こっち向いて
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翌朝、少し早く家を出た。
この時間なら確か武士さんはロードワークのはずや。
もう少しほとぼりが冷めるまで会いたくない。
「…おう、おはようさん。」
神さま意地悪過ぎやろ。
絶対面白がってるやろ。
内心あまりにも出来過ぎた偶然にキレながら早く立ち去りたくて小さく会釈した。
「…おはよう。ほなな。」
「ちょお待ち。」
ガシッと分厚い手に腕を掴まれた。
敵前逃亡ならず。
「…何?」
「昨日なんや気に触ったんなら悪かった。やけど、男に簡単にあんなこと言うたらアカンやろ?ワイやから本気にせんけどな。普通の男ならその気になってまうやろ?」
本気にしてや。
その言葉は声にならなかった。
今、この気持ちを伝えたところで届かない。
「…わかった。ごめんなさい。」
「分かってくれたらええんや。ほな、気いつけて学校行きや。」
「…はあい。」
掴まれていた腕を解放されて、早くここから立ち去りたいような、もっと一緒にいたいような気持ちが複雑に絡み合う。
立ち去ろうとする大きい大好きな背中。
思わず腕が伸びて裾を掴んでいた。
「なんや、ワイが恋しいんか?」
「…そやけど、練習の邪魔はしたないさかい、また構ってや。」
「やっぱなのかは可愛えなあ。」
この前手を払いのけたからか今日はポンと控えめに頭を撫でられた。
ああ、やっぱり、今はこの距離でも一緒にいたい。
一番近くにいたい。
「ほな、練習頑張ってな?」
「おう、任しい。次の試合も勝つで!」
「楽しみにしてんで。」
太陽みたいな笑顔で走り去っていく姿を見えなくなるまで見送った。