ばきメモソルジャー

それは、彼女との久々のデートの時だった。

彼女『今、誰と話してたの!?』

頭にミ●ーのカチューシャを着けた彼女が血相を変えて戻ってきた。
あの行列でそんなすぐに戻って来れるのだろうか?

彼女『問題無いわ。それよりも、今話してた人・・・銀色の髪で紫の怪しい衣装を着てなかった?』

彼女の言った通りだった。
180cmを超える長身に、V系バンドのような化粧。
キミの力が世界を救うとか、そんな事を芝居懸かった口調で言っていたと思う。

彼女『・・・帰るわよ』

いきなりの展開に驚いた。
まだお昼のパレードを見る前なのに。
パスポートだって、学生の身分からすれば決して安い買い物ではない。
そもそもアレは、パークのキャラクターではないのか。

彼女『確かに年末の東京ビッ●サイトや今、私達がいる夢の国にああいうのがいても不思議ではないわね。・・・でも』

だったら・・・と抗議しようとしたオレに彼女は続けた。



彼女『夢の国の住人が貴方に話しかけるなんて事、今まであったかしら?』


舞●駅でトイレを済ませ(やはり我慢していたらしい)、●葉線に乗った後もオレの心は晴れないままだった。

彼女『ごめんなさい、本当に・・・』

隣に座る彼女が沈痛な表情で呟く。

彼女『色々調べてくれたのは知ってるわ。アトラクションの空いてる時間とかパレードの見やすい場所、それに・・・』

やはり体調でも悪いのだろうか。

彼女『夜のパレードを見終わった後の予定も』

もちろんその予定だった。
そのつもりで、昨日は我慢した。

彼女『でも本当に時間が無いの。まさか連中が貴方にまで手を出すなんて・・・』

《連中》とは先程の怪しい男の事だろうか。
手に赤外線スタンプを押してもらってないので、再入場もできない。

彼女『どうしても、って事なら今履いてる下着を貸すからそれで・・・』

そう言った彼女の顔は、嘲笑してる訳でもふざけている訳でもなく、ただ・・・真剣だった。


連絡が来たのは、それから3日後の事だった。
それまでは絶対に家から出ないように言われていたので、何日かは学校をサボる事となってしまった。
いい加減病院に連れていかれそうになったその日の昼に、彼女から迎えに行くと連絡があり急いで支度をした。

彼女『次の駅で乗り換えるから』

向かっているのは、彼女の住んでいる家がある方でも、まして学校のある方でもなかった。
一体何処に連れていかれるのだろうか。

彼女『そういえば・・・アレ、持ってきた?』

コンビニの袋に入った、彼女の下着を手渡す。
終わった後・・・しばらく涙が止まらなかった。
なので、お世話になったのはその日限りだ。

彼女『念のため聞くけど・・・汚してない?』

そんな事をすれば、後でどんな目に遭わされるか分かったものじゃない。
オレが知ってる限り、空手に柔道に合気道に剣道・・・そのどれもが全国レベルの彼女に逆らうのは、ライオンの檻に飛び込むのに等しい。

彼女『埋め合わせは今度必ず・・・あ、次で降りるわよ』


幼なじみ『あ・・・久しぶりー!!』

駅から歩いて約10分・・・とある雑居ビルの4階に入ったオレを出迎えてくれたのは、数ヶ月ぶりに会う幼なじみだった。
小学校からずっと同じクラスだったオレ達だったが、3年生に進級してついに別々のクラスとなってしまった。
クラスが違うとこんな物なのかな・・・と思っていたが、どうもここ最近は学校にも来てないらしい。

幼なじみ『ねえ、似合う似合う?』

幼なじみが着ていたのはカーキ色の服だった。
胸には《BMS》のロゴ。
これに似た服をゲーム雑誌で見た事がある。
確か、オンラインの戦争ゲームで。

幼なじみ『どう?どう?』

幼なじみがその場で一回転する。
基本、スカート派なオレだがズボンはズボンで・・・



ふと、違和感を感じた。
確か、前に会った時は・・・

彼女『はしゃがないの。そもそも見せびらかす物ではないわ。これはね・・・なっ!?』

声のした方へ、振り向く。
彼女は・・・下着姿だった。


幼なじみ『見せびらかすな、って言ってる自分が見せびらかしてるじゃん。あー、イヤらしい・・・』
彼女『ごめんなさい・・・今まで女性しかいなかったから』

隣の部屋で着替えてきた彼女が俯いている。
強烈なビンタをモロに喰らい、オレはキリモミ回転してぶっ飛ばされた。
幼なじみ同様に《BMS》のエンブレムが刺繍された軍服らしき物を着用している。

