ばきメモソルジャー

クキカワ『おのれ・・・カニバサミヒステリー女め』

修羅場トークから逃げ出した所で、再びクキカワと遭遇した。
結局捕まってしまったのか、痛そうに腕を抑えている。

クキカワ『ったく、どいつもこいつも・・・いっそ格闘技の団体でもやった方が儲かるんじゃないか?』
妹『だったら私の相手は彼氏君一択で。やらかいマットでじっくりネットリ・・・』
クキカワ『後日ガサ入れ来るからな』
妹『それ以前に、もっと怖い人が乱入してきて何もかも滅茶苦茶にされそう・・・』
クキカワ『だな』

もっと怖い人・・・それはおそらく、こちらの女性と同じ顔をしているのだろう。

妹『今は髪短くしてるから見分けつくでしょ?』
クキカワ『それ以前にも、何となくはついたけどな』
妹『クキカワに言われても何か複雑~・・・ってそれは良いんだけど、まさかお姉ちゃん達の高校にあったなんてね』
クキカワ『・・・例のリストか。手に入ったのも偶然が重なっての事だったな』
妹『彼氏君のクラスメイトの《アイドル》ちゃん・・・今日来てるんだよね?』

ポーズをとったり、投球フォームの所々で停止している《アイドル》。
カメラマンが様々な角度から撮影していた。

クキカワ『灯台もと暗し、だな』
妹『もしも、リストが手に入らなかったら・・・』
クキカワ『想像すらしたくないな・・・』
妹『・・・』
クキカワ『・・・』

二人して、神妙な顔になる。

妹『で、行かないの?お姉ちゃん、待ってるみたいだけど』
クキカワ『ほう』
妹『あんまり待たせると、クキカワがとばっちり受けちゃうぞ~』
クキカワ『そうだ、キミは早く・・・って、私?』



彼女『遅い』

ユニホーム姿の彼女が不満そうに呟く。
いや、そもそも試合前なのにこんな所にいて大丈夫なのだろうか?

彼女『今日の私の予定は?』

昨日先発したので、今日はベンチ入りは無し。
試合後のサイン会のみ出席。

彼女『はい、よくできました』

ユニホームのシャツを脱ぎ、代わりにスタッフ用のTシャツを着用する。
サングラスをかけ、帽子を目深に被った。

彼女『少し歩きましょう』



彼女『色々と・・・迷惑をかけてしまったわね』

ここ数年の間にあった事を思い起こしてみる。
私立ばきばき高校、生徒会、女子リーグ、BMS、教団。
非常識が常識になり、非日常が日常になって・・・再び日常へと戻ってきた。

彼女『本当に感謝してるわ』

普通に暮らしていれば、まず遭遇しないような経験も幾つかあった。
中には、一歩間違えれば取り返しのつかない事態を招きかねない事もあっただろう。
だが、不思議と嫌な思いはなかった。
それはやはり・・・

彼女『・・・んっ!・・・ん・・・ぷはっ』

衝動的に、彼女の唇を塞いでしまう。
しばらくされるがままになった後、優しく引き離される。

彼女『・・・もう!投げられたいの?』

怒った顔もやはり綺麗だと思う。
向かってくる彼女に無抵抗で・・・

彼女『いや・・・下アスファルトだから』

襟首を掴まれた所で動きを止める。
この彼女にしては珍しく、常識的な言葉で呆れられた。

彼女『珍しく、って・・・一応外では常識人で通ってるけど?』

外ではともかく、BMSのメンバーでそう思っている人はいないだろう。

彼女『それは・・・そうする必要があったから』

サングラスと帽子を取り出した。
『そろそろ戻りましょう?』と言われ、一緒に歩き出す。



彼女『そして、もう必要無いの。BMS、教団も。










今は・・・ね』




ユリ『と、こんな感じでばきメモシリーズの物語は終了です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!』
なつき『・・・』
ユリ『終了は終了なんですけど、幾つかサイドストーリーみたいな物を考えてますので機会があれば御披露目したいと思います』
なつき『・・・ユリ』
ユリ『そしてそして!本編の方もこれから少しずつ・・・先生、どうしました?』
なつき『最後の意味深な台詞・・・あれは一体何だ?』
ユリ『ああ・・・ほら、アレですよ。伏線?』
なつき『伏線・・・ねえ』

ユリ『そうですね・・・では最後に1つだけ、miniSDカードを本当に持っていたのは誰でしょう?』
なつき『miniSD?・・・ああ、捕まった神官とやらが持っていたアレか。本人が財布に入れておいたんじゃないのか?』
ユリ『果たして本当にそうでしょうか?』
なつき『違うのか?』
ユリ『ではまた本編でお会いしましょう。お相手は私、三国由利と・・・』
なつき『って、コラ!勝手に終わらすな、話せー!!』
ユリ『あんっ!』
なつき『気持ち悪い声を出すな!』
ユリ『アタッ!』
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