ばきメモソルジャー

【仕事へ同行する】
オカルト女『そこでそっちを選びますか・・・?』
幼なじみ『オカルトちゃんと同行するのも、別な意味で危険だと思うけど』
オカルト女『大丈夫ですよ。御守りに塩、それ以外にも各種魔除けグッズは常に携帯しております』
幼なじみ『逆に誘き寄せそうが気がするけど・・・』

オカルト女『こちらの選択肢は《ばきメモソルジャー》において
《仕事に同行する》⇒《同行したいとお願いする》
を選んだストーリーの続きとなっております』
幼なじみ『先輩の双子の妹さんが登場して・・・ってストーリーだよね。あー、なんかステーキ食べたくなってきたー・・・』
オカルト女『なら、入信してはいかがでしょう?』
幼なじみ『それは嫌』

オカルト『こちらの選択肢をまだ選んでいないという方は、もう一度《ばきメモソルジャー》をプレイしていただく事をオススメします』
幼なじみ『途中からだから、何がなんだか分からないよね』
オカルト女『はい。ちなみに今回は主人公君の視点での物語となります。では早速・・・』
幼なじみ『レッツ、ステーキ!!』



突然ですが、みなさん。
地獄って何処にあると思いますか?

地の底?
オレも昨日まではそう思っていました。
でも、今なら自信を持って言えます。



地獄は・・・ここにあると。

オカルト女『・・・』

幽霊でも見たかのような表情を浮かべている、オカルト電波少女。
もっとも彼女の場合、仮にそうなったら恍惚の表情となるだろう。

ライバル『オーホッホッホ!!』
クキカワ『ぎゃあああああ!!』

《ライバル》さんの高笑いと、鞭が肉に連続で当たる音。
そして、道場の柱に磔にされている神官クキカワの絶叫がこの場所を地獄へと変えていた。

妹『・・・食べ終わった直後の人を集団で襲うなんて、酷いとかそういう次元を超えてるって思うな』

《ライバル》さんの横で無表情で鞭を振るっている、オレの彼女。
その彼女と瓜二つな双子の妹の手には手錠(玩具という割に妙に年期が入った物だと思ったが、怖いので指摘できなかった)が嵌められていた。

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別視点へ



二日連続で教団経営の店(普通に美味しかった)で食事した事が判明した、我らが秘密結社BMS。
その事実に耐えきれず、街中で絶叫したオレの彼女。

彼女『同じ目に遭いたいの?』
妹『・・・ヒッ!め、滅相もございません!!』

その彼女にソックリな妹の顔のすぐ近くを、鞭がヒュッと音を立てて通過する。
当然それだけで事が済むはずもなく、神官クキカワと(教団に入信していた)妹を待ち伏せ捕えるという暴挙に出た。
(背格好が似ているという理由だけで)無関係なカップルを2組ほど襲い負傷させた挙げ句、満足そうに出てきた妹と神官クキカワを拉致し現在に至る訳だ。

クキカワ『ぐがぁぁぁ・・・!!』
ライバル『どんどんいくわよぉ!』
オカルト女『・・・』
幼なじみ『ねえ・・・もう帰ろ?』

そうするしかないか。
見ていて気持ちの良い物ではない(当たり前だ)し、いつ火の粉がこちらに降りかからないとも限らない。
鞭の音と《ライバル》さんの高笑い、そしてクキカワの断末魔の絶叫を聞きながら事務所を後にした。



結局その日は、幼なじみに家の前まで送ってもらい帰宅した。
いつもならとりとめの無い話で盛り上がるのだが、この日はお互いほとんど喋らなかった。

そして次の日。
朝の5時に一度目が覚め、携帯電話(支給された方)を見てみる。
彼女から《悪いけど今日は一人で来て》とメールが入っていた。
幼なじみからも《ゴメーン(>_<)今日は迎え行けないー》とメールがあった。
時間はどちらも3時台。
普通の高校生が起きているような時間ではない。

さらにもう一通、朝の4時半頃に《いつまで寝てるの?奴らと同じ目に遭いたい?》と彼女からのメール。
甘いモーニングコールとは程遠い内容だ。
そもそも初電だって5時までは無いだろうに。
オレは溜め息をつき、顔を洗う為に洗面所へ向かった。


BMSの事務所がある最寄り駅で降り、ビルへと向かう。
早めに身支度を整えたのはいいが、家を出た所で《幼なじみ》の母親に遭遇。
《幼なじみ》と同じく昔からの知り合いなので邪険にする訳にもいかず、10分ほどロスしてしまった。

最近夜に出かける事が多い、帰ってきたと思ったらまたすぐに出かけてしまう、何日か帰らない事も多い、ちょっとした物音でも過剰に反応するようになった。
おばさんの話をまとめるとそんな感じだ。
昨日もシャワーだけ浴びて、すぐに出かけていったらしい。
学校に行っていない事について何も言わなかったのは、彼女や《ライバル》さん辺りが裏で何かしているのだろう。

