ばきメモソルジャー

【右側の扉】
右側の扉にしよう。

幼なじみ『開けるよぉ~・・・』
彼女『何やってるの?』
オカルト女『い、いえ・・・どうされました、会長さん?』
幼なじみ『~♪』

慌ててドアを閉め、口笛を吹く幼なじみ。

彼女『手が空いてるのなら、おつかい頼めないかと思って』
オカルト女『分かりました』
彼女『少し多いから、2人でお願いね。・・・さっきからどうしたの?』

リストの紙をオカルト電波少女に渡し、幼なじみの方を見た。

幼なじみ『いや何でも・・・ところで例のディスクってまだですか?』
オカルト女『・・・』
彼女『そういえば今日だったわね、届くの』

腕時計(オレからのプレゼントだ)を見て、首を傾げている。

【選択肢】
⇒ディスクについて聞く
 買い出しを手伝う


【ディスクについて聞く】
彼女『・・・普通のディスクよ、普通の』

少しバツの悪そうな顔になった。
《普通》を強調されると、逆に気になる。
そもそもこの組織自体、普通とは程遠いし。

幼なじみ『もしかして、先輩のあんな画像やこんな画像が満載・・・とか?』
ライバル『そうなのよ。資金が底を尽きそうで、こうなったら私が脱ぐしかないわね・・・って話してたら、《先輩にそんな事をさせる訳にはいきません!》って、自ら立候補して。先輩思いの良い娘よねぇ~、本当に』

いつの間にか戻ってきた《ライバル》さんが、わざとらしく泣き真似をしている。

彼女『・・・仮にそんな話が舞い込んできても、好き好んで脱ぐのが貴女だと思いますけど?』
ライバル『何よ、その認識?一度脳を入れ替えた方が良いんじゃない?』
彼女『言いましたね?』
幼なじみ『え、えっと・・・実際にはどんな内容なんですか?』
オカルト女『そうですね、私も気になり・・・』

ふと、オカルト電波少女の動きが止まった。

ライバル『どしたの?』
オカルト女『この気配・・・』
彼女『あら?』

事務所のドアがノックされた。
一度全員で目配せし、《ライバル》さんがドアに近付く。
彼女は(すぐ攻撃できるように)入口の死角に隠れ、オカルト電波少女と幼なじみはオレの周囲を固める。
こんな事してるから、町内会の人も恐がって近付かないのだろう。



??『宅急便でーす』
ライバル『はい、ご苦労様』
??『サインお願いできますか?』
ライバル『高いわよ?』
??『そういや今はプレミア付いてるらしいな』
ライバル『入手困難だからね~』
幼なじみ『・・・え?』

その不自然なやり取りに、場が一気に凍りついた。
幼なじみとオカルト電波少女も、いつでも動けるような態勢になる。
配達員は・・・

彼女『クキカワ!配達員に何したのよ!!』

以前に夢と魔法とネズミの国で会った、自称神官のクキカワだった。

クキカワ『その台詞、そっくりそのまま返していいか・・・?』
幼なじみ『え、どゆこと?』

ディスクが入ってるであろう四角い封筒を、オカルト電波少女に手渡した。

クキカワ『配達員が涙目になりながら、ビルの入口の前を行ったり来たりしてたぞ』
彼女『いつから?』
クキカワ『30分くらい前からだな』

なにそれこわい。

ライバル『その配達員って、チャラそうな三白眼じゃなかった?』
クキカワ『そう言えばそうだったな』
ライバル『やっぱり・・・』

一体何があったのだろうか。

彼女『前に配達に来た時にね、私達の事色々聞いてきたのよ』
オカルト女『電話番号とか、メールアドレスとか、これは何の会社なんだとか』
ライバル『だ・か・ら。ほんのちょっとだけ、怖い目に逢ってもらった訳♪』
幼なじみ『あれが・・・ほんのちょっと?』

前言撤回します。
怖いのは、まさにここでした。

幼なじみ『うん・・・』
ライバル『それで、代わりに持ってきてくれたの?』
クキカワ『私も連中に用があると言ってな。泣きながら感謝されたぞ』

この組織って・・・

クキカワ『念のため、中身は確かめさせてもらった』
彼女『感心ね』

そこ、褒める所か?



