彼の一言だけで
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北海道に戻ってすぐ、わたしはニコニコ動画の動画投稿用のアカウントを作り、コミュニティを立ち上げた。活動名はそのままちか、コミュニティの名前はお兄ちゃんが絶対「最終兵器妹」にしろと言ったのでそれになった。
初めて投稿した動画は、大乱闘スマッシュブラザーズ。何度となくやってきたあのゲームなら、初めてのひとりでの実況でもできるんじゃないのかと思って挑んだのも大間違いだった。
画面に向かって1人で喋れない。
プレイはそこそこいいのだが、辿辿しいわざとらしいトークが繰り広げられるその10分程度の動画に初めて付けられたコメントは「糞ガキ市ね」。
高校生の時のキヨくんと同じである。
「ドンマイドンマイ一緒じゃん俺と」
「……今ならあの時のキヨくんの気持ちが分かる」
「だろうなあ」
「……1人でゲームして1人で喋り続けるって頭おかしいじゃん」
「……ちかちゃんそれ俺傷つくからやめて」
お兄ちゃんと実況をとろうとうちにきていたキヨくんに愚痴を聞いてもらう。お兄ちゃんの部屋で二人で話しながらスマブラをしている。
私が本気で実況を始めてから、キヨくんは変にわたしを遠ざけるのをやめ、わたしも変に遠ざかるのを辞めた。こうして普通に話せているのが凄く嬉しい。
「キヨくんなんて動画とってる時、別人格じゃん。できないよあんなの」
「……褒めてんの?」
「褒めてるよ」
「ならありがとう。まあ俺もちかちゃんの動画見たけどさ」
キヨくんはゲームセットの文字が並んだ画面を見てWiiリモコンから手を離すと、私の顔を見て苦々しい顔をする。
「くそつまんねえ」
「……ひどい」
「……いやまじで」
「…………ひどい」
「あれなら無音で神プレイ見せてくれた方がいいまである」
「……キヨくん」
「もういい、わかってる」と手のひらを彼の顔の前に突き出して静止をかける。
トークスキルもリアクション芸もない私の動画の見所はただゲームのスキルらしく、コメントにも「無音で見てる」というのがいくつかあって落ち込んだ。それって実況じゃないじゃないか。ただのプレイ動画だ。
それを改めて指摘されて、割と本気で泣きそうだった。
「……どうすれば面白くなんのかなぁ」
「……うん」
どうすっかねぇとお兄ちゃんのぬいぐるみをひねり潰しそうなくらい体重をかけながらキヨくんは後ろに伸びた。キヨくんは感覚的な部分が大きいのだろう。わたしへのアドバイスは難しいらしい。
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北海道に戻ってすぐ、わたしはニコニコ動画の動画投稿用のアカウントを作り、コミュニティを立ち上げた。活動名はそのままちか、コミュニティの名前はお兄ちゃんが絶対「最終兵器妹」にしろと言ったのでそれになった。
初めて投稿した動画は、大乱闘スマッシュブラザーズ。何度となくやってきたあのゲームなら、初めてのひとりでの実況でもできるんじゃないのかと思って挑んだのも大間違いだった。
画面に向かって1人で喋れない。
プレイはそこそこいいのだが、辿辿しいわざとらしいトークが繰り広げられるその10分程度の動画に初めて付けられたコメントは「糞ガキ市ね」。
高校生の時のキヨくんと同じである。
「ドンマイドンマイ一緒じゃん俺と」
「……今ならあの時のキヨくんの気持ちが分かる」
「だろうなあ」
「……1人でゲームして1人で喋り続けるって頭おかしいじゃん」
「……ちかちゃんそれ俺傷つくからやめて」
お兄ちゃんと実況をとろうとうちにきていたキヨくんに愚痴を聞いてもらう。お兄ちゃんの部屋で二人で話しながらスマブラをしている。
私が本気で実況を始めてから、キヨくんは変にわたしを遠ざけるのをやめ、わたしも変に遠ざかるのを辞めた。こうして普通に話せているのが凄く嬉しい。
「キヨくんなんて動画とってる時、別人格じゃん。できないよあんなの」
「……褒めてんの?」
「褒めてるよ」
「ならありがとう。まあ俺もちかちゃんの動画見たけどさ」
キヨくんはゲームセットの文字が並んだ画面を見てWiiリモコンから手を離すと、私の顔を見て苦々しい顔をする。
「くそつまんねえ」
「……ひどい」
「……いやまじで」
「…………ひどい」
「あれなら無音で神プレイ見せてくれた方がいいまである」
「……キヨくん」
「もういい、わかってる」と手のひらを彼の顔の前に突き出して静止をかける。
トークスキルもリアクション芸もない私の動画の見所はただゲームのスキルらしく、コメントにも「無音で見てる」というのがいくつかあって落ち込んだ。それって実況じゃないじゃないか。ただのプレイ動画だ。
それを改めて指摘されて、割と本気で泣きそうだった。
「……どうすれば面白くなんのかなぁ」
「……うん」
どうすっかねぇとお兄ちゃんのぬいぐるみをひねり潰しそうなくらい体重をかけながらキヨくんは後ろに伸びた。キヨくんは感覚的な部分が大きいのだろう。わたしへのアドバイスは難しいらしい。
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