ばきメモソルジャー
携帯電話の画面に表示されていたのは、見知らぬ名前だった。
おそらく女だとは思うが、記憶に無い。
とりあえず、受話器のマークのボタンを押す。
クキカワ『・・・はい』
??『あ、やっと繋がった。クキカワ、助けて~』
若い女の声が聞こえた。
どうやら私の名前、それも教団での名前ではない方を知っているらしい。
クキカワ『・・・キミは?』
??『私だよ、私。私だって』
クキカワ『詐欺なら、もっと相手を選ぶ事をオススメするぞ』
??『違うって。だから私、じゃなくて・・・』
名前を聞いて、ようやく思い出した。
私にとって腐れ縁とも言える女どもが所属している、BMSなる組織。
その中において、最近知り合った通称《幼なじみ》と呼ばれている少女だった。
クキカワ『で、どうした?何か問題でも発生したか?』
3日前の事だった。
BMSの活動が休みになるという事で、何故だか教団の施設に見学に行くという流れに。
その時にチート女の彼氏である少年、そして少年の同級生の少女《幼なじみ》と連絡先を交換した。
幼なじみ『問題は山積みだよ~』
クキカワ『例えば?』
幼なじみ『もう何ヵ月も学校行ってない事でしょ、道を歩いてると街の人が怯えた目で見てくるか一目散に逃げちゃう事でしょ、主人公君が先輩と(中略)しちゃった事でしょ、後は・・・』
クキカワ『後は?』
見学自体はちょっとしたアクシデントがあったものの、その後はパスタ屋(もちろん教団の系列店だ)で夕飯を食べ無事終了した。
例の馬鹿女はこってりと絞られたらしい。
良い気味だ。
幼なじみ『後は・・・こうして怪しい人と普通に話してる事?』
クキカワ『それは問題だな・・・ではまた』
幼なじみ『あー、ウソウソ!ゴメンゴメーン!!』
クキカワ『あの2人には連絡したのか?』
チート女と通称《ライバル》。
見た目こそ美人の類に入るが、女とは思えない戦闘力を誇る。
当然、教団の要注意リストにも載っており仮に何かあったとしても問題の方から逃げていくであろう恐ろしい組み合わせだ。
何かあったのなら、この2人に相談するのが妥当だろう。
幼なじみ『どっちも通じなかった。先輩は親戚の集まりだろうし、《ライバル》さんは・・・』
クキカワ『同窓会・・・とか言ってたな』
幼なじみ『うん。学校行ってないから、そっちの知り合いには頼みづらいでしょ。主人公君は・・・』
あの少年を巻き込もうとするのは、チート女が良い顔をしないだろう。
最悪、さらに事態が悪化する可能性すらある。
クキカワ『ならば・・・』
幼なじみ『オカルトちゃんって、そういうの苦手そうじゃん。でもその割には喫茶店でバイトしてるんだよね~・・・』
一度、変装して行ってみたのだが普通に接客していた。
もちろん後日、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
クキカワ『で、どういう問題だ?』
幼なじみ『えっとね・・・』
クキカワ『なるほどな・・・』
概要はこうだ。
幼なじみの女友達が宗教(我々とは違う団体だ)に勧誘されている。
しつこい。
何とかしてほしい。
幼なじみ『今も喫茶店で勧誘されてるらしいんだよね。場所は・・・』
クキカワ『そう遠くはないな。私が到着した後、トイレか何か適当な理由を付けて店を出るように伝えろ』
幼なじみ『あ、でもでも乱暴なのは』
クキカワ『悪行の報いを受けてもらうだけだ。そして場所を貸してる店も同罪であるからして』
幼なじみ『じゃなくて、その人って近所の大学生のお兄さんなんだって。昔から色々親切にしてくれたから・・・』
思わず、溜め息が出る。
このパターンか。
クキカワ『あのさ』
幼なじみ『・・・うん』
クキカワ『政治と宗教、あと金銭が絡むと人間関係なんて簡単に崩壊するぞ』
