こっち向いて
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迫力のある虎の顔から一変。
ふう、と溜め息の音と共にいつもの武士さんの顔になった。
「…なんや、ぼーっとして、どっか痛いんか?」
ハッと我に返ると、武士さんに抱きついているような今の体制に気付き、慌てて離れた。
「あっ、いや、大丈夫!全然何ともあらへんよ!それよりなんでここに武士さんがおるん?めっちゃびっくりしたわ〜!」
大袈裟なくらい元気アピールをしたのち、恥ずかしくて慌てて話を変えた。
「ああ、お前なんや泣きそうな顔しとったから気になって来てしもたわ。」
ああ、ほんまこういうとこ狡いよなあ。
決壊しそうになった涙をぐっと堪え、精一杯笑う。
「…おおきに。助かったわ。」
「気にすなや。当たり前や。」
ニカッと眩しい笑顔。
やっぱりうちはこの人が好きや。
幸せの余韻もつかの間。
ハッと武士さんが目を見開いた。
「アカン!神輿の時間や!オヤジにどやされる!」
「うちは後で追い掛けるさかい、早よ行きや。」
先程のこともあってか、ここに一人残して行くのが気掛かりだったらしい。
少し申し訳なさそうにこちらを拝んでから走り出した。
「堪忍な。あとで何でも買うたる!ほないつものとこで!」
背中が見えなくなるまで手を振る。
先程までの鬱々とした気分が嘘のように軽くなり、賑わう商店街へと再び足を進めた。