オカルト女『あ、勝てました』
クキカワ『ぐ・・・なんだこの性能は』

パソコンのモニターには《1P WIN》の文字。
空手着姿の格闘家が無惨に横たわっている横でクールに構えているのは、制服姿の女子高生っぽいキャラクター。

幼なじみ『健闘してたと思うけどなー・・・』
クキカワ『一度攻撃を食らったら、後は怒涛のラッシュで終了だからな』

黒の長髪に整った顔立ち。
紺のブレザーを着ていてもスタイルの良さが分かる。
何となくだけど、何処かで見たような・・・

ライバル『垂直ジャンプ強キックー!っと、ここでポーズ』
幼なじみ『なぁんだ、スパッツ履いてる・・・』
彼女『あ、当たり前でしょ!!』

どう見ても、今まさに目の前にいる《彼女》だよな・・・うん。

オカルト女『隠しコマンドで・・・』
彼女『無いから』
クキカワ『仮にあったとして、さらに凶悪になるだけだろう』
ライバル『常に体力回復+ゲージMAXとか?』
幼なじみ『中ボス仕様がラスボス仕様に変わるんだね。こわ~い★』

以前に2回ほど戦った本気モードになるのか。
相手の人、可哀想に。

彼女『あなた達ねぇ・・・』



オカルト女『こちらのファイルが設定資料みたいですね』
ライバル『必殺技、無敵時間長過ぎじゃない?』

ディスクに入っていたのは、格闘ゲームのキャラクターのデータだった。

クキカワ『空中投げ①、投げ間合い・・・画面半分だと?チート女め!』
彼女『う、うるさいわね・・・』
幼なじみ『空中投げ②、こっちの方は間合いは短いけど・・・』
ライバル『3分の1以上は持ってかれるわね』

動かすだけではなくテストプレイできるようにもなっており、《彼女》の他にも数人のキャラが選択できるようになっていた。
USBに接続したゲーム用のコントローラーで何回か対戦した後、添付されていた資料を見ていたのだが・・・

幼なじみ『さっきの対戦、必殺技一回も使ってないよね』
オカルト女『そういえばそうですね』
ライバル『ほとんどの通常技を通常技でキャンセルできるから、適当に連打してるだけでフルボッコにできるわよ』

まるでどっかの誰かさんみたいだな。

彼女『実験台・・・じゃなくて対戦相手になってもらえないかしら。実際にできるか試してみたいし』

ごめんなさい。
私が悪かったです。

幼なじみ『主人公君の必殺技、土下座だ』
オカルト女『ゲージではなく、プライドが消費される訳ですね』
ライバル『街中でやられると、やられた方も結構キツいわよ』



ライバル『うわ・・・』
クキカワ『これは・・・』

彼女っぽいキャラ(オレ操作)が屈強なプロレスラー(ライバルさん操作)を瞬殺した。
資料にあった必殺技を繰り出してみたのだが、どれも高性能・・・いやチート性能だった。

幼なじみ『判定強すぎるよね・・・』
オカルト女『明らかにガードポイントらしきものも確認できましたし・・・』

例えば、巷では昇●拳と呼ばれているお馴染みのあの技。
このキャラクター(彼女に良く似た凶悪な女子高生)の場合、出始めどころか上昇中が完全無敵。
なおかつ着地がかなり早いので、本家のあのキャラよりもスキが少ない。

ライバル『彼氏君、よく生きてるよね・・・』
彼女『こ、これはフィクションですから!』

他にも当て身投げっぽい技(どんな技でも取れる上に発生が異様に早い)、最近追加された技(後ろに回り込み首を極める恐ろしい技)、最終奥義っぽい技(分身し相手をフルボッコにする禁断の技)などがあった。
いずれの技も何処かで喰らった事があるのは気のせいだろうか。

彼女『気のせいよ。そうね・・・もう一度喰らえば忘れるんじゃないかしら?』

何もかも忘れそうなので、勘弁して下さい。



幼なじみ『いっけー!』
ライバル『そもそもこれって、少し前に出たゲームだよね?』
オカルト女『はい。確か、プレ●テ3で・・・』

彼女によく似たキャラが乱舞技みたいな物を喰らわせている。
空手着姿の男が吹っ飛び、体力ゲージが一気に半分近く減っていた。

クキカワ『そういや信者の子供達が遊んでいるのを何回か見たな。《こんな女子高生、実際にいたらこえーよ》とか言っていたぞ』
彼女『・・・』

実際にいますから。
その女子高生。

幼なじみ『子供って正直だよね・・・』
オカルト女『そしてその正直さは、時に悲劇をもたらします・・・』

多分、悲劇的な目に遭うのは自分だろうけど。

クキカワ『で、そのディスクはサンプルデータか何かか?』
ライバル『そんなとこ。開発者が使ってたのをコピーして分けてもらったの』
彼女『技の解説資料付きでね』

パソコンでもプレイできるように、って事か。

幼なじみ『うーん・・・でも単にパソコンでプレイするだけなら、MUG●Nとかでも大丈夫じゃないですか?』
オカルト女『そういえば、会長さんのキャラありましたね』
彼女『直ちにサーバーをダウンさせなさい!・・・って、そうではなくて資料込みで色々と確認したかったのよ』
ライバル『そうそう。3Dで作り直すから』

3次元どころか4次元まで扱っても不思議じゃないけどな。

クキカワ『確かにな。ああ恐ろしい・・・』
彼女『うっさい。っていうか一刻も早く完成させないと、来月の光熱費が払えなくなるわよ』
オカルト『でしたら、私のロウソクで・・・』
幼なじみ『あらぬ誤解を招きそうだから、やめて』

いや、もう手遅れかと。
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