幼なじみ『すっごく正論なんだけど、クキカワが言うと説得力まるで無いんだよね』
クキカワ『・・・ほっとけ』
それから一週間後。
クキカワ『・・・』
『どうしたの?溜め息なんかついて』
クキカワ『いや、色々あって・・・』
あの後《幼なじみ》と合流して、喫茶店へ向かう。
そして店内へと乗り込もうとした、その時だった。
クキカワ『では神罰を・・・何だ!?』
幼なじみ『ガラスが割れたような音・・・しかもこの声』
クキカワ『・・・あの女か?』
幼なじみ『・・・多分』
凄まじい打撃音とヒステリックな女の叫び声。
聞き間違いでなければ、その声の主は私と《幼なじみ》にとって共通の知り合いだ。
ライバル『貴方ねえ・・・!!』
『ひぃぃぃ、ごめんなさーい!!』
店内は既に修羅場と化していた。
割れたカップやら皿やらが散乱し、よく知る顔の女がテーブルの上で仁王立ちしていた。
『ちょっと、落ち着いて下さい!あ、《幼なじみ》ちゃん。それに・・・』
幼なじみ『ちょっとした、知り合い』
クキカワ『そうだ、知り合いだ』
『そ、そうですか・・・』
ライバル『人の事、ヤ●逃げしてぇぇぇー!!』
『ぎゃあああぁぁぁ!!』
《幼なじみ》の知り合いらしい女と、鬼神と化している顔見知りの女。
そして一人、血まみれになって腰を抜かしている男がいるがコイツが問題の原因なのだろうか。
クキカワ『そこの女、順を追って説明してくれ』
『え、でも・・・』
幼なじみ『だ、大丈夫。化粧しててキモいけど、中身はわりとマトモだから』
ライバル『でやぁぁぁ!!』
『話せば・・・ぐえっ!!』
ライバル『このぉぉぉ!!』
『分かる・・・がはっ!!』
『自業自得ね、それ・・・』
クキカワ『まあ、そうなんだけど・・・』
宗教にしつこく勧誘されている。
それは嫌だが、知り合いなので穏便に済ませてほしい。
そこまでは《幼なじみ》に聞いていた通りだった。
『同窓会の帰りにナンパされたんでしょ?』
クキカワ『相手を選ぶべきだったな・・・』
だが、その《知り合い》というのが女癖の悪い男で一夜限りの関係を持つ事も珍しくない。
しかし・・・相手が悪過ぎた。
さらにはその事実を知った、幼なじみの女友達までもが逆上。
詳しくは語らないが、その男は当分人前には出られないだろう。
『神罰が下ったのよ、きっと』
クキカワ『そんな生易しい物じゃなかったけどな・・・』
気の毒なのは修羅場の舞台となった喫茶店で、今も臨時休業中らしい。
『で、さっきから携帯鳴ってるわよ』
クキカワ『本当だ・・・うげ』
画面に表示されていたのは・・・
幼なじみ『クキカワ、大変ー!』
クキカワ『・・・この前の一件以上に、か?』
幼なじみ『そうなの!主人公君とオカルトちゃんが』
クキカワ『・・・場所は?』
そして現場に着いた私が思った事・・・それは、教団なんかよりBMSなる組織の方が余程恐ろしいという事だった。
幼なじみ『これって、別視点?』
オカルト女『はい。クキカワ視点の物語を作ってる最中に思い付いたらしいです』
幼なじみ『結局、《ライバル》さんが暴れてた原因って何だったの?』
オカルト女『例によって同窓会が上手くいかなかった、というよりも・・・今回は目ぼしい男の方がいなかったそうです』
幼なじみ『それで、途方に暮れていた所でナンパされて』
オカルト女『意気投合して・・・という事らしいです』
幼なじみ『《ライバル》さんの執念も凄いよね?』
オカルト女『裏話になりますけど、実は男の方の鞄にGPSを仕込んでいたそうです』
幼なじみ『それで乗り込んだら、私の友達が一緒にいて・・・』
オカルト女『・・・』
幼なじみ『・・・』
オカルト女『大変でしたね・・・』
幼なじみ『うん・・・』
オカルト女『綺麗な薔薇には棘があると言いますけど』
