ばきメモソルジャー
【『・・・いや』】
クキカワ『・・・いや』
ライバル『そう?』
何かを察したのか、それ以上は聞いてこなかった。
ライバル『ところでさー、初めて試合出た時ってピッチャーだったんでしょ?』
クキカワ『よく知ってるな』
ライバル『うん。Wikipediaに書いてあった』
クキカワ『削除できないものか?』
ライバル『無理でしょ、デタラメが書いてあるならともかく』
クキカワ『それもそうだな』
首脳陣が慌てるのも無理は無いだろう。
危険球退場となったピッチャーに代わり急遽登板したピッチャーも、明らかに様子がおかしい。
しかも、ベンチ入りしているピッチャーでまだ投げていないのは明日の先発だけだ。
『誰か・・・いないか』
コーチの一人がベンチにいる選手に呼び掛ける。
そして、目があった。
『練習試合だけですが・・・』
『頼む』
他を探す余裕も無いのだろう。
立ち上がり、ブルペンへ向かっていった。
『・・・そうか』
『よろしくお願いします』
明日の先発が予定されていたピッチャーも、肩を作ろうとブルペンにやってきた。
状況が状況だけに、自分がいた事にもそれほど驚きはしない。
『経験は?』
『練習で少しだけです』
ブルペンキャッチャーの人とキャッチボールをしながら答える。
モニターを見てみると、外野手のファインプレーでようやく相手の攻撃が終わったとこだった。
『次の回から行くぞ』
『分かりました』
相手の攻撃は後2回。
勝敗は既に決しているが、一つでもアウトカウントを取る・・・それが無理でも、最低限肩を作るだけの時間は稼ぎたい。
『ピッチャー・・・に、代わりまして・・・』
自分の名前がコールされた。
やはり、下とは違う。
空席が目立つとはいえ、2軍のそれとは比べ物にならない。
投げた事のある球種から、何とか使えそうな球を幾つか選んでもらった。
最後の肩慣らしを終え、第1球。
・・・いきなり打たれた。
が、ボテボテのゴロ。
打ち損じてくれたようだ。
『おい』
先程の打球を処理したショートの人が近づいてくる。
何度も守備のタイトルを受賞している、球界でもトップクラスの名手だ。
『カバーどうした?』
『すみません、初めてなんで舞い上がってました』
『そういや見ない顔だな。ルーキーか?』
『はい』
『次からしっかりな』
肩を叩かれる。
彼が守備位置に戻ったのを確認し、第2球を投じた。
振り向くまでもなかった。
1球でアウトを取り、次の球。
あっさりスタンドへと運ばれた。
『大丈夫か?』
『・・・すみません』
スッポ抜けたとか、そういう感覚は一切無かった。
ただ、少しだけ真ん中にズレただけ。
それだけで見事にこの通りだ。
常時どころか、最高でも150出ない上に精密なコントロールがある訳でもない。
やはりピッチャーでやっていくのは厳しいだろう。
今後は本来のポジション・・・すなわち外野手でやっていくしかない。
開き直ったのが良かったからなのか、その後は2者連続で外野フライに打ち取る事ができた。
もう1イニングは、明日の先発だった人が投げて終了。
ライバル『今話題の二刀流とは違うんだ?』
クキカワ『ああ、ピッチャーは結局そのイニング限りだったな。防御率は・・・9.00か』
ライバル『あれ?でも4.50って出てるけど・・・』
クキカワ『・・・そういえば、もう1試合投げたか』
シーズンの終盤で、大量点差がついた試合に再び登板していたのを思い出した。
その年のドラフトで、社会人の投手を何人か指名したので翌年以降に登板する事は無かった。
ライバル『でもWikipediaって凄いよねー。私の項目もあるけど、女子リーグで獲得したタイトルとかリトルのチーム名とかちゃんと書いてあったもん』
クキカワ『それくらいは覚えているだろう?』
ライバル『でもさー、そんなWikipedia博士でも分からない事ってあるよね』
クキカワ『例えば?』
と、聞いたのが間違いだった。
ライバル『例えば・・・こういう事』
クキカワ『よ、よせ・・・ぎゃあああぁぁぁ!!』
この女の項目に、《趣味は男狩り。その性欲はとどまる事を知らない。》とでも書き足してやろうか。
・・・無事に朝を迎えられたらの話だが。
次へ
他の選択肢も試す
クキカワ『・・・いや』
