妹たち(澄谷)

鈴本『ところでさ・・・大丈夫かな、萱島さん』

ワタルが所属しているキャットハンズには現在、2人の女子選手がいる。
一人はオレの高校の先輩でもある橘みずきさん。
今シーズンは少々ムラがあるものの、セットアッパーとして相当の成績を残している。

澄谷『明らかに調子落としてましたよね』
鈴本『精神的な物じゃないかって、聖は言ってるけど・・・』
澄谷『聖先輩が言うからには・・・』
鈴本『そういう事なんだろうね』

そして、もう一人が新人の萱島樟葉(かやしまくすは)さん。
女子選手のみで構成される野球の独立リーグがあり、去年まではそちらに所属していた。
高校時代のチームメイトで同じく女子リーグに所属している城咲円によれば、去年から急に頭角を表したらしい。

鈴本『まあ、結局は彼女次第なんだけどね』
澄谷『そうですね・・・』

そんな彼女だが、現時点でリリーフで2つ、さらには先発に転向してから3つの計5勝を挙げていた。
ところがここ最近、明らかに調子を落としている。
先日彼女が先発した試合ではとうとう1回すら持たずワンアウトを取っただけで降板、そのまま二軍落ちとなってしまった。

鈴本『それで、澄谷君』
澄谷『はい』
鈴本『左打席、立ってもらえるかな?』
澄谷『分かりました』

いつもと握る方向を逆にし、左打席でバットを構える。
18メートル先に移動した鈴本先輩が真剣な目をしていた。

鈴本『・・・』
澄谷『・・・』

オレの中に仮想菊川さんを見ているのだろう。
そして、静かに振りかぶった。
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