幼なじみ『毒針、それも猛毒だった・・・と』
おそらく女だとは思うが、記憶に無い。
とりあえず、受話器のマークのボタンを押す。
クキカワ『・・・はい』
??『あ、やっと繋がった。クキカワ、助けて~』
若い女の声が聞こえた。
どうやら私の名前、それも教団での名前ではない方を知っているらしい。
クキカワ『・・・キミは?』
??『私だよ、私。私だって』
クキカワ『詐欺なら、もっと相手を選ぶ事をオススメするぞ』
??『違うって。だから私、じゃなくて・・・』
名前を聞いて、ようやく思い出した。
私にとって腐れ縁とも言える女どもが所属している、BMSなる組織。
その中において、最近知り合った通称《幼なじみ》と呼ばれている少女だった。
クキカワ『で、どうした?何か問題でも発生したか?』
3日前の事だった。
BMSの活動が休みになるという事で、何故だか教団の施設に見学に行くという流れに。
その時にチート女の彼氏である少年、そして少年の同級生の少女《幼なじみ》と連絡先を交換した。
幼なじみ『問題は山積みだよ~』
クキカワ『例えば?』
幼なじみ『もう何ヵ月も学校行ってない事でしょ、道を歩いてると街の人が怯えた目で見てくるか一目散に逃げちゃう事でしょ、主人公君が先輩と(中略)しちゃった事でしょ、後は・・・』
クキカワ『後は?』
見学自体はちょっとしたアクシデントがあったものの、その後はパスタ屋(もちろん教団の系列店だ)で夕飯を食べ無事終了した。
例の馬鹿女はこってりと絞られたらしい。
良い気味だ。
幼なじみ『後は・・・こうして怪しい人と普通に話してる事?』
クキカワ『それは問題だな・・・ではまた』
幼なじみ『あー、ウソウソ!ゴメンゴメーン!!』
クキカワ『あの2人には連絡したのか?』
チート女と通称《ライバル》。
見た目こそ美人の類に入るが、女とは思えない戦闘力を誇る。
当然、教団の要注意リストにも載っており仮に何かあったとしても問題の方から逃げていくであろう恐ろしい組み合わせだ。
何かあったのなら、この2人に相談するのが妥当だろう。
幼なじみ『どっちも通じなかった。先輩は親戚の集まりだろうし、《ライバル》さんは・・・』
クキカワ『同窓会・・・とか言ってたな』
幼なじみ『うん。学校行ってないから、そっちの知り合いには頼みづらいでしょ。主人公君は・・・』
あの少年を巻き込もうとするのは、チート女が良い顔をしないだろう。
最悪、さらに事態が悪化する可能性すらある。
クキカワ『ならば・・・』
幼なじみ『オカルトちゃんって、そういうの苦手そうじゃん。でもその割には喫茶店でバイトしてるんだよね~・・・』
一度、変装して行ってみたのだが普通に接客していた。
もちろん後日、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
クキカワ『で、どういう問題だ?』
幼なじみ『えっとね・・・』
クキカワ『なるほどな・・・』
概要はこうだ。
幼なじみの女友達が宗教(我々とは違う団体だ)に勧誘されている。
しつこい。
何とかしてほしい。
幼なじみ『今も喫茶店で勧誘されてるらしいんだよね。場所は・・・』
クキカワ『そう遠くはないな。私が到着した後、トイレか何か適当な理由を付けて店を出るように伝えろ』
幼なじみ『あ、でもでも乱暴なのは』
クキカワ『悪行の報いを受けてもらうだけだ。そして場所を貸してる店も同罪であるからして』
幼なじみ『じゃなくて、その人って近所の大学生のお兄さんなんだって。昔から色々親切にしてくれたから・・・』
思わず、溜め息が出る。
このパターンか。
クキカワ『あのさ』
幼なじみ『・・・うん』
クキカワ『政治と宗教、あと金銭が絡むと人間関係なんて簡単に崩壊するぞ』
