ばきメモ2、ばきメモスタジアム
やっぱり制服だ。
ただ、何となく様子がおかしい。
彼女の周りを青白いオーラのような物が包んでいる。
『・・・』
オレは校舎の窓を見つめた。
ギャラリーのほとんどは、彼女のあまりの恐ろしさにそそくさと退散してしまったが《彼女》だけは不安そうにオレ達を見ている。
安心させるようにオレが頷くと、《彼女》も小さく頷き返した。
昨日の事だ。
《彼女》と新たな道を歩む事を決意したオレは、彼女にその事を伝え謝罪した。
2、3発殴られるのは覚悟の上だったが、意外にも彼女はあっさりと承諾してくれた。
・・・しかしそう簡単に物事が進まないのは、今の状況を見れば明白だ。
『・・・』
ちなみに《彼女》とは、前作(ばきメモ1)にも登場していたオレの幼なじみだ。
《彼女》も頭脳明晰でスポーツ万能だが、目の前の彼女程では無い。
おまけに《彼女》は極度の味オンチで料理下手だった。
・・・だが、それが良い。
『・・・何が良いって?』
一方、目の前でこの世の物とは思えないオーラを放っている彼女の弱点を、未だにオレは知らない。
成績は常に学年トップで運動は全国レベル。
数えきれない程の大会やコンクール等で入賞し、それ(トロフィーやメダル等)専用の部屋がある位だ。
料理にしてもプロ級で、元々和食嫌いだったオレが和食党になった程だ。
『・・・』
もう一度、《彼女》に頷いた。
オレと《彼女》の未来の為にも、この闘いには絶対負けられない!
なだめる
後退する
押さえ付ける
意気込んでみたのは良いが、どうすれば良いのか分からない。
校舎の壁際に追い詰められているこの状況で、どう動くのか。
試しに三角跳びでもしてみようかと思ったが、やり方が分からない。
仮に跳べたとしても、叩き落とされるのがオチだろう。
『・・・』
そうこうしている内に、彼女が一歩・・・また一歩と近付いてきた。
あまりの恐怖にオレは、下手な弁解を始めてしまう。
『・・・捕まえた』
そして、次の瞬間だった。
一気に間合いを詰めてきた彼女に、逃げる間も無く首を抱えられてしまう。
『このっ・・・!このぉっ・・・!!』
体制を崩されてしまったオレに、容赦無い膝蹴りの連打が浴びせられる。
そして薄れゆく意識の中で思った。
これまでの闘いで、いかに彼女が手加減してたのかを・・・
次へ(敗北エンド)
リトライ
後退しようにも、校舎の壁に追い詰められている今の状況では逃げようもない。
だからと言って、まともに挑んだ所で勝ち目がある訳でもなかった。
・・・やっぱり逃げよう。
彼女の横を摺り抜ける事ができれば、後は全力で走るだけだ。
明日の為に、ダーッシュ!!
そう思ったオレは、彼女のいる方へと全力疾走した。
横を通り過ぎたと思った、次の瞬間だった。
『・・・甘いわね』
突然、身体の自由が効かなくなった。
足を動かしても前へと進まない。
そしてオレの身体は宙へと持ち上げられ・・・頭から地面に落とされた。
『・・・』
見事なジャーマンスープレックスだった。
3カウントを数える必要も無く、オレは起き上がる事ができなかった。
次へ(敗北エンド)
リトライ
どう考えても状況は不利だった。
校舎の壁際に追い詰められているので、逃げようにも逃げられない。
『・・・ハァァァッ!』
いつもより数段気合いの入った掛け声と共に、廻し蹴りをかましてくる。
オレの頬から数センチ先の空間を、彼女の脚が切り裂いた。
一瞬でも反応が遅れていたら、吹っ飛ばされていただろう。
『クソッ・・・外したか』
しかも、今日はスカートの下にスパッツを履いていた。
ギャルゲーのキャラとしてはあるまじき状況・・・などと言っている場合ではない。
完全に本気だ。
『・・・このっ!』
次に、近くに落ちていたボールを投げ付けてきた。
休み時間に使って、そのまま片付け忘れた物だろう。
