こっち向いて
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「だあーっ!!やめや、やめや!!」
試合が近いというのに全く練習に身が入らない。
夏祭りのあの日、なのかの泣きそうな顔に胸が苦しくなった。
相手の男に苛立ちを覚えた。
女を抱いたことがない訳でもないのに、抱き締めた時の感触が忘れられない。
心を支配する黒い靄に苛立ちを覚え、千堂は練習を中断し、外へ出た。
すぐ追いかけて来た柳岡に声を掛けられた。
「何イライラしとんや。」
「なんかモヤモヤすんねん。」
「なんかあったんか?」
あったと言えばあった。
なかったと言えばなかった。
それくらいのことだ。
可愛がっていた妹分に男がいたことなんて。
「ワイは今、手塩にかけて育てた娘が男連れてきた時の気分やねん。」
「なんやなのかちゃんのことか。」
「そや。早よ彼氏連れて来いとか冗談言うとったけど実際おったらショックいうか…なんかすごいモヤモヤすんねん!」
「…そこでなんで親父の気持ちになるんや?普通、好きな子やと思わんか?」
「…ワイが?なのかを?好き?」
「普通はそやろ?」
胸の内の何がストンと落ちるような音がしたが、頭は大パニックだ。
なのかやぞ?
アイツは確かに大事やし好きやけど。
妹みたいなもんで恋愛対象とかとちゃう。
…のはずやろ?
「…ちょお走ってくるわ!」
「あ、おい、千堂!」
何かを振り切るように走る背中を見送りながらやれやれとため息を吐いて柳岡は独りごちた。
「…いや、鈍過ぎやろ。」