その他テキスト、28

以前、私はとあるアイドルグループにいた。
前任者のグループ卒業に伴いリーダーに就任した私は、グループの為、そしてファンの為に様々な工夫をこらしてきた。
そのかいあって少しずつグループの名前は知られるようになり、ついにメジャーデビューの話が舞い込んできた。

だが、そこで一つの問題が発生した。
当時、私の所属していたグループは楽曲や演出、衣装をメンバー間でのセルフプロデュースで決めていた。
楽曲一つにしても、作曲家を誰にするか、歌詞のテーマ等・・・その時のリーダーが主体となり作っていく形だった。
どうも、その時のリーダー・・・つまり私が作る曲がプロダクションの上層部にウケが良くなかったらしい。
海外の幾つかのグループを意識していた事もあり、オルタナとかグランジといった曲調が中心だった。
それに対して、もっと踊れる曲を・・・という事になり、プロダクション側が楽曲を作っていくというのがデビューする条件として提示された条件だった。

正直複雑な気持ちだったが、私的にはやむを得ないと思っていた。
・・・が、一部のメンバーが反発しグループ分裂寸前の状態となってしまった。
候補として渡された曲が、どうしても気に入らなかったというのが理由だ。
ついには、デビューの話まで・・・という流れになってしまう。

何回もチャンスが貰える程、甘い世界ではない。
そう思った私は、上層部と相談し一芝居打つ事にした。
結果、その目論見は上手くいった。
人前に立つのが嫌になったという理由でグループを突然脱退。
メンバーからの着信やLI●Eも全て無視して、嫌われ役になりましたと。
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