ロー●ンの水色の看板を見て、朝食がまだだった事を思い出す。
何か買おうかな・・・と思っていた所で、店の自動ドアが開いた。
店内から出てきた人物を見て、思わず表情が凍り付く。

??『・・・』

不自然な色に染められた派手な髪型。
怪しげな化粧。
人目をひく為だけに作られたとしか思えない奇抜な服。
サングラスをかけているものの、それだけでこの男の怪しさが揺らぐ事はない。
昨日、道場の柱に磔(はりつけ)にされていたはずの神官クキカワだった。



さあどうするか。
昨日の一件があるので話しかけづらい。
仮に(昨日の一件が)無かったとしても、関わりたくはない人種だろう。
だが、残念ながら既に顔見知りなのでそういう訳にもいかない。
とりあえず、朝なので『おはようございます』と普通に挨拶してみる。

クキカワ『おはよう』

普通の挨拶が返ってきた。
《おお、凶悪な魔女の生け贄となる事を自ら選んだ奇特な少年よ・・・》みたいな事を言われるかと思っていたので、結構意外だった。
とりあえず昨日の事について聞こうか、それとも止めておくのが懸命だろうか考えを巡らせていた時だった。

クキカワ『持ってて』

手に持っていたロー●ンの袋をオレに預け、再び店の中へと入ってしまった。
そのまま事務所に向かう訳にも行かないので、暇潰しに袋の中を見てみる。
かなり大きめのビニール袋で、新聞や週刊誌が詰め込まれているのが目に入った。
週刊誌を何冊か買うのは特に不自然ではない。
問題は新聞の方だ。
おそらく入荷されたばかりであろう新聞が10、いや12は詰め込まれている。

昔読んだマンガで、こういう場面を見た事がある。
たしか、二人組の主人公が何やら犯罪行為をして潜伏先で売ってる新聞を買いにいかせる・・・みたいな展開だったと思う。


思い出した事を、猛烈に後悔した。
向こう(マンガ)はフィクションだが、こちらは現実だ。
しかも、昨日の出来事を思い返してみるだけでもその可能性はゼロではないだろう。
カップル2組はともかく、妹の方は心配だ。
昨日最後に見た半泣き状態の顔を思い出した。
まるで助けを乞う捨て犬のようだったな・・・と回想していたところで、ロー●ンのドアが開き不審者が出てきた。

クキカワ『悪い、朝食頼まれてたの忘れてて』

大きめの袋の中にはパンにカロリーメ●ト、お菓子や栄養ドリンク、缶コーヒーにヨーグルトといった品々が入っている。
そしてもう一つ、小さめのビニール袋を開いてから●げくんを取り出した。
紙の容器に《天●一品味》と印字されている。

クキカワ『食べるか?』

考えてみれば、朝食もロクに食べていない。
有難く恩恵に預かろう。
爪楊枝を使うのは遠慮して、手で直接つまんだ。

クキカワ『期間限定らしいからな。では私も・・・ん?』

2つ程頂き、クキカワに返す。
クキカワが食べようとした所で、横から伸びてきた手にから●げくん(天●一品味)を容器ごと奪われた。

??『確かにそんな味と言わればそんな気もするわね・・・もぐもぐ』
クキカワ『おいこらチート女。人の数少ない楽しみを・・・』
彼女『たかが買い物にどんだけ時間掛けてるのよ?10分以内って言ったわよ・・・はい、ごちそうさま』
クキカワ『片道5分はかかるだろう。ってオイ、せめて一つくらいは残しておけ』
彼女『うっさいわね・・・あら』

空になったから●げくんの容器をクキカワに返している。
と、そこでオレがいるのに気付いた。

彼女『悪いわね、こんな朝早くから』

生徒会の頼み事を手伝ったときのような仕草を見せる彼女。
好感度上げるのに必死だったな、あの頃は。

クキカワ『食べカス付いてるぞ』
彼女『え、ウソ?』
クキカワ『ウソ』



幼なじみ『あー、やっと戻ってきた・・・って』
ライバル『どうしたの、二人とも?』
オカルト女『酷い傷・・・!一体誰に・・・』
クキカワ『・・・状況から考えて一人しかいないだろう』

クキカワがやられたのは自業自得だとしても、(人が来るとマズいので)止めようとしたオレまでもが被害に遭うとは。
彼女に触れたと思った次の瞬間、身体が宙を舞っていた。

