こっち向いて
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いつもの夕方。
千堂商店の近くの公園で駄菓子を頬張る。
隣には大好きなお兄ちゃん。
うちのとっても大好きな時間。
意を決して大きく息を吸い込んだ。
今日こそは言うんや!と決めた言葉を伝えるために。
「うち、将来は武士にいちゃんのお嫁さんになりたい!」
精一杯相手を真っ直ぐ見て真剣に。
心臓がうるさい。
こちらの気も知らず相手は猫のような目を丸くしてキョトンとしている。
少しの間のあと、嬉しそうに笑いながら頭を豪快にわしゃわしゃ撫でられた。
「かわええこと言うなあ〜!ワイもなのかが嫁になってくれたら嬉しいわ!」
「ほ、ほんま!?」
天にも昇るような思いだった。
その時は。
10年経った今でも夢に見るくらいには。
だが、今ではわかる。
あの時、18歳だった千堂さんが10も下の自分のことなど眼中になかったこと。
だからこそ貰えた言葉だと気付いてしまってからは夢を見る度に切なくなる。
ーーーー
ーーー
ー
「いってきまーす」
朝、セーラー服を着て家を出て少し歩くとあの日の公園がある。
まだ人気のない公園をぼんやり見つめていると後ろから肩を叩かれた。
「ひゃっ、」
「おう、なのか!びっくりしたやろ」
こちらの気も知らず未だに頭をわしゃわしゃと撫で回してくる相手に苛立ちを覚え、手を払いのけた。
「もう、やめてや。せっかく整えたのに台無しやんか。」
「ガキが髪型なんか気にすなや。」
「もう18や。ガキじゃないやろ。」
「ワイからしたらまだまだガキや。」
そりゃ年の差は10のままやけど。
年頃のレディに向かってそりゃないやろ。
毎度毎度そう心の中で思いながら、ぐっと押し殺し、笑顔を作る。
「そんなにガキガキ言うなら今度一緒に風呂でも入ってみよか?」
「なっ…!?」
ガキ扱いされ続けて10年。
いい加減可愛い妹分でいるのも限界や。
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