キャンプイン(栗橋)

愛『おかえりなさい。ピザはまだですよっ』
栗橋『おう』

今日は道路が混んでいるらしい。
時期も時期だし、気長に待つとしよう。

奥居『ワタル、ちょっと良いかー?』
栗橋『ああ』

奥居が手招きしてくる。
さっきの話だろう。

愛『ちょっとちょっと~、あたしを置いて秘密の話ですか?』
栗橋『そう』
愛『・・・栗橋さん!奥居君とあたし、どっちを選ぶんですかっ?』

どんな二択だ。
でもせっかくなので、少しからかう事にした。

栗橋『奥居』
愛『お、男に負けるなんて・・・!ど、どこがいけないんですか?教えて下さいっ!!』
栗橋『マムシドリンク』
愛『わ、分かりました。今度からはスッポンの粉末にしますっ!』

さらにタチが悪い。

奥居『つーか、愛!オイラにはそんな趣味無いぞ!!』
栗橋『オレにも無い』
愛『じゃあ、話って何?もしかして・・・まりんちゃんの事?』
奥居『その通り』
愛『あ・・・まりんちゃんっていうのは、奥居君の妹』

妹がいたのか。
愛を見てみると、何か奥居に目配せしている。

奥居『オイラの妹・・・まりんって名前なんだけど』
栗橋『ああ』
奥居『その・・・どこにいるか分からねーんだ』

行方不明ってやつか。
普段の何も考えていない様な表情では無かった。

栗橋『いつから?』
奥居『オイラ達が小学校くらい・・・だったよな』
愛『うん・・・』

10年以上昔か。
捜索願はとっくに出しているのだろう。

栗橋『《まりん》ってどんな字、書くんだ?』
奥居『平仮名で《まりん》だ』

手帳に書き留める。
奥居まりん・・・っと。

奥居『お、来たみたいだぜー』
栗橋『だな。受け取ってくる』

インターホンが鳴った。
財布を片手に玄関へ向かう。
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