放物線を描く訳でもなく、ただ一直線にこちらへ飛んでくる。
咄嗟に顔を覆ったが、幸いにもボールの方から外れてくれた。
何かにぶつかった音と『ぎゃあ!』という情けない悲鳴が聞こえたような気がしたが、今はそれどころでは無い。
『・・・』
もう一度《彼女》を見る。
さっきよりも強く、頷いてくれた。
オレは覚悟を決めた。
『何よ・・・この!』
彼女に組み付く。
当然ながら、彼女の方も組み返してきた。
そして腕を取り、背負い投げに持っていこうとしてくる。
《彼女》の『危ない!』という悲鳴にも似た声が聞こえた。
『ちょっ・・・投げられなさいよ!!』
オレは彼女に背負われそうになるも、必死に両足を踏ん張っていた。
思っていた通りだ。
パワーは段違いだが、その分今日の技にはキレが無い。
『ウソっ・・・キャアッ!!』
逆に後ろから持ち上げ、軽く地面に投げ付けた。
痛がる仕草に、ちょっとやり過ぎかな・・・と思ってしまう。
『・・・っ、てめぇぇぇー!!』
今度は起き上がるなり、恐ろしい形相で大振りのパンチを繰り出してきた。
なだめる
後退する
土下座
オレは彼女が本気になっている事に、今さらながら恐怖を感じた。
何とかなだめようと口を開けたその瞬間、彼女のパンチが顔面に命中しオレは倒れ込んだ。
『キャアアアァァァ!!』
いつの間にか近くに来ていた《彼女》の悲鳴が聞こえた。
それがしゃくに触ったらしい。
『・・・アンタのせいでっ!!』
『だからと言ってここまでやる事は・・・痛っ!!』
彼女が《彼女》に思い切りビンタをした。
しかし《彼女》も負けていなかった。
『何すんの・・・よッ!!』
『・・・アタッ!この・・・よくも!!』
お返しのビンタが炸裂する。
女同士、取っ組みあいの喧嘩を始めてしまった。
『泥棒猫!』
『カタブツ女!』
『貧乳!』
『ホルスタイン!』
『没個性!』
『逆DV女!』
オレは地面に倒れたまま、その様子を見守る事しかできなかった・・・
次へ(敗北エンド)
リトライ
・・・まずい!
オレは咄嗟に後退した。
少しよろめいてしまう。
その時だった。
『つーかまえた♪』
突然、何者かに羽交い締めされた。
そして耳元から《彼女》・・・すなわち幼なじみの声。
『お姉様、これでよろしいのですか?』
『・・・ええ、上等よ』
さっきまでの般若のごとき形相は何処へやら、彼女は聖母のような微笑みを浮かべていた。
『しっかり抑えておいて頂戴ね』
『はい、お姉様・・・』
訳が分からない。
何故、《彼女》が彼女の味方をする?
引き離そうとするも意外に力が強く、なかなか離してくれない。
その時、ゆっくりと近付いてきた彼女に股間を握られた。
身体に電流が走る。
『まあ、お姉様ったら大胆・・・』
『私達に刃向かったからには、お仕置きをしなくっちゃ・・・ね!!』
『ね!!』の所で握る力が強くなり、オレは断末魔の叫びをあげた。
凄まじい力で握り潰され、オレは逃げる事も抵抗する事もできずただ叫び続けるのみだった。
『見事です、お姉様』
やっとの事で生き地獄から解放され、オレはその場に崩れ落ちた。
『汚らわしい物を触ってしまったわ、癒して頂戴』
『はい、お姉様・・・』
薄れゆく意識の中で最後にオレが見た物は、抱き合って濃厚な口付けを交わす女二人の姿だった。
オレは思った。
そういうのは、本編でやってくれと・・・
次へ(特殊エンド)
リトライ
ユリ『ミ・ナ・ギ・ッ・テ・キ・ター!!・・・アダッ!』
なつき『いきなり大声を出すな』
ユリ『だってだって、このシーン!考えうる最高のシチュエーションですよ?』
なつき『どれどれ・・・うわ』
ユリ『何ですか・・・《うわ》って』
なつき『スキップスキップ』
ユリ『あー、何て事するんですか!これからめくるめく愛のシーンが』
なつき『全年齢対象だろ、これ』
ユリ『そっか・・・あーあ、エ●ゲーに移植されないかなー?』
