくれて。そのことだけでさっきまで疲れていた気持ちが全部吹き飛んだ。
最寄りの駅で降りて改札をぬけ、家までかけ出す。
今日は4人で動画をとるって言ってたから、多分キヨくんもうちに居るはずだ。早く会いたい。
中学の時まで運動部だったのに、文化部、帰宅部と変遷をたどったわたしの体力は落ちに落ちていて、家に着く頃には息が上がっていた。
「ただいま!」
「おかえりー」
ローファーを脱ぎながらリビングに向かって叫ぶと、お母さんの呑気な声が返ってくる。玄関には男物の靴が沢山。
わたしは、カバンを置くことも手を洗うことも忘れて、お兄ちゃんの部屋にそのままいきおいよく駆け込んだ。
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「ちかちゃん」
「ん?」
キヨくんにお礼を言って自分の部屋に入り、荷物を下ろしていると、キヨくんがおずおずと私の部屋の外から呼びかけた。
扉を開けると、ころんとイチゴがひとつ転がったお皿を持っている。
「これ、いる?」
「……食べかけ?」
「……だってLINE返さないから」
キヨくんが言い訳する子供のように言うから、わたしは笑ってしまう。「いちご好きしょ?」と言う彼に頷くと、「ありがと」とそれを受け取った。
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