ばきメモ2、ばきメモスタジアム
【文句を言う】
いきなり呼び出された上にこの仕打ちだ。
さすがに文句の一言も言いたくなる。
『ちょっと・・・止めなって。どうせ3分持たずに地面に突っ伏すのがオチだよ?』
何気に酷い。
『だから・・・悪かったって、言ってるでしょう?』
彼女が掴み掛かってくる。
考えてみたら、野球場で会った時から今日はずっとこんな感じだった。
『リーグより良い球場で練習しているくせに、ろくにグランド整備もしていない!』
『念の為、早めに来ておいて正解でしたね・・・』
2人で整備していたのか。
ウチの野球部って・・・
『ヘルメットだって、欠けてたりヒビ入ってるのばかりだったわ』
『前にふざけてタ●ダンスやった時、ほとんど壊れちゃったみたい。メガホンの上に幾つも重ねて・・・』
ガニマタ打法のあの人か。
すると、今オレが被ってるヘルメットは・・・
『一応、新品よ。それはそうとして・・・』
彼女の眼が妖しく光る。
『野球部の不埒な連中への怒り、貴方にぶつけて良いかしら?』
『ちょっ・・・それはいつも以上に理不尽だと・・・イエ、ナンデモナイデス』
そして・・・闘いの火蓋は落とされた。
『な・・・掛からない?』
関節を極められそうになるのを難なくかわす。
その辺の素人なら、今ので終わりだろう。
『貴方だって・・・素人でしょっ!』
大振りのビンタを、最小限の動きでかわす。
少なくとも、やられる事に関しては既に素人ではない。
自信を持って、そう断言できる。
『・・・言ってて情けなくならなーい?』
少し離れた所から幼なじみの声。
手にはヘルメット(ほぼ新品)。
つまり、身を守る物は一つも無い。
さて、どうしようか。
『余所見してんじゃ・・・ウソ?キャアッ!!』
こちらに向かってきた彼女の攻撃をかわし、お返しに足を掛ける。
そのまま見事に、芝生へと突っ込んでしまった。
『やったわ・・・ね?』
突っ伏したままの態勢でブルブル震えている。
この体勢、なかなかエロいなぁ・・・なんて不埒な事を考えていた、その時だった。
『フフフフフ・・・アハハハハ・・・』
『ね、ねえ・・・ヤバいって。ちゃんと謝ろ?私も一緒に謝るからさ、ね?』
禍々しいオーラが彼女を包んでいく。
これはいつぞやの《本気モード》というやつだ。
周りの芝生が変色し、ラインの白線が消失し始める。
『ほら、早くしないと・・・』
顔面蒼白の幼なじみ。
ヘルメットを落としてしまったのすら、気付いていない状態だ。
大丈夫だよ、だって・・・
『・・・ハアアアアッ!!!!』
もう、遅いから。
『あああ・・・お母さーん・・・!』
涙目でその場に座り込む幼なじみ。
可哀想に、腰が抜けてしまったようだった。
『私の最新奥義・・・見せてあげるッ!!』
一撃まともに喰らったら、土下座して終わりにしよう。
いつもの情けないパターンを想定していたオレの認識は・・・甘かった。
『分身・・・殺法ッ!!』
目を疑った。
視界には複数の彼女。
酒池肉林・・・なんて言っている場合ではない。
『ついに・・・禁断の・・・!』
涙を流しながら、動く事もできない幼なじみ。
そして次の瞬間。
『ハアッ!』『そこっ!』『もらった!』
3ヶ所から同時に攻撃を受けた。
その一つ一つは大した(といっても、女子のレベルを遥かに超えているが)ダメージではない。
『喰らいなさい!』『ハアッ!』『まだまだ!』『ヤアッ!』
今度は4ヵ所。
問題は、本気の攻撃でこれをやられた時だ。
対処のしようが無い。
『来世でも・・・幼なじみでいようねぇ・・・』
最早万事休すか。
目を瞑って歯を食い縛る。
その時だった。
『少年・・・』
謎の声が、聞こえた。
??『少年・・・少年・・・』
謎の声は続く。
すぐ近くから聴こえるかと思えば、遠くなったりしてしまう。
??『少年・・・聞こえたら、心の中で返事をしてくれ』
貴方は・・・誰なんだ?
??『私の声が聞こえたようだね・・・喜ばしい事だ』
心の声に、謎の声の主が反応した。
会話が成立したのだろうか?
??『さて、少年・・・キミは今、男として重大な危機に陥っている。プライドと言ってもいい』
いや・・・そんな物、とうに失ってますから。
??『と、とにかく・・・私に合わせて、手を前に出してくれ。そうすればキミは助かる』
そうだった。
彼女を怒らせてしまったばかりに、恐ろしい秘奥義が発動されている最中だった。
??『時間が無い、始めるぞ。手を・・・』
前に!!