ライバル『彼氏君はいつも見てるんでしょ?あ、もしかして最近ご無沙汰?』
彼女『ちょ・・・ちょっと!』

この中では一番年上の女性の言葉に顔を赤らめている。
週刊誌か何かで見た事があると思っていたが、彼女は女子野球の有名な選手だった。
《美人すぎる野球選手》とかそういう特集だったと思う。
もちろん今はユニフォームではなく、軍服っぽい格好だ。

ライバル『《ばきメモスタジアム》って作品からのゲストキャラです。また攻略してくれると、お姉さん嬉しいな★』
彼女『なんて挨拶してるんですか・・・そもそも、攻略されるのは私以外ありませんけど』
幼なじみ『うわ・・・正妻の余裕だ』
ライバル『じゃあ愛人で良いや。お姉さんと夜のバッテリー、組んでみない?』
彼女『ちょ・・・止めて下さい!あと、仮にも野球をやっていた人間が言う台詞ではありません!!』

軍服姿の女3人が言い争いを始める。
と、後ろから肩を叩かれた。

オカルト女『久しぶり。元気そうで良かった』

人気投票第2位のオカルト電波少女。
普通に話しているので、個別ルートの佳境に入ったバージョンか。

オカルト女『えっと・・・似合う?』

後ろで

『最近したのはいつ?』
『答えて下さいよー、先輩』
『・・・言える訳ないでしょう!!』

と言い争っている女達と同じ軍服姿だ。
ロボットアニメに出てくるオペレーターを連想させ、これはこれでアリだと思う。
照れてる姿、普通に可愛いし。
人気投票第2位も納得だ。

幼なじみ『あー!電波少女が抜けがけしようとしてるー』
オカルト女『人をアポ無し番組みたいに言わないで下さい!』
ライバル『なになに?三角関係?』


ライバル『私達の事はどう思ってくれても構わないわ・・・』
彼女『ガサツでいい加減だけど』
幼なじみ『常に男に飢えているけど』
オカルト女『●●用品使った後そのまま放置しておくけど』
ライバル『・・・うっさいわね。まあ男の子来たんだし、最後のは気を付けるけど』

もう一口、お茶を飲む。
さっきと違い、味が分からない。

ライバル『まあ・・・そういう事。貴方を守る為にはこうするしかなかったの』
彼女『うん・・・』

BMS・・・ばき(B)メモ(M)ソルジャーズ(S)。
それがこの組織の名前らしい。
おふざけにしては度が過ぎている。
資金面が(彼女の父親の力で)何とかなったとしても、幼なじみとオカルト電波少女の2人が数ヶ月も学校に来ていない事の説明がつかない。
つまり・・・ガチだ。

ライバル『じゃあこれから3人で仕事行くから、彼氏君の方はお願いね』
彼女『分かりました。さ、行くわよ』

幸か不幸か・・・身近にその辺の男では到底敵わない、さらにはあらゆる事を人並み以上にこなすチートレベルの女がいるので、そこまでの驚きはなかった。

幼なじみ『えー、もっとお話したいー!』
ライバル『ワガママ言わないの』
幼なじみ『ぶー・・・』
オカルト女『では、また明日・・・』

そして、いずれ慣れていくのだろう。
この非常識な日々にも。


一週間が経った。
毎朝代わる代わる別の女性が家に来る為に、近所で妙な噂が立ってしまったのは仕方ない。

問題は、彼女達の態度だ。
オレに気を使ってか雑談を持ちかけてくれるのだが、視線はこちらではなく常に周囲を警戒していた。
その上、組織の事や前に遭遇した怪しい男の話題に触れると別人のように押し黙ってしまう。
分かった事といえば、怪しい男がクキカワという自称神官なのと、その神官クキカワが所属する《教団》という集まりが存在する事の2点くらいだった。

ライバル『ありがと』

そしてオレがBMSでやっている事は、主にお茶くみと掃除・・・つまりは雑用ばかりだった。
買い出しすら、誰かが一緒に同行するのが現状だ。

幼なじみ『ゲームでもする?』

箱からプレ●テ2を取り出し、テレビに繋いでいる。
4も出ているのに2とは。

彼女『プレ●テ2を舐めてはいけないわ。何処かの国では軍事転用される恐れがあるという事で、輸出中止になりかけたのよ』
オカルト女『確か、ミサイルの誘導に転用できるらしいですね。やってみましょうか?』

