コラボ作品

『あ、ありがとうございました・・・』

明らかに声が震えている。
店員さんのこういった反応にもようやく慣れてきた。
俯きがちになりながら、店を後にする。

??『寒くなってきたな・・・』

そうですね、と相槌を打つ。
次に向かうのは片仮名7文字の、全国どこにでもあるドラッグストアだ。
ここから歩いていける範囲でも2店ある。

??『100円ショップがまだだったな・・・駅前の方にするか』

ふと、自問自答してみる。
学校にも行かず、毎日何をやっているのだろう。
隣を歩いているのは完璧超人な彼女でも、可愛いけど料理下手な幼なじみでも、ミステリアスなオカルト美少女でも、凛々しいけどガサツな美人さんでもなく・・・男。
しかも、派手な髪型にV系バンドのような化粧でとにかく目立つ。
一緒にいるオレまでもが奇異の目で見られているが、気にしている様子は一切無い。

??『着いたぞ』
『いらっしゃいま・・・せ』

片仮名7文字のドラッグストアに入っていく。
店員さんの声が、途中から明らかに凍り付いていた。



オレ達の姿は店内でも注目の的となっていた。
カウンターにいる白衣を着た店員が迷惑そうな顔で見てくる。

??『後は・・・』

そして、原因となっているであろうこの男・・・今でこそ秘密結社BMSに協力しているが、元はカルト教団に所属している身だ。
数年前から度々発生している不可解な事件。
これがどうもそのカルト教団の仕業らしい。
影響は様々な方面に及んでおり、マスコミが途中から一切取り上げなくなる事が逆に事の重要さを証明しているように感じた。

??『パワリンは・・・ゴールドがあるな、これは珍しい』

そして自称神官のクキカワとかいうこの男。
神に仕える聖職者どころか、下手をしたら・・・犯罪者。
今、この瞬間も知り合いに会わない事をひたすら祈り続けていた。



クキカワ『おのれ・・・あの女』

マツモ●キヨシの黄色いビニール袋を両手に下げ、悪態をついている。
今回ばかしは分からなくもなかった。

クキカワ『ここにあったか』

オレがメモを読み上げ、神官クキカワがカゴに放り込んでいく。
目薬、歯みがき粉、詰め替え用シャンプー。
途中でクキカワのカゴが一杯になったので、オレもカゴを持つ。
サプリメントにバファ●ンプレミアム、ハンドクリーム、のどスプレー。
そして・・・

クキカワ『・・・おい』

ふと、クキカワの手が止まる。
何気なくその先を見て、凍り付いた。

クキカワ『・・・間違いないのか?』

返事をする代わりにメモを見せる。
わざわざ《お徳用●枚入り》と容量の指定までしてあった。

クキカワ『・・・』

スーパーで買えば、わざわざ紙袋に入れてくれるような品物を買う男二人組。
しかも片方は派手な化粧の不審者。



最悪だ。



クキカワ『おのれ・・・』

組織の実質的なトップである《ライバル》さん。
人気、実力を兼ね備えた女子野球界のスター選手である。
しかし・・・

クキカワ『何が《お徳用》だ、何が・・・』

マツモ●キヨシの袋に入った《それ》を見て、二人同時に溜め息をつく。
これだけかと思ったら、まだ裏面に続くというオチまで付いていた。

クキカワ『キミの彼女をはじめ、他の連中は最低限のデリカシーは持っている・・・だが』

トイレ(男女共用)に入ったら、明らかに使用済みの物がそのまま・・・といった事が何度かあった。
その度に彼女が顔を真っ赤にして《ライバル》さんに抗議していたので疑いようはない。
ただ、その彼女にしても《ライバル》さんにしても、クキカワに普通に接している。
彼が教団内でどれだけの立場にいるのかは分からないが、何となく違和感があった。



頼まれていた買い物が全て終了した。

クキカワ『やれやれ・・・』

公園のベンチに腰掛け、一息付く。
スーパーにドラッグストア、さらには100円ショップで購入した品々が加わり相当な量になっていた。
彼女や幼なじみといったBMSのメンバーを交えて出歩く事はあっても、彼と二人だけで行動する事は初めてだ。
この自称神官クキカワという怪しさ満点の不審人物がBMSに加わってから、そろそろ3か月が経とうとしていた。

ばき(B)メモ(M)ソルジャーズ(S)略してBMS。
彼女、幼なじみ、オカルト電波少女(オカルト女)、女子野球のスター選手(ライバル)。
そして彼女達BMSにとって、教団とは敵に他ならないはずだ。
そもそもオレがBMSに加わったのも、夢の国でこの神官クキカワに遭遇したのがきっかけだったと記憶している。

クキカワ『全く人使いの荒い・・・』

なのにこのクキカワという男、彼女達BMSのメンバーに妙に信頼されている。
そもそも今日の買い出しも、急に仕事(内容はあえて聞かなかった)が入った為に二人で行くよう《ライバル》さんに言われた。
その時にも《幼なじみ》は少し戸惑っていたが、他のメンバーは特に気にしている様子は無かった。
彼女にしても

『レシートはちゃんと持ち帰る事、良いわね?』

とか言っていたが、それは今回に限った事ではない。
むしろ、誰かが買い出しに行く前の挨拶代わりと言った方が良いだろう。



幼なじみも一通りの訓練は受けてるらしいが、彼女や《ライバル》さんに比べると明らかに劣る。
といっても元々運動神経が良かった事もあり、オレを含めたその辺の男ならまず負ける事は無いだろう。
何度か組み手をしたが、全く敵わなかった。
クキカワに対して当初は警戒していたものの、今では親しげに話しかけている。

最後にオカルト電波少女。
あまり運動が得意ではない彼女だが、クキカワ同様に怪しい魔術を使う事ができる。
もちろん、幼なじみ同様に一通りの訓練はこなしているので素人相手なら互角以上に戦えるだろう。

クキカワ『メール入れとくか』

そもそもこの不審者、(携帯電話に)加入できたのだろうか。
そしてこのクキカワ絡みで一番怪しいのが、オカルト電波少女だ。
外部(BMS)の人間以外には口数の少ない彼女だが、クキカワに対しては皮肉を言う事すらある。
怪しい魔術を使う者同士で通ずる物があるのかもしれないが、互いの食べ物の好みまで知っているのには驚いた。



彼女や《ライバル》さんもそうだが、オカルト電波少女とクキカワは一体どういった関係なのであろうか?
化粧のせいで年齢が分かりづらいが、さすがに親子ほどの年齢差は無いと思う。
兄と妹、いやもしかしたら・・・

クキカワ『・・・ん?』

白いボールがクキカワの手に収まった。
少し離れた場所から子供の声が聞こえる。

『すみませーーーん!』

声のした方に向かって、ボールを投げ返す。
少し手前でバウンドしたボールは、子供の構えたグラブに収まった。

『ありがとうございましたー!』

頭を下げ、子供達が離れていく。
何か言おうと思ったが、クキカワの方が先に口を開いた。

クキカワ『缶コーヒー買ってくる。後は・・・新●金チキン、食べるよな?』

返事をするよりも早く、ロー●ンの方へ歩いていった。
少しばかし小腹が空いていたので、有り難く恩恵に預かろう。
改めて、ベンチに座り直した。
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