なつき『・・・エ●ゲー言うな』
謝ろう。
このままではラチが開かない。
そう思ったオレは、地面に座り込んだ。
その瞬間・・・
『・・・ヤアッ!』
頭のすぐ上を物凄い風切り音が通過していった。
見なくても分かる。
これは廻し蹴りだ。
しかも本気の。
つまり、さっきのパンチはフェイントという事になる。
『かわされ・・・た?』
さすがに少し動揺している。
もちろん見切った訳ではない。
たまたま、そうなっただけなのだ。
『・・・やるわね。さすが、私の・・・』
その先を言おうとして、言葉が詰まる。
さすがに少し、胸が傷んだ。
『いいわ。最後に、私の本気・・・見せてあげる』
彼女を覆うオーラがさらに強くなった。
そして・・・
次の攻撃に備える
『フッ!・・・ハアッ!・・・ヤアッ!』
絶え間無く繰り出される連撃。
オレは防戦一方だった。
『・・・そこぉっ!!』
必殺の一撃を間一髪で回避する。
既に何発かは喰らってしまっていたが、いずれも致命的なダメージとまではいかなかった。
『・・・もらった!』
懐に飛び込んできた。
体勢を崩され脚を掛けてくる。
気が付いた時には、身体が横向きになって宙を舞っていた。
『・・・あっ!?』
咄嗟に受け身を取ったおかげで、こちらも致命的なダメージにはならなかった。
確か、内股とかいう柔道の技だったと思う。
彼女の方から離れるようにして一回転し、その勢いを利用して起き上がった。
『・・・しぶといわね』
妖艶な笑みを向けてくる。
まるでそれは、獲物を狙う雌豹に見えた。
だがオレも、ただ喰われてやる訳にはいかない。
『・・・いくわよ!』
次で・・・全てが決まる。
別れを切り出す
抱きしめる
押さえ付ける
改めて、ちゃんと説明した方が良いのではないか。
いや・・・それは昨日済ませている。
そして、今オレがやるべき事は・・・
『遅いっ!』
そんな事を考えていたのが間違いだった。
彼女の繰り出す連撃を全てまともに喰らい、崩れ落ちる。
倒れたオレの腕を取り、力を加える。
『・・・トドメっ!!』
そしてオレの腕が・・・不吉な音を立てた。
次へ(敗北エンド)
リトライ
『テヤッ!・・・・トリャッ!・・・・・ヤアッ!』
相変わらず繰り出されている連撃。
しかし、その間隔が少しずつ広がっているのをオレは見逃さなかった。
さすがの彼女も疲労が出ているのだろう。
『セヤッ!・・・・・・タアッ!・・・って、ちょっと!!』
技が繰り出された直後のスキを狙い、彼女に正面から抱き付いた。
そのまま力を込める。
しばらくして、耳元から彼女の声が聞こえた。
『あなたの事は本当に好きだった・・・だから』
その言葉を聞いて、力を緩める。
だが、次の瞬間。
『許せない』
今度は彼女の方が力を加えてきた。
それも尋常なレベルではない。
身体中がミシミシと嫌な音を立て、オレは情けない叫び声をあげた。
抱き締められる力がさらに強くなる。
『砕け散れぇぇぇっ!!』
オレの断末魔と彼女の絶叫が重なる。
そしてオレは、意識を失った。
何処かの相撲取り(隈取りメイク付)顔負けのあの技で。
次へ(敗北エンド)
リトライ
オレは彼女に掴み掛かった。
当然、彼女も掴み返してくる。
『くっ・・・このっ!』
目にも止まらぬ速さと凄まじい握力で掴んでくる。
こちらも負けじと抵抗するのだが、情けない事に技量の差は明白だった。
やがて、腕を取られる。
『トドメの背負い投げよ・・・喰らいなさいっ!!』
巻き込むように引っ張られ、視界が一回転する。
そして、背中に強烈な痛みが走った。
しばらくは立てないだろう。
彼女が唖然としている。
『どうして・・・技の名前、教えてあげたのに』
そう、受け身を取ろうと思えば取れた。
だがオレは、受け身を取らずあえて彼女の技を喰らった。
彼女の気が、少しでも紛れるように。
