彼の一言だけで
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kiyo
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ランキングにちかちゃんの動画が載っている。伸び悩む彼女の方向性に一石を投じたのは、どうもレトさんらしかった。
「……すげぇじゃん」
スマホの画面を眺めながら大学の図書館で小さくつぶやく。言葉に偽りはない。すげぇ、よかったと心底思う。
けれど、俺の知らない俺の関わらない場所でちかちゃんが大きくなっているのがなんだかモヤつくのは、図書館でぼっちだからってことにしておこうか。
『置いていかないで』
あの東京でのイベントの日、ちかちゃんは泣きそうになりながら俺にそう言った。
当たり前にゲームを一緒にしていた存在が自分の知らないところで大きくなっているというのは、確かに不安になるところはあるのかもしれない。今更ながらあの時のちかちゃんの真意がわかったような気がした。
しかし、俺はそんなことを表に出すほど子供でもない。ちかちゃんにLINEで『おめでと』とメッセージを飛ばした。
そして俺はお祝いなんて買ってあげちゃう程大人だ。図書館を出て、札幌のケーキ屋さんでちかちゃんの好きないちごのショートケーキを買うと、まだ返信の無いスマホを一瞬見た。
「よっ」
「……」
「ケーキなんて買っちゃって何~」
会いたくない人に会った。
ケーキ屋を出てすぐ、待ち伏せしていたように立つフジ。無視して進んでいこうとする俺に「なにこれ、女?女にあげんの?」とテンションがウザすぎる。
俺は肩を組んでくるフジをあしらいながら「女じゃねえよちかちゃん」と答えた。
「ちかちゃんは女じゃん」
「……お前その気味悪いこと次言ったらクビ」
「クビ!?気味悪いってなんだよ間違ってねえじゃん!」
女の子ではあるけど、あの子はお前の言ってる「女」とは違うだろと言いたかったけど、そこまで必死に言い返すのもおかしな話なので黙って歩き始める。
「お祝いだよ。動画伸びてたから」
「あらキヨくんマメ~」
「悩んでたし、苦手なホラー頑張って伸びたんだから、祝ってもいいだろ」
「これが大人の対応」とそこそこ高いそのケーキ屋の紙袋を掲げるとフジはふーんとそれを見つめた。
世間話をしながら歩いていると、フジが「あ」と言って立ち止まった。
「なに」
「いや、あれ」
彼の指さす方を見ると、見慣れたちかちゃんとひょろっと背の高い金髪の高校生らしき男が二人で歩いている。
何やらぺらぺら喋っている男にちかちゃんは俺達には見せたことの無い表情で時々頷いていた。
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ランキングにちかちゃんの動画が載っている。伸び悩む彼女の方向性に一石を投じたのは、どうもレトさんらしかった。
「……すげぇじゃん」
スマホの画面を眺めながら大学の図書館で小さくつぶやく。言葉に偽りはない。すげぇ、よかったと心底思う。
けれど、俺の知らない俺の関わらない場所でちかちゃんが大きくなっているのがなんだかモヤつくのは、図書館でぼっちだからってことにしておこうか。
『置いていかないで』
あの東京でのイベントの日、ちかちゃんは泣きそうになりながら俺にそう言った。
当たり前にゲームを一緒にしていた存在が自分の知らないところで大きくなっているというのは、確かに不安になるところはあるのかもしれない。今更ながらあの時のちかちゃんの真意がわかったような気がした。
しかし、俺はそんなことを表に出すほど子供でもない。ちかちゃんにLINEで『おめでと』とメッセージを飛ばした。
そして俺はお祝いなんて買ってあげちゃう程大人だ。図書館を出て、札幌のケーキ屋さんでちかちゃんの好きないちごのショートケーキを買うと、まだ返信の無いスマホを一瞬見た。
「よっ」
「……」
「ケーキなんて買っちゃって何~」
会いたくない人に会った。
ケーキ屋を出てすぐ、待ち伏せしていたように立つフジ。無視して進んでいこうとする俺に「なにこれ、女?女にあげんの?」とテンションがウザすぎる。
俺は肩を組んでくるフジをあしらいながら「女じゃねえよちかちゃん」と答えた。
「ちかちゃんは女じゃん」
「……お前その気味悪いこと次言ったらクビ」
「クビ!?気味悪いってなんだよ間違ってねえじゃん!」
女の子ではあるけど、あの子はお前の言ってる「女」とは違うだろと言いたかったけど、そこまで必死に言い返すのもおかしな話なので黙って歩き始める。
「お祝いだよ。動画伸びてたから」
「あらキヨくんマメ~」
「悩んでたし、苦手なホラー頑張って伸びたんだから、祝ってもいいだろ」
「これが大人の対応」とそこそこ高いそのケーキ屋の紙袋を掲げるとフジはふーんとそれを見つめた。
世間話をしながら歩いていると、フジが「あ」と言って立ち止まった。
「なに」
「いや、あれ」
彼の指さす方を見ると、見慣れたちかちゃんとひょろっと背の高い金髪の高校生らしき男が二人で歩いている。
何やらぺらぺら喋っている男にちかちゃんは俺達には見せたことの無い表情で時々頷いていた。
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