妹たち(澄谷)

一昨日の試合。
バルカンズのホーム球場で行われた3連戦のラストゲーム。

バスターズが1点を先制するものの、その後が続かない。
そして7回裏、相手の先発ピッチャーに代わって打席に入ったのは去年までパワフルズに所属していた菊川尚志(きくかわたかし)選手。
ここまでランナーを出しながらも無失点で切り抜けてきた鈴本先輩からツーランホームランを打ち、一気に試合をひっくり返した。

しかし誰もが万事休すと思った、9回の表。
オレの2点タイムリーで再逆転勝ちを収めたというのが、一昨日の試合の概況だ。

鈴本『うーん・・・どうも苦手なんだよね、菊川さんって』
澄谷『え!?』

思わず暑さも忘れる程に驚いた。
まさか先輩がこんな事を口にするとは。

鈴本『あ・・・苦手っていうのは人間的にって事じゃなくて、対戦相手としてね』
澄谷『はぁ・・・』
鈴本『聖によれば、結構良い人らしいんだけど・・・』

単に対戦相手として苦手なだけなら、わざわざそのチームの知り合いに聞いたりはしないだろう。
実際にオレが知る限りでは、去年や一昨年にはそこまで打たれてはいないはずだ。

鈴本『そこにいるはずなのに、感じられないというか・・・仕草が掴めないんだよね、あの人に限って』
澄谷『うーん・・・』

分かるようで分からない。
いや、分からないようで本当は分かっているのかもしれない。

鈴本『栗橋君とは仲が良いみたいだけど・・・』
澄谷『そうなんですか?』
鈴本『うん、知り合いが喫茶店で話してるの見たって』

去年まで同じチームだった、ワタルこと栗橋渡。
今年からはキャットハンズに所属しており、左の代打や時おりスタメンとしても出場している。
バッティングのアドバイスでも受けているのだろうか?
14 / 16
25/27ページ