『今さらそんな気・・・使ってんじゃないわよ!』
彼女が馬乗りになってきた。
おそらく、何発も殴られるだろう。
何も言わず、ただ歯を食いしばった。
『誕生日だって・・・ホワイトデーだって・・・忘れてたクセにっ!』
何発も、何発も殴られる。
『生徒会の会議で消しゴムわざと落として、スカートの中・・・覗こうとしたクセにっ!』
殴られる度に彼女との思い出が甦ってくる。
『何回私が断っても・・・しつこくて、しつこくてぇっ!!』
初めて見た、彼女の泣き顔だった。
『アンタなんか・・・アンタなんかぁぁぁ!!』
目を瞑る。
だが・・・覚悟していた一撃は来なかった。
『ごめん、先輩。ウソなの・・・。だから、もうやめて』
代わりに声がした。
《彼女》・・・すなわち幼なじみの。
目を開ける
『先輩が羨ましくて・・・何だって私より上手い、何だって私よりできる、彼だって・・・』
《彼女》・・・ではなく、幼なじみの独白は続く。
オレ達3人は、学校から出て人気の無い所へと移動していた。
『だからちょっと嫌がらせしてあげようと思った・・・それだけなの。悪いのは全て私』
いや、一番悪いのはオレだ。
オレが受け入れさえしなければ・・・
『本当に・・・ごめんなさい』
幼なじみが深々と、頭を下げた。
『私の方こそ・・・ごめんなさい』
彼女の方も、頭を下げる。
そしてオレの方を見た。
『色々・・・痛い事してごめんなさい。こんな私でよかったら、これからも・・・』
彼女の手を取ろうとして・・・
『ちょっと、大丈夫?』
よろめいた。
慌てて支える幼なじみ。
『大変!すぐに病院に・・・』
ちょっと足を挫いただけなので、その必要は無いと思う。
湿布でも貼っておけば、じきに治るだろう。
『で、でも・・・』
『ほら、先輩。しゃがんで』
『しゃがむって・・・』
『良いから良いから。はい、キミ乗って』
戸惑うオレだったが、やがて覚悟を決め彼女の背中に体重を預けた。
何とも言えない心地良さが全身を包む。
『結構重いわね・・・』
いつも平気でぶん投げてるクセに?
『・・・相手の力を上手く利用するのよ。今から実践してあげましょうか?』
『ほらほら、ケンカしない』
『まあ良いわ・・・それで?』
『先輩の家は今日、誰もいないんでしょ?』
『え、ええ・・・旅行で』
『だってさ。ホワイトデーのプレゼント、してあげたら?あ、これ私から2人に。今回のお詫びって事で』
幼なじみが四角い箱を彼女に渡し、去っていった。
『彼女の事、知らないうちに傷付けていたのね・・・何かしら、これ?』
3ケタの数字が書いてある、七色に光る箱だった。
そして、その箱を目にした瞬間・・・
『バ、バカ・・・!』
どうしようもなく、なってしまった。
『降りなさい・・・今すぐっ!』
『当たってるわよ!何とかして!!』
『不健全よ!最低!!』
押し問答を繰り返しながら、彼女の家へと辿り着く。
そして、夢のような時間を過ごした。
東●ポの4コマみたいな事になって怒られたのも、シーツを汚してしまい慌てて洗ったのも、彼女と新生活を始めた今では良い思い出だ。
次へ(特殊エンド)
リトライ
ユリ『おお・・・凄い!真のエンディングだー、やったー!!』
なつき『・・・この男、絶対長生きしないだろ』
ユリ『な、何て事を言うんですか?見て下さいよ、彼女の幸せそうな顔!』
なつき『ご褒美の一枚絵か。お腹大きくなってるな』
ユリ『でしょう?きっと彼氏さんからホワイトデーのプレゼントで・・・アタッ!』
なつき『・・・言うと思った』
ユリ『ホワイトなだけに・・・』
なつき『やめなさい』
ユリ『はーい・・・そうだ、デジカメで写真撮っておこう』
なつき『おお、上手く撮れたな』
ユリ『はい』
なつき『でもこれって《体験版》だろ?』
ユリ『そういえば、そうですね』
なつき『ここまでやったら、本編の意味は無くなるんじゃ・・・』