彼女『な・・・!?』
手には柔らかい、それでいて適度に弾力のある感触。
すぐ近くから彼女の声が聞こえ、恐る恐る目を開ける。
彼女『・・・』
オレの手は彼女の胸をわし掴みにしており、逆に彼女の掌底はオレの眉間の3センチ手前で止まっていた。
ユニフォーム(+スポ●ラ)越しというのもなかなか・・・と、思っていたら。
彼女『この・・・ドスケベッッッ!!!』
必殺のアッパーカットが炸裂した。
キリモミ回転で吹き飛びながら、オレは思った。
助からなかったじゃん・・・ウソつき。
幼なじみ『うわっ、近くに落ちてきた!?しかも少し大きくなってる・・・』
胸、触ってたから・・・な。
幼なじみ『あ、力尽きた』
幼なじみ『方法はアレだけど、よく止める事ができたね?』
彼女『ええ・・・父の知り合いがやってる道場の、師範クラスでも無理だったのに』
幼なじみ『結局その人、修行の旅に出ちゃったんですよね?』
彼女『それ以来、封印していたわ。いくら何でも危険過ぎるから・・・』
そんな技、仮にも彼氏相手に使うな。
幼なじみ『その人って、決して弱い訳じゃないんですよね?』
彼女『ええ・・・一回も投げる事ができず、逆にいいように転がされたわ』
幼なじみ『ひょっとして、オリンピックに出てたりします?』
彼女『彼自身は協会の偉い人と対立して候補にも入れなかったらしいけど、メダル獲った事もある人が時々お忍びで稽古しに来るみたい。ほら、確か・・・』
それ、前のオリンピックにも出ていたよね?
しかも無差別級で。
謎の声が無かったらと思うと、今更ながらゾッとする。
彼女『で、どうなの?単なる偶然とは思えないけど・・・』
幼なじみ『主人公君が手をスッと動かした瞬間、7人・・・いや8人だったかな?先輩の分身が消えて一つにまとまったの』
そんなにいたのか。
おお、怖。
彼女『言えないの?だったらもう一度・・・セクハラでも何でもして、止めてみなさい!』
幼なじみ『最後までしてるのに、今さらセクハラも何も無いと思いますけど・・・』
とか言いながら、ボールの入った籠やネットを動かして自分専用のバリケードを造っている幼なじみ。
彼女『謎の声?』
さすがにこれ以上は無理だと感じ、笑われるのを覚悟の上で謎の声について正直に話した。
逆DVのストレスによる空耳でしょう・・・とか診断されるんだろうな。
さあ、笑え。
病院に連れていくなら連れていけ。
と、思いきや。
幼なじみ『もしかして・・・』
彼女『《ヤツ》・・・ね』
ヤツ?
今の声の主だろうか?
幼なじみ『ねえ、どんな声だった?』
少し芝居じみたような男の人の声、としか説明しようがない。
彼女『間違いないわ・・・もはや、野球どころではないようね』
幼なじみ『はい・・・すぐに召集掛けます!』
どうしてそうなる。
そもそも、シーズン中ではないのか?
彼女『お願いね。じゃあ、私は・・・』
幼なじみ『今夜は彼といてあげて下さい』
らしからぬ台詞に驚き、幼なじみの方を見る。
今までに見た事も無いような、真剣な表情だった。
彼女『でも・・・』
幼なじみ『大丈夫です。連絡はしておきますので』
そしてその晩・・・事を済ませた後、日付が変わる前に彼女は去っていってしまった。
それから数ヶ月後。
再び彼女が迎えに来たのをきっかけに、オレの平穏無事(?)な生活は一転するのであった。
ユリ『え・・・何コレ?』
なつき『どうした?』
ユリ『先日、体験版のアップデートがあったんですよ』
なつき『体験版で?まあ、いいや・・・それで?』
ユリ『見た事が無い選択肢が出てきて、試しに選んでみたら・・・』
なつき『彼女達が着ているのは・・・軍服か?』
ユリ『そんな感じですね。これはこれでなかなか・・・
なつき『・・・』
ユリ『軍服といえば訓練。徹底的に罵倒されるのもアリかもしれませんね』
なつき『・・・真ん中にいるのが例のDV彼女で、左にいるのは《ばきメモスタジアム》からの新キャラか』
ユリ『さっすが先生♪』
なつき『散々聞かされたからな。右は《幼なじみ》で、その横にいる男は・・・誰だ?』
ユリ『化粧もして、いかにも怪しそうですね。この人が、例の声の主でしょうか?』
なつき『うーん・・・』
ユリ『どうしました?』
なつき『この男、何処かで見たような・・・』
ユリ『そうですか?女の子ならともかく、男の人には興味無いですし』
なつき『・・・』
