第3回

船形那古と会ったのは、校舎(には見えなかったが)内にある学食の一店舗だった。
見た目は普通、というか少し高級そうなレストランで制服姿の高校生が入るには敷居が高過ぎるように見えた。

佐倉『ウチも学食の質は高いと思うけど、あそこはそれ以上だよね。あー、転校しよっかなー・・・クロちゃんもどう?』
黒羽『いや・・・』

仮に社員食堂だとしてもかなりのレベルだったと思う。
後で聞いたのだが、学食も建物内に幾つかあって先程まで私達がいた店は外から来客が来た時や取引先との接待にも使われるらしい。
そもそも、来客も接待も高校生には関係の薄いワードだと思ったが黙っておいた。

佐倉『それは冗談だけど・・・まさかクロちゃんが社長?じゃなくて校長先生と知り合いとは思わなかったよ』
黒羽『・・・一度会った事があるんだけど、向こうが覚えているか自信無くて。まあ、こっちは忘れようが無いんだけどね』

あらかじめ考えておいた言い訳を、頭の中の台本を読むように話す。
少し早口になってしまった。

佐倉『それだけで覚えているのは、さすが上に立つ人ってとこだね』
黒羽『だな』

食事会が始まってしばらく経った時だった。
私の向かいに座っていた船形那古がいきなり立ち上がり頭を下げる。
自分もそれに倣い、何となく事情を察したであろう佐倉も同じように立ち上がり頭を下げた。

佐倉『ご馳走してくれたし』
黒羽『ああ』

スーツ越しでも分かる、ボディービルダーの如く鍛え上げられた体躯。
全てを圧倒するような鋭い眼光。
そして頭に刺さったネジのような謎の物体。
一度見たら絶対に忘れないであろう強烈な風貌のその人物はまず船形那古、そして次に佐倉に話しかけた。
その際、船形が友人だと紹介していたので初対面で間違いないだろう。
佐倉が握手している(少し痛そうだった)様子を見ながら、私はどう口を開こうか思案していた。
“今回は”初対面だった。
ならば、そう接するのが正解だろう。

佐倉『クロちゃんって、実は結構顔広いよね』
黒羽『どうかな・・・』

社長、もとい校長は私を見るなりニヤリと笑った。



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