幼なじみ『すっごく正論なんだけど、クキカワが言うと説得力まるで無いんだよね』
クキカワ『・・・ほっとけ』
それから一週間後。
クキカワ『・・・』
『どうしたの?溜め息なんかついて』
クキカワ『いや、色々あって・・・』
あの後《幼なじみ》と合流して、喫茶店へ向かう。
そして店内へと乗り込もうとした、その時だった。
クキカワ『では神罰を・・・何だ!?』
幼なじみ『ガラスが割れたような音・・・しかもこの声』
クキカワ『・・・あの女か?』
幼なじみ『・・・多分』
凄まじい打撃音とヒステリックな女の叫び声。
聞き間違いでなければ、その声の主は私と《幼なじみ》にとって共通の知り合いだ。
ライバル『貴方ねえ・・・!!』
『ひぃぃぃ、ごめんなさーい!!』
店内は既に修羅場と化していた。
割れたカップやら皿やらが散乱し、よく知る顔の女がテーブルの上で仁王立ちしていた。
『ちょっと、落ち着いて下さい!あ、《幼なじみ》ちゃん。それに・・・』
幼なじみ『ちょっとした、知り合い』
クキカワ『そうだ、知り合いだ』
『そ、そうですか・・・』
ライバル『人の事、ヤ●逃げしてぇぇぇー!!』
『ぎゃあああぁぁぁ!!』
《幼なじみ》の知り合いらしい女と、鬼神と化している顔見知りの女。
そして一人、血まみれになって腰を抜かしている男がいるがコイツが問題の原因なのだろうか。
クキカワ『そこの女、順を追って説明してくれ』
『え、でも・・・』
幼なじみ『だ、大丈夫。化粧しててキモいけど、中身はわりとマトモだから』
ライバル『でやぁぁぁ!!』
『話せば・・・ぐえっ!!』
ライバル『このぉぉぉ!!』
『分かる・・・がはっ!!』
『自業自得ね、それ・・・』
クキカワ『まあ、そうなんだけど・・・』
宗教にしつこく勧誘されている。
それは嫌だが、知り合いなので穏便に済ませてほしい。
そこまでは《幼なじみ》に聞いていた通りだった。
『同窓会の帰りにナンパされたんでしょ?』
クキカワ『相手を選ぶべきだったな・・・』
だが、その《知り合い》というのが女癖の悪い男で一夜限りの関係を持つ事も珍しくない。
しかし・・・相手が悪過ぎた。
さらにはその事実を知った、幼なじみの女友達までもが逆上。
詳しくは語らないが、その男は当分人前には出られないだろう。
『神罰が下ったのよ、きっと』
クキカワ『そんな生易しい物じゃなかったけどな・・・』
気の毒なのは修羅場の舞台となった喫茶店で、今も臨時休業中らしい。
『で、さっきから携帯鳴ってるわよ』
クキカワ『本当だ・・・うげ』
画面に表示されていたのは・・・
幼なじみ『クキカワ、大変ー!』
クキカワ『・・・この前の一件以上に、か?』
幼なじみ『そうなの!主人公君とオカルトちゃんが』
クキカワ『・・・場所は?』
そして現場に着いた私が思った事・・・それは、教団なんかよりBMSなる組織の方が余程恐ろしいという事だった。
幼なじみ『これって、別視点?』
オカルト女『はい。クキカワ視点の物語を作ってる最中に思い付いたらしいです』
幼なじみ『結局、《ライバル》さんが暴れてた原因って何だったの?』
オカルト女『例によって同窓会が上手くいかなかった、というよりも・・・今回は目ぼしい男の方がいなかったそうです』
幼なじみ『それで、途方に暮れていた所でナンパされて』
オカルト女『意気投合して・・・という事らしいです』
幼なじみ『《ライバル》さんの執念も凄いよね?』
オカルト女『裏話になりますけど、実は男の方の鞄にGPSを仕込んでいたそうです』
幼なじみ『それで乗り込んだら、私の友達が一緒にいて・・・』
オカルト女『・・・』
幼なじみ『・・・』
オカルト女『大変でしたね・・・』
幼なじみ『うん・・・』
オカルト女『綺麗な薔薇には棘があると言いますけど』
幼なじみ『毒針、それも猛毒だった・・・と』