ユリ『あ・・・』
ただ、何となく様子がおかしい。
彼女の周りを青白いオーラのような物が包んでいる。
『・・・』
オレは校舎の窓を見つめた。
ギャラリーのほとんどは、彼女のあまりの恐ろしさにそそくさと退散してしまったが《彼女》だけは不安そうにオレ達を見ている。
安心させるようにオレが頷くと、《彼女》も小さく頷き返した。
昨日の事だ。
《彼女》と新たな道を歩む事を決意したオレは、彼女にその事を伝え謝罪した。
2、3発殴られるのは覚悟の上だったが、意外にも彼女はあっさりと承諾してくれた。
・・・しかしそう簡単に物事が進まないのは、今の状況を見れば明白だ。
『・・・』
ちなみに《彼女》とは、前作(ばきメモ1)にも登場していたオレの幼なじみだ。
《彼女》も頭脳明晰でスポーツ万能だが、目の前の彼女程では無い。
おまけに《彼女》は極度の味オンチで料理下手だった。
・・・だが、それが良い。
『・・・何が良いって?』
一方、目の前でこの世の物とは思えないオーラを放っている彼女の弱点を、未だにオレは知らない。
成績は常に学年トップで運動は全国レベル。
数えきれない程の大会やコンクール等で入賞し、それ(トロフィーやメダル等)専用の部屋がある位だ。
料理にしてもプロ級で、元々和食嫌いだったオレが和食党になった程だ。
『・・・』
もう一度、《彼女》に頷いた。
オレと《彼女》の未来の為にも、この闘いには絶対負けられない!
なだめる
後退する
押さえ付ける
意気込んでみたのは良いが、どうすれば良いのか分からない。
校舎の壁際に追い詰められているこの状況で、どう動くのか。
試しに三角跳びでもしてみようかと思ったが、やり方が分からない。
仮に跳べたとしても、叩き落とされるのがオチだろう。
『・・・』
そうこうしている内に、彼女が一歩・・・また一歩と近付いてきた。
あまりの恐怖にオレは、下手な弁解を始めてしまう。
『・・・捕まえた』
そして、次の瞬間だった。
一気に間合いを詰めてきた彼女に、逃げる間も無く首を抱えられてしまう。
『このっ・・・!このぉっ・・・!!』
体制を崩されてしまったオレに、容赦無い膝蹴りの連打が浴びせられる。
そして薄れゆく意識の中で思った。
これまでの闘いで、いかに彼女が手加減してたのかを・・・
次へ(敗北エンド)
リトライ
後退しようにも、校舎の壁に追い詰められている今の状況では逃げようもない。
だからと言って、まともに挑んだ所で勝ち目がある訳でもなかった。
・・・やっぱり逃げよう。
彼女の横を摺り抜ける事ができれば、後は全力で走るだけだ。
明日の為に、ダーッシュ!!
そう思ったオレは、彼女のいる方へと全力疾走した。
横を通り過ぎたと思った、次の瞬間だった。
『・・・甘いわね』
突然、身体の自由が効かなくなった。
足を動かしても前へと進まない。
そしてオレの身体は宙へと持ち上げられ・・・頭から地面に落とされた。
『・・・』
見事なジャーマンスープレックスだった。
3カウントを数える必要も無く、オレは起き上がる事ができなかった。
次へ(敗北エンド)
リトライ
どう考えても状況は不利だった。
校舎の壁際に追い詰められているので、逃げようにも逃げられない。
『・・・ハァァァッ!』
いつもより数段気合いの入った掛け声と共に、廻し蹴りをかましてくる。
オレの頬から数センチ先の空間を、彼女の脚が切り裂いた。
一瞬でも反応が遅れていたら、吹っ飛ばされていただろう。
『クソッ・・・外したか』
しかも、今日はスカートの下にスパッツを履いていた。
ギャルゲーのキャラとしてはあるまじき状況・・・などと言っている場合ではない。
完全に本気だ。
『・・・このっ!』
次に、近くに落ちていたボールを投げ付けてきた。
休み時間に使って、そのまま片付け忘れた物だろう。
放物線を描く訳でもなく、ただ一直線にこちらへ飛んでくる。
