ばきメモソルジャー

【教団の事】
教団の事だ。
もっと正確に言えば・・・



幼なじみ『あー!もう訳わかんない!!』

それまで沈黙していた幼なじみが、突然大声を張り上げた。
地団駄を踏んでいる。

オカルト女『幼なじみさん?一体何を・・・』
幼なじみ『何もかも!教団といい、この組織といい完全に意味不明!!』
彼女『・・・』
幼なじみ『まず、クキカワって一体何者なんですか?さっきだって、普通に夜逃げの手伝いしてましたし』

確かに、《ライバル》さんと協力してパソコンを担いでいた。
その後も荷造りやゴミの分別を手伝ったりしていたが、逃げようとすればできたはずだ。

オカルト女『それは・・・そうする必要が無くなったからです。動画、覚えてますか?』

童●早●チ●カス等と罵詈雑言を浴びせられ、化粧していても分かる程に顔面蒼白になったクキカワの姿が思い起こされる。

幼なじみ『それは、そうだけど・・・』
彼女『私達の協力者よ。そういえば話してなかったわね』
幼なじみ『協力者・・・確かにそうですね。貴女は別でしょうけど』
オカルト女『・・・!』

幼なじみが疑念に満ちた目でオカルト電波少女を見据える。



幼なじみ『ほーら、見失っなっちゃったじゃん・・・』
オカルト女『すみません・・・。でも、ホーン●ットマンションが行列無しだったので』

この日・・・私、幼なじみとオカルトちゃんは千葉県にある某テーマパークに来ていた。
女2人で単に遊びに来たのではなく、主人公君とその彼女である先輩を尾行してみよう!
・・・というのが今日のテーマだったのだが、昼前に見失う結果となってしまった。

幼なじみ『オカルトちゃんは何回も乗った事あるんでしょ?』
オカルト女『いえ、小学生の時に家族で来た時以来で・・・』
幼なじみ『この人混みだと探すだけで日が暮れそうだし、今日は普通に遊ぼっか』
オカルト女『そうですね・・・』
幼なじみ『じゃあまずはスぺースマ●ンテン!の前に、トイレ行ってくるね~』
オカルト女『はい』



幼なじみ『混み過ぎぃ・・・』

トイレ1つ行くのも一苦労だ。
異国情緒溢れるこの雰囲気は好きだが、行列だけは勘弁してほしい。
オカルトちゃんの所へ戻ろうとした、その時だった。

『いいじゃん、一緒にビッ●サンダーマウンテン乗ろうよー』
『キミと乗れば、きっと楽しいと思うんだよね』
オカルト女『で、でも・・・』

軽薄が服を着て歩いているような、ナンパ男二人組がオカルトちゃんに声をかけていた。
その事自体にはそれ程の驚きは無い。
学校内では怪しい格好+電波発言で近付く人間は皆無に近いが、普通の格好をしていればそれなりに人目を引くビジュアルだ。
実際に夏に海水浴に行った時は、オカルトちゃんの水着姿を盗撮している輩を何人か見かけた。(流血沙汰になるので他のメンバーには言わなかったが)

オカルト女『えっと、その・・・』

とは言え、このままにしておく訳にもいかない。
仮にナンパが成功したとしても、今度はどちらが隣に座るかで仲間割れをおこすだけだろう。
一歩前に出ようとした、その時だった。



??『貴様ら、何をしている?』



聞き覚えのある声が聞こえ、慌てて建物の陰に隠れた。

『何だよ、おまえ』
??『貴様こそ何だ』

こっそり姿を伺う。
派手な髪形に化粧。
180cmを超える長身。

幼なじみ『・・・』

間違いない。
カルト教団の神官クキカワだった。

『ひょっとして、この女のツレか?』
クキカワ『そうだ。そしてこれからド●ームゲート舞浜において、72時間貯めた(自主規制)を注ぎ込む』
オカルト女『な・・・!』
幼なじみ『・・・うわ』

ストレート過ぎる下ネタに、思わず声が出てしまった。
むしろ、下ネタを通り越してほとんど犯罪に近い。
ナンパ男達も明らかに引いている。

『おい、なんかコイツヤバくねえか?』
『あ、ああ・・・』
クキカワ『いざいかん!シェ●トントーキョーへ!!』
『・・・さっきとホテル違うし』
『いいから行こうぜ。そっちの女も、よく見ると何か怖いし』
オカルト女『そ、そんな・・・酷い』
幼なじみ『・・・』



人気の無い所まで来て、ようやく2人は足を止めた。

クキカワ『やれやれ・・・全くもって、下品極まりない連中だ』
オカルト女『下品極まりないのは貴方です!何なんですか、72時間って!!』
幼なじみ『・・・』
クキカワ『いや、3時間だ・・・』

クキカワが時計を見て呟く。

オカルト女『しかも私まで変な人扱いされるし・・・』
クキカワ『何を今さら。土産も買ったし、今日はこれで失礼する・・・では』
オカルト女『ここで帰ったらパスポート代が勿体無い・・・って、まさかあの男!』
幼なじみ『・・・』

クキカワの姿がフッと消える。



オカルト女『・・・』
幼なじみ『何となくだけど、先輩やライバルさんとは違う関係だよね。かなりエグい下ネタにも普通に返してたし』

尾行されていた(未遂に終わったが)事は置いておくとして、問題なのはクキカワの言動だ。
今のやり取りが《ライバル》
さんとなら、一応納得はできる。
オレに対しても下ネタを言ってきて、最初は戸惑ったがすぐに慣れてしまった。
幼なじみには、先程股間を触られそうになった(しかもその後とんでもない目に遭った)がクキカワ相手にそういったやり取りをするとは思えない。
そして、その幼なじみ以上に・・・

幼なじみ『そもそも、キャラ的に想像できないよね』
オカルト女『・・・』

苦虫を潰したような表情をしているオカルト電波少女。
ただ、これ以上は一方的過ぎる。
そう思い、彼女を見た。

彼女『分かった・・・話すわ』
オカルト女『でも・・・』
彼女『いずれ2人にも言うつもりだったし』
幼なじみ『・・・』

そして、彼女の口から告げられたのは・・・



彼女『クキカワは・・・いえ、私は・・・クキカワのファンだったの』

意外な言葉だった。



幼なじみ『・・・ファン?』
ライバル『そうね、その言葉が一番相応しいかも』

いつの間にか戻ってきた《ライバル》さんが彼女の言葉に同意している。

オカルト女『・・・』
ライバル『駅前のマッ●にいるわよ』
幼なじみ『ファン・・・というと、バンドか何かですか?』
彼女『野球』

野球?

ライバル『そ、元プロ野球選手』
幼なじみ『でも・・・』
彼女『難しい漢字だから、検索しても出てこないでしょう』

それは思い付かなかった。
彼女や《ライバル》さんの名前で検索すると色々出てくるのに・・・

ライバル『画像?欲しいなら幾らでも・・・』
幼なじみ『それっぽい字でググってみたんですけど・・・って、主人公君が危ない!』
彼女『残念ながら、ここでバッドエンドよ』

腕を擦り上げられ、薄れゆく意識の中でオレは選択肢を間違えた事を後悔していた・・・。




                           糸冬



幼なじみ『いやいや、終わらないって』
ライバル『あ、でもやり直せば・・・』
オカルト女『先に進みましょう』
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