いや、普通に遊ぼう。
普通に。

幼なじみ『それじゃ、ソフト探してみよっか』


幼なじみ『何人かで遊べる物が良いよね。格ゲーとか無いかな?』

ソフトの入っているダンボール箱を何処からか持ってきて、探し始める。

幼なじみ『かま●たちの夜3だ。2だったら、ラブ●スターやりたかったけどなー』
彼女『前に女同士でやったけど、とても虚しかったわ・・・』
オカルト女『一人でやるとさらに・・・』

お酒を飲み過ぎるとアウトなんだよな。
あと、お金を持ってなかったりとか。

ライバル『一人でやると、大抵一回●シーン見て終わりだもんね。他には?』

プレ●テ2以外に、初代プレ●テのソフトも何本か出てきた。
最近のはそういった下位互換は無いらしいけど。

幼なじみ『これは・・・漢字一文字だから伏せ字に出来ないや。渋谷が舞台のゲームだね』
オカルト女『作者が影響受けてるらしいです』
幼なじみ『選択肢

《彼の要求に応える》
《眠いから断る》

・・・《眠いから断る》を選ぶと、彼はムラムラして私と浮気。お腹ぽっこりハッピーエンド!って流れだね』
彼女『それ・・・確実にバッドエンドで物語途中終了よ』

10年以上経って続編が出たらしいけど、プレ●テ3が必要なのでここでは遊べない。
ちょっと残念。

幼なじみ『K●Fオロチ編に鉄●5、ハイパースト●ートファ●ターⅡ・・・こんなの出してたんだ?』

同じキャラでも作品によって性能が違うアレか。
性能はともかく、顔グラが違うのは地味に嬉しいけど。


幼なじみ『ぷよ●よ通だー。あ・・・パワ●ロ発見!結構前のだけど、これで』
彼女『・・・ちょっと!』

突然彼女が大声を出した。
ケースを開けようとしていた幼なじみも動きを止めている。

幼なじみ『えっと・・・何?』
彼女『あ、ごめんなさい。彼が貴女のお尻を舐め回すように見てたので、つい・・・』

いや、一緒にソフト漁るのに夢中で見てなかった。
残念。

幼なじみ『もう・・・エッチだな~』
オカルト女『嬉しそうに言うと、誘ってるようにしか聞こえませんね』
ライバル『ほらほら、彼女も負けていられないわよ?』
彼女『や、やりません!』

もしそんな事されたら、理性を保てる自信が無い。

幼なじみ『あーあ、スカートだったらパ●チラシーンで一枚絵だったのになー・・・』
ライバル『それは特典のクオカで採用されそうね。そういえば、撮影いつだっけ?新しい下着買わないと』
オカルト『そうですね、私も・・・ところで、ちゃんと毎日替えてます?』
ライバル『あ、当たり前でしょ・・・!』
幼なじみ『それって、《実は替えてない》フラグですよね?』

あえて、聞こえないフリをした。

彼女『買いに行くのは私だけで充分よ・・・』
幼なじみ『うわ、また出た正妻の余裕』
オカルト女『撮影の日はスカートで良いんですよね?』
ライバル『ズボンをずらして・・・って指定があるかもしれないから、一応両方用意しておいて』
幼なじみ『サイズ・・・大丈夫かな?』

トイレ行って良いですか、オレ?

彼女『あの・・・そろそろ』
ライバル『ああ、そっか。夜まで我慢できなくなっちゃうもんね』
オカルト『どうされました?鞄を膝に置いて・・・』
彼女『そうではなくて話が・・・後、分かっているのにわざと聞くのは止めなさい』
オカルト『さあ・・・何の事でしょう?』

改めて、彼女達が向き直る。

彼女『そ、それじゃあ物語を進めるわ・・・』
ライバル『ぷよ●よとかパワ●ロも良いけど、これから上の道場で組み手するから見に来ない?』
オカルト女『夕方には仕事もあります。宜しければそちらも・・・』
幼なじみ『迷ったら、上の選択肢から順に選んでいくのがオススメだよ』

【選択肢】
⇒仕事に同行する
 他の部屋も見たい
 組み手を見学する
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