こっち向いて
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空がオレンジから紫に変わる時間。
二人で帰路を歩く。
真新しい紙袋を一つずつ片手に提げて。
「今日はほんまにおおきに。めちゃくちゃ楽しかったわ。」
「ワイも楽しかった。また行こな。」
「うん。」
まだ帰りたないなあ。
そう思いながらあの日の公園の前を歩く。
「ここ、懐かしいなあ。」
「ほんまやね。」
「寄り道してくか?」
「せやね。」
あの日座ったベンチにあの日のように座った。
視界は全然違うけど、気持ちは何も変わっていない。
いつも見ている場所なのに何故か酷く懐かしい。
そんな感覚に無言で浸っていると武士さんが口を開いた。
「なあ、なのか。」
「何?」
「ワイと結婚、せえへん?」
紙袋から小さい箱を取り出し、こちらに向けて箱を開けた。
まるでプロポーズだ。
「今はペアリングやけど、いつか本物プレゼントさせてや。」
ニカッと笑った武士さんの顔も華奢で可愛い指輪も滲んで見えない。
ああ、勿体ないなあ。
そう思うのに涙が溢れて止まらない。
言いたいことは沢山あるのに声にならない。
精一杯首を縦に振っていると武士さんが急に「アイタッ!?」と間抜けな声を出して前に倒れた。