咄嗟に顔を覆ったが、幸いにもボールの方から外れてくれた。
何かにぶつかった音と『ぎゃあ!』という情けない悲鳴が聞こえたような気がしたが、今はそれどころでは無い。
『・・・』
もう一度《彼女》を見る。
さっきよりも強く、頷いてくれた。
オレは覚悟を決めた。
『何よ・・・この!』
彼女に組み付く。
当然ながら、彼女の方も組み返してきた。
そして腕を取り、背負い投げに持っていこうとしてくる。
《彼女》の『危ない!』という悲鳴にも似た声が聞こえた。
『ちょっ・・・投げられなさいよ!!』
オレは彼女に背負われそうになるも、必死に両足を踏ん張っていた。
思っていた通りだ。
パワーは段違いだが、その分今日の技にはキレが無い。
『ウソっ・・・キャアッ!!』
逆に後ろから持ち上げ、軽く地面に投げ付けた。
痛がる仕草に、ちょっとやり過ぎかな・・・と思ってしまう。
『・・・っ、てめぇぇぇー!!』
今度は起き上がるなり、恐ろしい形相で大振りのパンチを繰り出してきた。
なだめる
後退する
土下座
オレは彼女が本気になっている事に、今さらながら恐怖を感じた。
何とかなだめようと口を開けたその瞬間、彼女のパンチが顔面に命中しオレは倒れ込んだ。
『キャアアアァァァ!!』
いつの間にか近くに来ていた《彼女》の悲鳴が聞こえた。
それがしゃくに触ったらしい。
『・・・アンタのせいでっ!!』
『だからと言ってここまでやる事は・・・痛っ!!』
彼女が《彼女》に思い切りビンタをした。
しかし《彼女》も負けていなかった。
『何すんの・・・よッ!!』
『・・・アタッ!この・・・よくも!!』
お返しのビンタが炸裂する。
女同士、取っ組みあいの喧嘩を始めてしまった。
『泥棒猫!』
『カタブツ女!』
『貧乳!』
『ホルスタイン!』
『没個性!』
『逆DV女!』
オレは地面に倒れたまま、その様子を見守る事しかできなかった・・・
次へ(敗北エンド)
リトライ
・・・まずい!
オレは咄嗟に後退した。
少しよろめいてしまう。
その時だった。
『つーかまえた♪』
突然、何者かに羽交い締めされた。
そして耳元から《彼女》・・・すなわち幼なじみの声。
『お姉様、これでよろしいのですか?』
『・・・ええ、上等よ』
さっきまでの般若のごとき形相は何処へやら、彼女は聖母のような微笑みを浮かべていた。
『しっかり抑えておいて頂戴ね』
『はい、お姉様・・・』
訳が分からない。
何故、《彼女》が彼女の味方をする?
引き離そうとするも意外に力が強く、なかなか離してくれない。
その時、ゆっくりと近付いてきた彼女に股間を握られた。
身体に電流が走る。
『まあ、お姉様ったら大胆・・・』
『私達に刃向かったからには、お仕置きをしなくっちゃ・・・ね!!』
『ね!!』の所で握る力が強くなり、オレは断末魔の叫びをあげた。
凄まじい力で握り潰され、オレは逃げる事も抵抗する事もできずただ叫び続けるのみだった。
『見事です、お姉様』
やっとの事で生き地獄から解放され、オレはその場に崩れ落ちた。
『汚らわしい物を触ってしまったわ、癒して頂戴』
『はい、お姉様・・・』
薄れゆく意識の中で最後にオレが見た物は、抱き合って濃厚な口付けを交わす女二人の姿だった。
オレは思った。
そういうのは、本編でやってくれと・・・
次へ(特殊エンド)
リトライ
ユリ『ミ・ナ・ギ・ッ・テ・キ・ター!!・・・アダッ!』
なつき『いきなり大声を出すな』
ユリ『だってだって、このシーン!考えうる最高のシチュエーションですよ?』
なつき『どれどれ・・・うわ』
ユリ『何ですか・・・《うわ》って』
なつき『スキップスキップ』
ユリ『あー、何て事するんですか!これからめくるめく愛のシーンが』
なつき『全年齢対象だろ、これ』
ユリ『そっか・・・あーあ、エ●ゲーに移植されないかなー?』
