ばきメモソルジャー

【黙って見ている】
幼なじみ『・・・』
アイドル『どうしたの?』
幼なじみ『えっと・・・ゴメン』

深々と頭を下げる。

アイドル『ゴメンって、何が?』
幼なじみ『いやその・・・役作りとか、色々。落ち目ってバカにしちゃった事とか』
アイドル『あー、良いって良いって別に』
ライバル『そのドラマ私も見てたけど、アイドルちゃんも結構評判良かったよ』
アイドル『え・・・そうですか?』

嬉しそうに目を輝かせている。

ライバル『例えば、この辺り』

スマホの画面には、ネットの掲示板の書き込みらしき物が表示されていた。
ドラマの感想を書き込むスレッドらしい。

《あの先輩も結構好みなんだが》
《ややキツメなのがタマラン》
《空手着とか制服からでもデカさが分かるな》
《ヒロインよりこっちの方がいいっす》

画面をスクロールさせていく。

《他に出てる作品とかある?》
《グラビアか何かで見たぞ》
《シ●るから画像うpしてくれ》
《↑普通にググれって》

さらにスクロールする。

《つ【URLの羅列】》
《ふぅ・・・》
《↑早すぎワロタ》
《確かにデカい》

ライバル『ね?』
オカルト女『えっと・・・』
幼なじみ『あはは・・・』
アイドル『なんか・・・複雑です。って、画像出さないで良いですから!』
ライバル『ほら、彼氏君も』
彼女『・・・』

見ようとした所で、目を塞がれた。

幼なじみ『あー、先輩が焼きもちやいてるー』
アイドル『別に見るだけなら・・・』
彼女『ダーメ』
オカルト女『フフ・・・』
ライバル『良いねー、こういうやり取り。平穏なのが一番だわホントに』
幼なじみ『それも、よくないフラグなんじゃ・・・』



結論から言うと、平穏は訪れなかった。

ライバル『はい、こちら《バッキュン★ガールズ》・・・』

バッキュン★ガールズ。
通称BQ。

ライバル『分かりました、対処します・・・では』
クキカワ『・・・?』

クキカワが口の動きだけで何かを言う。
ライバルさんが苦い顔で頷いた。

幼なじみ母『4番隊と5番隊?』
ライバル『その通りです』
彼女『張り合うのは仕方無いとしても、市街地でやるのは問題ですね』
女子マネ『はい、《バッキュン★ガールズ》・・・』

可愛らしい名前に反して、その固有名詞は今や恐怖の象徴となっていた。

女子マネ『承りました。では後程・・・』
幼なじみ『いやいや、市街地の時点でマズイですって』
マリナ『そうね、余計な所で目を付けられるのは得策ではないわ』



教団の解散と共に役割を終えたはずのBMS、正式名称ばきメモソルジャーズ。
そしてオレと彼女、幼なじみやオカルト電波少女にライバルさんといったBMSの構成員達は日常へと戻るはずだったが、世間がそれを許さなかった。

ライバル『これ、燃やしちゃって』
アイドル『分かりました』

教団に対抗する為に結成されたBMSだが、その暴走を止められなかったばかりかクキカワ以外にも教団の関係者と数多く内通している事が白日の元に曝されてしまう。
結果、オレ達は地下に潜伏する事を余儀なくされた。

妹『お姉ちゃん、どうすんの?』
彼女『一度、それぞれのトップと接触する必要がありそうね』

さらに悪い事に教団の女子空手部や女子柔道部(表向きは関連会社の実業団チームを名乗っていたが、解散を余儀なくされた)を始めとした行き場を失った女子アスリート達、挙げ句の果てには非行や犯罪を繰り返すような輩までもかき集める。
そうして出来上がったのは女チーマー、レディース、女暴走族といった言葉が相応しい無法者の集団だった。
治安維持というお題目を掲げてはいるものの、外部との闘争や内輪揉め等でむしろ治安を悪化させている事は言うまでもない。