彼女『ほら、降りて。・・・今度、時間あるときね?』
幼なじみ『あー、ズルーい!』

バレてたか。
最近してなかったのもあって、背負われてる内に変な気分になってしまった。

ライバル『それだけ元気があるなら大丈夫ね。あ、適当に置いといて』
クキカワ『ああ・・・』

地獄と化していた道場に戻ってきた。
嫌でも昨日の恐ろしい光景が頭をよぎる。
姿が見えないが、妹は大丈夫なのだろうか。

彼女『それも含めて説明するわ。座って』



オカルト女『つまりは、会長さんの親戚一同で急に集まる事になったと・・・』

たしか、100人近くはいるんだよな。
オレ達庶民とは、スケールが違い過ぎる。

彼女『日本国内だけだとね』
幼なじみ『お年玉とか、すっごい額になりそう・・・』
ライバル『という訳だから、明日一日は御休み。妹ちゃんもシャワー浴びたいって言うから、帰したわ』

道場の隅の方に、クキカワを縛っていたロープが乱雑に置かれている。
その近くには、妹にかけられていた手錠や鞭が無造作に放置してあった。

幼なじみ『妹さん、マジ泣きでしたよね・・・』
彼女『全く大げさね、たかが姉妹喧嘩で』

たかが姉妹喧嘩に、手錠やロープが必要なのだろうか。
さらによく見ると、とても子供が使うには適さない玩具らしき物まで置いてあるのが見えた。
おそらく、オレと幼なじみが帰った後だろう。

ライバル『ちなみに、私も明日は同窓会でいないから』

ようやくアレとも・・・と玩具(子供用ではない)らしき物を見ながら呟いたのは、皆聞こえないフリをした。
妹が大泣きするのも、無理はないだろう。

クキカワ『紹介状は前と同じ送り先で大丈夫だ』
ライバル『了解・・・って、アレは邪魔された腹いせにやっただけだから』
オカルト女『確か、目に付けていた方を直前で別の女性に奪われて・・・』
幼なじみ『それで、その人の弟が入信しちゃって結婚取り消しになったんだよね・・・』
彼女『所詮、その程度の関係だったという事でしょう』

なんて事を。
完全に悪い大人だ。
良い子のみんなは絶対に真似しないようにね?



オカルト女『つまり明日は・・・私、主人公君、幼なじみさん、クキカワの4人ですね』
彼女『そうなるわね』
ライバル『ここも閉めちゃうし、どっか遊びにでも行ったら?そうだ、新しい下着・・・』

どんなのが良いと思う?と聞かれ、『・・・知りません!』と返している彼女。
口を開こうとしたその時、幼なじみがとんでもない事を言い出した。

幼なじみ『だったら、教団の施設とか見学してみたい』
ライバル『へえ、良いんじゃない?』
オカルト女『そうですね』

それはいくら何でも・・・と言おうとした所で、予想外のリアクションを見せた人物がいた。

クキカワ『いや・・・ちょっと待て』
幼なじみ『ダメ?』

クキカワだ。
喜ぶと思ったのに意外だった。

クキカワ『見学申込みだと、最低でも一週間前には・・・』
オカルト女『何とかなりませんか?』
クキカワ『でもまあ・・・大丈夫だろう』
彼女『・・・』

意味ありげに彼女を見るクキカワ。
それに対し、気まずそうに視線を反らせている。

クキカワ『と、いう訳だ。また後程な』
オカルト女『はい』
ライバル『じゃーねー』

立ち上がり、道場から出ていった。



その日の夜。
オレ、幼なじみ、そしてクキカワの3人はステーキハウス(教団経営)にいた。

幼なじみ『いっただきまーす』

当たり前だが、2日前に来た時と全く変わっていない。
唯一変わった点といえば、店内の至るところに

《最近このあたりでカップル狩りが多発しています。カップルのお客様はご注意下さい。不審な人を見かけましたら・・・》

と書かれた貼り紙がしてある事くらいだ。

幼なじみ『怖い世の中だね~・・・もぐもぐ』

そんな世の中にしてしまったのは、間違いなくBMSなる恐ろしい集団だろう。

クキカワ『一見、単なる女の集まりにしか見えない事も被害を拡大させた要因だろうな・・・おお、やはりミディアムレアに限るな』
幼なじみ『《ライバル》さんは背高いけど、最近はそれくらいの人も結構多いからねー・・・ぱくぱく』
クキカワ『プロレスラーみたいな連中なら一目で分かるのだが・・・ふむ、サラダも旨い』
幼なじみ『えー、それはやだなー・・・あ、美味しい!一度試してみたかったんだよねー』

被害者と加害者が同じテーブルで呑気に食事中。
クキカワはステーキ、オレと幼なじみはハンバーグで上にパインを載せたやつだ。

クキカワ『よし、そろそろ良いか?』
幼なじみ『うん、いいよー』

あらかじめ説明しておく事がある、との理由でオレと幼なじみはクキカワに呼び出されていた。
ちなみにオカルト電波少女は《ライバル》さんと、昨日の一件絡みの仕事を片付けているらしい。
根回しとか後始末とか言っていたが、どう考えてもまともな手段ではないだろう。
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