なつき『・・・エ●ゲー言うな』
謝ろう。
このままではラチが開かない。
そう思ったオレは、地面に座り込んだ。
その瞬間・・・
『・・・ヤアッ!』
頭のすぐ上を物凄い風切り音が通過していった。
見なくても分かる。
これは廻し蹴りだ。
しかも本気の。
つまり、さっきのパンチはフェイントという事になる。
『かわされ・・・た?』
さすがに少し動揺している。
もちろん見切った訳ではない。
たまたま、そうなっただけなのだ。
『・・・やるわね。さすが、私の・・・』
その先を言おうとして、言葉が詰まる。
さすがに少し、胸が傷んだ。
『いいわ。最後に、私の本気・・・見せてあげる』
彼女を覆うオーラがさらに強くなった。
そして・・・
次の攻撃に備える
『フッ!・・・ハアッ!・・・ヤアッ!』
絶え間無く繰り出される連撃。
オレは防戦一方だった。
『・・・そこぉっ!!』
必殺の一撃を間一髪で回避する。
既に何発かは喰らってしまっていたが、いずれも致命的なダメージとまではいかなかった。
『・・・もらった!』
懐に飛び込んできた。
体勢を崩され脚を掛けてくる。
気が付いた時には、身体が横向きになって宙を舞っていた。
『・・・あっ!?』
咄嗟に受け身を取ったおかげで、こちらも致命的なダメージにはならなかった。
確か、内股とかいう柔道の技だったと思う。
彼女の方から離れるようにして一回転し、その勢いを利用して起き上がった。
『・・・しぶといわね』
妖艶な笑みを向けてくる。
まるでそれは、獲物を狙う雌豹に見えた。
だがオレも、ただ喰われてやる訳にはいかない。
『・・・いくわよ!』
次で・・・全てが決まる。
別れを切り出す
抱きしめる
押さえ付ける
改めて、ちゃんと説明した方が良いのではないか。
いや・・・それは昨日済ませている。
そして、今オレがやるべき事は・・・
『遅いっ!』
そんな事を考えていたのが間違いだった。
彼女の繰り出す連撃を全てまともに喰らい、崩れ落ちる。
倒れたオレの腕を取り、力を加える。
『・・・トドメっ!!』
そしてオレの腕が・・・不吉な音を立てた。
次へ(敗北エンド)
リトライ
『テヤッ!・・・・トリャッ!・・・・・ヤアッ!』
相変わらず繰り出されている連撃。
しかし、その間隔が少しずつ広がっているのをオレは見逃さなかった。
さすがの彼女も疲労が出ているのだろう。
『セヤッ!・・・・・・タアッ!・・・って、ちょっと!!』
技が繰り出された直後のスキを狙い、彼女に正面から抱き付いた。
そのまま力を込める。
しばらくして、耳元から彼女の声が聞こえた。
『あなたの事は本当に好きだった・・・だから』
その言葉を聞いて、力を緩める。
だが、次の瞬間。
『許せない』
今度は彼女の方が力を加えてきた。
それも尋常なレベルではない。
身体中がミシミシと嫌な音を立て、オレは情けない叫び声をあげた。
抱き締められる力がさらに強くなる。
『砕け散れぇぇぇっ!!』
オレの断末魔と彼女の絶叫が重なる。
そしてオレは、意識を失った。
何処かの相撲取り(隈取りメイク付)顔負けのあの技で。
次へ(敗北エンド)
リトライ
オレは彼女に掴み掛かった。
当然、彼女も掴み返してくる。
『くっ・・・このっ!』
目にも止まらぬ速さと凄まじい握力で掴んでくる。
こちらも負けじと抵抗するのだが、情けない事に技量の差は明白だった。
やがて、腕を取られる。
『トドメの背負い投げよ・・・喰らいなさいっ!!』
巻き込むように引っ張られ、視界が一回転する。
そして、背中に強烈な痛みが走った。
しばらくは立てないだろう。
彼女が唖然としている。
『どうして・・・技の名前、教えてあげたのに』
そう、受け身を取ろうと思えば取れた。
だがオレは、受け身を取らずあえて彼女の技を喰らった。
彼女の気が、少しでも紛れるように。
『今さらそんな気・・・使ってんじゃないわよ!』