オカルト女『場所はどうしますか?』
彼女『一度ダミーの店に集めて。改めて指示するわ』

いつ火の粉が飛んでくるか分からないので、オレ達(通称0番隊)も拠点を転々とする日々だ。

幼なじみ母『・・・ちょっと皆、いい?』
幼なじみ『どうしたの?』
彼女『アレ、ですか?』
幼なじみ母『そ、近いうちに』
ライバル『各自の作業は中断!総員撤収用意!!』

その言葉を合図に一斉に荷造りを始める。
今月に入って2回目だ。

幼なじみ『もうちょっとゆっくりしたかったけど・・・あ、それはそっちだよ』
アイドル『うん』
クキカワ『これ、新聞紙か何かで包んでおいてくれ』
オカルト女『分かりました』
妹『うわ~この荷物重い~、よろめいちゃ・・・グエッ』

もう少しでオレに接触するかという所で、首根っこを掴まれる。

彼女『遊んでる暇あったらガムテープ買ってきて・・・なーに残念そうな顔してるのよ?』
ライバル『それとプチプチと接着剤も・・・だって、ねぇ?』
女子マネ『私もお供します・・・うーん、見た目は同じだけど肉食系?』
アイドル『すみませんヒモも残り僅かですので・・・あー、中にはこうやって仕事貰ってる娘もいたなぁ』

うらやま・・・じゃなくて、けしからん。

マリナ『《私、低血圧なんです・・・》みたいな感じで?』
アイドル『まさにそれです。いや・・・私には無理でしたけど』
ライバル『そんな立派なモノ持ってるのに?』
幼なじみ『あ、もしかして落ち目なのって・・・』
アイドル『いやいや、仮にそれで仕事貰っても後が続かないから・・・多分』
オカルト女『あの・・・皆さん』

オカルト電波少女が遠慮がちに口を開く。
何かを見るように目で合図する。

彼女『口はいいので・・・手を動かして下さい・・・』
妹『あわわ・・・どうしよう』
女子マネ『オーラ出てます、オーラ!』
クキカワ『もうエサの時間か・・・飼育係』
幼なじみ『イエスサー』

幼なじみがわざとらしく敬礼し、オレを彼女の前に差し出す。
いや・・・冗談抜きに喰われそうなんだが。

彼女『仕事・・・しろーっ!!』
ライバル『ちょ・・・彼氏君振り回さないでー、危ないから』
女子マネ『す、凄い力・・・』
幼なじみ母『旦那と喧嘩した時を思い出すわぁ・・・』
幼なじみ『いや・・・アレ、一方的に痛め付けてただけでしょう?』

視界がメチャクチャに動き回り、何が何だか分からない。

アイドル『うわ・・・前に共演したプロレスラーの人より凄い』
幼なじみ『それって、深夜番組でジャイアントスイングかけられた時?』
アイドル『・・・見てたのかよ』
オカルト女『何とか家の家訓、ですね』
ライバル『懐かしいネタ知ってんじゃない』
マリナ『あの・・・主人公君とっくに落ちてるけど』
女子マネ『か、買い出し行ってきまーす!』
妹『お、置いていかないでー!!』



ユリ『はい、お疲れ様でしたー!』
なつき『うーん・・・こっちのエンドも何か釈然としないな』
ユリ『アングラな生活に逆戻り、ですからね』
なつき『それどころか現状より悪化してるだろ、バッキュン・・・何だっけ?』
ユリ『バッキュン★ガールズですね。BMSもシャレの通じない組織でしたが、一応統率は取れていたという設定です』
なつき『少数精鋭だったからな』

ユリ『と、いう訳で可愛いユリちゃんから皆様にヒント。時には身体を張って止める事も大切ですよ?』
なつき『つまり、選んでない方の選択肢を選べって事だろ?』
ユリ『いや、まあそうなんですけど・・・』
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