いきなり呼び出された上にこの仕打ちだ。
さすがに文句の一言も言いたくなる。
『ちょっと・・・止めなって。どうせ3分持たずに地面に突っ伏すのがオチだよ?』
何気に酷い。
『だから・・・悪かったって、言ってるでしょう?』
彼女が掴み掛かってくる。
考えてみたら、野球場で会った時から今日はずっとこんな感じだった。
『リーグより良い球場で練習しているくせに、ろくにグランド整備もしていない!』
『念の為、早めに来ておいて正解でしたね・・・』
2人で整備していたのか。
ウチの野球部って・・・
『ヘルメットだって、欠けてたりヒビ入ってるのばかりだったわ』
『前にふざけてタ●ダンスやった時、ほとんど壊れちゃったみたい。メガホンの上に幾つも重ねて・・・』
ガニマタ打法のあの人か。
すると、今オレが被ってるヘルメットは・・・
『一応、新品よ。それはそうとして・・・』
彼女の眼が妖しく光る。
『野球部の不埒な連中への怒り、貴方にぶつけて良いかしら?』
『ちょっ・・・それはいつも以上に理不尽だと・・・イエ、ナンデモナイデス』
そして・・・闘いの火蓋は落とされた。
『な・・・掛からない?』
関節を極められそうになるのを難なくかわす。
その辺の素人なら、今ので終わりだろう。
『貴方だって・・・素人でしょっ!』
大振りのビンタを、最小限の動きでかわす。
少なくとも、やられる事に関しては既に素人ではない。
自信を持って、そう断言できる。
『・・・言ってて情けなくならなーい?』
少し離れた所から幼なじみの声。
手にはヘルメット(ほぼ新品)。
つまり、身を守る物は一つも無い。
さて、どうしようか。
『余所見してんじゃ・・・ウソ?キャアッ!!』
こちらに向かってきた彼女の攻撃をかわし、お返しに足を掛ける。
そのまま見事に、芝生へと突っ込んでしまった。
『やったわ・・・ね?』
突っ伏したままの態勢でブルブル震えている。
この体勢、なかなかエロいなぁ・・・なんて不埒な事を考えていた、その時だった。
『フフフフフ・・・アハハハハ・・・』
『ね、ねえ・・・ヤバいって。ちゃんと謝ろ?私も一緒に謝るからさ、ね?』
禍々しいオーラが彼女を包んでいく。
これはいつぞやの《本気モード》というやつだ。
周りの芝生が変色し、ラインの白線が消失し始める。
『ほら、早くしないと・・・』
顔面蒼白の幼なじみ。
ヘルメットを落としてしまったのすら、気付いていない状態だ。
大丈夫だよ、だって・・・
『・・・ハアアアアッ!!!!』
もう、遅いから。
『あああ・・・お母さーん・・・!』
涙目でその場に座り込む幼なじみ。
可哀想に、腰が抜けてしまったようだった。
『私の最新奥義・・・見せてあげるッ!!』
一撃まともに喰らったら、土下座して終わりにしよう。
いつもの情けないパターンを想定していたオレの認識は・・・甘かった。
『分身・・・殺法ッ!!』
目を疑った。
視界には複数の彼女。
酒池肉林・・・なんて言っている場合ではない。
『ついに・・・禁断の・・・!』
涙を流しながら、動く事もできない幼なじみ。
そして次の瞬間。
『ハアッ!』『そこっ!』『もらった!』
3ヶ所から同時に攻撃を受けた。
その一つ一つは大した(といっても、女子のレベルを遥かに超えているが)ダメージではない。
『喰らいなさい!』『ハアッ!』『まだまだ!』『ヤアッ!』
今度は4ヵ所。
問題は、本気の攻撃でこれをやられた時だ。
対処のしようが無い。
『来世でも・・・幼なじみでいようねぇ・・・』
最早万事休すか。
目を瞑って歯を食い縛る。
その時だった。
『少年・・・』
謎の声が、聞こえた。
??『少年・・・少年・・・』
謎の声は続く。
すぐ近くから聴こえるかと思えば、遠くなったりしてしまう。
??『少年・・・聞こえたら、心の中で返事をしてくれ』
貴方は・・・誰なんだ?
??『私の声が聞こえたようだね・・・喜ばしい事だ』
心の声に、謎の声の主が反応した。
会話が成立したのだろうか?
??『さて、少年・・・キミは今、男として重大な危機に陥っている。プライドと言ってもいい』
いや・・・そんな物、とうに失ってますから。
??『と、とにかく・・・私に合わせて、手を前に出してくれ。そうすればキミは助かる』
そうだった。
彼女を怒らせてしまったばかりに、恐ろしい秘奥義が発動されている最中だった。
??『時間が無い、始めるぞ。手を・・・』
前に!!