ライバル『そう?』
何かを察したのか、それ以上は聞いてこなかった。
ライバル『ところでさー、初めて試合出た時ってピッチャーだったんでしょ?』
クキカワ『よく知ってるな』
ライバル『うん。Wikipediaに書いてあった』
クキカワ『削除できないものか?』
ライバル『無理でしょ、デタラメが書いてあるならともかく』
クキカワ『それもそうだな』
首脳陣が慌てるのも無理は無いだろう。
危険球退場となったピッチャーに代わり急遽登板したピッチャーも、明らかに様子がおかしい。
しかも、ベンチ入りしているピッチャーでまだ投げていないのは明日の先発だけだ。
『誰か・・・いないか』
コーチの一人がベンチにいる選手に呼び掛ける。
そして、目があった。
『練習試合だけですが・・・』
『頼む』
他を探す余裕も無いのだろう。
立ち上がり、ブルペンへ向かっていった。
『・・・そうか』
『よろしくお願いします』
明日の先発が予定されていたピッチャーも、肩を作ろうとブルペンにやってきた。
状況が状況だけに、自分がいた事にもそれほど驚きはしない。
『経験は?』
『練習で少しだけです』
ブルペンキャッチャーの人とキャッチボールをしながら答える。
モニターを見てみると、外野手のファインプレーでようやく相手の攻撃が終わったとこだった。
『次の回から行くぞ』
『分かりました』
相手の攻撃は後2回。
勝敗は既に決しているが、一つでもアウトカウントを取る・・・それが無理でも、最低限肩を作るだけの時間は稼ぎたい。
『ピッチャー・・・に、代わりまして・・・』
自分の名前がコールされた。
やはり、下とは違う。
空席が目立つとはいえ、2軍のそれとは比べ物にならない。
投げた事のある球種から、何とか使えそうな球を幾つか選んでもらった。
最後の肩慣らしを終え、第1球。
・・・いきなり打たれた。
が、ボテボテのゴロ。
打ち損じてくれたようだ。
『おい』
先程の打球を処理したショートの人が近づいてくる。
何度も守備のタイトルを受賞している、球界でもトップクラスの名手だ。
『カバーどうした?』
『すみません、初めてなんで舞い上がってました』
『そういや見ない顔だな。ルーキーか?』
『はい』
『次からしっかりな』
肩を叩かれる。
彼が守備位置に戻ったのを確認し、第2球を投じた。
振り向くまでもなかった。
1球でアウトを取り、次の球。
あっさりスタンドへと運ばれた。
『大丈夫か?』
『・・・すみません』
スッポ抜けたとか、そういう感覚は一切無かった。
ただ、少しだけ真ん中にズレただけ。
それだけで見事にこの通りだ。
常時どころか、最高でも150出ない上に精密なコントロールがある訳でもない。
やはりピッチャーでやっていくのは厳しいだろう。
今後は本来のポジション・・・すなわち外野手でやっていくしかない。
開き直ったのが良かったからなのか、その後は2者連続で外野フライに打ち取る事ができた。
もう1イニングは、明日の先発だった人が投げて終了。
ライバル『今話題の二刀流とは違うんだ?』
クキカワ『ああ、ピッチャーは結局そのイニング限りだったな。防御率は・・・9.00か』
ライバル『あれ?でも4.50って出てるけど・・・』
クキカワ『・・・そういえば、もう1試合投げたか』
シーズンの終盤で、大量点差がついた試合に再び登板していたのを思い出した。
その年のドラフトで、社会人の投手を何人か指名したので翌年以降に登板する事は無かった。
ライバル『でもWikipediaって凄いよねー。私の項目もあるけど、女子リーグで獲得したタイトルとかリトルのチーム名とかちゃんと書いてあったもん』
クキカワ『それくらいは覚えているだろう?』
ライバル『でもさー、そんなWikipedia博士でも分からない事ってあるよね』
クキカワ『例えば?』
と、聞いたのが間違いだった。
ライバル『例えば・・・こういう事』
クキカワ『よ、よせ・・・ぎゃあああぁぁぁ!!』
この女の項目に、《趣味は男狩り。その性欲はとどまる事を知らない。》とでも書き足してやろうか。
・・・無事に朝を迎えられたらの話だが。
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