ばきメモ2、ばきメモスタジアム

なんと彼女は、野球のユニフォーム姿だった。
それも、以前一緒に観に行った時のような上だけのレプリカユニではなく、下も白いズボンに履き替えていた。

『今年から、女子のプロ野球リーグに所属する事になりました』

・・・マジか。
それで最近マスコミらしき人の姿を頻繁に見かける訳だ。

『・・・ソフト部の友達に誘われて一緒にトライアウト受けたら、私だけ受かっちゃって』

そういえば、秋くらいから一緒にいるのを見た事が無い。
オレに対しても親しげに話しかけてきた友人だったが、最近ではこちらが挨拶しても無言で会釈を返すだけだ。

それに、考えてみればこれまで《野球》という語句は一度も出ていない。
これではパワ●ロ小説では無く、単なる恋愛・・・いや、バイオレンス物の小説になってしまう。
だからこんな展開なのか。

『・・・メタな発言は止めて』

後退する
抱きしめる



オレは一歩後退した。
そして彼女の動きをよく見る。

『・・・たあっ!』

軽く助走を付け、飛び蹴りをかましてきた。
本当になんて女だ。
幸いにも、間一髪で避ける事に成功した。

『・・・チッ』

着地しながら舌打ちをしている。
絶対に野球選手よりも格闘家の方が向いてるよ、この女。

『・・・せやあっ!』

続けてジャンピングアッパーを繰り出してくる。
格闘ゲームで必殺技としてよく使われるアレだ。
前にも覚えがあったので、こちらも予測する事ができた。

『・・・クソ!避けんなっ!!』

着地しながら、薄汚い台詞を吐いている。
・・・今だ!

『な・・・!』

素早く後ろに周り込み、彼女を羽交い締めにした。
よし!これで・・・と思った次の瞬間だった。

『せーのっ、ふん!』

両手を掴まれ、そのまま重心を下げてくる。
オレの身体全体が彼女におぶさるような体勢になった。
・・・そして。

『・・・やあっ!』

彼女が身体を傾け、オレは背中から落とされた。
頭の上に《KO》の二文字が見えたような気がした。

『あー!ユニフォーム汚れたじゃん、どうしてくれるのよ!?・・・洗いなさいよ!もちろん手洗いで!!』

そしてオレはズルズルと引きずられていった。
目の前に《continue?》の文字とカウントダウンの数字が見えたような気がしたが、スタートボタンを押す気力も残っていなかった。

次へ(敗北エンド)
リトライ



改めて彼女を見てみる。
野球といえばバットにボール、そしてグローブ。
そのどれも持っている気配は無い。
いや・・・隠し持っているかもしれないので、油断は禁物だ。

『あのさー・・・仮にも商売道具だよ?』

言われてみればそうか。

『まあ、アンタごとき素手でも楽勝だけどね♪』

ちょっとだけ感心してると、今度はプライドをえぐられた。
前回の敗戦の記憶が蘇ってくる。

『私ね・・・野球、真剣にやろうと思ってるんだ』

前回の敗戦を思い出し半ベソ状態になってるオレに、彼女が話し始めた。

『あれからあの子、一度も口を聞いてくれないし目も合わせてくれない・・・』

まさかそんな事になっていたとは。
余程ショックだったのだろう。

『でも、何て言葉を掛けれは良いのか分からない。辞退しようって何回も思ったけど、余計にプライドを傷付けるだけだから・・・』

確かにその通りだ。
第一、それで友人が入団できるとは限らない。

『だから決めたの。私は彼女の分まで頑張るって。・・・そして、いずれは男子とも戦ってボッコボコにしてやるの』

あのー・・・一応オレも男子で、今までに何度もボッコボコにされてるんですけど・・・

『あ・・・そっちじゃなくて野球の方ね。去年何回か一緒に行ったでしょ?いずれはあの中でプレーしたいって思ってるの』

オレは驚いた。
まさかそこまでの目標を持っているとは。
だが、実際そこまで男子・・・それも日本のトップは甘くないだろう。

『・・・うん。だから、しっかり練習して来年かその翌年までにはリーグでタイトルを獲るの』

そうすれば、多少は注目されるという計算か。

『そう。・・・だから、今は何も言わない』

友人を大事に思っているのが、身に染みて理解できた。
・・・できればオレの事も大事にしてほしいんですけど。

『あの娘にも試合観に来て欲しかったけど、多分無理だと思う。だからテレビに映るようになれば・・・キャッ!?』

感動のあまり、オレは彼女を抱きしめていた。

『やだ・・・何泣いてるのよ』

しばらくして身体を離した。
ユニフォームの胸の辺りに、しっかりと涙の跡が残ってしまっている。

『大丈夫よ。洗えばすぐ落ちるし、予備もあるから』

そして朝まで一緒に過ごした後、彼女は寮へ帰っていった。
オレに出来る事が、果たしてどれだけあるのか分からない。
それでも、可能な限りは彼女の支えになりたいと思った。

次へ(特殊エンド)
リトライ



ユリ『うわぁ・・・凄い!』
なつき『どうした?』
ユリ『クリア特典の一枚絵、それもレアなバージョンです』
なつき『ふーん・・・』

ユリ『彼女達が着ている服、何処かで見た事無いですか?』
なつき『ああ・・・女子リーグのユニフォームだな』
ユリ『そうなんですよ!女子リーグとコラボした作品が出るって、ネットの噂では見た事あるんですけど』
なつき『確定、って訳か』

ユリ『もしかしたら、私も出るかもしれないですよ?』
なつき『夜な夜な他の選手に襲い掛かる役でか』
ユリ『あー!可愛い教え子に向かって何て事言うんですか!?私、ちょっと傷つきました・・・』
なつき『悪かった悪かった。ちなみに彼女達は、ゲームに登場するヒロインだよな?』
ユリ『はい。まず左の茶髪ショートの彼女は、初代ばきメモのヒロインですね。続編の《2》でも何とか滑り込みで出場を果たしています』
なつき『二次元キャラの生き残りも大変だな・・・』
ユリ『そして真ん中の黒髪ロングの彼女は《2》のヒロインです。初代ばきメモでは何故か攻略不能でした。バグなのか続編を見越してそうしたのか・・・今となっては闇の中ですね』
なつき『主人公を嬉しそうにいたぶっていた印象しか無いけどな』

ユリ『そ、そして右側の茶髪ロングの彼女は・・・あれっ?』
なつき『どうした?』
ユリ『《2》はもちろん、初代にも登場してないんですよ。これはひょっとして・・・』
なつき『新キャラか』
ユリ『みたいですね。もし現実の世界にいたら、夜な夜な寮のベッドで・・・ジュルリ』
なつき『・・・』
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