彼女『な・・・!?』
手には柔らかい、それでいて適度に弾力のある感触。
すぐ近くから彼女の声が聞こえ、恐る恐る目を開ける。
彼女『・・・』
オレの手は彼女の胸をわし掴みにしており、逆に彼女の掌底はオレの眉間の3センチ手前で止まっていた。
ユニフォーム(+スポ●ラ)越しというのもなかなか・・・と、思っていたら。
彼女『この・・・ドスケベッッッ!!!』
必殺のアッパーカットが炸裂した。
キリモミ回転で吹き飛びながら、オレは思った。
助からなかったじゃん・・・ウソつき。
幼なじみ『うわっ、近くに落ちてきた!?しかも少し大きくなってる・・・』
胸、触ってたから・・・な。
幼なじみ『あ、力尽きた』
幼なじみ『方法はアレだけど、よく止める事ができたね?』
彼女『ええ・・・父の知り合いがやってる道場の、師範クラスでも無理だったのに』
幼なじみ『結局その人、修行の旅に出ちゃったんですよね?』
彼女『それ以来、封印していたわ。いくら何でも危険過ぎるから・・・』
そんな技、仮にも彼氏相手に使うな。
幼なじみ『その人って、決して弱い訳じゃないんですよね?』
彼女『ええ・・・一回も投げる事ができず、逆にいいように転がされたわ』
幼なじみ『ひょっとして、オリンピックに出てたりします?』
彼女『彼自身は協会の偉い人と対立して候補にも入れなかったらしいけど、メダル獲った事もある人が時々お忍びで稽古しに来るみたい。ほら、確か・・・』
それ、前のオリンピックにも出ていたよね?
しかも無差別級で。
謎の声が無かったらと思うと、今更ながらゾッとする。
彼女『で、どうなの?単なる偶然とは思えないけど・・・』
幼なじみ『主人公君が手をスッと動かした瞬間、7人・・・いや8人だったかな?先輩の分身が消えて一つにまとまったの』
そんなにいたのか。
おお、怖。
彼女『言えないの?だったらもう一度・・・セクハラでも何でもして、止めてみなさい!』
幼なじみ『最後までしてるのに、今さらセクハラも何も無いと思いますけど・・・』
とか言いながら、ボールの入った籠やネットを動かして自分専用のバリケードを造っている幼なじみ。
彼女『謎の声?』
さすがにこれ以上は無理だと感じ、笑われるのを覚悟の上で謎の声について正直に話した。
逆DVのストレスによる空耳でしょう・・・とか診断されるんだろうな。
さあ、笑え。
病院に連れていくなら連れていけ。
と、思いきや。
幼なじみ『もしかして・・・』
彼女『《ヤツ》・・・ね』
ヤツ?
今の声の主だろうか?
幼なじみ『ねえ、どんな声だった?』
少し芝居じみたような男の人の声、としか説明しようがない。
彼女『間違いないわ・・・もはや、野球どころではないようね』
幼なじみ『はい・・・すぐに召集掛けます!』
どうしてそうなる。
そもそも、シーズン中ではないのか?
彼女『お願いね。じゃあ、私は・・・』
幼なじみ『今夜は彼といてあげて下さい』
らしからぬ台詞に驚き、幼なじみの方を見る。
今までに見た事も無いような、真剣な表情だった。
彼女『でも・・・』
幼なじみ『大丈夫です。連絡はしておきますので』
そしてその晩・・・事を済ませた後、日付が変わる前に彼女は去っていってしまった。
それから数ヶ月後。
再び彼女が迎えに来たのをきっかけに、オレの平穏無事(?)な生活は一転するのであった。
ユリ『え・・・何コレ?』
なつき『どうした?』
ユリ『先日、体験版のアップデートがあったんですよ』
なつき『体験版で?まあ、いいや・・・それで?』
ユリ『見た事が無い選択肢が出てきて、試しに選んでみたら・・・』
なつき『彼女達が着ているのは・・・軍服か?』
ユリ『そんな感じですね。これはこれでなかなか・・・
なつき『・・・』
ユリ『軍服といえば訓練。徹底的に罵倒されるのもアリかもしれませんね』
なつき『・・・真ん中にいるのが例のDV彼女で、左にいるのは《ばきメモスタジアム》からの新キャラか』
ユリ『さっすが先生♪』
なつき『散々聞かされたからな。右は《幼なじみ》で、その横にいる男は・・・誰だ?』
ユリ『化粧もして、いかにも怪しそうですね。この人が、例の声の主でしょうか?』
なつき『うーん・・・』
ユリ『どうしました?』
なつき『この男、何処かで見たような・・・』
ユリ『そうですか?女の子ならともかく、男の人には興味無いですし』
なつき『・・・』