バタバタと雨が傘を叩く音だけが耳に届く。周りには誰もいない。この広場にはもう誰も来ない。私はただひとり傘を差して立っていた。
 一週間ほど前から降り始めたこの雨は、止むことを知らない。このままこの世界は雨に包まれて、全てが溺れてゆくのだろうとすら思わされる。それが神の思し召しだというのなら従おう。きっと増えすぎた人間を可哀想だと思って減らしてくれているのだ。この世界を良い方へと導いてくれるのだ。
 右の手のひらから力が抜けていく。もう、私の終わりは近いらしい、立っているのがやっとだ。パシャッと悲しい音をたてて、傘は私の手から落ちた。死んだのだ。彼は役目を終えて、最期を迎えた。私もそうなる。私ももう役目を終える。
 さようなら、ありがとう。
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