キャンプイン(栗橋)

??『ごめんなさい・・・』
??『だってよー、夕飯まだだったから・・・』

女の方は本当に申し訳無さそうにしているが、男の方はケロっとしている。
実に対称的だ。

??『弁当の代わりに、あたしを・・・』
栗橋『脱ごうとするなっ』

ベストのボタンを一つ外した所で止めた。

??『なんだよオメー、愛ちゃんの誘いを断るのかよー』
??『そうですよ、栗橋さん。と、いう訳で奥居君。少しの間出ていって下さいっ!』
奥居『うわ、ひっでー』

男の方は、同期の奥居(おくい)。下の名前は忘れた。
外野手だが複数のポジションを守る事ができ、一昨年辺りから一軍と二軍を行き来している。

栗橋『カップラーメンも無い・・・』

新しい部屋も決まり、出ていく日が近いのであまり買い溜めしないようにしている。
棚を探したが、スナック菓子位しか無かった。

??『マムシドリンク・・・』
栗橋『飲まない』

何が悲しくて、夕飯をスナック菓子とマムシドリンクにしなければいけないのか。

??『デザートは・・・』
栗橋『脱ぐなっ』

こっちの女は佐倉愛(さくらあい)。
テレビ局のアナウンサーで、深夜のスポーツ番組に出ている。
奥居とは幼稚園と小学校が同じだったらしい。
たまに二人でオレの部屋に押しかけてくる。

奥居『ピザでもとるかー?』
栗橋『・・・だな』

奥居のバカがピザ屋のチラシをヒラヒラさせている。
コイツに言われるのは腹が立つが、妥当な判断だろう。

愛『だったらあたし、これが良いですっ!』
栗橋『どれどれ・・・却下』
愛『ひどいっ!冷たいっ!!』

赤マムシソースのヤマイモピザなんて、初めて見た。
『愛の伝導師がハート柄のピザカートンでお届けするニャン★』と書かれており、サンタみたいな格好をしたアイドルが写っている。

愛『期間限定なのにー・・・』
栗橋『・・・』

一体、誰がそんなメニューを考案したのだろうか。
アイドルならともかく、男のアルバイトがハート模様の散りばめられたサンタコスなのは、ちょっとした罰ゲームだ。

奥居『唐揚げも頼もうぜー』
栗橋『代金オマエ持ちだからな』
奥居『なんだよ、気前ワリィなー』
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