彼女が馬乗りになってきた。
おそらく、何発も殴られるだろう。
何も言わず、ただ歯を食いしばった。
『誕生日だって・・・ホワイトデーだって・・・忘れてたクセにっ!』
何発も、何発も殴られる。
『生徒会の会議で消しゴムわざと落として、スカートの中・・・覗こうとしたクセにっ!』
殴られる度に彼女との思い出が甦ってくる。
『何回私が断っても・・・しつこくて、しつこくてぇっ!!』
初めて見た、彼女の泣き顔だった。
『アンタなんか・・・アンタなんかぁぁぁ!!』
目を瞑る。
だが・・・覚悟していた一撃は来なかった。
『ごめん、先輩。ウソなの・・・。だから、もうやめて』
代わりに声がした。
《彼女》・・・すなわち幼なじみの。
目を開ける
『先輩が羨ましくて・・・何だって私より上手い、何だって私よりできる、彼だって・・・』
《彼女》・・・ではなく、幼なじみの独白は続く。
オレ達3人は、学校から出て人気の無い所へと移動していた。
『だからちょっと嫌がらせしてあげようと思った・・・それだけなの。悪いのは全て私』
いや、一番悪いのはオレだ。
オレが受け入れさえしなければ・・・
『本当に・・・ごめんなさい』
幼なじみが深々と、頭を下げた。
『私の方こそ・・・ごめんなさい』
彼女の方も、頭を下げる。
そしてオレの方を見た。
『色々・・・痛い事してごめんなさい。こんな私でよかったら、これからも・・・』
彼女の手を取ろうとして・・・
『ちょっと、大丈夫?』
よろめいた。
慌てて支える幼なじみ。
『大変!すぐに病院に・・・』
ちょっと足を挫いただけなので、その必要は無いと思う。
湿布でも貼っておけば、じきに治るだろう。
『で、でも・・・』
『ほら、先輩。しゃがんで』
『しゃがむって・・・』
『良いから良いから。はい、キミ乗って』
戸惑うオレだったが、やがて覚悟を決め彼女の背中に体重を預けた。
何とも言えない心地良さが全身を包む。
『結構重いわね・・・』
いつも平気でぶん投げてるクセに?
『・・・相手の力を上手く利用するのよ。今から実践してあげましょうか?』
『ほらほら、ケンカしない』
『まあ良いわ・・・それで?』
『先輩の家は今日、誰もいないんでしょ?』
『え、ええ・・・旅行で』
『だってさ。ホワイトデーのプレゼント、してあげたら?あ、これ私から2人に。今回のお詫びって事で』
幼なじみが四角い箱を彼女に渡し、去っていった。
『彼女の事、知らないうちに傷付けていたのね・・・何かしら、これ?』
3ケタの数字が書いてある、七色に光る箱だった。
そして、その箱を目にした瞬間・・・
『バ、バカ・・・!』
どうしようもなく、なってしまった。
『降りなさい・・・今すぐっ!』
『当たってるわよ!何とかして!!』
『不健全よ!最低!!』
押し問答を繰り返しながら、彼女の家へと辿り着く。
そして、夢のような時間を過ごした。
東●ポの4コマみたいな事になって怒られたのも、シーツを汚してしまい慌てて洗ったのも、彼女と新生活を始めた今では良い思い出だ。
次へ(特殊エンド)
リトライ
ユリ『おお・・・凄い!真のエンディングだー、やったー!!』
なつき『・・・この男、絶対長生きしないだろ』
ユリ『な、何て事を言うんですか?見て下さいよ、彼女の幸せそうな顔!』
なつき『ご褒美の一枚絵か。お腹大きくなってるな』
ユリ『でしょう?きっと彼氏さんからホワイトデーのプレゼントで・・・アタッ!』
なつき『・・・言うと思った』
ユリ『ホワイトなだけに・・・』
なつき『やめなさい』
ユリ『はーい・・・そうだ、デジカメで写真撮っておこう』
なつき『おお、上手く撮れたな』
ユリ『はい』
なつき『でもこれって《体験版》だろ?』
ユリ『そういえば、そうですね』
なつき『ここまでやったら、本編の意味は無くなるんじゃ・・・』
ユリ『あ・・・』