🖤 ̖́- 京の𝐥𝐨𝐧𝐠 𝐬𝐭𝐨𝐫𝐲

第1章03
---



アイプリスクールのオーディションを受けたのは、中等部3年の冬。


審査は歌唱。
まるで空気を塗り替えるような、芯のあるトーンだった。

過度な感情表現はない。

ただ、まっすぐに、曲の輪郭をなぞるように、丁寧に歌う。

言葉がひとつひとつ、聴く者の胸に滑り込んでいく。


「ステージにいるとき、彼は別人になる」


そう評された京は、文句なしで合格。


彼の声には、棘もある。熱もある。

けれど、それ以上に“誰かの心を揺らす温度”があった。


ステージでは妖艶に笑う彼が、客席にだけ向ける眼差し。
その奥には、幼い頃から積み重ねた選択と覚悟が刻まれていた。


まだ誰にも見せていない自分が、まだ歌っていない想いが、京の中には確かにあった。


そしてそれが、彼を次のステージへと導いていく——。




第1章【完】
3/3ページ
スキ